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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第二章 堅華なる鉄の守り 
99/531

97話 神様との対談②…+α

約1万文字になってしまいました…。

ちょっとビックリです。

 神様の発言に一瞬呆然とした俺だったが、すぐに頭を動かし始める。


 ただの質問が、スケールのデカい話になりつつあるような…。

 夢なのに休んでる気が全くしないや。


「えっと…神様? 『時』? が専門の力ってどういうことです? それに神様も関係してるってどういう…」

「…事が事だしまた説明するわね。ただちょっと時間がなくなってきてるから所々省くけど」


 あ、また女口調に戻った。これはガチのやつっぽいですわ。


 俺の中では、神様が女口調になる時は真面目な話という認識になっている。


 じゃあ魂の消失の話ではなんでそうじゃなかったと思うところではあるが、そこはまぁ神様に聞いてくれ。

 神様にとっての重大事項なんて俺には分からないし。


「私たち神は、専門とする力がそれぞれ違うの。私はさっき言ったように『時』。他には『空間』や『生命』、『運命』っていう風に様々な力を持った神がいるわよ」


 どうやら神様は複数人存在しているようである。


「その神様たちで…この世界を管理しているんですか?」

「世界を構築するための力は借りてはいるけど、全体を統括、管理しているのは私。それぞれで担当している世界があるのよ。私の場合はリベルアークだったわけ」


 ふむ。

 つまり、貴女はエリア『リベルアーク』地区のマネージャーというわけですね。

 お勤めご苦労様です。いつもお世話になってます。

 給料はいくらですかね? がっぽり貰ってんでしょ?


「…まぁ私には『時』の力があると分かってくれればそれでいいわ。…で、本来は時の神である私以外に過去に飛ぶことが出来る存在なんていないのよ。…私の上司はできるけど…」

「上司?」

「あ~、数多くいる神を統べてる、神の中の神って存在のことね。こいつはどーでもいいわ」


 と、ぶっきらぼうに答える神様。


 随分な扱いッスね。

 とても上司とは…もっと言えば、全存在から敬まわれるお方だろうに。

 まぁ、神の王がいるのは分かった。


 よっしゃ! 神王様や。

 ここに職務怠慢の神がいますよ。給料を減給してやってくださいな。


「そんな言い方していいんですか?」

「いいわよ、別に聞こえやしないもの」


 反省する余地なしか。

 まぁどーでもいいんですけどね。俺には。


 …にしても『時』ねぇ。

 地球じゃ『時』…時間を司る神はクロノスだったけ? 多分合ってると思うけど…。

 でもこっちじゃ地球とはまた違うみたいだ。


 神様の話は続く。


「未来の君が過去に飛ぶことが出来たのは恐らく、私が力を貸したんだと思うわ。これはステータス云々の問題じゃないし、自力でやることはまず不可能。…というか、普通は人間じゃ肉体が持たないわ」


 どうやら俺のみの力で来たわけではなく、神様の力を借りて来たようである。

 時を超えるのはやはり普通とは違うらしい。


 あと、人間じゃ肉体が持たないって…神にまで人間否定されてますやん。

 俺はもう人として終わったな。来世は人としてしっかり生きよう、うん。


「まぁ加護の方は、なるほどね…。記憶が混じり合ったことで、何らかの要因でその時に新たな効力が生まれた可能性は高い。この正体不明の効力は、それが原因でしょう。これが吉と出るか凶と出るかまでは分からないけど…」


 吉でこい吉で…。凶とは出ないでくれないと困る。だってそれじゃ加護じゃないじゃん。

 恩恵のない加護に、加護としての価値はない。


 あ、吉は吉でも、キチな加護は駄目だぞ?

 それだったらまだ凶の方がマシな気がする…。


「ただ、加護に影響を与えるほどって…相当よ? 未来に一体何があったのかしらね?」

「俺に聞かれましても…」


 神様に聞かれるが、答えは俺には分からない。

 ただ、奴の言っていた非常に後悔する結末と関係しているのは間違いないんだろうな。まぁ憶測に過ぎないが…。

 神様もその辺りは分かってて、俺にこうして聞いているのだろう。


「というか、神様は未来のこととか分かんないんですか?」

「無理。あくまでまだ起こっていない事象に関して知り得ることは私にはできないわ。何度も言うけど、神だって万能じゃない。できるとしたらそれに特化している『運命』の力を持つ奴だけでしょうね」


 何度もそんなこと言ってたか? まぁ上げ足取るつもりはないんだけど…。

 それにしても…うーん、貴女は本当に神なのか? 

