207話 思い出すグランドルの日々
初っ端から茶番…
◆◆◆
やぁ! 僕の名前は神代司。この世界では珍しい異世界からやってきた存在だよ!
異世界に来てから結構経つけど、今では二つ名として『神鳥使い』、他には異名として街の便利屋とか呼ばれているんだ。最近だと……巷ではただのパシリとか言われることもあるけど、まぁ心優しい人達ばかりの世界だから、流石に……ホントあり得ないとは思うけど、まさか本気でそんなこと思ってる人なんていないよね。……そうだよね?
僕自身、周りから受けている評価というものを十分理解しているし、これからも皆の生活の一部となれるよう精進していく所存だよ!
だから、今イーリス大陸に来ているんだけど、僕はここでも積極的に活動するつもりだ。
世のため人のため自分のため、自らの成長と……僕が僕であることを証明するために、役目を全うするだけだからね。
でもなんと! このオルヴェイラスに関しては冒険者ギルドが存在しないって言うじゃないか!? それは大変だ!
僕は冒険者というものの活動を布教するため、僕自身のことを町の皆さんに知ってもらうため、そしてなにより……親友のシュトルム君の手助けになるために、フェルディナント様から厳命を受けたことあってさっきから活動中なんだけど……
「お兄さん! こっち頼めるかい?」
「はい、只今……」
あらまぁ、結構困ってること多いんですね。
「あの……この」
「お任せください」
遠慮しなくて結構だ! お兄さんにお任せあれ。
「これなんだけどよ……」
「まぁ……なんとかなりますね」
くっ……これしき、なんぼのもんじゃい!
「あら? 今丁度終わり? こっちお願いできるかしら?」
「へ? あ……ハイ」
いや、あのゴメン。ちょ、ちょっと休憩を……。
「あの、ちょっといいですか?」
「……あい」
……ギエピー。
「うむ!」
「……(コクリ)」
チーン……。
案の定、死にました。主に身体が。
流石にキツすぎるッスよオルヴェイラスの皆さん。もうバッテリーゼロなのに酷使しすぎじゃありませんかね? 電子機器の電池パックと一緒で私の寿命が縮まっちゃうって。
エロゲーなら「もうらめぇ」って言ってるレベルなんですがそれは……。フェルディナント様からは、よく分からない来客である俺達を街の人に知ってもらう簡単なお仕事って聞いてたのに……。
せめてもの抵抗として、アヘ顔になっていない私を誰か褒めてくれ。できるなら褒めるよりも前に私を止めて頂ければ最高でしたけども。
とまぁ、実際に起こった茶番はここまでとしよう。
今のキャラは流石に気持ち悪いのでなしなし。でも内容的には間違ってないから問題もなし。
いや、街の人達の手伝いは確かに間接的にはシュトルムの手助けになっているわけなんだけどさ、それでもコレじゃない感がすごいんですがそれは……。
グランドルの日々が思い返される。身を粉にして働き、誰かのために動き続けるという社畜の鏡ですよ今の俺は。
……愚痴ばかりもアレなので、そろそろ各々の状況を簡単にご説明するコーナーにでも行きましょうかね。
ポポとナナは昨日のギガンテスと触椀植物出現の件で、この街の兵士さん達と共に、同様の個体が近隣に出現していないかの調査に同行していった。
何かあってもすぐに連絡を入れることができるだろうし、強さも申し分ない。ポポとナナがいるのであればそちらは任せても良いというものだから、あまり心配はしていない。
ヒナギさんとジークは、兵士さん達に圧倒的強者の雰囲気というものを教え込むために、兵士の詰所の方へと今足を運んでいる。相手が『ノヴァ』であるのを想定した場合に、恐怖に負けて動けなくならないようにという理由から2人へのご指名が入ったのだ。
ジークは分かるとして、何故に俺ではなくヒナギさん? と疑問に思ったのでフェルディナント様に聞いた所、ヒナギさんがいると兵士のやる気が増すとのことらしい。……はぁ?
