41話 受け入れがたい現実…in 食堂
寮に戻ってみると、少し騒がしい様子だった。
昨日は一度も見なかったが、この寮に住んでいるであろう生徒たちが起き出しているようだ。少し活気がある。
やっぱりさっきのアレは朝の放送だったらしい。
生徒の服装はそれぞれ様々だが、皆ラフな格好をしている。
本当に寝起きなんだろうな。何人か眠そうな目をしてるし。
ちなみに男子寮なので全員男です。
これが女の子だったら目の保養になるんですがねぇ…。文句言ってもしょうがないけど。
寮の入口でそんな感想を抱いていた俺だが、そんな俺が気になったのか一人の男子生徒がこちらに歩み寄ってくる。
そして俺のすぐそばまで近づいた男子生徒は、俺に話しかけてきた。
「お前見ない顔だな? もしかしてお前が噂の転校生か?」
「えっと、ちg「そうかそうか! この時期に珍しいな!」
違いますと言いたかったんだが…遮られてしまった。
人の話聞かない奴が多いと思う今日この頃です。ハイ。
なんか全然不審者に見られない辺り、俺もまだまだ若いってことなんでしょうかね? 20過ぎたらオジサンって大学じゃ言ってましたけども。
というか、転校生いるの?
「あn「その恰好を見るに今来たんだろ?」
…。
「いy「こんな朝早くから大変だったな!」
人の話聞けよ! お前もか!
「ちy「寮長は今いないからとりあえず朝飯食おうぜ!」
またも言葉を遮り、男子生徒は俺の手を引っ張って歩き出す。
流れからして食堂に行くんだろうが……話聞きなさいっての!
「はn「ここの飯は上手いぞう! たくさん食えよ!」
…。
ダメだコイツ…話が通じない。
もういいよ…それで。飯、行きましょうか…。俺も食うつもりだったし。
コイツは俺の手を掴みズンズンと歩いていく。
引っ張られているのでおぼつかない足取りだが…。
少々強引だが、善意でやってるだろうし悪い奴ではなさそうだもんな。
ならしょうがない、このまま連れてってくんさい。あの世じゃなけりゃどこでもいいっス。
俺は手を引かれて食堂に行くのだった。
◆◆◆
「お? なんだ…またやってんのかよ」
食堂の扉を開けて中に入った所で、男子生徒が歩みを止め呆れた声で言う。
俺を掴む手も同時にほどけたようで、俺の掴まれていた右手がようやく解放された。
ん? どした?
「毎日楽しそうだなぁ…アイツら」
俺も男子生徒が見ている方を見てみると…
「ふはははははっ! 勝者には俺が寝間着で使用したこのパジャマをくれてやる! 戦え! 貴様らっ!」
「ひゃっふぅ~っ!!」
「そいつは貰ったぁぁぁっ!!!」
「ぐへへへ…夜が楽しみだぜ…!」
「「「わ~っ!!!」」」
………え?
パンツ一枚で寝間着を掲げている者が1人。そして戦闘態勢を取っている者が3人。さらにそれを見守る…もしくは応援しているギャラリーが数人。
その人たちが食堂の中心辺りで騒いでいる。
俺の目に入ってきた光景をざっくり言うとこんな感じ。
あれ~? ここは食堂じゃないのか? 本当にあの世にでも来ちまったのかな?
いや…でも飯食ってる人いるから食堂なのは間違ってないはずなんだけど…。
気のせいかと思い目を擦る。
だがそれでも景色はさきほどと同じままだ。変な集団が目に映っている。
Oh…なんてこったい。
お巡りさん、パトカー5台くらいおなしゃす。
生ける変態が目の前にいますよ。
「ん?」
俺がポカーンとしていると、寝間着を掲げた奴とちょうど目が合った。
そして数秒の間見つめ合う。その間にどちらも瞬きはしない。
俺たちがそうしてる間に他の連中も気づいたのか静かになったが、目を合わせていたため詳しくは分からない。
その結果俺は…。
「(パタン…)」
「「「「「………」」」」」
何事もなかったかのように食堂から出ました。
「す~~は~~………」
これは…アレだよ!
そう! これは何かの間違いだ…うん、そうにちがいない。じゃなきゃあんな状況になるわけがないし…。
閉めた扉の前で、俺はついさっきの出来事を思い出していた。
◇◇◇
司が食堂を出てすぐ…
「お前ら…アイツみたことあるか?」
「「「「「いや…」」」」
「…」
寝間着の男が周りの人間に聞く。
だが、司と会った生徒は食堂まで連れてきたあの男子生徒以外に誰もいないため、皆一様に首を横に振っている。
「ハンス、今の奴誰だ?」
と、誰も知らないことを確認すると、今度は司を連れてきた生徒に向かって言う。
「転校生だとさ」
「なに? 転校生だと…?」
ハンスの返答を聞いた寝間着男が呟く。実際は転校生ではなく臨時講師だが…。
司が低い身長、まだ幼い顔つきをしていることを考えるとそれも仕方ないことかもしれない。
そして一瞬の沈黙のあと…
「チャンスじゃねぇか(ボソッ)」
周囲の人間にしか聞こえないくらいの声で、ニヤリとした笑みを浮かべてそう言い…
「総員! 奴を捕まえろ!! 俺たちの仲間に引き入れるぞ!」
「「「「「イエッサァァァッ!!!」」」」」」
その言葉と同時に、周りの連中が軍隊の如く声を揃えてドアに向かって走り出す。
「危ねっ!!」
ちょうど扉の前にいたハンスは、扉に向かって走ってくる連中を辛うじて避ける。
その光景はまさに闘牛の突進を思わせるほどのものと言っても過言ではない。
「あーあ…可愛そうに」
ハンスは司のことを考え、同情したのだった。
◇◇◇
「「「「「待てやぁあああ新入りぃいいいい!」」」」」」
「いぃっ!?」
突如ドアが開き、先ほど対峙していた奴らの内1人が俺の腕を掴んでくる。
一体何ごと!?
「捕まえたぁあああああっ!」
その言葉と同時に食堂に向かって引っ張られる。
当然捕まれた腕を振り払おうとするが、次から次へと手が伸びて来て埒があかない。
「ちょっ!?」
「はい確保~」
静止の言葉は届かず、また食堂に俺は戻っていくのだった。
誰か…ヘルプミ~。




