295話 頂点に並ぶ若き獅子(別視点)
久々の『ノヴァ』方面の話ですが、今回超短いです。
マジで書く時間なかったんで泣く泣く2話分割投稿することにしました。
9月半期締めなんで許してくださいなんでもしまs(ry
◇◇◇
「――ここが正念場だ。当日は最後の濃密なる魂の回収日となるだろう。目標は一人残らず抹殺する……以上だ」
淡々と静かに長く続いた確認事項。だが最後の締めの言葉だけは、同じトーンであろうとも凄みを帯びていた。
司達がセシルとヴィオラの話を聞いている頃、『ノヴァ』陣営の方は最後となるであろう会合を人知れずに開いている真っ最中であった。
「う~ん……! 遂にこの日がやってきたね!」
『虚』は『絶』の確認を聞く事に飽き飽きしていたのか、終わりと同時に席を立つと思い切り背伸びしている。声にはハリがあり、待ち遠しい日が迫っていることがそのまま表れている様子だ。
「そうね。ホント待っているの怠かったわ。精々少しでも質の良い魂に仕上がってればいいけれどね」
『虚』に続き、『夜叉』も口を開く。こちらは『虚』とは違って違う待ち遠しさがあった様子だが、その薄く浮かべる笑みは気味の悪いものだった。
「まぁ仕方なかろう。少しでも献上すべき魂の質は上げるべきなのじゃからな。そのための待ち時間と考えれば当然のことじゃ」
「おー。長生きしてる『クロス』が言うと現実味あるよね。でも良かったね? なんとか今代で間に合いそうでさ」
「そうじゃな、また1からやり直す心配もなさそうで良かったわい」
「間に合ったはいいが、ギリギリ、な……。だがそれは単に魂を余剰に確保していたからに過ぎない。保険を掛けていなければ計画は破綻していたかもしれないのだ。……それにまだ油断はできんぞ」
『虚』と『クロス』の会話に顔を曇らせる『絶』は、『虚』の楽観視した発言には呆れは出ずに真面目な顔つきをするのみだ。『絶』は本来『虚』にはいつも溜息か小言だけで対処するはずであるが、今回は事が事であるためにそうはできなかったようだ。
『ノヴァ』の中でリーダー役を務める『絶』は、ある意味『ノヴァ』の顔なのだ。全員がそれぞれ違う反応を示そうとも、それが全体の総意であることに間違いはない。
「はぁ……でもここまで来たってのにさ、『影』……残念だったねぇ」
「最後の最後で油断した結果じゃ、消えた者に掛ける言葉なんぞないわい」
『執行者』のみがいるこの場であるが、以前まではいた寡黙な一人がいないことを『虚』が話題にする。7人いたはずの『執行者』は、もう6人しかいないのだ。
――しかし、『クロス』はそれを悲しいこととは捉えてはいない。それは単に、『執行者』達は仲間ではなく同志であるからだ。司達のパーティとは根本的に集まっている理由がそもそも違うのである。
「わぉ、『クロス』ってば相変わらず酷いなぁ。年寄りは手厳しいね」
「戦力の大幅ダウンはすげぇ痛手だが……その分俺達にくる見返りも上がる。それを考えりゃ『影』の死も無駄じゃねぇが……計画は絶対に失敗できねぇ。リスクが上がったようなもんだぜ、全く……」
「『銀』も計画の成功だけ考えててゲスいゲスい。でも確かにそうだね、アハハ!」
『虚』は笑う。悲しさとはかけ離れた非情な笑いを。そして舌打ちをしながら今の現状に『絶』と近い反応を示す『銀』は、膝を組んで苛立ちを隠さない。もし人の集まる場所にこんな輩達がいれば、そこだけ寂しい空間が出来ていることだろう。
ここにいる者達に優しさの文字は微塵もない。『虚』も『影』の死を嘆いてはいるように見せかけて、心の奥底ではそんなことは微塵も思ってはいないのだ。世間ではこういう者を屑と呼ぶに違いない。
「ふん、皆モチベーションの方は問題なさそうだな。――ところで『銀』よ、理論の再構築と改良はもう済んだか?」
「……ヘッ、おうよ。使用する材質も、そこに新たな理論を組み込んでこの前の比じゃねぇ出力を可能としたぜ。今度は1回限りでもねぇ、融解してポンコツになることもねぇはずだ」
「そうか、期待していいんだな?」
「まぁな。……だが代わりと言っちゃなんだが、高品質の魔力を厳選するようにしちまったことでエネルギー充填にその分時間が掛かりすぎる仕様になっちまった。連射は無理、出力を下げれば連射は可能だが……最大となると撃てんのは1発が限界だ。次までのリロードは少し時間を食うぜ?」
「了解した。お前の力をもってしてもそこが限界なら仕方あるまい。その兵器を当日投入しろ。勿論最大の出力でな。……それで大部分の目標を一網打尽にしてくれる」
