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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第六章 来たるべき刻 ~避けられぬ運命~
347/531

345話 極限の武闘①

遅くなってすんまそん。

 





「――ジーク君、確認だけど良いんだね?」

「ああ」

「そうか……なら任せるよ。その間俺は少し準備を整えさせてもらう」

「っ!?」


 二人の短いやり取りがなされ、お互いに了承し合ったその瞬間。突然ヴァルダがこの場から姿を消し、いなくなってしまう。

 ヴァルダの戦力を見失うことは致命的だ。

 辺りを見回していると――。


「……フッ、笑えてくんぜ。一体どこのどいつに喧嘩を売ってやがんだってな……」

「ジーク……っ!」

「っとによぉ……馬鹿だよなぁ。滑稽すぎて笑うしかねぇよ……クク、ハハハ……!」


 不気味だった。ジークは笑わないわけじゃないが、このような不気味な笑みを浮かべるような奴ではなかったから……。


「ジーク、あのさ――っ!」

「『突き刺せ』」


 マズい!? 


 ジークに一つ確認したいことがあって口を開こうとしたが、途中で俺の直感が危機を告げたため咄嗟にその場からすぐに横っ飛びで離れる。

 そして目に映るのは無数の青い線だった。


「っぶね……!」

「これを躱すか……」


 俺がいた場所には頭上から強襲する無数の槍が地面に吸い込まれるように刺さっていた。地面に突き刺さる音よりも風を切る音の方が大きく、鋭すぎる切れ味を誇っているのは容易に想像がつく。あと少し遅ければ無事ではいられなかったかもしれない。


 切れ味が以前と比べて増しすぎだろ……! 今はヴァルダのこと考えてる場合じゃない。




「――お、オイオイ、嘘だろ……!」




 世の中に少なからずあるであろう美しいがおぞましい光景。そんな光景を俺は今見てしまった気分だった。




「逃げ場はねーぞ」


 まさしくその通りだとしか思えなかった。

 周囲一帯どころか、ジークは目に見える範囲を青い点がそこかしこに点在する世界へと変えたのだ。その点というのは全てが種別を問わない武器達であり、ジークが保有している武器達のようだった。




 お、多すぎる……。




 尻込みして弱音を吐くことを今は許して欲しかった。

 前回のジーク戦では既存の武器のみで中距離範囲を取り囲むだけだったはずが、今は広範囲を……しかも取り囲むでもなくその範囲を埋め尽くす程の規模で武器を展開しているのである。この時点でさえ前回とはかけ離れているが更に、その全ての武器にジークのオーラを纏わせているのだ。ジーク自身の使えるオーラが増えた分、本来なら回せなかった部分にも力の供給が回っているらしく、それ故の実現であるようである。


「フッ!」


 早速俺のすぐ近くに浮かぶ武器達が挨拶と言わんばかりに飛来してきたのでエスペランサ―で叩き折ろうと試みたものの、破壊したつもりが微動だにせず形を保ったまま地面を転がり再び宙へと浮かんで元の場所へと戻っていき、察してしまう。決して手を抜いて対応したわけではないから尚更だ。


 多分、武器を破壊することは今のエスペランサーでは無理であると。


「お前相手に普通の武器じゃ全部ぶっ壊されるだろうからな。これなら嫌でも全部意識しなきゃなんねーだろ?」

「やってくれる……!」


 その通りだよ馬鹿野郎。ただの武器なら全部壊せただろうからな……!