 使えねーな(ボソ)…。


「何か変なこと考えた?」

「いや…別に何も…」


 俺の心の声が神様に読まれ、冷や汗をかいたのは内緒だ。

 鋭いのは伊達に神様やっていないって証拠かねぇ。


「過去に飛ぶにあたっての誓約が絡んではいるんだろうけど…それ以前に時を超えられたことの方が本当に驚きなのよ。あ、ちなみに今の君ってステータスはどうなってるの? まだ見てなかったんだけど、相当高くなってるはずよね?」

「へ? ああ…こんな感じになってます。それと…これも後で聞こうとは思ってたんですけど、この表記って何なんですかね?」


 神様に言われ、ステータスを開示しながら俺も質問に質問で返す。

 少々気になっていることがあるからだ。


「表記?」

「これなんですけど…」


 俺が見せたのは、【人間の魂(覚醒)】だ。

 魂というスキル自体も意味不明だが、さらに覚醒などとついてより意味不明になっていたためだ。

 魂つながりで今回のことと何か関係があれば、聞いておくに越したことはない。

 種族の隣についている??? も気になりはするが…今一番気になるのは魂のことだった。


 すると…


「うわ、随分と強くなったみたいね…。ってああこれね。この『覚醒』だけど…一定以上の強さになると【〇〇の魂】ってつくのは知ってるわよね? 『覚醒』はそれのさらに上位互換版と思ってもらえればいいわよ」


 じゃあ特に意味はないのか…。


「これらのスキルが出た者は、世界に魂の強さが認められたということなのよ。人の能力が平等ではないのはこれが関係しててね、魂の強い者ほど能力が高いということなの…」

「じゃあ魂で全てが決まるってことですか?」

「そうなるわね。一応、世界に魂が還元されるときに強さは初期化されるんだけど、魂の元々の質は高いままだから、その魂を引き継がれた人は強くなることが大半。親の魂が優れていると子供も強い魂を持つ確率は高くなったりするけど…ま、才能=魂みたいなものね」

「努力は報われないのか…まぁリアリティーがあるといえばそうか…」


 才能は魂が影響してて、血とかは2の次ってことかな?

 この辺りは深く詰めていくと難しくなりそうだから、今はそういう認識でいいか。


「…俺の魂ってじゃあ強いんでしょうか? てっきりスキルの影響だと思ってたんですけど…」


 俺、スキルのおかげで強くなったと思ってたんだよな…。

 スキルと魂の相互関係はどうなってんのよ? 教えてちょ。


「すごく強いわよ? それもとんでもなく…。というか地球の人とこっちの世界の人の魂では差がありすぎるくらいだしね。特に【無限成長】はこっちの世界の人の魂では取得は不可能よ」

「Oh…そりゃびっくりですね…」


 うそーん。

 実感ねーんですけど…。


 ん? てことは…こっちで死んだであろう異世界人の魂ってどうなったんだ?


「じゃあこっちで死んだ異世界人の魂ってどうなったんです? やっぱり別の人に移ってるんですか?」

「あら? いいとこに気づいたわね。うん、多分引き継がれてるはずよ。あなたと同等の強さの魂を持った人が、今世界に3人いるんじゃないかしら?」

「げっ、マジですか…」


 敵対しなきゃいいんだが…。強いんだったら冒険者のSランク辺りにいるかもしれんな。

 気にかけておこう。


「こんなところでいい? …あと、種族の方は気にしなくて平気よ。世界のシステムが認知できないだけであって、君に変化があるわけではないから」

「あ、ハイ」


 こちらについても問題なしと…。

 なんだ、心配することなかったのかい。損した気分だ。




「まぁ随分と話が脱線しちゃったけど、私がこうして今君の前に現れたことは変わらない事象だったんだろうね」

「はい?」


 突然、神様が話を元の路線へと戻す。


「元々私は、今日キミに会いに行こうと考えていたのよ、キミを見送った時に…。だから、今キミにこうして会っていることは必然なわけ。未来のキミが来なくてもね…。ここで重要なのは、この時点でキミが未来の自分と接触したことを私に報告できているということなのよ。これは…未来が変わることだと私は思ってる」


 ほう? 

