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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第六章 来たるべき刻 ~避けられぬ運命~
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318話 勘違い

執筆に当てようと思ったこの二日で不測の残業がめっちゃありました(白目)

今回短いけど許してくんさい。

「『影』!? カミシロ様、アストレイ様があの『影』なのですか!?」


 ヒナギさんが驚きと焦りを露わに後ろから聞いてくる。

 目の前にいるコイツはアストレイと言うらしい。これが『影』の本名なのかは不明だが、今はそんなことはどうだっていい。


「答えろ! 一体どんな手を使いやがった!」


 人は決して生き返らない。生き返るなら、俺は例え生命の冒涜と言われようが未来で皆を生き返らせる選択に乗り出しているところだ。『夜叉』のように死体を傀儡にして使役することで動かすことはできても、自我を持たせることは不可能。だから今目の前で自我を持って話している存在が到底俺にはあり得ない存在として映ってしまう。


 今目の前に『影』がいること、それ自体があり得ない。そもそも『影』の肉体はシュトルムの『七精霊の裁き(セプト・クライシス)』で完全に消滅したはずだ。使役するにしても肉体がもう世の中に存在していないのだ。


 理解の追い付かぬ現象を前に、俺は冷静さを失い、ただ感情の赴くままに叫ぶ。


「ななな、一体何でありますか!? 某、貴殿に何か失礼を働いたでありますか!?」

「ああっ? とぼけんなっ!!!」


 エスペランサーの切先を凝視し、動揺しているフリをしてシラを切ろうとしているのが腹が立つ。


 シラを切れるような軽い事件を起こしたつもりなのか? ふざけんな。

 何食わぬ顔で出てきて馬鹿にしやがって。『虚』といいお前といい、『ノヴァ』は本当に害悪でしかない。


「お前のことを俺らが忘れるわけがねーんだよ! イーリスを滅茶苦茶にしやがったテメェを一生……俺らは……!」


『影』との激戦の風景が脳裏をよぎる。未来の悲劇の風景と、今回の俺が体験した風景が一緒になって。

『ノヴァ』のせいでどれだけの人が犠牲になったことか……。残された人にも心に強烈な傷が残されたし、俺の大切な人達も実害を加えられている。


 恨みつらみは倍以上となって、俺も抱えていた憎しみを再燃させていくが――。


「ひ、人違い、では……?」

「んなわけあるか! お前のその見た目と同じ奴が一体どこにいるんだ!」

「同じ……っ!? き、貴殿……もしや某と弟を、見間違えているのでは……?」

「はぁ? それはどういう……」


 弟? 意味が分からんわ。


 突拍子もない発言に拍子抜けを食らってしまい、一時沸々と込み上げて爆発寸前となった怒りが止まらざるを得なくされる。そして俺が勢いを止めたその反応を境に、奴は切先を向けられていることも忘れたように何故か興奮して質問攻めをしてくるのだった。


「あ、あの! そ奴は某と同じ見た目をしていて……もしや瞳が紅ではありませんでしたかな!?」

「っ!」

「やはり……! 口元はこう……包帯で隠して、口数はそれほど多くなくて……あの、貴殿、そ奴とは一体どこで会ったのでありますか!? 是非某に教えていただきたいのであります!」

「っ!?」


 質問攻めされているだけならまだ手は挙げてなかったかもしれない。しかし、奴が俺に一歩近づこうとする動きを見せたことで身体の防衛反応が咄嗟に働いてしまった。

 反射的にエスペランサーを握る力が強まり、俺は奴に斬りかかった。




「ツカサさん!」

「っ!?」




 ――はずだった。


 ビクンッ、と一瞬身体が止まる。

 いつの間にここに来ていたのだろうか。アンリさんの切羽詰まった声に我を取り戻し、身体は声のする方に意識を向けることを優先したらしい。

 ドア付近を見れば、そこにはアンリさんの姿があった。先程招集が早まったことを伝達していたこともあり、恐らくは一先ず合流を図ったようで随分と急いで駆け付けた様子だ。肩で息をしているのが一目でわかった。


「落ち着けツカサ! その人は『影』じゃねぇ!」

「シュトルム……!?」


 動きを止めた俺に、アンリさんの後ろから勢いよく部屋へと飛び込んでくるのはシュトルムの姿。ここでもシュトルムの発言は俺の動きを止める力を更に強めさせる。

 シュトルムは脇目もふらずに俺に迫ると、俺と『影』の間に割って入ってすぐさま構えていたエスペランサーを自らの手で抑えつける。切先は地面へと矛先を変え、『影』を縛るものはなくなってしまう。


