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15.氷解

 一体、どうしてこうなったのか。


 バルザックは頭を抱えた。今にも死を選びそうな番の誤解を解きたいが、国境際のこの地に長く天馬部隊を置くことは危険だ。


 だから。


「マリー殿、我が妻を保護していただき礼を申し上げる。後日、改めて礼をするが、今宵は妻が身重のため先に帰らせて頂く。」


 天馬部隊を呼び出し、妻が見つかった旨と。マリー達が恩人である事を伝え撤収した。


 まだなにか誤解しているであろうアリアの耳元に


「マリー達を助けてほしくば、騒ぐな。命を断てばその時点でマリー達を処刑する。」と半ば脅すように囁いて。


 王宮に戻る事に怯えるアリアを半ば攫うように天馬に乗せた。


 公妾として他の男に回すだなんて、なんて恐ろしい誤解をしているんだ。


 そんな事、私が耐えられない。狂ってしまう。番がテリトリーを離れただけで、おかしくなりそうだというのに……。


 天馬の上で抱き締めながらアリアの耳元に囁く。


「アリアは公妾ではないだろう。」


「えっ?」


 そこからか……。アリアを番にした喜びに浮かれすぎていた自分の不甲斐なさを責める


「初めて我が屋敷に来た日に、王宮には公妾として来た人物が別人であることを報告した。さらにアリアが私の番であったために私の宮殿で保護する許可を得た。」


 そう。他国の嫡出王女アリアは番とはいえおいそれと手元における立場ではない。


 だから公妾としてやって来た事を利用して、気付いていないふりをしてこの国に留めることにした。


 しかもアリアはレジオン国の亡くなった正妃の産んだ嫡子というだけでなく、帝国の血を受け継いでいる。


 どちらかの国からごねられたら手にいれることが難しい。

 

 だから、レジオン国が公妾をすり替えた事を利用してアリアを秘密裏に隠したのだ。


 両国から横槍を入れられることがないように正式な手順を踏んで婚姻を結んだ後に大々的に発表する予定だったのだ。


 だが、公妾の誤解は解かなかったものの、番である事は折りに触れ伝えていたはず。何故ここまでこじれてるんだ?


「アリアは大切な番だよ。番の意味わかるよね。」 


「順番という意味ですわね。わかりますわ。」


 エスメラルダ語を自在に操る彼女の語学力に完全にネイティブだと誤解していた私のミスだ。


 そう、順番を表す『番』という単語と番を表す『番』という単語は同じだ。

 我が国では、大切な番相手に語りかける時にのみ使うものだから、聞き慣れない単語なのかもしれない。


「違う。番は唯一運命で定められた魂の片割れって言う意味で。夫婦よりも強い絆で結ばれるものだよ。当然番は結婚することになる。」


「では、バルザック様が結婚する相手は……。」


 潤んだ瞳で見つめないでくれ。お腹に子がいるのに自制が吹っ飛びそうだ。


「アリア、君だよ。アリア、君だけを愛している。式の準備も済んでいる。君が気に入っていたドレスも出来上がった。お腹の子と共に式を挙げよう。」


「バルザック」


 震える番のちいさな肩を抱き締める。


 これからは誤解を生まないようにたくさん話そう、アリア。


 どうかこの生涯を共にいて欲しい。


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