117話 パーティ結成
シュトルムの反応を見た俺と2匹は…
「「「ですよねー」」」
これに尽きる。
この世界の平均は大体30くらいだ。これは一般人も含めてそうなっているらしいが、余りにも飛び抜けすぎだ。Sランクでもこんなアホな数値はしていない。
シュトルムのこの反応は極めて普通…いや、叫んでないからまだいい方かもしれない。
「シュトルム?」
「えっと…それほどすごいのですか?」
「ああ…見て見りゃ分かる」
シュトルムがちょいちょいと手招きし、セシルさんとヒナギさんにこれを見ろとジェスチャーを送る。
それを見た2人もステータスを覗きこむが…
「「………」」
絶句していた。
「…納得。ここまで非現実的だと、今までのことも合点がいく」
「あ、あの…カミシロ様は、人ではないのでしょうか? 種族名が…」
ヒナギさんが恐る恐ると言った具合に聞いてくる。
確かにそこは結構重要なとこだよな…。
ま、ご安心を…
「ちゃんと人ですよ? ただ、ステータスでは表示されなくなってるだけらしいですから」
「そ、そうですか…(ホッ)」
人だと伝えると、それを聞いたヒナギさんは安心したような表情になってホッとしている。
う~ん?
人じゃなかったら怖いから…か? なんかちょっと違和感がある気がするけど…。
…ま、いっか。俺の気のせいか。
ヒナギさんの反応に若干違和感を感じたが、取りあえず話を進める。
「…本当はこんな数値にはなってなかったはずなんですけどね。神様がくれた【成長速度 20倍】の影響でこんなことに…」
説明してる最中に神様が存在していたことについてはもう話してある。
神様などという、いるかいないかも分からない存在だが、ここにいる3人はもう信じてくれている。
…ステータス見せてるし、信じていなかろうが信じるしかないんですけどね。
「ちなみに…俺と会った時ってどんなもんだったんだ?」
「んー、500くらいだったような…」
「高っけーなオイ」
シュトルムと初めて会った時と言えば……空から降って来た時か。うわぁ…嫌な事思い出しちまった。
でもまぁ、今じゃいい思い出みたいなもんか。あんな出会いをしてなきゃここまで親しくなんてなれなかっただろうし…。
むしろコイツの起こしたことに感謝……しちゃ駄目だな。流石に不謹慎だ、あの家の方に…。家の屋根に穴開けられてんだから、せめて口にはしないようにしよう。
「…私の時は?」
「あ、そん時は20にすらなってなかったと思うよ。スライムしか倒してなかったし…」
「それでもスライムでそんなに上がるのか…」
うん、俺も実際そう思ったよ。
「それでは私の時は…」
「…あの辺りからおかしくなってきて…2000近くはありましたね。…一昨日のあのデカブツを倒したからか、またレベル上がっちゃいましたよ。アハハハハ!」
俺が自分のステータスが馬鹿らしくなって笑っていると…
「……あれ?」
「「「………」」」
他3人は笑えねーよと言わんばかりにこちらを見ている。
完全に俺だけが取り残された状態だった。
「あー…その…」
場を繋ぐための声を発しながら、今の状況を理解した俺は…
「…まぁそういうことなんだ。俺は神様から貰ったスキルの力で今こんな状態になってる」
何故かは分からないが、若干申し訳なさそうにして補足説明をする。
それが功を成したのか…
「はぁ…。現実離れしすぎてるが…事実だし受け入れるしかないか。…で? お前はこれからどうすんだ?」
シュトルムが観念した顔で、今後の俺のことについて聞いてくる。
「そりゃ勿論、奴らについて嗅ぎまわるつもりだ」
奴らというのは当然仮面野郎と、一昨日の空間に閉じ込めてきた奴のことだ。
あいつらの組織構成、目的、それと魂を集めている理由を探り、神様に報告する。そうすることで地球に帰る手段を教えてくれるって言うんだから、それに従わない理由がない。
「まずはこの町を中心に活動して情報を集めようと思ってるけど…ヴァルダにも頼むつもり。簡単にゃ情報なんて見つからないだろうしな。もし有益そうな情報が出てきたら、場合によっては遠くに出ることも考えてる。もしかしたら別の大陸にも行く必要も出てくるかもしれない。まぁ幸いなことに俺にはコイツらがいるし、俺自身も【隠密】を覚えたからな。王都くらいの距離ならあっと言う間に行けるからあんまり気にしてないが…」
「そうか…人間辞めてるな…お前」
「言うなよ…」
シュトルムがしれっと人間を否定してくるが、俺も分かっていることなので軽く返す。
そこに…
「あの…カミシロ様」
「なんですか? ヒナギさん」
「カミシロ様は…それが終わった後は…帰られてしまうのですか?」
「…そうなりますね。すみません…あの時一緒にいるって言いましたが、嘘でした。ずっとは……」
「そう…ですか…」
ヒナギさんの過去を聞いたから分かるが、気の許せる相手が今までいなかったせいかダメージが大きい様子。
ヒナギさんは優しいな…俺がいなくなることに悲しみを見せてくれるなんて。
地球じゃ家族以外にそんな人いないから俺も結構キツイな…。
だが…それでも俺は帰りたい。まだ、やり残したことがあるから…。
あの時決めたことを蔑ろにはしたくない。今の俺があることを…否定しないためにも…。
俺の気持ちは変わらない。過去を思い出し、それを再確認する。
「…ま、まぁシュトルムとセシルさんもいますし、そこは平気ですよ。もう1人ぼっちにはならないですって」
「………」
「…他の方々同様に、こちらに残る意思はないのですか?」
む、えらい食い下がりますね…。
てか…
「他の…? もしかして…こっちに残った異世界人の人たちのことですか?」
「はい」
つまり…他の人たちが残ったのになんでお前は残らないの? ってことですね?
