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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第四章 セルベルティア再び
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156話 『勇者』の宝剣

 実に最高のデート日和。

 すっかり暖かくなってきているのを実感させてくれるかのように、王都には太陽の日差しが差し込んでいる。


 そんな中、俺とアンリさんはデートに勤しんでいる。


 春は出会いと別れの季節と言われているが…それだけじゃない。キャッキャウフフ~な恋の季節でもありますね。少なくとも今の私の状態はまさしくそれですし。


 あぁ…春って素晴らしい。

 人生の勝ち組って素晴らしい…。

 そしてアンリさんはマジ素晴らしい…。


 でもその彼氏はみすぼらしい……グスン。




 …ま、急に悲観してどうすんだって話ですけどね。

 今はアンリさんとのデートをこの状態でどれだけいい時間にできるようにするのか、自分にできることを精一杯やるだけだ。




 ◆◆◆




 現在は軽くウィンドウショッピングを済ませた後、落ち着いた雰囲気の内装が目に止まったお店で昼食を取っている。

 俺とアンリさんと同じなのか、店内にはチラホラと男女2人組のカップルがいることから、カップルにも人気のあるお店なのだと思う。

 女の子と2人きり…しかも恋人としてこの場にいるようなことは初めてのため、他のカップルのように自然体で振る舞えているかは少し自信がないが。


 あ、ベルクさんの時はノーカウントで…。




 各店舗を回り、食事を食べ、他愛もない会話をする。

 初めてにしては随分とスムーズに事が進んでいるのかもしれない。

 慣れないエスコート、流行りの服装や趣向、アンリさんとの2人だけの会話。それらに不安はあったものの、それを上回るものを俺は感じていた。


 楽しい。それに尽きる。


 この時間が楽しい。今までこんな時間を経験していなかったからかそう感じてしまう。


 頼んだものも食べ終え、どこに行こうかと言う話になった時に…


「あ、そういえばここの近くにある伝説の剣の話って知ってますか?」

「伝説の剣?」


 アンリさんが、突然思い出したかのように話題を振って来た。


「なんでも昔、かの『勇者』が精霊王から授かったと言われている宝剣で、それを見て触ることのできる場所があるんですよ」

「『勇者』って…あの『勇者』?」

「はい。先生と同様に…異世界人の人です」


 異世界人の部分だけ少し声を潜め、俺へと返答してくれるアンリさん。

『勇者』の使っていた宝剣がどうやらあるらしい。


 ただ…『英雄』の方じゃないのか? 王都は『英雄』が有名だって話を聞いたんだが…。


「『勇者』の死後、それはこの王都の神殿に祀られていて、触るとその人の本質が見えるらしいんです。…ちょっと聞いただけなのでアタシ行ったことないんですけど…」


 …まぁいいか。こんだけデカいし多分それも影響してんだろ。


「その人の本質が見える…か。確かに面白そうだね。…でも、そんな剣を一般の人に触られていいのかねぇ? 盗む輩とか出てきそうだけど…」

「あ、それは特に心配してないそうですよ? 過去にそんな人もいるにはいたみたいですけど、誰一人としてその宝剣を抜くことのできた人はいないそうですから」


 防犯ガバガバだとは思ったが、その必要性がないということだろうか?


「やっぱりいたんだ…。てか抜けないってどういう…?」

「『勇者』以外は扱えないというのが定説みたいです。精霊王から授かるほどの人物ですから、選ばれた人しか扱うことができないと言われています」

「…へぇ」


 選ばれた人だけ…か。ってことは…本当に『勇者』さんって勇者だったんだな。精霊王から認められるほどだったんならそれは確かだろう。


 …つーか精霊王とか。精霊がいるからいるにはいるんじゃないかと思っていたけど、マジでいるんかい…。

 今度シュトルムに聞いてみよ。


「恋人同士の間ですごく有名なんです。理由としてはその見えた本質同士が恋人と相性が良いと、とっても縁起が良いっていう話なんです。ですから…行ってみませんか?」

「いいよ。面白そうだし」


 俺は…それに了承した。

 だって、そんな期待に満ちた眼差しで見られたら首を縦にしか振れないし。


 アンリさんを見れば、頬を若干赤く染めて目をキラキラさせている。

 その表情に首を振らないのは失礼だと思ってしまったのだ。


 やっぱりアンリさんもこういうのに興味があるんだろうか? 占いみたいなことは女の子って結構好きみたいだし。

 俺は朝の占いとかをいっつも見てはいたけど、自分が星座とかで一位だったら「へー、そうですか」くらいにしか思っていなかったからなぁ。


 でも、恋したらこれは分かる。

 恋をすると、こういうのって無性に試してみたくなるらしい。今まで興味が全くなかった分野であるというのに、今ではこの話を聞いて試してみたいとしか思えない自分がいるからそれは確かだ。

 本当に恋って偉大ですね。


 …ま、非常に面白そうである。

 地球と違ってここはファンタジー溢れる異世界。それならその占いにも何故かあり得ないはずの信憑性のようなものが生まれてしまっても仕方ない。


 俺の方でも今日のプランは考えてはいたが、プランはあくまでプランだ。急なプランの変更で調子が狂うのではこの先やっていけないだろう。臨機応変に変えても問題なく事を進められるようになりたいと思う。


