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そんなことより、今度の週末にマリー様と一緒に近衛騎士団の宿舎へお伺いする方が、とっっっっっっても大事だから!
何を差し入れしようかな?
忙しい騎士団の方たち(主にサミュエル様)の手を煩わせることなく、簡単に食せるもの……。
フィナンシェか、カップケーキか。
シュークリーム……は、この世界には保冷剤がないからムリだし。
あ、スイートポテトもいいかも♪
他には……。
「……ま、アビ……ルさ……、アビゲイル様」
ハッ。つい現実逃避してしまった。
「ごめんなさい、つい現実逃避を……」
皆の顔には、気持ちは分かると言わんばかりの苦笑が浮かんでいる。
そこでマリー様が声を潜めて恐ろしい言葉を口にした。
「アビゲイル様、ノア王太子殿下とアビゲイル様のことが噂になりつつありますわ」
「はい?」
「何せ、毎日四阿に足繁く通って(プロポーズして)らっしゃいますし、何よりパーティーで助けて頂いたことが大きいですわね」
思わず机に突っ伏して、ブツブツとお嬢様らしからぬ姿で脱力中の私。
「お断りしてますのに……私にどうしろと……」
「アビゲイル様はどうされたいですか? どこまでお力になれるか分かりませんが、私たちを頼っては下さいませんか?」
マリー様が眉尻を下げ寂しそうにそう言うと、ミランダ様とミレーヌ様も静かに頷く。
「皆様……」
もうね、涙腺決壊っすわ。
とりあえず、午後の授業は四人揃って体調不良ということにして、寮の私の部屋へと場所を移し、ミアにはお茶とお菓子を出してもらってから、買い出しをお願いした。
決してミアを信じていないわけではなく、余計な心配を掛けたくないというか……。
彼女は立場上、知らないことにしなければいけないことが多い。
(私の奇行とか、私の奇行とか、私の奇行とか……って、自分で言ってて凹む)
大好きなハーブティーを口にして少し落ち着いたので、私は自分の気持ちをゆっくりと吐露し始めた。
「私はライアン殿下との婚約を解消出来たらと、思っているのです。そうすればライアン殿下とシャルロット様は堂々とお付き合い出来ますし(身分違いだけどシラネ)。ノア王太子殿下に関しては、荷が重過ぎますわ。出来ましたら他をあたって頂ければというのが、正直な気持ちです」