なんでも、ヒナギさんの見目麗しい姿はエルフの人達をも虜にしたんだとか。兵士は男性の割合が非常に高いので、単純だがやる気の後押しとなればと思ってのご指名のようである。……うん、イーリスの兵士さん達は表にでようか?(ニッコリ)
だが、ヒナギさんには既に恋人がいらっしゃいます。
ハイ、皆さん知っての通り……それはこの私神代さんのことです。彼氏さんがいる手前でよくもまぁそんなことが言えたものだと、フェルディナント様をジト目で見たものだ。昨日とかの一件で親しくなってるし、それくらいの粗相程度なら問題ない。
でも、先代のこの国の王である人から頭を下げられてしまってはどうしようもないじゃないですか。ヒナギさんも自分がそんな目で見られることに対して恥ずかしそうにしながら仕方ないと言って了承してしまった手前、俺も渋々了承せざるを得なかったのだ、このアホちん。
……まぁ、邪な目でヒナギさんを見た奴がいたらファックしますけどね。
その辺は魔力を全快にでも放って強制的に分からせてやっても悪くないかもしれん。
……ゴホンッ! と、俺の実情はさておき。
それで、セシルさんは昨日俺とヒナギさんがしていたことを自分が今度はやってみるということで、単身で街の外へと赴いていった。
セシルさん一人だけで危なくないかとは思ったものの、セシルさんの実際の強さとやらを知ってちょっと安心したから平気だと思われる。
セシルさんがどんな存在であるかを知っているから予想はしていたけど……やはり相当では収まらない程に強いらしい。
ステータスは具体的には聞いていないものの、「ヒナギ以上、ジーク未満かな」と軽く言っていたので、ハッキリ言って規格外の強さを誇っていることは間違いない。
天使の力が何かもよく分かっていないが、心配するのは野暮なようである。
でもまぁ、そうでなければ『夜叉』は自分が潰すなんて言えなかったんだろうけど。
そして残ったアンリさんだけど……なんと俺と一緒に行動していたりする。イヤッホウ! やったね!
昨日のヒナギさんと二人っきりで行動したことで、フェアじゃないという理由から今度はアンリさんが一緒になったのだ。勿論、これまたセシルさんの提案である。
他に出来そうなことが見当たらないということもあり、どうせだったら俺の普段やっていることを一緒にやるというのも悪くない。じゃあ一緒に行けやということで現在に至るわけである。
それに、アンリさんは頭が良い。大きな部分では大差ないとはいえ、ヒュマスとイーリスでは細かな部分で常識が違っていたりするので、手伝い中に不備が無いようにするためにも、サポートとして一緒にいてくれるのは非常に有り難い。学院ではそれこそ幅広い分野のことを知識として学んでいるため、文化や宗教といったものにもそれなりに精通しているとのこと。
安心安全アンリにお任せ! という謳い文句よろしく。そんな役割を実行してくれているのである。
それから、俺があらかた街の人達の手伝いを終えて、道の傍らにあったベンチで休憩中のこと……。
「……死ぬ…」
「大丈夫ですか? あの……流石に無理しすぎじゃ…」
「いや……これしきのことじゃまだまだ…」
「声に説得力が欠片ほども感じられませんよ」
死にそうになっている俺の声に、隣に座るアンリさんが呆れてため息を吐いている。
実際俺の自業自得なわけであるし、アンリさんのこの反応は別段変でもなくむしろ普通。最近は割と言葉遣いに若干の変化が見られ始めたこともあり、些細なことだが距離が縮まっているなぁと実感できたりしている。
「でも、お疲れ様です。どうぞ」
「あ、ありがとう」
それでも「しょうがないなぁ」と言っている顔でお茶を差し出すアンリさんは、やはりこちらのその行動に理解を示してくれているようだ。
受け取ったお茶を飲みながら、俺は疲れが和らいだような気持ちになることができた。
しかし……
「ですけど、先生はちょっと加減を覚えてください。それじゃ身体が保たないですよ」