 エスペランサーであろうと破壊できない武具は存在する。『影』が持っていた苦無は良い例で、エスペランサ―はあらゆる点で世界一の最強の武器であるだけで、何もかもを覆せるというわけではないのだ。

 ジークの今のオーラも然り、ということだろう。


 しかし武器を『自動強襲(オートアサルト)』で自動で動かす特性に、まさか『刃器一体(ソウルアーム)』の力を完全に付随させやがったのか。遂に二つのスキルが完全に組み合わさったとは……面倒な組み合わせにも程がある。




「見せてみろ。俺の前に立ち続ける者として……!」




 よく分からない言葉の後。そこからはジークの息もつかせぬ猛攻の幕開けだった。




「『クロスリベリオン』!」


 ジークが手を交差させて叫ぶと、武器達が青い軌跡を描いて縦横無尽に駆け巡り始めた。軌跡は点と点を結んでいると誤認する速度であり、目が青い色のせいで変な錯覚を覚えそうになりそうだ。

 勿論これらが狙う標的は俺一人で、しつこく執拗に追い回してくるため俺も常に移動して回避に専念する。この動きは前回と同じである。――が、あの時よりも遥かに速くなっている。


 これらがジークの反射神経の恩恵を受けることがなかったのは幸いだ。触れれば怪我は免れない攻撃力を秘めてはいても、集中していれば避けることは難しくない。


 そう、武器達だけなら問題はないのだ。


「オラよ!」

「っ!? くっ……!」


 青い武器の合間を抜けながら高速で移動する先にジークの操るオーラが現れ、左右と前方を塞ぐようにして棘の壁が迫った。立ち止まれば後ろから迫る追手と四方八方に点在する武器達に八つ裂きにされ、突っ込めば破壊できない以上身体を強く打ちつけて結果袋叩きにされて死ぬだけだ。


 これだ。捌ききれない物量にジーク自身の攻撃も加わるから手に負えないんだ……!


 内心で突破口を探すことに苛立ちつつ、俺は悪手だと分かりつつも『転移』でジークの背後へと回り込んだ。

 上級魔法である『転移』の魔力消費も気にならないわけじゃないからできることなら使いたくはないが状況が状況である。止むを得ず使用し、恐らくは俺が『転移』することを予想していたジークの対応にすぐ終われると考えながら、エスペランサ―を思い切り振るった。


「また『転移』か!」

「くっ……!」


 予想通り、ジークは俺のエスペランサ―による背後からの一撃を読んでいたように片方の武器で受け止めてしまう。完全にエスペランサ―の武器としての性能はオーラを破壊するには至らず、ジークが逆手に持っている武器に傷一つ与えられない。

 眼前で燃え盛るようなオーラを纏うジークから熱は感じないが、言葉では言い表せられない激情を物語っているような気がしてそこに熱さを感じそうだった。


 刹那――ジークのオーラが風に煽られた火のように揺らめく。

 ジークのスタイルは基本二刀流だ。反対の手から武器の封じられた俺に向かって、刃が脇腹を切り裂こうと距離を縮めていた。


 マズい!? エスペランサ―だけじゃ足りない……。ならこっちも――!


「『鉄身硬』!」


 手数を増やすっきゃねぇ!


 俺は脇腹に迫る一撃に対し、手の空いた左手を手刀にして側面を弾いて叩き落とした。

 正直どこまで通用するか分からないままでのぶっつけ本番となってしまったが、当面は問題ない違和感であったことに一先ず安堵する。


「っ……そんな使い方もできんのか……!」

「スキルを応用すんのはお前だけじゃねぇってこった!」


 ジークが驚く様子に対してもっとしてやったりと言いたいところだが、正直そんなことを言う余裕はないためそのまま一度身を引いて態勢を整え、一息つく。


『転移』した段階で『鉄身硬』を使って身を守る考え自体はあったことが事なきを得た。どこの部位に使うかをたった今把握し、左手の手の部分のみを硬質化させてエスペランサーと左手の二刀流で対処する方針へと変えたことは、判断としては悪くはなかったようである。


 ジークの速さと手数に対し、こちらが武器一本だけでは対応が追い付かない。魔法によるアドバンテージもジークの反射の対抗策として使っているようなものだし、これで五分といったところだな。


「手の部分だけなら『鉄身硬』で動きがそこまで鈍ることもない。……そんなとこか」

「正解。お前の二刀流が羨ましいよ」


 自分の才能の無さが嘆かわしく、ジークが二刀流を使えることが本当に羨ましい。

 本当であればエスペランサ―を二刀分割にして二刀流なんてことも考えたのだ。でも悲しいことに俺は二刀流のセンスが絶望的になかったため、自由に動かせる自分の身体を武器代わりにすることでしか俺は手数を増やせない結論に至った。

