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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第一章 グランドルの新米冒険者
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48話 救いの4名

「えっと~……あ! あそこ座れそうだよ!」

「あそこにすっか」

「おう」

「そうね」


 はい、そんなわけで学食に来た俺たち。

 どうやら席は空いていたようで座れそうだ。


 いやー、それにしても学食が大きくてビックリだわ。

 俺が通ってた高校と大学はそれほど大きいものじゃなかったから、すごい新鮮。

 300人は軽く座れそうだな…。


「じゃあ、俺なんか頼んでくるね。先食べてていいから」

「急いでるわけでもないし待ってますよ?」

「それは悪いよ…。じゃあなるべく早く戻ってくるから」

「本当にいいのに~」


 気を使ってくれているんだろうけど、午後の準備とかあるだろうしなるべく急いだ方がいいよな。

 さっさとカウンター行こ。


 俺はカウンターへと向かう。






「さて…何にすっかな? オススメとかあるといいんだけど…」


 この世界の食べ物にも大分慣れてきたけど、まだどんな食べ物がおいしいとかを知ってるのは少しだけ…。

 色々と新しいものを食べて開拓していきたいんだが…どうしよ?


 メニューを確認してみる。


 う~ん、案外食ったことあるものばかりだな…。

 ここでしか食えないもんとかないのか?


「すいません。ここでしか食べれないものとかってあります?」


 ここで働いているであろうおばちゃんに聞いてみる。


「うん? あんた見ない顔だね? 生徒じゃなさそうだけど…」

「臨時講師で招かれまして…。一応冒険者です。…それで何かありませんかね?」

「へ~、若いのに大変だねぇ。で、ここでしか食べれないもの? …そうだねぇ~、『シェフの気まぐれ覚醒丼』とかそうじゃないかしらねぇ? あんまり食べる人聞かないけど…」


 うん? 何だそれ…?

『覚醒丼』…? それヤバいやつじゃないよな…?

 超気になる。


「…それってどんなやつです?」

「なんか普通の丼ぶりなんだけど、シェフが気まぐれで何か頭がスカッとする食材をトッピングするらしいのよねぇ。私も聞いただけだから詳しくは分からないけど…」


 オイオイ…さらっととんでも発言しないでよおばちゃん。

 そのトッピング怖すぎるだろ…そんなの販売していいのか? 


「なんか噂だと、悟りを開くだとかなんとか…。『げいざー? に栄光あれ』って食べた人は叫ぶらしいのよねぇ」


 おおぉぉぉいぃぃぃちょっと待てぇぇぇぇっ!!!

 聞き捨てならんぞっ!! それはNGワードじゃい!!


 シェフ!!! あんたが元凶かよ!!!  

 アイツらをそっちの道に引きずりこんだのお前だろ!!! 何てもの作ってんじゃい!!!

 こんなもん食えるか!!


 あとおばちゃん。多分それ『ゲイザー』って言ってると思うぞ!?

 意味知らないのか?


「そ…そうですか…。じゃあ俺はこっちの『日替わり定食』でいいかなぁ…ハハ」

「そうかい? 『日替わり定食』一つ入ったよ~!!!」


 おばちゃんが言うと、奥で返事をする声が聞こえてくる。

 さらに奥にある物陰を見てみると、立派なコック帽を被った男がこちらを見ている。


 実に残念そうな顔…。

 ぜってぇあいつがシェフだ。


 てめぇ俺のこと狙ってたろ! 誰が食うか!


 苛立ちを感じつつ、『日替わり定食』を待つ。

 そして…


「ほいお待ち。ゆっくり食べてお行き」

「…ありがとうございます」


 おばちゃんから『日替わり定食』を受け取り、お礼を言う。

 そして俺はアンリさん達のもとへと戻る。

 少し後ろから視線を感じるが、そんなのは無視。


 この学院…色んな意味でヤバすぎるだろ。

 皆大変だな…。




 ◆◆◆




「ゴメン、選ぶのに時間掛かちゃって…」

「大丈夫だよ~。じゃー食べよ!」

「そうね」


 俺が席に戻ると皆が昼食を食べ始める。


 どうやら『いただきます』とかはない模様。

 異世界流のものとかあると思ったんだが…残念。

 そして…


「そういえばまだこの2人の自己紹介ってしてなかったね…。しよっか?」


 うん。してないね。

 俺ずっと機会を伺ってたんだけど、そっちから話を振ってくれるのは好都合だ。

 腹割って話そうぜ! 2人とも。


「じゃあ俺から…。俺はエリック・トーマスって言います。近接戦闘が個人的には得意です。よろしくお願いします」


 エリック君ね…。

 しっかりと覚えましたよ。カッコイイ名前じゃないですか。

 茶髪の短髪似合ってるぞ~。


「じゃあ次は僕ですね。僕はメイスン・カシスと言います。得意な分野は一応魔法による後方支援です。よろしくお願いしますね。カミシロ先生」


 ふむふむ。メイスン君と…。

 中々知的な印象を受ける名前じゃないか。覚えましたよ、こちらも。

 普通くらいの長さの灰色の髪に眼鏡…と。


「私は先ほど言いましたからいいですね…。アンリ、貴女も挨拶した方がいいんじゃないですか?」

「そういえばアタシしてないや…。うん! アタシはアンリ・ハーベンス! よろしくね! せんせー!」


 ハーベンスが苗字と…。了解、アンリさん。




 さて…、一通り自己紹介が終わったわけだが、ちょいと聞きたいことがあるんだよね。


「皆自己紹介ありがとうね。…ちょっと聞きたいんだけど、君たちは俺に対して何とも思っていないの?」


 思い切って聞いてみる。


 この子達は俺に対して友好的な気がするんだが、それには理由があるんだろうか?

 すると…


「えっと…。それって去年の話を加味しての話ですか?」


 と、メイスン君。


「うん。去年の話…聞いたよ。それでこの学院の生徒はあんまり冒険者に対して良い印象を持っていないと聞いていたんだけど…」

「確かにこの学院はその話を聞いて冒険者に対して偏見を持っている人もいるにはいますが、全員がそうではないですよ。少なくとも僕はそうは思っていません」

「俺もです。俺は親父が冒険者をやってるから、冒険者の評価はこの学院だけではしていないです。総合的に判断して、冒険者がどんなもんかを理解してはいるし、この学院の冒険者に対する偏見を鵜呑みにしたりはしてません」


 あらま、この4人はどうやら他の生徒に比べて冒険者に変な偏見を持ったりはしていないらしい。

 本当にありがとね。皆…。


「ここにいる人は全員そんな考えは持っていないよー」

「確かに力は冒険者にとって大切だけど…力だけが冒険者の全てじゃないもの」


 それを聞いただけで安心したよ。

 全員がそんな考えを持っていないなら、まだ救い道がある。


「そう思ってくれてるなら助かるよ。どちらかというと冒険者は問題の解決能力を問われることの方が重要だからね」

「だてに将来冒険者を目指してないですから!」

「そうね」

「おうよ」

「ですね」

「あ、皆冒険者目指してるんだ」


 どうやら皆将来冒険者を目指しているらしく、色んな方面から知識をそれぞれ得ているようだ。その結果、この学院の抱えている偏見は特に気にしているわけではないらしい。


 こういう子が多かったら良いんだけどなぁ…。

 現実は厳しいや…。


 ま、皆がそんな考えしてりゃ、世の中はlove&peaceで溢れてますな。

 しゃーない。




 現実はそう上手くはいかないか…。




 現実の厳しさを実感した俺だった。

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