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可愛らしくラッピングしたクッキーを、マリー様にプレゼント。
喜んでもらえたようで、とても嬉しい。
マリー様が手配された馬車に乗り込み、お城へと向かう。
近衛騎士団の宿舎はお城の裏手にあり、それは何かトラブルなどがあった時に、直ぐ向かえるようにらしい。
お城が見えて来ると更に緊張感が高まり、気が付けば近衛騎士団の宿舎入口の前に立っていた。
あら? いつの間に馬車を降りたのかしら?
「アビゲイル様、大丈夫ですか?」
心配そうな顔をしたマリー様が、目の前に立っている。
「済みません、こちらには初めて足を踏み入れますので、どうやら緊張しているようですわ」
いかんいかん、マリー様に心配を掛けてしまった。
大きく深呼吸を数回繰り返し、気分を落ち着かせる。
「もう大丈夫ですわ。ご心配お掛けして申し訳ありません」
マリー様は少しホッとしたように、可愛らしく笑った。
「アビゲイル様が緊張されているご様子を初めて見ましたわ」
「あら、私だって初めての場所では緊張くらいしますわよ?」
マリー様のお陰で肩の力が抜け、二人笑顔で宿舎に足を運ぶ。
マリー様は普段から差入れに伺っているようで、騎士団の皆様から気さくに声を掛けられているのだけれど、何故か隣の私を見て固まる騎士の皆様。
「私、何か変かしら?」
疑問がつい口を出てしまい、マリー様がそれを確り耳にされたようだ。
「どうかしまして?」
「いえ、皆様私を見て固まってらっしゃるので……」
ドレスのスカートを広げたり、背中側にタグでも付いてるかもと、可笑しなところがないかチェックしていると、マリー様に抱きしめられました。
「ああもう、アビゲイル様可愛すぎますっ! 騎士の皆様は、アビゲイル様の美しさに吃驚されておられるのですわ」
マリー様の言葉に照れて顔が赤くなるのが分かり、思わず頬に手を当てると今度は頬擦りされました。
「ああもう、本当に可愛すぎますっ!」
「可愛いのはマリー様の方ですわ」
アビゲイルの容姿はどちらかといえば美人であり、可愛いというのはマリー様やミレーヌ様のような女の子を差す言葉だと思う。
そんな風に思っていると、マリー様が「アビゲイル様、大好きです!!」と更にギュウギュウと抱きしめてくる。
ぐえぇぇぇ、ちょ、苦しい……。
マリー様ったら、一見華奢なのに予想外に力がありますのね。
そこへ、背後より呆れたような声が聞こえた。
「マリー、お前はこんな所で何をやっている」
「あら、お兄様。アビゲイル様の可愛さに悶絶しておりましたの」
マリー様は抱き締めていた腕を解くと、私をクルッと反転させた。
「お友達のアビゲイル様ですわ」