 …てことは、ここまでは本来の俺のシナリオだったわけだな。

 これから先は別の道…どうなるかは分からないと。


 …いや、もっと言えば出会った時から少しずつ変わりつつあるんだろうけど。


「世界の魂の消失と未来から来たキミからの忠告…。これが無関係には思えないわ」

「俺もそう思います。関係性がもしなくても、どのみち解決しなきゃいけないでしょうし…」

「うん。…大丈夫。未来のキミと私の考えは必ず叶えてみせる。いや、叶えなきゃいけないのよ。そうでもなきゃこんなことしないはずよ未来の私たちは」

「まぁ…そうですね」


 それには同意だ。

 未来に待つ後悔する結末を黙ってみている訳にもいかんしな。

 未来の俺自らにわざわざご足労いただいてんだ。…その思いを無駄にしたくはない。


「ちょっと時間くれる? 色々整理して詳しく考察したいから。また今度連絡するわ」

「了解です。それはいつ頃で?」

「えっと…1ヵ月に一度なら来れると思うわ。通常業務も怠るわけにはいかないし…。やったら世界の破滅ね」


 怖っ! 責任重大すぎる…。

 

「…最後にちょっと整理しとこうか? 現時点で分かってることは、世界に現存する魂が消失しているということ。恐らく魂を集めている者がいるということ。そして強い魂を求めているということ…。こんなところかしらね?」

「ですかね。ただ、強い魂って何で分かるんです?」

「ただ単に魂が欲しいだけだったら、君を狙う必要がないでしょ。そこら中の一般人を狙えばいいんだから」

「あ、それもそうですね」


 言われてみればそうですね。

 いやん。俺のばかぁ、もうちょっと考えまちょーね。俺はやればできる子だろ?


「…しっかりしてよ? 私は下界に下りられないから、こうして君に頑張ってもらうしかないんだから…。大変だとは思うけどよろしくね? バックアップは出来る限りするから…」

「はい」


 釘を刺されてしまった…。


「今日こうして君と話して良かったよ。それじゃまた1ヵ月後にでも夢で連絡を取り合おう。それじゃ!」


 矢継ぎ早に神様は言いたいことを一通り言うと、俺の前から姿を消してしまった。

 どうやら本当に時間がなかったみたいで、あれこれ聞かなくても良さそうなことを聞いて無理をさせてしまったのかもしれない。


 ごめん神様。




 ◇◇◇




「さて、結構マズい状況ねこれは…。なぜ彼は魂の存在を知っているの…?」


 司との対談を終え、司をこの世界に招いた灰色の空間に神は戻ってきていた。

 先ほど聞いた情報から、『白面』が魂の存在をなぜ知っていたのかに頭を悩ませているようである。


 そもそも、ツカサが魂の存在を知らなかったように、リベルアークにいる人もまた、魂が存在することを知らないはずなのだ。

 確かにスキルでは表示されてはいるものの、命という肉体的なものはともかく、魂は目に見えるものではないため、その存在が実際にあるということを知っている者がいることがおかしいのだ。

 神はそれを不思議に思っており、また嫌な予感を胸に感じていた。


「魂を集めて一体何をするつもりなのかしら? 人間には扱うことなんて無理なはずなのに…。というかそもそも集める方法は一体…?」


 神以外には誰もいない空間で一人呟き、暫し沈黙…。

 そして…


「……まさか…ね」


 神はある可能性に辿り着き、考察を続けるのであった。




 ◇◇◇




「…はっ!? ………布団。目ぇ覚めたのか…」


 気が付くと、俺は布団から体を起こしていた。

 恐らく起き上がったばかりだが、不思議と体には起床特有の怠さは全くなく、先ほどまで起きていたかのようだった。

 それが俺が先ほどまで神様と会話していたということを実感させる。


「…朝か」


 部屋は暗いので分からないが、外から鳥の鳴く声が聞こえるためそう判断する。

 1時間にも満たないくらいの会話だったが、思っていた以上に時間が経過していたようだ。


 のそりと起き上がり、やることを確認する。


 一通り頭の中でやることの順番に整理をつけた俺は行動を開始。


 もう書物は調べる必要がなくなったから、【隠密】の修業にあてる時間が増えるだろう。習得はそう時間はかからないと思う。


 …やるか。




 俺は部屋から出たのだった。




 ◇◇◇




 同時刻―――



 司が神様と夢で対談中の頃…


「えー、前回で申し上げた例の彼について調査報告しますねぇ。前回は『クロス』さんが不在でしたので、また一から報告します」

「うむ、聞こうか…」

「スマンな『白面』」


 大陸のとある場所。

 部屋の中心にモニターのある部屋で8人の人物が椅子に座り、集会を開いている。

『白面』がその場の全員にある報告をするらしく、皆耳を傾けている。


「例の彼ですが…名前はツカサ・カミシロ。20歳男性で背丈は小柄…。2匹の鳥型の従魔を連れているそうです。従魔は黄緑色と白色をしているみたいですねぇ。…で、いつもジャンパーを羽織って行動しているとのことです」

