第177話 絶叫配信 その2
【登場人物】
川崎ばにら DStars3期生 ゲーム配信が得意
青葉ずんだ DStars特待生 グループ最恐VTuber
生駒すず DStars特待生 JKお狐VTuber
【シチュエーション】
後日、ずんだのマンションで晩酌中。
◇ ◇ ◇ ◇
ずんだ「ようやく暑さも落ち着いたわね」
「昼間に気持ちよく外を歩けるようになってきたわ」
ばにら「そうですね」
「ばに~らハウスにはエアコンないんで」
「ほんと、涼しくて助かります」
ずんだ「まだあのボロ家から引っ越してなかったの?」
「お母さん呼んで、契約は済ませたんだよね?」
ばにら「それが……なかなか時間がとれなくて」
「今度の休みに、やっちゃおうかなって計画してます」
ずんだ「どうせ自分で荷造りして、引っ越し代ケチろうとしてるんでしょ」
ばにら「……ぎくり」
ずんだ「引っ越し業者に頼んで、さっさと済ましなさい」
「あんな、おんぼろアパートにいつまでも居座って」
「不審者……じゃなくても、幽霊とか出たらどうするの?」
ばにら「あ、私は霊感とかないので」
「そういうのは大丈夫です」
ずんだ「そういうことじゃなくてね」
「……はぁ(クソデカため息)」
ばにら「ボロアパートと言えば」
「美月さんはチラズアートさんの『事故物件』はやりました?」
「あれも怖かったですよねぇ~(無邪気)」
ずんだ「…………」
「やっでない(小声)」
ばにら「え?」
ずんだ「なんか、タイミングが合わなくてね(目を逸らす)」
「気づいたら旬を過ぎて」
「やらずじまいで終わっちゃった」
「いやー、私としたことがうっかりうっかり(棒)」
ばにら(……妙だな)
(いつもなら、流行ってる作品にはすぐ手を出すのに)
ずんだ「けどまぁ、うん」
「みんながあれだけやってると、後追いでやっても埋もれちゃうし」
「そういう差別化も大事よね! なんでもやれば良いってもんじゃないわ!」
ばにら「ちなみに、他のチラズさんの作品はやられてます?」
ずんだ「…………」
「赤マントをやったことがあるような」
「ないような(しどろもどろ)」
ばにら「初期の初期じゃないですか!」
「他の作品はノータッチってことですか⁉」
「どうして⁉ あんなドル箱コンテンツなのに⁉」
ずんだ「いやいや」
「さっきも言ったじゃない『差別化も大事』って」
「みんながやってるゲームをあえてやらない」
「そういうのも大事……」
「ね?(目を伏せながら)」
ばにら「…………」
「美月さん、もしかしてですけど」
「怖いのが苦手だったりしますか?」
ずんだ「そ! そんなわけないじゃない!」
「ホラゲを怖がってたら、配信者やってられないわよ!」
「バカなこと言わないでよ花楓!(ここまで早口)」
ばにら「…………」
「いま、動画のリストざっと眺めましたけど」
「ホラーゲームの動画、二本しかないんですけど?(圧)」
ずんだ「はい、苦手です。嘘を吐いてすみません」
「昔から、ホラーは映画もドラマもアニメもゲームもダメなんです」
ばにら(あっさり認めたなぁ)
(美月さん、怖いのダメなのか)
(なんか不思議な感じ……)
ずんだ「というわけでですね」
「今回の『深夜放送』も、このままスルーしちゃおうかなって」
ばにら「いやいや! なにを日和ってるんですか!」
「VTuberなら、なんでもやってやれですよ!」
「ちょうど季節的にもホラーの時期!」
「やらなきゃ損ですよ!」
ずんだ「……言うようになったわね、花楓!」
「前にすずに誘われた時に、ビビり散らかしてたくせに!」
「けど、そうね」
「私も逃げてばかりじゃダメかもね……」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
怖いのがダメなずんださん。ばにらの配信に珍しく顔を出さないと思ったら――そういう事情だったんですね。いやぁ、VTuberも大変ですねぇ。
ホラーゲームの題材になりそうなキャラなのに……。(フラグ)
ということで、珍しく及び腰なずんだ。
そんな彼女に発破をかけるばにら。
後輩にここまで言われてしまったら――逃げるわけにはいかねえよなぁ。
次回、ずんだは無事に「深夜配信」にチャレンジできるのか! 久しぶりのずんだの配信回に、「待ってました!」という方は、ぜひぜひ評価・応援・フォローよろしくお願いいたします!m(__)m