【成長速度20倍】は常人よりも早く俺を成長させてはくれるものの、ほぼ才能がゼロのことに関しての成長は見込めないようである。ぶっちゃけ【体術】が突出して成長しているのはここら辺が理由だと思う。


 リーチと破壊力で勝るエスペランサーで攻撃を対処し、対処できなかった分は全て防御に勝る左手で対処する。面倒だが『転移』を連発して避けるよりかは遥かに魔力を温存できるし、まずは自分の身を守る手段を用意しておく方が賢明だ。少々スタミナを取るのか魔力を取るのか……結構な悩みどころだが。


 今の俺の怪我を回復する手段は手持ち回復薬を使用することくらいなのだ。それも微々たる程度の回復量でしかない。

 周りに誰もいない以上致命傷を受けたら一貫の終わりである。出来るだけ被弾は防ぎたい。




「緊張した表情の割に余裕そうだな?」

「馬鹿言え、お前相手に余裕なわけあるか」

(……) (余裕だろうが)


 最後に小さくジークが呟いた声は確かに聞こえた。

 そして、それがどこか儚げに感じられたと思った矢先、ジークの電光石火の如く素早い一撃が繰り出される。


「ぐっ、ぅ……!?」

「……」


 チッ、気ぃ取られて反応が遅れた……!

 そういや、最初もジークの演技に騙されてたんだった。まさかコイツ、戦いに表情や仕草すらも取り込んで相手を翻弄できるようになってるのか……!? だとしたらもうただの脳筋じゃなくなってるぞ……。


 一瞬の隙――。間に横やりを挟むこともなく、まさか単純にジーク単騎で俺に直進してくるとは思わず馬鹿正直に一撃を受け止めてしまった。

 スピードを加えたジークの膂力は片手であろうと両手を使わなければ支えきれない重圧であり、押し切られる前に咄嗟に対応してしまったのは悪手だった。二刀の構えが崩され、無防備に晒される。


「もらった――!」


 静かに、目の前で冷静かつ冷徹な目でジークが告げるのは純然たる事実だろう。窮地に陥っているのは間違いなく俺の方なのだから。


 ――ま、このままならな。


「っ!?」


 俺の左手は盾であり矛でもある。

 ジークも俺のやろうとしてることに気が付いたようで視線が俺の左手に向き始めるが、もう遅い。


 エスペランサ―を支えながらでも、そのまま掌を向けて魔法は使えるんだよ! ゼロ距離で食らえや!




「――させっかよ!」

「っ!?」


 左手に魔力を収束させ、既に放出を始めた矢先だった。ジークは攻撃する手を止めて即座にその対策を試みて邪魔をしようとしたのだろう。放出される魔力を無理矢理塞ぐようにオーラで俺の掌を塞ぎ、思うがままに打ち出せなくしてきたのだ。

 掌から骨の髄にまで圧迫感が伝わり、発動できなかった魔法の魔力が逆流しそうになる。


「くっ……魔法すら使わせないつもりか……よっ!」


 ここで退いたら駄目だ……!


 反射が尋常ではないジークに対し、手が届く距離まで接近できる機会は多くない。ジークが近づいてくるか、俺が『転移』で移動した時くらいのものだろう。それも殆どが命の綱渡りをしなければならない。

 さっきは距離を取ったのが駄目だった。攻撃の手をジークが緩めないのであれば、俺も緩めてはいけないのだ。それこそが油断。即ち死だ。


 手が封じられたならば足がある。その場で盛大に地面を踏み抜き、地を砕く。それと同時に激震を走らせる土属性魔法の『タイタニックロア』を発動し、地鳴りを物理的にも、超常的にも無理矢理引き起こした。