少々お叱りを受けてしまい、その気持ちは一旦なくなる。
「う~ん、頼られたら断りづらくってさ」
「それが駄目なんじゃないかなぁ。確かにグランドルでも先生は必要とされてますけど、そもそもあれほど過剰なサービスは破格すぎますよ。今も……。普通は数日掛かる郵便を半日で行うとか、ちょっと先生はやりすぎです。そして街の皆さんは頼りすぎです」
「で、でも一応ギルドからはそれ相応の報酬貰ってるs「身体は資本です」……あい」
アンリさんが言うことは、俺も内心では分かっていた。でも、一応Sランクということで破格の報酬が俺の意思とは関係なく振り込まれ、その対価として俺もそれ相応のことをしなくてはと思ってしまったのだから仕方ない。
……まぁアンリさんの正論にぐぅの音も出ないわけですけども。
「街の人と仲が良いことは分かるんですけど、もうちょっと折り合いをつけておくべきかと……。せっかくギルドマスターと親しいんですから、今度言ってみたらどうです?」
「……善処します」
そしたらギルドマスターが渋い顔するんだろうなぁ。街の人から不満を買う原因になりかねないし、それは勘弁被りたいとかこの前言ってたしなー。
でも俺の意見を無視してそうなってるから自業自得だよなー。酷い言い方をすると自分の保身のために俺を利用してるだけだもんなー。
まぁ、アンリさんの意見はヒナギさん同様に優先度が高いから……それなら仕方ないよねー。ギルドマスター……許してちょ。
なんて今後の予想をしていると……
「でも、先生はどこに行っても変わらないんだなって思っちゃったんですけどね。アタシ……裏表のない人を好きになれて良かった」
「あ、えっと……」
急にそっちの流れになっちまいやした。こりゃ不意打ちを喰らっちまったぜ。
アンリさんは俺を見ながら、微笑を浮かべてそう口にした。
そしてそのまま腕へと自然な流れで抱き着いては、体温を感じているように目を瞑ってしまった。
どうやら甘えてきているようである。
「おー、熱いねぇお二人さん。シュバルトゥム様達の若い頃を見ているようだよ」
「あ、さっきはどうも……」
アンリさんに目が向いていると、不意に俺達を指しているような声が聞こえて来たのでそちらに目を向ける。
そこには、先程俺が手伝いをした男性が立っていて、こちらを見てニヤニヤしていた。俺達を見て今何を考えているのか、大体は予想がつくものという表情である。
俺は今の状態を見られていると言うことに恥ずかしさを覚えながら、若干赤い顔で苦笑してその場をしのごうとするが…
「そうなんですか? ……どっちが勝ってます?」
アンリさんがここで目を開けて、その男性へとそんな質問を突然し始めてしまった。
てか人目を気にして離れたりもしなくなったんですね。しゅごいや。
アンリさんの大胆さが少しずつレベルアップしているなぁと思いつつ、男性の返答を2人で待つ。
「そりゃ陛下達に決まってるさ」
「むぅ……そうですか」
この男性から見れば、シュトルムとクローディア様の方が上のようだ。
いや、別に競う必要性があることではないと個人的には思うが、でも女性的に、そしてアンリさん的には残念だったのか、シュンとした反応をしている。
「でも、お嬢ちゃんと兄ちゃんも結構仲良いみたいじゃないか? ……お似合いだよ」
そんな姿を見たからか、気を落とすなとフォローをしてくれるこのお方……なんて良い人なんだ。
アンリさんのシュンとした姿を見るのは少々困るので、マジ助かります。
「ハハハ……どうも」
俺は男性に苦笑いで感謝しつつ、変にアンリさんが機嫌を損ねなくて良かったと思っていたのだが……
「じゃあ、負けないくらいイチャイチャします」
「堂々宣言することじゃなくないかなそれ……」
「♪」
結局俺は助かりませんでした。
隙があればこれでもかと甘える姿勢を見せてくるアンリさん、恐ろしい娘……。
でも可愛いから至福の極み。
「ほぅ? やるもんだな」
シュトルムや、この街の皆さんは貴方達に感化されすぎていやしませんかね?
