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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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80話 竜の武器達

「ベルクさん、ちわーッス」

「お? 来やがったな英雄…待ちわびてたぜ」


 俺が武器屋へと行くと、ベルクさんがカウンターに立っており、腕を組みながら俺に喋りかけてくる。


 一応昨日の夜に、武器を早く取りに来いやと言われていたんだが…すっかり忘れてた。

 ナナが言わなかったら確実にそのまま王都に行ってただろうな…。



「すいません。すっかり忘れてました…」

「お前感覚おかしいんじゃねえのか? 希少な素材を使って武器のオーダーしてるはずだろ? 普通忘れるもんでもないと思うんだが…」

「…申し訳ないッス」


 ベルクさんが呆れながら俺を見る。


 おおう…何も言えねぇわ。ベルクさんの言うことはごもっともです。

 まぁぶっちゃけドラゴンの素材とか興味はないんだけどな…。ただ、一番頑丈な素材がドラゴンの素材だっただけだし、素材の価値なんぞどうでもいい。

 普通の感性を持っている人からしたら確かにおかしいか。


 どうやらこの1ヵ月でオラはおかしくなっちまったようだ。許してけろ。


「まぁお前に常識なんてものは元々ないから別にいいんだがな」


 俺が変なキャラを妄想しているところに、ベルクさんの言葉が耳に入る。


 む、失礼な…。常識くらいは俺にだってありますよ。


 人と会ったら…挨拶するでしょ? 

 迷惑掛けたら…お詫びをするでしょ?

 シュトルムに関しては…邪険に扱うでしょ?


 ほら、俺常識はしっかりできてますよ! 100点満点やで!




 …シュトルムに関してがおかしいって? 

 いやいや! アイツはあれが嬉しいらしいから別にいいのです。世の中には、ああいう痛みによって快感を得る人が実際にいるのです。

 シュトルムはただ…そうだっただけ(希望的観測)。

 だから問題ない。




「…それよりもほら、ご注文の品だ。ちょいと確認してみてくれ」


 ベルクさんがカウンターの下でゴソゴソと何かを漁ったかと思うと、布に包まれた大きな物体をカウンターに置いた。

 随分と重そうである。


 頑丈であれば武器なんてなんでも良かったので特に指定をしなかったが、大きさからして大剣かな?

 俺の身長よりも少し小さいくらいの大きさだし…。


「早く感想が聞きたかったんだよ。作ったはいいが…お前店に全然来ねぇし、生殺しにされてる気分だったぜ」


 それはそれは…ごめんちゃい。

 それよりも、早く中見せてくれや。気になる。


「で、ひたすらに頑丈っていうことだったから…耐久性に優れる大剣にしてみたぜ! どうだ? 結構力作のつもりなんだが…」

「…シンプルな感じでいいね~」


 ベルクさんが布を取ると、中からはとてもドラゴンの素材から作ったものとは思えないほどにシンプルな形状のものが目に入った。

 生き物の素材を使っているようにはとても見えず、むしろ鉱石等を使って作ったようにしか見えない。

 狩猟系の某ゲームでよく見るような感じだ。


 おおーーー!! この無骨な感じ…かっくいいじゃないですか!