「足場を……!?」


 地面に加えられた衝撃が威力に耐えきれず周囲に拡散して逃げようとした結果か、地面が弾け飛ぶように無数の地割れをおこしてめくれあがり、そして弾け飛ぶ。

 中心にいる俺の地面も砕けてはいるが、まだ片足が突き刺さっているため重心を支えられてはいる。――しかしジークは違う。突っ込んできたことでやや前のめりになっていた姿勢は支えがなければ安定感が無い。自分の立っていた箇所が崩壊し、身体の支えとなる重心が不安定になったことでバランスを保つことに追われてしまっていた。

 ジークとて支えが無ければ身体の自由はきかないため、重力を上回る上に向かって放出される力には逆らえない。足が地面を離れ、その後は一気に地面と共に身体が浮かび上がった。


 今だ! 畳みかける……!


 好機と思えた時はすかさず攻める。ジーク相手には一秒の遅れが逆の結果にならないとも限らないのだから。




 魔法を扱えない以外では無類の強さを誇るジークの唯一の弱点とも言えるのは、地上戦しかできないということ。

 ジークの行動は全て地が基点となっているのだ。だったらその地を乱れさせてしまえば良いだけの話。


 ま、それが簡単に出来れば苦労はしないし、だからこそジークが化物と言われてもいるのだが。

 一度の戦闘で不意をつけるのは精々一度切り。同じパターンは早々二度通じはしないだろう。今もそうはさせまいと抗ってきているが、その対策というか対応をジークは独自に考えてはいるようで、順応力が極めて高いと心底思う。


「『アクアゲイル』!」

「『守れ』!」


 渦潮を思わせる回転する巨大な水の塊を出現させ、ジークを中心へと吸い込むように放つ。

 激流をぶつける寸前にジークは纏うオーラの量を増やして防御姿勢に入ったようだが、これは攻撃目的で使っているわけではないので無傷でも構わない。殺傷性はともかくオーラごと全身ずぶ濡れにするのが目的だ。


「『エクスプラズマ』!」


 次は『アクアゲイル』に向かって高電圧の塊をぶつけ、水を帯電させる。

 部分部分ではなく、全身に隈なくダメージを与えるのはどうだろうかと考えたのだ。また、オーラに通電するのかの確認の意味も込めて。


 水が電気によって激しく発光し、視界が眩しい。規模を考えずに使ったため周辺水浸しであり、俺も感電する心配があったため領域から念のため離れようとした――が、ガクンと膝が曲がる様に引っ張られて不覚にも地面に手をついてしまった。

 一体何事かと思って足元を見ると、いつ巻き付けたというのか。俺の靴には青いオーラの鎖が巻き付いていた。


「――投げ物の扱いは教わっといて正解だったわ」

「鎖っ!? いつの間に……!」


 同時に『アクアゲイル』と『エクスプラズマ』による魔法攻撃が内部から弾け飛び、その魔法の中から解放されたジークが水を滴らせながら地面にばしゃりと落ちてくる。その手には鎖の手綱を持っており、どうやら俺の足へと直結しているようだった。


 さっき接触した時か!? それとも魔法に呑まれてる時か!? どっちだ一体……。 


「俺にちんけな魔法なんぞ効かねぇよ!」

「この化物が……っ! うあっ!?」


 鎖がいつ巻かれたのかなど、既に巻かれた時に考えた所で仕方がない。今はこの状況をなんとかしねぇと……!


 やはり、効果を高めたとしても上級程度の魔法はジークには効かない。それが分かって次の手に出ようと動こうとした時だった。思い切り鎖を引いたジークに身体が引き寄せられ、俺の身体はグングンその距離を縮めてしまっていた。


「やり返させてもらうぜ」


 ジークの元を見れば、会談中に見た青白いオーラを拳に纏って構えている地獄が見えた。水を滴らせるジークの瞳が光の反射か光った気がして呼吸が止まり、ジークを人として見れなくなりそうな恐怖を覚えそうだった。




 ヤッベ死ぬ――!?


次回……今書いてます。

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