 それに…楽しければそれでいいしな。一番大事なのは楽しめたかどうかだとも思う。




 ◆◆◆




「ふぅ…やっとだね」

「よくいらっしゃいました。お二人も恋人同士ですか?」


 俺達を迎えてくれるのは…神官さんらしき人。

 その人からの言葉に…


「「はい」」


 迷いなく返事をする俺とアンリさん。

 何故迷いなくできたのかについては…先程昼食を取った店でも店員に聞かれたためである。その時は少しどもってしまったが、今はもう耐性が身に付いている。


 これが…本当の成長ってやつですよ(ニヤリ)。


「そうでしたか。お若い方に人気なのですよここは。…ささっ! どうぞお二人の今後をお占い下さい」


 そう伝えると、神官の人は満足気な表情を浮かべながら俺達を宝剣へと促す。




 店を出た後、アンリさんに例の宝剣が祭られているという神殿まで案内してもらった。

 それまでの道中は俺がアンリさんにエスコートされる構図にはなってしまったが、これはこれで楽しい。見る人によっては甲斐性無しに見えてしまうかもしれない。


 だがご安心を。俺は甲斐性無しだから問題ない。

 そんな甲斐性無しで大丈夫か? と言われれば、当然…「大丈夫だ、問題ない」と即答できるくらいの自信があります。いやぁお恥ずかしい限りですこと。




 神殿は…入り口に扉らしきものは見当たらないタイプの神殿だったようだ。入り口には大きくそびえ立つ4本の支柱が建物を支える役割を果たしており、誰でも入ってきていいよと言わんばかりの構えをしていた。

 宝剣に触れられることもそうだが、既に神殿自体がガバガバな作りをしているから…きっと選ばれた人しか扱えないと言うのは非常に信頼性が置かれていると見ていいだろう。


 それでももうちっと用心しろやと思わざるを得ないですけどね…。

 盗みもそうだが、こんなんじゃテロ大歓迎って言ってるようなもんだぞ。もし事件が起こったとして、緊急会見の時に防犯システムは万全だって神殿側が言い張っても、世間は納得してくれるわけないわ。

 そんな管理体制の中そんな発言をしてる方が、むしろ大衆にとってはテロ行為だわ。




 神殿の佇まいを見て、宝剣ではなく精霊王がここにいそうだなと思いはしたが、まぁそんな俺の考えはどうでもいい。今は目の前に集中しよう。


 随分と並んで、やっと俺達の番まできたのだから。


「こちらにありますのが、かの有名な異世界人である『勇者』様が生前使用し、遺していったと言われる宝剣でございます。未だなお清き輝きを放つのは、『勇者』様の強き想いが込められ、未だ健在だからと伝えられています」


 …だそうです。

 想いだけで輝けるなんて…地球じゃ考えられない原理ですな。


「これが…剣ですか?」


 俺は、目の前にあるものを見てそう言葉を漏らした。


 宝剣は神殿の奥にある台座に突き刺さっており、淡く光っているそれは、全体的に金色が目立つ作りをしていた。

 剣だというから刃のしっかりしたものかと思ったんだが…違った。そもそも刃がほとんど見当たらない。

 というのも、鍔から上は刃ではなく、まるで網を想像させるかのように折り重なった繋ぎ部分が大半を占めているからだ。先端部分は突き刺さっているためにどうなのか分からないが、網部分が途中でなくなっていることを考えると、先端付近の刃は通常通りだと思われる。


 例えるならチョコ菓子の紗〇みたいな感じです。

 あら美味しそう…食べちゃいたい。振りかぶられたら口で受け止めてみたいね。でもきっと鉄臭い味がするんでしょうねー…ぐふっ。

 まぁ…ぶっちゃけ剣に見えない。宝剣=お菓子という図式が今私の脳内の大半を支配しております。


 だが握りの部分に関しては普通であり、そこだけ見るなら確かに剣ではある。…あくまでそこだけ見たらですけど。


「やはりそう思われますよね。私も初めてこの宝剣を目にした時はそう思ったものです。ですが…これは剣なのですよ。一応先端は巷で見るような形状をしているそうです」

「…そうなんですか。なら斬るよりか先端の刃で突くことに特化してそうですね」


 見た目から想像できる用途を言ってみると…


「いえ、確かに見た目だとそう判断するしかないのですが、この剣は物体を斬ったり突いたりするのではなく、その物体の魔力を断つことに重点を置いているのだそうです」

「魔力を?」


 神官さんはそう告げた。


 どういうことだ?


「はい。例えどんなに硬度の高いものであろうと関係なくすり抜け、対象に宿る魔力を霧散させて相手を打ち崩すと伝えられています」


 なんだ…ただのチートアイテムじゃないですかやだ~。

 そりゃあ『勇者』さん以外に簡単に使わせてくれないわけですわ。


「それは…驚きですね」

「防御無視ってことですよね?」

「ええ。そう思ってもらって良いのではと思います。…私が今こうして断言できないのは、この宝剣を『勇者』様以外に扱えた方が他にいないからなのですよ。そこに関しては…伝承通りのことしかお伝えできないのですが…」

「いえいえ、大変面白い話でしたよ」


 確証の無い話を提供することに後ろめたさを感じたのかは分からないが、神官さんが苦笑いをする。それを見た俺は満足だということを伝え、神官さんの気が少しでも和らげばと考えていた。


「…さて、それではお二人の本題へと移行しましょうか。こちらへ…」


 きた。待ってました。


 神官さんが俺達を台座へと導いた。




 宝剣は…すぐそこだ。

次回更新は火曜です。

デート話はそこまでです。

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