10話 破格の性能
『安心の園』から出た俺は、門を目指す。
門は東西南北に1つずつあり、今俺が向かっている門は西門だ。
ちなみに入ってきた門も西門で、昨日の草原に出ることになる。
お世話になった兵士さんは今日もいるだろうか?
いるようであればギルドカードを提示しておきたいが…。
とりあえず行こう。
しばらく歩いて西門に着く。
昨日も思ったが…本当にデカイな。
横幅は10メートルくらいあるし、大抵のものは通過できると思う。
この町も充分な規模だが、首都とかはどれくらいのものなんだろう? 見当がつかない。
昨日兵士さんと会話をしたところに目をやると、あの兵士さんはいなかった。
どうやら今日は非番らしい。…チッ。
「いないねー」
「みたいだな。いないなら仕方ない。また別の機会にでも見せよう」
そうして俺たちは昨日歩いた草原へと踏み出した。
「よし、依頼開始といきますか! 始めは一緒に行動しよう。ポポ、ナナ。薬草もしくはスライムを見つけたら俺に教えてくれ」
「分かりました!」
「わかったー!」
2匹は元気よく返事をする。
若干テンションが上がってる気がするのは気のせいじゃないだろう。
コイツらも楽しみだったみたいだ。
薬草とスライム探しがこれから始まる。
◆◆◆
~20分後~
「おっ! また薬草みっけ」
「コッチにもありますね」
「ココたくさん生えてるよー」
薬草探しを始めた俺たちだが、かなりのペースで薬草を集めることができていた。
いや、むしろ既に集めすぎたとさえ思い始めている。それくらいのペースで薬草を乱獲していた。
数は既に100を越えている。
本日の目標をもう達成してるな…【アイテムボックス】が大活躍だ。
なんというか…歩く先に薬草が生えており、一向に町から離れていない。始めて20分くらいしているはずだが、まだ近くに門が見えるくらいの位置にいる。
超イージーなんですけど…。
…昨日も薄々感じる場面はあったんだが、もしかしてこれ【神の加護】が関係してるんじゃね? 説明にあらゆる場面で効力を持つとか書いてたし…。
ぜってーそうだろ。うん。これに違いない。だって来るときはこんなに薬草見当たらなかったぞ?
ただ、スライムはまだ現れていない。
エンカウント率低いのかな? …といっても町から全然離れてないから当然か。
薬草はそろそろ飽きたよ。スライムちゃん、キミが恋しい…。
ぷるぷるの姿を俺に見せておくれ。でも溶けてるタイプのはNG。そのまま回れ右してお帰り下さい。
「ご主人~。飽きた~」
ナナがそんなことを言いはじめた。
だよなぁ。俺もだよ。
「始めてからあんまり経ってないけど、コレじゃあなぁ…。よし作戦を変更しよう。ポポ、ナナ。お前らそこら辺飛んでスライム探してきてくれ」
作戦を変更し、別の指示を出す。
「「了解!(了解~)」」
2匹はすぐに飛び立ち、飛んでいく。そして数秒で見えなくなった。
しばし呆然。
…アイツら速すぎないか? あっという間だったぞ今…。
確かにステータスは高かったが、これほどとはな…。
ん? じゃあ俺はもっと速く動けるのか?
ふとそんなことを思う。
思えばまだ全力で走ったりしたことはなかった。
丁度いい機会だし…走ってみるか。
え~と、とりあえずあの木まで走ってみようか。
視線の先には青々とした葉っぱが生い茂る1本の大きな木。
俺は走る構えを取り、力強く地面を蹴る。
瞬間…
ヒュッ!! ゴオォォッ!! バキキィッ!!!
大地は大きく削れ、砂ぼこりが巻き上がる。
目指していた木に関しては根本を残して跡形もなく粉砕した。
たった一瞬の…出来事であった。
「!?!?!?」
言葉にならない声を俺はあげる。
目の前で起こった現象に頭がついていかない。
何だ? 何が起こった!?
俺はただちょっと走っただけだぞ!?
その問いに答えるものは誰もいない。
しばらく放心していたが、煙が晴れ、辺り一面に散らばった木片と舞っている葉っぱを見て、ようやく理解する。
…ああ、これは俺がやったんだと。
「…ハハ、マジで化け物だな…」
やっと出た言葉はそれだった。
想像していたよりもとんでもない結果に俺は悩む。
これは…迂闊に本気で走れないな。死人が出るぞ、いやマジで。というより、俺って木に衝突したよな?
一瞬の出来事だったが、確かに衝突していたことを思い出す。
あの速度で木にぶつかって無傷かよ、オイ。
ステータス四桁越えって半端ねぇな!
だが、疑問点もある。
なぜ木が粉砕できたかについてである。
俺は攻撃力に補正は掛かっていないから、攻撃力がそれほど高くない。
なので、なぜ木が粉砕できたのかイマイチ分からない。
素早さにも攻撃力の要素が加わっていると見ていいのだろうか?
確証はまだないが、その線は濃厚っぽい気がする。
これも要検証だ。
というよりこの異世界のジャンパーがヤバイ! これがなかったらあんなことにはならなかったはずだ。これじゃあバトルスーツみたいじゃん!
「…かといって装備しないのもなぁ」
異世界のジャンパーは破格の性能を誇り、扱いが危険なのは今ので分かった。
だがこのジャンパーを装備していれば、よほどのことがない限り怪我をしないのも事実だ。
脱ぐか着るか…う~ん、悩む。
…よし、決めた。結局ジャンパーは使うことにする。
だって死にたくないし…。これ着てたらそんな心配もいらんだろ。
自分の命、大事、OK?
ただ扱いは慎重に、だ。これは絶対守る。
俺はそう心に決めた。