「…ジャンパー? ジャンパーって…あのジャンパーか?」

「はい。ジャンパーです」


 ………………。


「「「「「「???」」」」」」」


 淡々とした説明をする『白面』の言葉に、皆、一様に首を傾げる。


 …というのも、ジャンパーなどという本来であれば防御性能皆無の服を着ているというのは、普通は考えられなかったためだ。

 この場にいる者は、前回の報告で司が冒険者をしていることは知っている。

 元々冒険者は危険が付きまとう可能性が高い特性上、服…装備は鎧であったり、鉱石やモンスターの素材を利用したものを使うことが一般的だ。それに比べてジャンパーは通常の衣服と変わらないというのがこの場の認識であるため、この反応は仕方のないことと言える。


「……気持ちは分かります。私も…はぁ? ってなりましたし…。でも事実なんですよねぇ。私見てますから…」

「……まぁいい。続けろ」

「はい。えっと、どうやら彼は今から約2ヵ月半ほど前……ラグナの1ヵ月ほど前ですねぇ。そのくらいの時期にグランドルへとやってきたそうです。そこで冒険者ギルドに登録して、数日でCランクに昇格…。ラグナの功績でSランクへと史上最速で上がったようです」

「ああ、なんか号外で見たわね…新しいSランクが誕生したって。民衆の噂になってるのを見たわ。私のいた大陸にまで届いてたわよ」

「僕も聞いた~」

「はい、それですそれです」


 司がSランクになった際の号外を一部の者は知っていたらしく、『白面』の言葉に反応していく。


「ふ~ん。史上最速ってことは、元々そんなに強かったってことよね? なのに無名だったの?」

「そうなりますねぇ」

「そ奴はどこの出身なのだ?」

「それが…不明なのですよ。髪も珍しい黒髪ですし東の出身だと思って調べましたが、カミシロなんて性の人はいなかったんですよねぇ」

「不明…ねぇ…。流石におかしいよなぁ」

「…あ、ちなみに彼は現在東の『アネモネ』に滞在してます」

「『アネモネ』に? …一体何をしに行ってるんだ? あそこって特に何にもなかったろ。依頼か何かか?」

「さぁ? そこまではなんとも…」

「あるとしたら、異世界人の残した名残があるくらいだな」

「いや、そりゃ分かってるさ。それ以外は何にもないなって話だ」

「む、スマン。蛇足だったな…」

「…ただ、なにやら『鉄壁』の方が一緒にいるみたいなんですよねぇ」


『白面』が、はぁ…と、ため息をつきながら言う。


「『鉄壁』が? 王都に在中かと思っていたが…」

「ええ、王都で知り合って…そのまま東の『アネモネ』へ一緒に向かったみたいです。……それで、なんか話逸れましたけど、まだ続きあるんでいいですかね?」

「次々ぃ~♪」


 瞳に光のない青年…『虚』と呼ばれている青年は、なんとも楽し気な顔だ。

 この場で一番気分が良さそうである。


「…実際に彼の戦闘を見ましたけど…上級の魔法をポンポンと多用してました。それと全属性に適性があるらしく、魔法は基本的に無詠唱で行うそうです。てか、上級を無詠唱で発動してましたねあの時…」

「はぁっ!? オイオイ前回の報告だけでも十分化物だってのに、冗談にも程があるぞ! それじゃあ『賢者』クラスってことか? …でも蹴りでドラゴンを倒したとかこの前言ってなかったか?」


『銀』が驚きの表情で声を上げる。

 前回聞いていた内容を上回った報告が原因らしい。


「ええ、言いましたね」

「…マジかよ」

「…身体能力は『武神』並みってところかしら?」

「さぁ? それもなんとも…。それ以外は全て魔法で片付けてましたから、判断するには情報がまだ少ないですね。…あ、そういえば冒険者に登録した次の日に、素手で大剣を受け止めて平然としていたそうですよ?」

