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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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87話 魔物化と魔人化

「それで、何か分かったことはあったのですか?」


 取りあえず現状奴がどうなっているのかが知りたかったので、話を進める。


「うむ、それなんじゃがの…。あ奴の体と魔力を検査したところ、魔力におかしな点が見つかったぞ」

「それは一体?」

「どうやら本人とは全く別の魔力が体内に残留していてのぅ。これは普通の者ならばあり得んことじゃ。恐らく外部から何らかの形で影響を受けていたと思われるぞ」


 外部…つまり誰かが魔力を混入させたってことか? 何の理由で?

 というより、そんなことができるのか…。


「そしてその残留していた魔力というのが奴の頭部に集中しておった。しかもこれが随分とこびりついておってのぅ…最近混じり込んだわけではないじゃろうな。随分前から混じってたんじゃろう」

「頭部にですか…」

「頭部に集中しているということは、脳に干渉…。つまり洗脳や催眠に近いものかもしれん…。あ奴…ここ最近で何かおかしなことせんかったか? …といってもここにいる時点で既に問題じゃが」

「あ…」


 俺の頭に、今まで聞いたヴィンセントの情報が次々と並べられる。


 それっぽい内容は何度か聞いたな…。

 思い当たりそうな節はあるにはある。


「…二年前までは、優等生と呼ばれるほどに真面目な生徒でした。ですが…最近では…」


 と、学院長。


「そうか…、ならきっとこれは関係してるじゃろうな。洗脳は一度掛かってしまえば個人の力で抗うことは難しいしのぅ」

「あと、昨日アルファリア様とシェリルさんの話では、独り言が増えたって言っていましたよね。それも何か関係あるのでしょうか?」

「う~む。もしそうであればじゃが、これまでの話が全て事実だと仮定すると独り言と言うのは恐らく、あ奴を洗脳した何者かと話していたのではないかの?」


 ヴィンセントを指さし、ヨルムさんが推測を話す。


「ただ、誰もいなかったらしいですよ?」

「いなくとも話せる手段は色々あるじゃろ。…まぁ詳しいことは今考えても分からんのぅ。あ奴が起きてからじっくり話を聞くしかあるまい」

「…そうですね。アルファリアは…いつ目を覚ますのでしょうか?」

「さぁの。…儂は研究者であって医師ではないからのぅ。そこらへんのことまでは分からんぞ」

「このままここに置いておくのは厳しそうですね。近日中に信頼のおける医師を手配いたしましょう」

「うむ。それがいいじゃろうな」


 取りあえずヴィンセントが目覚めるまでは真実は分かりそうにもないな。

 早く目を覚まして欲しいもんだ。




「あの、ヨルムさん。さっき残留している魔力が体に残っていると言いましたよね? それってマズイのでは…」


 ちょいと気になっていたので俺がヨルムさんに質問すると…


「もちろんじゃ。下手をすれば本人の魔力と拒絶反応を起こして死ぬじゃろうな。だから取り除いておいたぞい、これが取り除いたやつじゃ」


 そう言って、拳ほどの小さなカプセルに入った紫色のモヤ? を見せてくる。

 あのモヤがどうやら魔力らしい。紫ってことは…闇属性か?


 てかこの人何者なんだろう? 魔力を取り除くって普通の人はできないと思うんだが…。

 そんな芸当ができるなんて、ただの研究者じゃない気がする。

 まぁ学院長が呼ぶ人が普通の人なわけないとは思うんだけど…。


「紫色ってことは…闇属性?」


 と、口を閉ざしていたナナが口を開く。


 今回は随分とおとなしかったな、コイツ。


「なんじゃ、お主の従魔は喋れるのか?」

「あ、ハイ」

「ねーねー、どうなの? 何か闇属性と似てるけど、ちょっと違う気がする気がする~」


 気がするの二段連続活用ですか。始めて聞いたわ。


「随分流暢に喋るんじゃな…それに加えて賢そうじゃのぅ」

「まぁ、それはほっといてください」


 いつもの反応は今はスルーだ。めんどいし。


「ふむ…白いのが言う通りでの、これは闇属性とは別物の魔力じゃな」

「白いのじゃないよ! ナナって名前があるもん!」


 白いのと言われたことに対して不満に思ったのか、ナナが突っかかる。


「スマンな…今名前を聞いたもんでのぅ。…で、ナナが言う通り、これは闇属性の色をしとるがちと違うようじゃ」


 と、ヨルムさんはナナから不満げな顔を向けられながらも平然と続ける。


 …てかどういうことだ? 紫色に似た属性なんて他にはないぞ?


「では一体…?」

「儂は実際に見たわけではないんじゃが、研究者仲間に闇属性に似た魔力について報告を受けたことがあっての…。今回のこれはその報告内容と酷使しておる。…恐らく、『魔眼』による魔力ではないかと儂は思っとる」

「『魔眼』…ですか」


『魔眼』か…。ギルドマスターも持ってるな。

 ギルドマスターの『魔眼』の能力は聞いたし、別のやつかな。


「『魔眼』の魔力は7つの属性とは少し違う魔力をしていての、似てはいるが別物なんじゃ。『精霊の贈り物』と研究者の中では言うほどに貴重じゃが、今はどうでもいいか。…まぁ今回の場合は『魔眼』が関係していると思っていいじゃろう」


 へぇ…似てはいるが少し違うと。

 知らんかったな。


「『魔眼』…。もしかして…『操眼』でしょうか?」

「間違いないじゃろう。洗脳できるものといえば、その『魔眼』しか存在しないからのぅ」


 そんな『魔眼』があんのかよ…。恐ろしいなオイ。

 ギルドマスターのが随分と優しく見える。


「で、次じゃな。体の方なんじゃが、魔物と同じ魔力を放ったと言っていたな?」

「ええ。私と彼でそれを確認しています」


 学院長が昨日の体験を思い出しながら答える。


 確かにあれは魔物と同質だったはずだ。あんなに嫌な魔力は忘れるはずもないし、間違いないだろう。


「今日はずっとあ奴の魔力波を調べていたんじゃが、魔物らしき魔力は一切感じられなかったんじゃよ。至って普通の人間の波長じゃったな…」


 ヨルムさんがスラスラと答えるが、その言葉に俺たちは目を丸くした。予想していた内容とは違ったものだったからだ。


 え、なんともねぇの? あんなに魔力放ってたんだぞ?


「あまり言いたくはないのですが、魔物化したのであれば普通は元に戻ることはありません。魔物に限っての話ではありますが…」

「確かにの、それは儂も知っておる。だが事実として奴の魔力は正常じゃし疑いの余地はない水準のものじゃ。…まぁ人間の魔物化など初めての事例じゃろうし、不明な点は多いじゃろうがな」


 そう、モンスターが魔物化した場合、その魔物化したモンスターが元に戻ることはない。過去に何度も発生している魔物だが、一度も元に戻ったなどという報告はなかったそうだ。昨日図書館で読んだ本にも、確かにそう書いてあった。


「だが現実にあ奴は戻っておる。今までに例がないだけで、戻ることが可能だったのかもしれぬ。…魔物化、まぁ人間に起こったものであるから『魔人化』と言ってもいいかもしれんの」

「『魔人化』…ですか」


 謎は…深まるばかりだ。


 俺が次の話をしようとすると…


「!? そこにいるの誰!?」




 ナナが突然、大きな声で叫んだのだった。

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