 構えそのものが『影』を牽制していたこともあり、『影』を圧力から解放するような真似をしたことに今度は俺が慌てる羽目になる。


「シュトルム! 何してんだオイ!」

「いいから構えを解け!」


 シュトルムの口から出た言葉は、あろうことか警戒を解けということに等しかった。

 勿論そんな恐れ多すぎる言い分など納得できるわけもなく、俺は抑えつけられた手に力を込めて抵抗するも……思うように剣を振るうことは出来ない。というのも、俺も強めに反抗はしていたはずなのだが、シュトルムもまた相当な力で抑えつけていたからである。


 互いの意見が反発しあう形に、俺はムキになって身体に熱を込み上げていくのを無意識に感じた。


「解けるか! 目の前にいる奴が誰なのか忘れたのかっ!」

「忘れるわけねーだろ! 俺らが忘れることなんてできるわけねーよ!」

「だったらなんで止める!? いいから早くなんとk「落ち着けって言ってんだろっ!!!」――っ!?」


 もう躊躇してはいられないと覚悟を決めて本気で力を入れようとしたところで、俺が叫んだ声以上の大きさでシュトルムが怒鳴り声をあげる。あまりの声の大きさと眼前まで近づけられた顔の迫力がすさまじく、自分の主張を否応なしに中断するしかなくなった。


 ただ、怒鳴り声は怒りではなく、どちらかといえば訴えかけるような意味合いを伴っていたように思う。シュトルムが向ける目の力強さからはそう感じられ、それに気圧されてしまう自分がいた。


「『影』はあの時、俺らの目の前で死んだだろうが」

「あ、あぁ……そう、だな……」


 少しだけ沈黙があり、その間に俺が落ち着きを見せたことを確認したのだろうか。シュトルムは今度は対照的に静かに話し始めると、掴んでいたエスペランサーから手を引いた。

 気が付けば俺ももう力を込めるような真似はしておらず、ダランとエスペランサーを降ろしていた。




「……俺だってここまで似てる人を見たら『影』としか思えねーし、お前が暴走した理由も嫌ってくらい分かる。……だがな、この人は『影』じゃねーんだよ。コイツらが断言してくれてなきゃ俺も分からなかったけどな」

「精霊……?」

「ああ。エスペランサー、お前も分かるな? この人は別人だよな?」

『……!』

「別人……? 『影』じゃ、ない……?」

「そうだ」


 あの時『影』を共に滅ぼした精霊達が断言し、エスペランサーまでもがシュトルムに同意を示して明滅を繰り返す。

 エスペランサーに耳を傾けてみると、必死に声を掛けても気が付いてくれなかったとのことで、俺に全く余裕がなかった故に意思疎通が出来ていなかったようだ。――要は俺の早とちりでとんでもない過ちをするところだったというわけである。


 この人は『影』ではない。それが分かると張り詰めていた心の圧迫から解放され、どっと力が抜けたようだった。放心して脱力し、思考すらまともに機能しない。

『影』との死闘の記憶は、今日一番の疲労を俺にもたらした。


「あ、あの……もう平気、でありますか……?」

「ウチの馬鹿が早まって済まなかった。もう平気だから安心してくれ」


 奴……ではなくこの人がオドオドしながらこちらを見ている。シュトルムは放心していた俺に変わって受け答えをしていたようだが、この時はあまり耳には入ってはこなかったが。




 集中力のない頭で何気なく部屋を見渡し、全員が引き攣った顔で冷や汗を流していたのは冷静になった後も記憶によく残っている。

 どうやら暴走していた間無意識に強烈な魔力も振りまいていたらしく、それに当てられてしまっていたようだ。空気の読めないライツさんもそれから表情がずっと硬くなっている有様な程だ。


 この後雑談をまた少し挟むことになるが、その時はこの場にいる皆が明らかに俺に対する目の向け方がさっきまでとは違っていたのは精神的にくるものがあった。

 そしてヒナギさんもどこかいつもと違う目で俺を見ていたような気がしたことも結構くるものがあって、俺はそれに胸が締め付けられることにもなる。


次回更新は1週間くらいを目途に。


※4/5追記

次回更新は日曜の夜です。

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