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ライアン殿下との婚約解消のための計画は、順調に進んでいる模様。
初めてマリー様の計画を聞いた時は、噂を流すだけで本当にそんなにうまくいくものなのか、正直少しだけ不安だったけれど。
マリー様曰く、噂というものは当事者から遠いところでいつの間にか広まり、気が付いた時にはもう手遅れになっていたりするとのこと。
敢えてそれを狙って行っている側として、ひと月ほどで当事者に近い立場の私の耳にもそれは届き、その内容は尾ひれにはひれに背びれまでついていて、思った以上の結果に皆一様に苦笑いを浮かべたのである。
事実と異なる噂を流しているということに、少しだけ申し訳ないという気持ちがなくはないけれど、私も破滅ルートの回避に必死なのだ。
多少(?)あちらの評判は落ちるかもしれないけれど、今後お二人は堂々と仲良くして頂けますし(今も堂々とイチャついてますけど)、私も晴れて自由の身になれますし。
お互いにWin-Winの関係ということで、何とか自分を納得させた。
少しでも早く、このゲームの柵から解放されたい。
マリー様はこれからが本番だと、楽しそうに言う。
……彼女は決して怒らせてはいけない、敵に回してはいけない人だと思う。
本当に、味方でいてくれて良かった。
心からそう思った。
そして今日も私たちはいつもの四阿にて、ランチを楽しんでいる。
「アビー、不誠実な者との婚約などサッサと解消して、私と結婚しよう」
「ノア様、(ライアン殿下に対して)お言葉が辛辣になってこられましたね」
今日も安定のプロポーズの言葉を頂いてますが、いつも通り丁重にお断りさせて頂きます。




