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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第六章 来たるべき刻 ~避けられぬ運命~
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342話 VS巨イナル三魂①

 


「おー怖い怖い。けど別の回復する手立てがあるこの状況はちと困るか。――ヴィオさん、手筈通り頼んだよ。ナタさん……まず移動しよっか。ここじゃ全員本気出せないし」

「はいよ」


 ヴァルダがネズミにそう指示を出すと、ネズミは手に持っていた杖のようなもので床を一突きする。すると一瞬視界が真っ白に染め上げられたかと思えば、廃墟となった部屋から見えていた空の景色がガラッと変わり、瓦礫が散乱する闘技場へと強制的に移動されてしまう。


「なっ!? 空間転移か……!?」


 この人数を一度に移動する手段を持っているのか……! 


『ゲート』とは違うが『ノヴァ』にしか使えない移動が使えることは同じ。『ノヴァ』であると公言した事実が肯定されていくようなものだった。


「ご主人! ヒナギさんがいません!?」

「えっ!?」


 空間転移を使用されたことに驚いていると、ポポの一声の重大さに慌てて辺りを見回した。

 さっきまですぐ隣にいたはずのヒナギさんがおらず、忽然と姿を消してしまっていたのである。


「ヒナギさん!? どこに……!?」

「――余所見してる場合かよ!」

「っ!? ジーク……!」


 辺りを見回して注意散漫となっている俺は恰好の的のようなものだった。当然ジークがその隙を見逃さずに差し迫り、刃を俺へと振るう。

 俺は宝剣を両手で使って咄嗟にその一太刀を防ぐも、流石にジークの馬鹿力を咄嗟に防いだだけでは対応しきれない。正面ならばともかく身体を横から押されるような重い一撃には手が痺れ、身体の重心がずらされる。一瞬呼吸が止まる程力んでようやく辛うじて受け止められる程だった。


「だらぁああああっ!」

「グッ!? ……チッ、完全に回復しやがったか……!」


 受け身を取りながら舌打ちするジークと睨み合う。


 ジークはこれ以上は押しきれないと悟ったのか、身体を反転させて二撃目を繰り出そうとしたらしい。俺はそれよりも前に全力の力を持ってジークを押し返すことで二撃目を免れて危機を脱することに成功したが、敵はジークだけではない。


「やれやれ、回復した途端に即コレか。手に負えないぞ全く……!」

「ご主人危ない!?」


 既に対応していたポポとナナの攻撃を掻い潜り、ジークと入れ替わるように今度はヴァルダが文句を垂れつつ俺へと迫っていたのだ。

 ジークが直感と超反射を駆使して獣の如く俊敏に動くならば、ヴァルダはまるで次の展開が予想できているような計算された動きのような印象だろうか。ポポの『羽針』が躱し切れていないと錯覚する程、ギリギリに避けながらこちらに迫りくる無駄のない動きを見せている。むしろ『羽針』の方がヴァルダを避けているかのようである。

 どちらにせよ、ジークに劣らず素早いことは確かだった。気が付けば俺が態勢を整える間もなくポポとナナの脇をすり抜け、鋭く研ぎ澄まされた刃を俺の胸へと突き出してくる。


「ずぁっ!? っのヤロ……! っ!?」

「ぬっ!? いっつ……!」


 剣で受け止めることもできず一歩だけ後ろに下がりながら上体を逸らし、そのまま空を仰ぎながらヴァルダの頭目掛けて蹴りを叩き込む。――が、当たる直前に見えない何かに阻まれてしまって威力が殺されてしまった。

 俺は逸らしきれずに肩を掠り、ヴァルダはこめかみ辺りに蹴りでできた擦れた痕が互いに残る結果となった。




「……今の、『障壁』か……? しかも無詠唱で……」




 一度攻防が落ち着き、僅かな間に確定した事実を振り返る。

 今俺の蹴りが邪魔されたのは紛れもなく『障壁』だった。俺自身よく使う魔法であるから見間違うこともない。それに壊された時に出るガラスが割れるような音も『障壁』そっくりであった。


「無詠唱が使えるのはお前らだけじゃないってことだ。現にお前だってギルドに置いてあった本を読んでそれを知ったはずだろう?」

「は? なんでそれを……?」


 無詠唱の技術はギルドに置いてある魔法の本から得た知識である。古ぼけてギルドにすら存在を忘れられ、誰の手にも取られることのなさそうな見た目の本は中身もボロボロでまともに読めたものではなかった。

 ただ、そこに書いてあった内容は世の中に散在する常識を超えたもので、身内以外にはとても言えたようなものではなかった。


 ヴァルダには言っていないはずなのに、なんで俺がその本を読んだことを知ってるんだ?




「アレを書いたのは俺だ「なっ!?」……今や遥か昔の話だけどな」




 ヴァルダが、アレを書いた本人、だと……?