「ええ、ありませんね…向こうにやり残したことがあるので。俺は…それを終わらせたいんですよ」
「…分かりました。そういうことでしたら、仕方ないですよね…残念ですが」
本当に本当に、ほんっと~ぉぉぉに残念な顔をヒナギさんがしている。
勿論俺も残念だ。
だから…
「ごめんなさい」
申し訳なさから謝ることしかできなかった。
「…いえ、私の我がままですから謝らないでください。ですが…お別れのその時までよろしくお願いいたします。それまでの間は微力ですが…カミシロ様のお手伝いをさせてください。…友人ですから」
ヒナギさんは俺の言ったことを受け入れてくれたのか、こちらに協力までしてくれると申し出てくれた。最後に友人という言葉を添えて…。
…助かります。
「ありがとうございます。微力だなんてとんでもない、頼りにしてますよ」
「オイオイ、何か2人で綺麗にまとまっちまってるけど、俺たちも忘れないでもらいたいんだが?」
「…同意」
「2人共…」
俺とヒナギさんのやり取りを見ていた2人も会話に混じってくる。
「俺達もできる範囲でなら協力させてもらうぞ。それにお前が異世界人なら…教えて貰いたいことも結構俺あるんだ。この機会を逃すわけにはいかねぇしな」
ハハ…お前らしいな。
「私も…。ポポとナナをもっと愛でたい」
「…アハハ」
「どぞー?」
貴女も相変わらずですな。さっきも感じたことだが。
でもポポとナナも嬉しそうだな。
「…ありがとう。でも、分かってるとは思うけど、危険な連中なのは間違いないよ? もしかしたら…一緒にいることで狙われる可能性もあるかもしれない」
「流石に分かってるさ、そんなことは…。自分の身は自分で守るから大丈夫……と言いたいところだが、流石にレベルが違うからなぁ…。少々そこに関しては不安だが…お前が守ってくれるだろ? なら平気だ」
「…人任せかよ」
「ああ、人任せだ。でもお前ならきっとそうしてくれるからな」
「ね」
「はい」
まるで当然と言ったように言っているが、もし俺がそう考えていなかったらどうするつもりなんだ? まったく…。
でも…何かこういうのって悪くないな。むしろ嬉しい気持ちになる。
信頼って、こういうことを言うんだろうな…うん。
俺が身をもって新しいものを感じていると…
「でもそれなら、パーティでも組んじゃう? ここにいる全員、決まったパーティ持ってないし…。私としては依頼が円滑に進みそうだなっていうのもあるけど、なにより楽しそうな気がするから…。あくまで提案だけど…」
突然のセシルさんのパーティ結成宣言が入る。
意外な発言だが…皆気心の知れた間柄だ。いいかもしれない。
「それ…いいかもしれないですね。シュトルム様はどう思います?」
「変な風に悪目立ちしそうだが、いいんじゃねぇか? セシル嬢ちゃん面白れぇこと言うな…。Sランク二人のいるパーティとか、こっちから願いたいくらいだ。てかどんな緊急事態だよって感じだな。普通あり得ねぇよこの組み合わせ…」
クックックと、シュトルムが笑いながら言う。
皆もどうやら賛成の意を示しているのは見て取れた。
「確かに…敵なしだろうね」
「違いないさ、絶対にな」
「…それで、カミシロ様はどう思いますか?」
まだ口に出して賛成を示していない俺に、ヒナギさんからの問いかけがかかる。
期待に満ちた顔でこちらを皆が見てくるなか俺が出した答えは…
「ん? 決まってるじゃないですか。俺も賛成ですよ、すっごく楽しそうですし…」
楽しいか楽しくないかで言えば、絶対に楽しい方がいいに決まってる。
この提案に異論を唱える訳がない。
「ん、じゃあ決まりで」
「ポポ、ナナ。お前らもいいよな?」
「はい、勿論ですよ。というか…決まった後に言われましてもねぇ…」
「ホントだよね~」
「あ、悪い悪い。でも、お前らずっと黙ってたじゃん。どうしたんだ一体?」
皆に説明している最中、コイツらは一言たりとも喋ることはなかった………あ、一回「そうですねー」とは言ったか。まぁそれはいいや。
とにかく、いつものことを考えるとむしろ不気味なほどと感じるくらいだった。それに全く動かなかったし、もしかしたらさっき俺が怒ったからとかか?
…ちとやりすぎたのかもしれん。
「それはまぁ…今回の話はご主人のことですからね。ご主人が最初から最後まで伝えるのが筋ってものでしょう」
「私たちが口を開くのはちょっとなぁと思ったんだよ~」
「ふ~ん、そっか…」
どうやら俺のことを色々考えた結果、黙っていることにしたらしい。さっき俺を怒らせたからとかではない様子。…それはそれでずぶといなと思わないでもないが。
だが、俺は切り変え早いしもう気にしてないぞ? 罰はもう終わってるしな。ねちっこく続けたりはしない。
まぁそれ以前に、お前らは俺の親かよ! 参観日じゃねぇんだぞまったく…。
どうにもコイツらの行動が授業参観に来ている親のような気がしてならない。
それは俺の立場じゃないかと思っていたりする。
それはともかく…
「ではでは…改めまして…」
セシルさんのいつもと変わらぬ声を聞いて…皆で目配せをし合う。
そして…
「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」
全員笑った顔で、大きな声で、同じ言葉を口から吐き出す。
今日ここに、新たなパーティが結成した。
これが…後に伝説に残る史上最強パーティとなるとは、俺はこの時考えもしていなかったのだった。
………あ、言ってみたかっただけですから。本気にしないでくださいね?
パーティ結成は本当ですけど。
次回更新は土曜になります。




