第600話　ごりらの墓　その１

【登場人物】

種子島かりん　ＤＳｔａｒｓ４期生　ＦＰＳつよつよ陰キャＶ

川崎ばにら　　ＤＳｔａｒｓ３期生　ゲーム配信が得意

青葉ずんだ　　ＤＳｔａｒｓ特待生　グループ最恐ＶＴｕｂｅｒ

八丈島うみ　　ＤＳｔａｒｓ３期生　センシティブ委員長

東山ごりら　　ＤＳｔａｒｓ４期生　幸薄そうな清楚少女だった（過去形）

【シチュエーション】

ごりら凸待ち失敗。

デビュー配信としては最高だったが、傷を負った彼女は同期に助けを求めた。

ずんだ「けど、なんでずんだの家でやるでな⁉」

◇　◇　◇　◇

う　み「すみません、ずんだてんぱい」

　　　「うみとしたことが、後輩への負担を考えず」

　　　「こんな凸待ち事故を起こしてしまうだなんて……！」

ごりら「まあまあ！　結果オーライだよ、うみ！」

　　　「ＤＳｔａｒｓ箱推しの人たちには名前も覚えてもらえたし！」

　　　「＃初手凸待ちで０人　で、ツイッターのトレンドにも上がってるし！」

　　　「怪我の功名！　ＶＴｕｂｅｒは、これくらいのハプニングがないと！」

　　　「それより、僕はうみとデビュー配信できたことが嬉しいよ！」

ずんだ「ごりらちゃん、健気だでな……（ほろり）」

ばにら「ほんまにええこや……」

　　　「なのに、なんでごりらなんかになってしもたんや……（ぐすり）」

かりん「ごりら大丈夫だった⁉」

　　　「初配信にしてはえぐい感じの内容だったけど⁉」

　　　「これからリスナーになにか言われても、気にしちゃダメだよ⁉」

　　　「嫌なこと言われたら、かりんたちに相談してね⁉」

ごりら「もう、大丈夫だって言ってるじゃん」

　　　「心配性だなぁ、かりんってば……」

　　　「たかが初配信で、凸待ち失敗と、厄介マッマと、先輩に喧嘩売っただけ」

　　　「これくらいでへこたれてたら、配信者としてやっていけないよ？」

かりん「割と致命傷だと思うけれど⁉」

　　　　「もう！　ごりらってばそうやって、すぐに大丈夫っていう！」

　　　　「つらいならつらいって言いなよ！　ウチら同期じゃん！」

ずんだ「ほんでもって、かりんちゃんもすっごいよいこちゃんだでな(ほろり)」

ばにら「周りへの迷惑さえ、あとは考えてくれればいいんですがね……（ぐすり）」

う　み「うへっ、うへへへっ」

　　　「もうダメだ、おしまいだ」

　　　「これからごりらは、キワモノごりらＶＴｕｂｅｒとして」

　　　「世間のみなさまから白い目で見られることになるんだ」

　　　「せっかくうみが苦心して」

　　　「ごりらがうまくやっていけるようにと」

　　　「初配信の演出を考えたというのに……すべておじゃんよ」

　　　「いひっ、いひひひっ、ごめんねごりら……ごめんねかおり」

ずんだ「そんで、なんでこっちがヘラってるのよ！」

ばにら「うみってば、真面目な性格バニだから」

　　　「そんなだから前の職場でもストレスためこむバニよ」

　　　「もっと適当にやればいいバニなのに……（ため息）」

ごりら「大丈夫だよ、うみ！　うみの優しさは伝わったから！」

う　み「……ごりら！」

ごりら「そもそも、ＶＴｕｂｅｒは個人事業主」

　　　「誰かに助けられているようじゃやっていけないよ！」

　　　「そして、誰かを助けてやるような義理もない！」

　　　「そんな中で、こうして力を貸してくれただけで」

　　　「僕はもう嬉しくて胸がいっぱいだよ！！！！」

う　み「ご、ごりら！　やっぱりお前は、なんていい奴なんだ！」

　　　「そんなお前だからこそ、委員長は……！」

　　　「最大限の応援で送り出してやろうと……！」

ごりら「大丈夫！　もう、僕は一人でやっていけるよ、うみ！」

　　　「見てよこの立派な僕の姿を……！」

Ｔ　Ｖ「ウホウホウホウホウホ……！！！！（ドラミング中）」

ごりら「って、こんなごりらでＶＴｕｂｅｒなんてやってられるか！！！！」

　　　「ガワの時点で壮絶なデバフがかかっちゃってるんだよ！！！！」

　　　「うみのサポートでようやくプラスマイナスゼロからスタート！！！！」

　　　「そう思っていたのに、どうしてこんなことになっちゃうかなぁ！！！！」

全　員（あー、やっぱりガワのことは気にしてたんだ）

ごりら「ゴリラってなんだ！　ゴリラ美少女ってなんだよ！」

　　　「そんなＶＴｕｂｅｒはやらんわ！」

　　　「ゴリラモチーフのＶＴｕｂｅｒですら厳しいわ！」

　　　「さとさとママのバカぁッ！　もっと天使とかナースとか！」

　　　「そういう無難なところで落ち着けておくれよ、本当にもうっ！」

☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆　☆

ＶＴｕｂｅｒはちょっと不憫なくらいがかわいくていいと思うんです。

まな板属性ってその最たるものですよね。

本当に大事だと思います。

ほら、今をときめくＶＴｕｂｅｒ歌ひめの方も、まな……。（斧の飛ぶ音）

初配信でやらかしても、先輩とギスっても、ママが厄介でも、けっして折れなかったごりらの心も、ごりらのガワには折れた模様。哀れ、東山ごりら。

これからそのガワで、お前はＶＴｕｂｅｒをやっていくんや。

激しく険しいＶＴｕｂｅｒ坂を駆け上がっていくんや。

ということで、ずんさん宅に合流した、うみとごりら。なんか本当に、いいように使われていますね、ずんさんハウス。もういっそ、彼女のアパートを借り上げて、ＤＳｔａｒｓメンバー全員詰め込めばいいのでは？　とまぁ、なかなかクセ強い面子が集まったわけですが、彼らの今後が気になる方は――ぜひぜひ評価・フォロー・応援よろしくお願いいたします！m(__)m