「馬鹿な……あんな古ぼけた本を書いた……? ヴァルダさんが……?」

「事実ならなんで生きてるのさ……? というか、嘘でしょ……!?」 


 ポポとナナも信じられない気持ちを露わにし、ヴァルダの言葉を否定しようとしている。

 実際ヴァルダの見た目は少年を脱したか確信の持てぬ若々しさ溢れる見た目なのだ。昔から生きているようにはとても思えないどころか、そんな考えを持つことすらあり得ない話である。


「信じられないって顔してるな。俺からすりゃお前がやろうとしてる事の方がよっぽど信じられないんだが……ま、歴史にある『賢者』本人だからな。『賢者』の称号は伊達じゃないってことだ」

「嘘だろ……ヴァルダが『賢者』本人……!?」


 絶句した。俺と同じ地球人であるということに。

 まだ、『賢者』の魂を持っているなら分かる。現にジークとネズミは『英雄』と『勇者』の魂を持っていることが確定したわけだし、ヴァルダもその例にならって『賢者』の魂を持っていてもおかしくはないと。


 しかし、まさか『賢者』その人であるだなんて思いもしなかったことだ。普通に考えてまだ生きているという考えなど捨ててしまっていたのだから。




「もう大抵のことには驚くつもりはないんだけどさ、お前この前二十歳って言ってなかったっけ?」


 動揺を捨て去るため、俺はしょうもない会話に持ち込む。信じられないことの連続でまだ早い段階だというのに随分と疲れた気分だったためだ。


「ありゃ嘘だ。永遠の二十歳のつもりで言ったんだよ。実際はそこから掛ける二十倍は必要だな」

「年齢詐欺もいいとこだなオイ……!」

「それを言うならセシル嬢とヴィオさんもだろ。この俺の更に二倍は生きてるわけだし」

「ヴィ……あぁ、グランドマスターのことか。言ったら殺されんぞお前……」


 ヴァルダの女性心を分かっていない発言は命知らずであり、グランドマスターはともかくセシルさんがいたら喧嘩を売っているようなものだ。ジークがたじろぐ威圧はそれはもう怖いものだった。







 ――さて、一時の動揺もなんとか収まった。また張り詰めた空気に意識を集中するとしようか。


 まずはヒナギさんの所在の確認から。

 俺らが移動させられたということはヒナギさんも移動させられた可能性は高い。ヒナギさんがいないことだけに意識が向かいがちだが、グランドマスターの姿もどうやら見当たらないということはつまり……。


 なんだか嫌な予感がした俺はナナに小声で聞く。


「(ナナ! ヒナギさんの場所感知できるか?)」

「(っ! あ、あっち! 十一時の方向約三キロくらいにいる!)」


 俺らが移動した距離は精々百メートル少々といったところか。それと比較すれば随分と遠くに移動させられてしまったらしい。


 巻き込まれたタイミングは一緒でも術者の任意で好きな場所に飛ばせるのか、厄介な……。

 どちらにしろヒナギさんを一人にして放っておくのは現状危険すぎる。グランドマスターも天使だというなら恐るべき強さを誇るのは想像に難くない。


 この闘技場を出て早く合流するため足に力を込めた時だった――。




「あちらの邪魔はさせませんよ。『無限地平(ファントムロード)』」

「っ!?」

「無駄だ。ナタさんがいる限りお前はここから動かさない」


 また、世界の景色がガラリと変わった。生物が全種死滅したような果てしなく続く寂しい荒野へと。俺とナナがバレないようにした小声が聞こえてしまっていたのだろうか。


 大地も枯れ死んだようにひび割れが酷く、まるで一滴の水さえも貪欲に貪ってきそうなほどに求めているようだ。黄昏に染まった視界が荒野を染め上げるこの場所は生きた者が訪れてはいけないような気さえする程だった。思わず動かそうとした足を止めてしまうくらいの衝撃が走ってしまう。


「っ!? なんだよコレ……!」

「自分が殺されるかもって時でも他が優先か、相変わらず優しい奴だ。まぁ心配するヒナギ嬢はヴィオさんの所さ。魂の搾取量も抑えなきゃいけないし、ちっとばかしこの戦場(ばしょ)に招くには力不足で邪魔だったんで退場してもらった。身の保障はしないけどな」


 俺らの動揺を嘲笑うように、ヴァルダは一息つきながら極めて落ち着いた様子を見せる。


「……お前らを倒さないと助けにはいけないってことかよ」

「その通りだが、そんなに簡単にやられると思うか?」

「思わねぇよ。分かりやすい理屈だな全く……。あぁ、本当に分かりやすい……!」

「「「っ!?」」」


 抑えていた魔力が理性を外れて抑えきれそうもない。この荒廃した大地を更に悪化させる勢いで、遠慮することなく魔力をヴァルダ達へとぶつける。そして握った宝剣を再度握り直し、目標もなくただ一振りして大地に新しく亀裂を作る。


「凄まじい魔力波だ……これ程濃密なのはどこを探したってお前くらいか。これが、『無限成長』を持ってして成し得る領域……」

「同じ地球人の魂を持っていても怖いか……?」

「怖いな。正直今お前の前に立っていること事体が不安すぎて脚が震えそうだよ。……あ、もう震えてますけどね」


 そう言うヴァルダの足を見てみるとプルプルと震えているのが確認できたが、これもどうせ演技なのだろうとしか最早思えなかった。


 言ってる割に余裕そうな顔しやがって……嘘が下手なんだよ。第一ジークとネズミが震えてねーじゃねぇかよ。




「――でもな、例えお前が怖かろうが……負けるつもりは毛頭ない。怖いからさっさと片付けさせてもらうぞ……『世界よ、禁忌を犯す我を許したまえ』」

「なっ――!?」


 嘘だろお前それは……!?


 初っ端から使ってくるとは思えない大胆さは予想の範疇を大きく越え、特に大きな前触れがないことに対処が遅れてしまった。

 両手を合わせた些細な動作からは想像もつかない魔力の放出と、決められた詠唱をヴァルダはさらりと言いのけたのだ。


 これから起こるのは絶大なる魔法。超常的な事象を引き起こす魔法の中でも他の追随を許さぬ最上位の力を秘め、絶対的な結果を引き起こすことが約束された魔法だ。




 これは……超級魔法だ――!


※8/6追記

次回更新は木曜です。

注:更新は夜です。

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