普通呆れるか注意するところを共感してしまっているのは如何なものか……。全員がクリス様みたいにならないことを祈りたい。
民が愛に生きすぎて国が滅びましたなんて、マジで洒落にならないからね。
◆◆◆
「うわぁ…! それでどうしたの? シュバルトゥム様はその後…」
「弱ったユニコーンに手当てをして、お別れしたよ。元気になったユニコーンはシュバルトゥム様に頬ずりした後、森の中に消えていったんだ」
「すごーい! ユニコーンは人に懐かないって言われてるのに……やっぱりシュバルトゥム様は凄いなぁ」
「ふふっ、そうだね」
エルフの小さい女の子をアンリさんと俺で挟み、ベンチに座りながら話し込む。
俺が話す内容を真剣に聞いて一喜一憂してくれる姿を見ると、子どもって良いなぁと思えてしまう。まだ純粋でいられる歳の子はやはり偉大である。
混沌とした世の中のアロマテラピーとしての機能を実感できますわ。
実感できる人ほど中身が汚染されている証ではありますけども……。
何故休憩していたはずなのに今この状況になっているかをお伝えするとですねぇ……
◆◆◆
30分前…
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。私シュバルトゥム様のお話が聞きたいの………」
「シュトルムの?」
「うん。今まで旅をしていたって聞いたから……。一緒に旅してたお兄ちゃんたちなら知ってるかなって…」
アンリさんと休憩をしていると、ひょっこりとエルフの女の子が近づいてきてそんなお願いをしてきた。
どうやら俺達が今暇になっているのを見て、今なら頼みが聞いてもらえるかもと思ったらしい。
実際、今俺達はほぼなんでもやってほしいことがあったら受け付けるということになっているため、女の子もそれを理解して来ていると思われる。
頼みとあらば断わるわけにはいかない。俺は重い身体を叩き起こし、決して表情には出さずにその子へと対応する。
子どもだからといって手抜きをする理由にはならないしね。
「そうだなぁ……。じゃあお兄ちゃん達が初めてシュバルトゥム様に会った時からのことを話してこっか?」
「うん!」
「あ、アタシもちょっと興味あるかも」
「じゃあ」
アンリさんも興味を持ったため、俺は2人にシュトルムとの出会いから今に至るまでをゆっくりと話したのだった。
◆◆◆
ってことがあったからです。
息抜きを兼てちゃんと仕事する私、仕事人の鏡ですな。でもこれが社畜の必須熟練スキルだということは……ゴホンゴホンッ! あーそんなの聞こえなーい。
というか、そもそもこんなの仕事じゃねぇだろって思ってる人いますよね? 何処にとはあえて言いませんけども。
チッチッチ! その考えが甘いと言うのですよ。チョコよりも甘い甘ちゃんにはまだ早かったかな?
……よろしい! ならばお教えしましょう!
冒険者の住民の手伝いとは、住民がギルドに対し手伝いを望んだという事実に重きを置いている。だから、住民が言ったことがそのまま依頼となるわけだ。
あまりにも難しい内容、モンスターの討伐や素材の採取等はギルドの掲示板に張られるが、それに満たない依頼とは思えないものなぞ普通の冒険者は余程でない限りは受けない。
しかし、厳密には依頼ではあるため、この住民の手伝いというものが成立・存在しているのだ。
良い子の皆、これで分かったかな?
だからこれも立派な仕事の一部なのです。女の子との戯れと言えど頼まれたからにはキチンと依頼。他の人の手伝いとなんら遜色ありません。
……といっても、流石に限度はあると思うけどね(ボソッ)
ま、なんにせよ俺が仕事のできる奴だってことが明らかになったわけです。
アンリさんへのアピールポイントに繋がるんじゃねっていうこの邪念がなければ、俺はもっと大成していたのかもしれない。それが社畜としてなのか人としてなのかは不明。
一人でこんな自演ができる自分の将来が不安になる今日この頃です。
「……このくらいかなぁ。とにかくシュバルトゥム陛下は……凄い人だったよ。面倒見が良くて優しいし、カッコイイし、王なのが納得できるって感じかな…」
「そうなんだぁ!」
子どもには夢を、大人には非常な現実を。この対極な事実の伝達のやり方は国を問わず一緒であり、人が成長したことを実感できる一種の指標となっているものなのです。
もう依頼はこれで完了。この子にはシュトルムのこと……超べた褒めしときました。
面倒見が良いのと顔が悪くないってのは正直な話。でも最後の王なのが納得できるってのは嘘っぱちがいいところである。俺の知る王様とは随分違うのがシュトルム君です。
でも嘘も時には必要なり。それが純粋なこの子の心身の成長に繋がるなら尚のこと。
お兄さんの気遣いがいかんなく発揮されている瞬間ですね。
「シュバルトゥム様はやっぱりシュバルトゥム様だったんだー。変わってないね!」
「前からそうなの?」
「うん!」
アンリさんの聞き返しに、元気よく頷く女の子。
……昔からアレなのか? だとしたら相当イカれてんなアイツ。
真実を知る者としては少々不安なことを聞いたぞ。
自分の個性の一貫性があると言えば確かに聞こえはいい。だがモラル的な面での成長がないのでは、知識を得た所で勿体なさすぎると思う。
残念な奴。それがシュトルムのパーソナリティなのだから。
モラルの取得は古来より知能を増した人にとって……今や義務となりつつある。その低下は原始時代への退化と称されても文句は言えないレベルだと思う……個人的に。
ま、俺のシュトルムへのテキトーな評価をした場合はそんなもんである。実際は他を加味して全然違う評価になりますけどね。
「ねぇ、シュバルトゥム様に皆感謝してるって聞いたんだけど、それってどういうことなのか分かるかな? 知ってたら教えて欲しいんだけど…」
「あ、そういえば……」
思えば気になっていることがあったのを忘れていた。
それは……シュトルムにこの街の人が皆感謝しているということである。色々と面倒事が出てきたため忘れていたが、これは一体何があったと言うのだろうか?