「…強いのは前からってことか。はいはい、強いですねぇまったく」


 半ばヤケクソ気味に『銀』が吐き捨てる。


「…結論から言って、間違いなく『超越者』と見ていいでしょう。その中でもさらに一際飛び抜けるほどの…。殺すのは非常に困難を極めます」

「だろうな」

「彼個人の強さもさることながら、厄介なことに従魔の方も規格外の強さを持ってるようで…」

「…なに?」


 この集団のリーダー的存在である『絶』が、『白面』の言葉に眉をピクリと動かし、反応する。


「まず黄色い方の従魔ですが…魔法はあまり得意ではなく然程脅威ではないんですよ。でも、近接戦闘には目を見張るものがありまして…。グランドルのギルドマスターもいたとはいえ、ドラゴン4体を相手にしながらしばらく持ちこたえてましたからね。途中で他の方を庇ったりしなければ無傷だったかもしれません」

「うわーやるねー。ちょっと僕のペットにしたくなっちゃうなぁ」


 その話を聞いた『虚』が、不気味に笑いながら呟く。

 これがいつものことなのか、誰もそれに対して反応する者はおらず、無視を決め込んでいる。

 そして…


「続きは?」

「はい。白い方ですが、こちらは黄色い方とは対照的に魔法が得意なようです。…驚くことに独自の魔法を使用するらしく、『アイスシールド』の上位版のようなものを確認しました」

「……何だその従魔共は。神獣か何かか?」


 ただでさえ厄介な存在に、さらに厄介な存在がいることに懸念を覚えた『絶』は、至って真面目な顔つきをして尋ねる。


「今じゃ神鳥って言われてるそうですよ。主人の方は、そのことから『神鳥使い』っていう二つ名が名付けられたみたいですから」

「…あってもなくても脅威なのは違いないな。こりゃ重要案件だわ」

「さらに「まだあんのか!?」…はい、残念なことに」


 これ以上はもうないだろうと考えていた『銀』は、再度驚きの声を上げた。

 顔は…もう勘弁してくれと言っているようだった。


「こちらはやや不確定ですが、どうやら従魔は獣人のように身体強化のようなものを使えるらしく、それを使うと姿が神々しい姿に変わり、能力が飛躍的に向上するようです。白い方は元々そうだったんですけど、主人の方が戦場に現れてから黄色い方が変化したので、何かの能力だとは思うんですが…」

「面倒だな…」

「だってさ…『虚』。ペットは無理くせぇぞ? お前がペットになっちまいそうだ」

「む~、それは残念だなぁ」

「…変化する前だったら『銀』さんと同じくらいの強さですが、さっき規格外と言ったのはこれがあるからなんです。黄色の方の実力は見ていませんが、白いのと同様に恐らく化けるでしょう。神鳥の由来はこれも関係してるみたいですよ?」