「あいよ、任せとけ」
先日イーリスを滅ぼそうとした『銀』の熱線。それは発射すると共に、そのあまりの熱と出力に本体が耐えきれずに融解してしまうという欠点が存在していた。
一度限りの絶大な一撃。司でさえも耐えることで精一杯のそれが、時間を置けば再度発射可能とのことらしい。
『銀』は自身が作り出した兵器に大層な自信があるのだろう。元々生み出したものをひけらかすのが好きな『銀』は今心がウズウズしているようだ。この兵器が向けている矛先を考えれば、並みの人ならば息を呑んでいるはずである。
国一つを簡単に滅ぼせる、前代未聞の悪魔の兵器なのだから。
「――皆、解散する前に心して聞け」
「「「……」」」
「『影』が消えたことであのお方の因子は減ってしまった。我々は、欠落したままあの方をお迎えをせねばならない。……きっとお怒りになられることだろう」
「……でしょうねぇ。どんな制裁が来ることやら……」
制裁という言葉に、『執行者』達のバラバラだった意思がここで一つになった。口を噤んで動きをピタッと止める。
『白面』は素面のままで普通のことのように答えているが、その仮面の下では同じく焦りは感じているようだ。動きに若干のぎこちなさは垣間見える。
「全員分かっているとは思うが、あのお方に満足してもらえるように最善を尽くせ。さもなくば……我々が消されることになるぞ」
「わかってるわよ、そんなことくらい」
「あぁ、ったりまえだろうが。……つーかよ『絶』、当日『神鳥』と『闘神』共はまぁいいとして、他の連中はどうすんだ? あとお前が戦り合ったって奴も」
自分達にも振りかかろうとする恐ろしい結果を想像し、そしてそれを邪魔する存在達の懸念をした『銀』は残る問題を指摘する。
司達以外に存在する、脅威である者達のことを。
「……それはあの若き獅子のことか?」
「そいつ以外誰がいんだよ。そうだよ、お前らとタメ張ったとかいうクソガキだ」
「あー……彼ですか」
自分にも記憶に新しい『白面』の方も、その若き獅子と称される人物を思い出したらしい。悩みの種の筆頭の一つであるだけに、漏れ出た言葉は重そうだった。
もう考えたくない……そんな具合に。
しかし、対する『絶』はというと――。
「フッ……あの者は私の獲物だ。我が絶技に耐え、この私に消えぬ傷を残した強者に会うなど久しいからな。済まないが誰も手を出さないでくれると有難い。我が絶技と拮抗するあの強さ……あの獅子との一戦は血沸き肉踊る……!」
『絶』はそれまで強面だった顔を緩め、期待に満ちた眼差しへと変えた。眼はここにはいない者へと向けられ、まるで脳裏に浮かべているその者と再会することを心待ちにしているようであった。
「オイ、『闘神』がいなくなったと思ったら今度はお前が『闘神』みたいなこと言いだしてどうすんだ。……ま、そんだけの奴なら分からなくはねぇけど。……だがお前がヤバそうだったら加勢はするぜ?」
「……あれ? どしたの『銀』。もしかしてツンデレ?」
「アホか。単にこれ以上の欠落は見過ごせねーだけだ。殺すぞコラ」
『絶』の様子に『銀』が拍子抜けすると、『虚』の茶化しがたちまち入る。
この場では不規則に正しい正常な反応をする者がたちまち変わる。今はそれが『銀』だったらしい。だからこそ『虚』の発言に『銀』は苛立ちを露わにしたようだった。
「まぁそうですよねぇ。まさか『銀』さんが人の心配するわけないですもんねぇ」
「確かにその通りだが……なんか言われると腹立つな」
「フフ、ごめんなさいねぇ? ――でも久々に見ましたよ、『絶』さんと互角に戦える人なんて。先代達を振り返っても早々いないんじゃないですかね?」
「だろうな。もしもそう簡単にいたら我々の計画は既に終わっている。強き魂はそう簡単に集まるものではない」
『ノヴァ』の満足するだけの強き魂を持つ人物、それが若き獅子である。
『ノヴァ』にとってはSランクの冒険者さえ相手ではない。しかし、そのはずの存在と拮抗するだけの力を保有しているのだから、持っている魂の強さは確実に極上といっても過言ではない。
「ただ……何処かで見たことある気がするんですよねぇ、彼」
そしてそんな人物に、『白面』はどこか引っかかる点を感じているが思い出せずにいる。
自分の中に存在する気のせいとさえ感じる程度の違和感。だが自分がそう感じている原因が分からないもどかしさに、仮面の奥底では悩みに悩んでいるのだった。
次回更新は1週間後です。




