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イザヤ目線です。
「まさか、コネを使うなんてズルいことはプライドが許さないなどと温いこと、仰いませんわよね?」
……驚いた。彼女は俺の考えていることが、まるで見えているかのように的確に指摘してくる。
「そんなくだらないプライドなど、さっさとその辺に捨てて下さいませ。コネを使ってでも上を目指していくくらいの強い気持ちがないのなら、貴方の『強くなりたい』という想いは、所詮その程度のものだったということ。それならばさっさと諦めて、井戸の中で一生燻っていればよろしいのではなくて?」
そう言うと、彼女は友人たちを伴って行ってしまった。
彼女の鋭いナイフで抉るような言葉に、俺は全く反論することが出来なかった。
なぜなら、彼女の言っていることは全てにおいて正しいと感じたからだ。
とても厳しい言い方だが、それは俺を正しい方向へと導いてくれる言葉で、俺には必要な言葉だったと思う。
初めて会った時もそうだった。
彼女は俺の耳に心地よいだけの言葉を言わない。
彼女は俺に都合の良いだけの答えを言わない。
けれど、今まで俺の周りにいた誰よりも、本気で俺のために必要な言葉を伝えてくれている。
素直に有難いと、思った。
そして俺は急いで寮の部屋へと戻り、軍務大臣である父へと手紙を書いた。
手紙だけでは俺の本気が伝わらないかもしれないから、週末に家に帰って、直接父に話してみるつもりだ。
俺は絶対に今よりも強くなる。
そして、近衛騎士団へ入団するのだ。
そのために今までずっと頑張ってきたんだ。
彼女も『才能に甘んじることなく努力する姿は素晴らしい』と、初めて会った時に言ってくれたではないか。
これからは今まで以上に努力していこう。
決して驕ることなく、上を目指して。
そして、出来ることならば、彼女の隣にいて恥ずかしくない男に……。




