55話 夕食時の語らい
「あ~流石に疲れたな」
あの後クラス全員の相手をした俺だが、いやぁ疲れましたねぇ。
まさか4限までぶっ通しで戦闘演習だとは思わなかった。この学院のカリキュラム辛すぎるんじゃないの?
ここまで疲れるのは久々ですわ。魔力使いすぎたねこりゃ。
体中クタクタ…わしゃもうダメじゃ…。
…さてさて。
現在俺はというと寮へと帰ってる最中だ。
授業が終わった後、皆は武器の片づけと服を着替えるために更衣室の方へと行ってしまったので、俺はその場で皆と別れて寮へと戻っている。
今日の業務が終わったことを一応学院長にも報告したし、今日やることはもうなくなったから後は寝るだけ。
ベッドが俺を待っている。
そして難なく寮へと到着。
演習場からここまでは意外と近いしね。
シャワー浴びて寝よ。
◆◆◆
―――コンコン
「…んぅ?」
「カミシロ先生いますか~?」
自室で寝ていた俺だが、ドアをノックする音に目を覚ます。
…一体誰だ?
「ん? いないのか?」
「いや、明かりついてるからいるだろ。寝てんじゃねーか?」
あー、この声は…エリック君と…アレク君…か…?
どったのー? もしかして夜這いですかいな~。お盛んですねー。
でも私男なのでUターンお願いします。
「どうする? 起こすか?」
「でも飯逃すと明日の朝まで何もないじゃねーか。そりゃキツイだろ」
「でもなぁ…」
あ、そうなの。そりゃ勘違いすみませぬ。
じゃあ今起きますよー。
「起きてるよ~。先行っててー、すぐ行くから」
「なんだ、起きてんじゃねぇか」
「なら待ってますけど…」
「いや~それは悪いから先に行って席取っておいてよ~」
ごめんマジで先行っててくんない? 俺のムスコがおっきしちゃってるからさぁ、まだ立ち上がれまへん。
もう少しで収まると思うので…。
今ズボンのある部分がテントを張っている。
生理現象とはいえ、本当に面倒だなぁ。
「じゃあ先行ってるぜ」
「早く来てくださいよ」
そう言ってから2人はドアから離れ、どうやら食堂へと行ったようだ。足音がどんどん遠ざかっていく。
あの2人はどうやら寮生だったようだ。朝は見なかったから分からなかったな…。
「…収まったら行くか」
自分のズボンを見つめ、誰もいない自室で1人呟く。
ふむ。
寝る子は育つとはまさにこのことですな。先人のことわざには目を見張るものがある。
…。
何考えてんだ俺…。
◆◆◆
「あ、来たみたいですよ」
部屋を出て食堂に入ると、メイスン君達が俺を待っていてくれた。
「ゴメンゴメン…遅れました。俺の分ありがとね」
「じゃあさっさと食おうぜ、飯が冷めちまう」
テーブルには4人分の夕食が置いてあり、俺の分もどうやら用意しておいてくれた模様。
そして俺も椅子に座り、各々で夕食を食べ始める。
一応学食内の生徒を確認したが、『ディープゲイザー』のメンバーは見当たらなく、静かなものだった。
よっしゃ! ラッキー!
加えて生徒も朝よりかは俺に対する視線がそれほど冷ややかなものではなくなっている。これは昼の出来事が噂として広まっているとみていいだろうな…。
この調子この調子。
「いやー、今日は勉強になりました。学食の時に先生の実力は知ってましたけど、相対してみるとそれ以上に感じましたよ」
と、メイスン君。
「それな。学食の時を思い出したよ」
「…学食の件は俺直接見てないんだけどよ、そんなに凄かったのか?」
「ああ。アレクと戦ってる時も凄かったけど、学食の時は『障壁』を4つ同時に発動してたりしたからな…しかも一瞬で。半端なかったな」
ん? 俺学食の時は『障壁』は3つしか発動してなかったような…?
…もしかして生身でアンリさんを庇ったのには気づいてない感じか?
俺が疑問を浮かべている間も話は続く。
「4つって…。オイ先生、アンタどんくらい同時に発動できんだ? 俺たち全員の相手ができるくらいだ…相当な魔力量してんだろ?」
アレク君や、相変わらずの口の悪さですねぇ。まぁ全然構いませんけど…。
でも私、君が本当はいい子だって信じてますからね?
えっと…俺が確認した限りだと、あれは2週間くらい前だったけか。
万全の状態なら、確か中級は15個くらいできた気がする…。超しんどいけど…。
上級は今なら4個が限界ってところかなぁ…。超しんどいけど…。
初級は…雨みたいな量が発動できますね。一発一発の威力は低いとはいえ、やったら地獄絵図だと思う。
…超しんどいんですけどね。
「えっとねぇ…無理すればだけど、『障壁』なら15個くらいはできる…かな…」
一応言い方を控えめにしてみたんだが、気づいたら言っていることが控えめな内容じゃないから意味ないな…。俺のバカ。
「「「………」」」
3人が時間を止めたかのように固まり、俺たちの周りの空間だけが静かになる。
そして…
「…次元が…違う」
「さ…流石…ですね…」
「一瞬でも勝とうと思ったが…夢のまた夢だったのか…」
驚いてはいるんだろうけど、どうやらショックの方が大きいのか落胆している。
「…なんか…ゴメン」
そんな状態の3人を見て俺はこんなことしか言えなかった。
「…もしかしてですけど、先生って学院長よりも強いんじゃないですか?」
落胆していた3人だが、メイスン君がなんとか立ち直り聞いてくる。
他の2人も同様に立ち直ったようだ。
「? 学院長って強いの?」
「知らないんですか? とてつもなく魔法に卓越した人で有名ですよ?」
「うん、知らない。初めて聞いた」
あの人そんなこと一言も言わなかったぞ…。
まぁ自分から言う人はそうそういないか。
「少なくとも生徒で勝てる人はまずいないでしょうね。…学院長になる前は超凄腕の冒険者で、『幻想使い(ファンタジスタ)』」って呼ばれてましたからね」
二つ名とかあるのか…。それだけ凄い人だったってことなんだろうな。
…ランクどんなもんだったんだろ?
「へぇ~、そうなんだ。ランクはどうだったの?」
「Aランクですよ。ただ、Sランクに限りなく近いとは言われてましけど…」
「…凄いな…学院長…」
学院長が化物一歩手前なことに俺は驚く。
Sランクに近いとか…何が圧倒的な力を持った君…だよ。アンタも相当ヤベェじゃねーか。
人のこと言えないと思うぞ…。
内心でそんなことを思う。
「…なんでそんな人が教師なんてやってるんだ?」
「さぁ? 流石にそこまでは分からないですね…」
「ふ~ん、そっか…」
分からない…か。ならしょうがないね。
ちょっと気になることだけど…。




