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「アビゲイル様……」
眉尻を下げて不安そうな顔のミランダ様。
普段気丈な方だけに、そんな表情に萌える!
……顔や態度には出さないけど。
そして先程からチラチラと視線が忙しなく動いているミレーヌ様も、何やら小動物のようでとっても可愛い!!
脳内で自分の友人の可愛さに悶えつつ。
「見てはいけませんわ。見たら負けですのよっっ!」
「アビゲイル様はいったい何と戦っておられますの?」
私の言葉にマリー様からのツッコミが入る。
皆と出掛けたあの舞台から十日ほど経ち、少し長めの休憩時間や授業が終わった後に、私たちの元へ押しかけボディーガード(仮)がやって来るようになりました。
あ、朝の登校時ももちろん寮の前にいますよ?
……何度お断りしても、「俺が勝手にしていることだ。気にしないでくれ」と言って聞いてくれません。
気にするなと言われても、貴方目立ち過ぎるんです!
貴方のせいで、人目が気になるのよっ。
本当に、『お前は気にしろよ!』と言ってやりたい。
それに学園内で、そんな頻繁にガードが必要な場面があってたまるか!
四阿ではノア様と一緒にランチを楽しみ(他の方からはそう見えるらしい)、仔猫ちゃん男には度々声を掛けられ(完全なストーカーですから!)、イザヤ様を引き連れて歩き(勝手に着いて来るんです!)。
もうね、女生徒たちからの視線がビシビシと突き刺さるのよ。
これって、本来ならヒロインの役割りじゃないんですか?
少なくとも、悪役令嬢な私の役割りではないよね? 違うよね?
まあ、本来の役割を放棄している私が言えた義理ではないのでしょうけども。
兎にも角にも、私が言いたいことは一つ。
「迷惑ですわ。こんなことは早々にお辞めになって下さいませ。貴方には貴方のやるべきことがあるのではないですか?」
人気のないところまで来て、私キレました。
キレたけれど、これでもかな〜り我慢を重ねたのよ?
人目のあるところだと、後日面白可笑しく、尾鰭までついて広がりそうだもの。
噂話はライアン殿下とヒロインの話だけにして頂きたいからね。
ここまで我慢した私を、誰か褒めてやって下さい。




