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翌日。
「行ってらっしゃいませ」
綺麗なお辞儀で送り出してくれるミア。
けど、何だろう?
その言葉の裏には「さっさと行けや、お嬢様」って含まれているような気がするのは、私の被害妄想かしらね?
うん、気にしない。
まだ若干の目の下のクマは消えずに残ってしまっているけれど、しっかり食べてしっかり寝たら少しだけ。
少しだけだけれど、気分も上昇したような気がする。
とりあえず、目の前のことから一つ一つキッチリと終わらせて行くのが私の目標だ。
余所見はしない。
まだまだ私の未来は確定したわけじゃあない。
遠くない未来に、首たれて跪くのは私ではなく、王子だぁぁぁ!!
◇◇◇
「アビゲイル様、体調の方はもうよろしいんですの?」
教室を入ったところで、心配そうな顔でミランダ様たちが寄って来た。
ああ、彼女たちの顔を見るとホッとする。
改めてだけれど、私は彼女たちのことが好きで、信頼しているのだなぁと感じた。
「ええ、お陰様でだいぶ良くなりましたわ。心配して頂いて、ありがとうございます」
差し障りのない話を二、三した辺りでマリー様が、小声で聞いてくる。
「アビゲイル様。病み上がりで申し訳ありませんが、本日『女子会』は可能でしょうか?」
何だろう。
マリー様が『女子会』って言うと、『悪巧み』に変換されて聞こえる気がする。
……絶対に言わないけれど。
「大丈夫ですわ。私の部屋でよろしいかしら?」
「お願いします」
ここで担任の先生が教室に入って来られましたので、各自の席へと向かうため、一度解散となりました。
女子会、丁度良いタイミングかも。
難しいかもしれないけれど、ライアン殿下との婚約解消に向けて頑張ることを皆様の前で宣言することで、どこか逃げ腰だった自分にこれからは逃げずに立ち向かって行くのだと、発破を掛けて行くのだ!
先生が今日の予定や連絡事項の話を始め、
「そうそう、アビゲイルさん。貴女へ渡す資料がありますから、帰る前で結構なので職員室に取りに来て下さいね」
と言って教室を後にした。
何かしら?
あまり重たいものでなければ良いのだけれど。
一応今はか弱い非力なお嬢様をやっているので、柚月の時には平気で持って運べたものが持ち上げられなかったりする。
余りにも非力過ぎるので、(寮の)部屋でエクササイズから始めてもう少し筋力を付けようと思う。