 俺は武器には変な装飾なんていらないと思っているタイプなので、こういうのはすごく好みだ。

 …まぁ装飾で何か性能が上がるとかいうなら、別にそれはそれでいいけどさ。


「この形状に仕上げるのは苦労したぜ…。下手に加工しても逆に性能が落ちちまうしな。…まぁやってて楽しかったが」


 ベルクさんが笑いながら言う。


 きっと試行錯誤したんだろうなぁ…。


 HAHAHAHA…職人さんってマジでドM(褒め言葉)。俺からしたら理解できん領域にいるよ貴方は。

 ありがとうございます。


「刃の部分は、ドラゴンの体で最も硬いと言われている爪を使ってみた。…ちなみに両刃な」

「ふむふむ」

「握りは、滑り止め効果のあるものの中で最高性能のものを使用した」

「ほうほう」

「…鍔に関しては刀身と握りの部分のどちらにも対応できる素材…まぁ甲殻だな。それと特別な加工法を利用してみたんだ。それから…」


 うん、色々言ってるけどよく分かんないね。

 とりあえず…


「…触ってみても?」

「…お前の武器だぜ? 当然だろ」


 恐る恐る大剣を手に取る。

 …普通だったら重いんだろうが、問題なく片手で持つことができた。

 ステータスがアホみたいなことになってるからそれも当然か…。

 どうやら攻撃力の部分が筋力に影響を与えていると思われる。重さからして、地球にいた時であれば両手でも非常に辛かったであろう重さだし。


「片手で持てんのかよ…」

「ええ…まぁ…」

「まぁお前のステータスだしな。これくらいは余裕ってもんか…。で、どうよ?」


 ベルクさんに使い心地について聞かれる。


「すごくいいですよ。モンスター相手に試し斬りしてみないことには何とも言えませんけど、なんかしっくりきますね」


 軽く大剣を振ってみる。

 もちろん店内に影響が及ばない範囲で…。


 握る感覚は特に問題はない。重さも気にならないし、長さも丁度良い。

 最高じゃないか。


「そうか? ならいいんだが…気になる部分があったら遠慮しないで言ってくれよ? すぐにとは言わんが…」

「…今度試し斬りしてみたら、改めて感想を言いますよ」

「…そうか、なら待ってるぜ」


 ベルクさんはこう言ってるけど、多分問題点ないんじゃないかなぁ。

 確実にとは言い切れないけど、そんな気がするんだよな。


「あとそれと、他にも余った素材を使って別の武器も作ったりしたんだが…」


 ベルクさんがまたゴソゴソとカウンターの下を漁る。


 え? マジで? そいつは有り難い。


「お前のステータスをこの前見た時に、一緒にスキルも見たんでな。それに合わせて別のも作ってみたぜ」


 あの時ちゃんと見てたのか…。

 攻撃力とか防御力とかの、数字にしか目がいかないと思ってたんだけどな。意外にも見てらっしゃる。


「加工の仕方は違うが…基本的に使ってる素材は一緒だ。まずは普通に剣。んで槍だろ…。それから斧となんとなく刀。コイツらも見てみてくれ」


 カウンターにさらに並べられた4つの武器を見て、俺はただ驚いていた。

 こちらも大剣同様に無骨な感じに仕上げられている。


 よく作ったなこんなに…。

 社畜根性ならぬ、職人根性見せすぎでしょうに…。


「…一応言っておくが、見た目はショボくても性能はとんでもねぇからな? まず間違いなく…俺が今まで作ってきた武器の中でも最高の性能をコイツらは誇ってる」

「…まぁ、ドラゴンの素材で作ってますしね」

「試し斬りに結構太い木を斬ってみたんだがよ。…少しの力で木がぶった斬れたぞ。どれもな…」

「うわぁ…すんごい…」


 恐ろしいなぁオイ。

 太い木でそれって…スライムとかだったらまるで豆腐みたいに斬れちゃうんでしょうね。いや…もしかしたら空気と変わらんのかもしれんけど。

 それでいて頑丈か…。いいね。


 まぁ、コイツらも使わせてもらいましょうか。

 運用は慎重に考えなければいけんけど。


「気を付けて扱いますね…。ベルクさん、良い武器を作ってくれてありがとうございました!」

「いやなに…俺だって滅多にない素材を使わせてもらったんだ、むしろこっちがお礼を言いたいくらいだぜ」

「それで…これは普段から身に着けておこうと思うんですけど、何か背中に留めるためのものってあったりしますかね?」

「あるぞ? 長さは調整可能だ」


 王都に行った時にすぐ絡まれて舐められたし、ギルドマスターの忠告が身に染みている。


 武器を、そろそろ常に持っておいた方がいいな…。


「やっとですか」

「おう…。お前ら知らんだろうけど、王都に行った初日に絡まれてんだよなぁ俺」

「あ、やっぱりそうだったんだ」

「うん。だから…目に見える形にしてみようと思う」


 見た目的には随分と似合わないだろうけど、割り切るしかあるまい。


「ベルクさん、用意してもらえます? お金は払いますんで…」


 と、ベルクさんにお願いをする。


「いや、んなもんさほど作るのに金掛かるわけでもねぇし…サービスだ。タダでやるよ」

「いいんですか?」

「おう。貰ってけ」


 あらまぁ…何から何まで助かるわ。

 感謝感激雨あられです。


「代わりに今後ともご贔屓に頼むぜ?」

「そりゃもちろん…」




 それから数分後…




「少し斜め寄りだが…良いんじゃないか?」


 ベルクさんに留め具を用意してもらい、背中に大剣を背負ってみる。


 体を色々動かしてみるが特に異常はなく、普段とそれほど変わらずに動けそうだ。

 ただ、抜き身なので注意しないといけないが…。

 俺たちは掠るぐらいなら問題なさそうだが、他の人は危ないだろうし。


「どうかな? 変じゃないか?」

「…まぁ、体格に見合わないもの背負ってますけど、すごい変…ってほどでもないですよ?」

「いいんじゃないかな?」

「そうか…じゃ、これでいいか」


 とりあえず決定。


 なんで大剣を選んだかなんだが…。まず、斧と槍はそこまで好きじゃない。この時点でもう選択からは除外される。

 俺が一番好きなのはシンプルに剣だ。刀も好きだけど…。

 ただ、剣と刀を腰に差してみたんだが、…何か歩きづらかったのでこうして大剣をチョイスする結果になってしまったが…。大剣もそこそこ好きなので別にいいんだけどね。

 剣は背負うほどの長さってわけでもないし、一応これが現状でのベストチョイスかと思われる。


 それ以外の武器を『アイテムボックス』に入れる。


「行くのか? なら、今度感想頼むな」

「はい。じゃあまた今度来ますね」


 そう言って店から出ようとするが…


「ぐへっ…!」


 扉に大剣が引っかかり、なんとも情けない声が漏れた。


「…締まらないですねご主人…」

「カッコ悪い~」


 俺も今のことを恥ずかしいとは思っていたが、ナナとポポから更に追撃がくる。


「やっぱりどこか抜けてんなお前さん…」




 うぅ…恥ずかしい…!

 馴れるのには結構時間が要りそうだ。

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