「へーへー、どーせ俺は弱いですよーだ」


 自分がこの中で最も弱いことを分かっている『銀』は、『白面』がシレっと言ったことに対して軽く悪態をつく。

 頭では分かってはいるものの、若干の劣等感を感じているようだった。


「ふ~ん。じゃあ僕ちょっと見に行ってきてもいい? 彼の従魔見てみたいんだぁ。ついでに彼女のことも見てくるから…」

「『鉄壁』か?」

「うん。チャンスがあったら回収しとくけど…どうする?」

「いや、無理はするな。そ奴がいるのだから危険はなるべく避けろ。それ以前に危険を感じたら終わりと思った方が良い」

「同感だな。下手すりゃ一瞬でやられるぞ?」

「そう? ちぇっ、ならやめとこうかな…」


 口を膨らませながら、『虚』の表情が曇っていく。

 …すると。


「まぁ、任せてもいいんですが…平気ですか?」

「そいつ強いんでしょ? だったら万が一のことも考えて『クロス』の方が安心じゃないかしら?」

「待て待て。我なら確かに平気だろうが他に適n「あ、元よりそのつもりでしたよ?」 オイ『白面』! 何勝手なことを言っておるのだ!」

「いや、だって彼にまともに対抗できそうなの貴方しかいないんですもん。私がやったら間違いなく死んじゃいますし…」

「同意。アタシもそんな奴相手は死ぬわね」

「僕も~」

「私も力が足りぬな」

「俺? 論外だろ。100人でも死ぬ自身あるぜ?」

「(コクリ)」

「…ホラ、決まりですね」


『クロス』が周りの勝手な言い分に対して文句を言うが、1人を除いて意見が一致しており、反論は通りそうもない。


「お主ら年寄りの扱いがなっとらんじゃないかのぅ? 連続での仕事で結構疲れとるんだが、そろそろ退職させてほしいぞ。…『銀』はそんなことで威張るんじゃない」

「ほいよ」

「…ご冗談を。第一我々には、そんなことは関係ないでしょう?」

「まぁそうなんじゃが…。というより『闘神』がいるではないか! お主が適任じゃろう!」

「………」


 先ほど言いかけたことを『クロス』は思い出し、ある人物の名前を呼ぶ。

 しかし…


「『闘神』…?」

「……って、コイツ寝てるわよ…」

「こ奴…! 起きんか! 出番じゃぞ!」


『クロス』の声には見向きもせず、『闘神』と呼ばれる男は椅子で眠りこけていた。

 だが、流石に周りの声や音に気付いたのか目を覚まし、動きを再開させた。


「ぬ? …むぅ。ふわぁっ~! …悪いな、寝不足でちと寝てたみたいだ。で? 会議終わったん?」


 眠りから覚め、欠伸をしながらそう言い放つ男は随分と気だるげだ。

 眠りから覚めたばかりだから、無理もない。


「絶賛会議中じゃ! 強敵が現れた…お前が相手をして参れ」

「……ダルイ、メンドイ、クソネムイ、よろ」

「このポンコツめ…」


 嫌だという3つの言葉を言い放ち、後は任せたと言わんばかりにまた眠りにつく。

 随分とマイペースな性格をしているようである。


 そんな『闘神』を見た『白面』は…


「こうなるの見越して貴方にお願いしたんですよ私。まぁすぐにやれとはいいません。そのうち準備が出来たらよろしくお願いしますよ」


 と言った。

 先のことを考えて、『クロス』にお願いしていたようだ。


「クッ…なら他の仕事は任せたぞ。ったく…」

「はいはい。全然OKですよ」


『白面』は予想通りと言った感じに笑っており、対して『クロス』は苦虫を潰したかのような顔になっていた。

 そこに…


「ねー『クロス』。僕が代わりに彼の様子見てくるからさ、僕には仕事押し付けないのは駄目?」

「…別にいいぞ」

「ホント!? わーいやった~♪」


『虚』はやはり司たちを見に行ってみたいらしい。

『クロス』が許可したのを聞いて、両手を上げて喜びを露わにしている。


「あ、行くなら追加で情報です」

「ん、なぁに?」

「他にもエルフの青年が1人と、人間の女性が一緒みたいです。こっちは特に危険ではないので頭の片隅に置いておくだけで結構です。ただ、気づかれないようにお願いしますよ?」

「ふ~ん、りょ~かい。さってさて準備~♪ 準備しよ~♪」


 話を聞き終わった『虚』は、軽くスキップをしながら部屋を出ていく。

 それを見た他の者は、やれやれといった顔で見守っていた。


「…あいつで大丈夫かしら? 暴走しなきゃいいけど…」

「あ奴も今が重要な時期ということくらいはわかっているだろう。後は任せておけ。それよりも、各地の準備は整ったな?」

「うむ」

「ええ」

「zzz」

「もちろん」

「…問題なし」


 皆が返事をする中、ここでようやく口をずっと閉ざしていた黒装束の人物が、声を発する。


「ようやく喋ったか。『影』。本当にお前は必要なこと以外は喋らんな」

「………」

「はぁ…まぁいい。仕事はきっちりやってるからな。『闘神』も…」


 既にまた寝ている『闘神』をチラリと見てため息。


「決行日は半年後。あの方が待ってらっしゃる…。それまでは魂の回収に専念しろ。まだ…まだまだ足りぬからな。各地に散らばっている監視と連携を取り、ターゲットをそれぞれ任せたぞ。それと魔法陣にミスがないかくれぐれも気をつけよ!」


『絶』がそう言い放つと、皆が席を立ち動き始める。

 寝ていた『闘神』も皆が席を立った音に気付いて立ち上がり、ノタノタと部屋を出て行った。




 それぞれの大陸で、今、全てが動き出そうとしていた。

今年の投稿はこれで終わりです。

皆さま良いお年を! 来年もよろしくお願いいたします。

<m(__)m>

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