気になった俺は依頼が完了したこともあり、この子へと尋ねてみた。
アンリさんも気になっていたようで、ふと思い出したように興味を抱いた様子で隣に座るその子を見る。
「ん~っとね……。シュバルトゥム様が小さい時にね、クローディア様が精霊の怒りを鎮めるために頑張ってたことがあるんだって」
少々拙い、でも小さい子なりに一生懸命伝えてくれていることが分かる様子で、女の子はその理由を話し始めてくれた。
俺は俺で、その子の言っていることをこちらでそれとなく補完し、その事実を理解しようと試みる。
「それで、クローディア様が頑張りすぎて死んじゃいそうになった時にね? シュバルトゥム様が精霊から力を借りて、クローディア様を助けたってお母さんが言ってたよ」
精霊の怒りを鎮める……それは何故? この国のしきたりか何かがあって、それをクローディア様が担っていたということなんだろうか…?
取りあえず、シュトルムはそれが原因で命の危なくなったクローディア様を助けたと……。
「でも、シュバルトゥム様も頑張りすぎちゃったみたいで……その後シュバルトゥム様は身体が凄く弱くなっちゃったんだって。シュバルトゥム様が私くらいの時は、外に出るのも大変だって言ってた」
「うそ……」
女の子の話す内容に、アンリさんが言葉を漏らした。
実際、俺もそう零していても無理はない事実であったのは確かだ。
身体が弱くなる……それはつまり、代償みたいなものと捉えてよいのだろうか?
フェルディナント様が強いなら、その影響でシュトルムもそれなりに強い魂を本来持っていた?
でも、クローディア様を助けたことで、弱くなってしまったということか。
シュトルムは確かに言っていた。精霊の行使で慣れないことをすると、代償となって自らに跳ね返ると……。
幼少期であれば精霊の力を満足に扱うことは出来なかったはずだ。本来スキルは長い歳月を掛けて昇華させていくものなのだから、昔から出来たとは考えにくい。
その理由として、シュトルムは今光・闇・無属性の精霊を上手く扱えないと言っていたし……。
その結果がステータスの低下と言う形にも表れてしまったのだろう。
「だから、皆シュバルトゥム様を尊敬してるの! 自分を犠牲にしてまで、クローディア様の命を守るために行動したことは凄いんだって…」
「……そうだったんだ。凄いな……」
女の子が想像するシュトルム像は、恐らく英雄と同じくらいのものなのだろう。
目をキラキラとさせて、まるで神聖視していると思えるから……。
アイツ、そんなこと一言も……。そんな事情があったのかよオイ。
そりゃクローディア様がベタ惚れするに決まってる。というか、そんな小さい頃に命張れる精神を持ってたことに驚きだ。
俺から言わせてもらえばそっちも十分化物だよ。お前も普通じゃないな。
「……シュトルムさん、そんな過去があったんですね」
「うん……初めて知った。普段あんなんだから余計に驚きがあるな」
「シュトルム様じゃないよ? シュバルトゥム様だよ?」
「あぁ、ゴメンね? シュバルトゥム様だよね」
「そうだよー。変なのー」
ポロッと俺達の間での呼び方をしたアンリさんに、不思議そうな顔をして女の子が口を挟む。
アンリさんは自らの発言に気が付き、ここと他では立場が違ったことを思い出したようだ。そしてすぐにそれを訂正するのだった。
だが、一つだけ分かったことがある。
シュトルムは、この国の王なのが納得できる奴だということである。
この日はその後軽めの仕事をこなしつつゆったりと過ごし、街の人達との交流及び些細な問題への事情聴取をしたのだった。
フィリップさんから存分なもてなしを受けた俺は、随分と疲れていたこともあってすぐにその日は眠りにつくこととなり、ぐっすりと熟睡してしまった。
明日も頑張ろう……そう思って。
だから次の日……まさか急にあんなことが起こるなんて想像もしていなかったんだ。
次回更新は月曜です。




