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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第二幕 実力至上主義、MIH(メイド・イン・ヘブン)学園

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密談はベッドルームで行われる

 あのあと、食事へ行った。

 この国は漁業が盛んで、なんと刺し身があった。魚醤につけて食べるのだ。なかなか美味だった。

 そして、ルーシはホテルにて、携帯を眺めていた。


「……良かったな。やはり女のほうが性感帯は強い。さすがに処女を破るのはまずいと思ってやめたが、普通に貪り合っているだけでも満足だ」


 パーラは獣臭かった。だが、それが良かった。いままで体験したことないをするのは、とても楽しいことだからだ。


「さて、学校だ。パーラは……」


 とても幸せそうな、無邪気な夢でも見ているかのような表情で眠っていた。特に緊張感もなく、すべてをルーシへ許しているようだった。


「女なんか放っておくんだがな……。学生だし、起こしたほうが良いか」


 ルーシはパーラを揺さぶる。


 パーラは目をこすりながら、

「ルーちゃん……キスして……」

 せがんできた。


「良いぜ」


 あのアル中天使に慣れていれば、寝起きの口臭などまったく感じない。ルーシとパーラは舌を絡め合い、そしてそれぞれの生活へ戻っていくのだ。


「学校、行くぞ。シャワー浴びな。もう8時だ」

「んー……サボって遊びに行こうよ」

「やめておけよ。単位落っこちるぞ?」

「ルーちゃんがそういうんなら……」


 パーラは洗面所へと向かっていった。ルーシはとりあえず煙草を咥え、スターリング工業からの連絡を1件1件返していく。


「CEOは大変だ。だが、ここを強盗(タタく)のは良さそうだな。了解と……」


 スターリング工業。主な職務は「強盗」「詐欺」「クラブ運営」「クスリ」「死体処理」「抹殺」である。国がその気になれば、彼らは死刑以外の判決を受けないだろう。

 しかし、クールを相手にしようという酔狂な警察機関がないのも事実だ。


「二面性しかねェな、私。いや、素の私ってなんだ? それすらもう忘れちまった」


 そんなわけで煙草を吸い終える。灰皿に押し付けると、ルーシは部下の持ってきた学生服を着る。


「ま、答えなんてどうでも良い。いまが大事だ。いましかないんだ」


 そして携帯がうるさいのも知っている。スターリング工業用の携帯でなく、私用の携帯だ。メントあたりが怒っているのだろうと、ルーシは筒型のそれを開く。


「……メッセージ3000件!? 誰だ?」


 アプリを開く。メッセージを送ってきているのはただひとりだけだった。


「メンヘラ天使ここに極まり、ってとこだな。電話も1000回くらいかけてきてやがる。仕方ねェな……」


 ルーシは、『いますぐ死ね』とだけ返信し、身体を伸ばす。

 そうすれば、また電話攻撃がはじまった。


「チッ。死ね」


 心底面倒だし、心底意味がないが、ルーシは電話へ出る。


『ルーシさん!! なんで私には友だちができないんですか!? 気さくに話しかけたのに、完全無視されるか勘弁してくださいっていわれるかのどちらかなんですけれど!!』


「知らねェよ。どうせ口が臭せェんだろ。そんなヤツの相手してェ人はいねェよ」

『ち、違いますよ!! きょうはちゃんと歯磨きもしましたし、シャワーも浴びました!! なのに誰も寄ってこないし、こっちから話しかけても相手にされないんです!!』


「そりゃオマエだからな。この世でオマエの相手できるのは、おれだけだ。ものすごく悪い意味で」

『天気良いですね~とか、きょうはなに食べてきたんですかって聞いても、返事すらされないんですよ!?』

「世間話が下手なんて次元超えているな。つか、オマエと話すことは苦痛だ。ダリィから切るぞ」

『ちょ、ちょっと待って──!!』


 ルーシはうつむく。なんで25歳の世話をしなくてはいけないのだろうか。ルーシの実年齢は18歳。25歳の女とそういったことをしたときはあっても、ソイツらはさすがに自立していた。だが、メンヘラ天使にはそんな退屈な常識は通用しないらしい。


「あー……行く気失せる。行かなきゃ始まらねェが……不登校になるヤツってこんな気持ちなのか?」


 そんな中、パーラが出てきた。

 ここでルーシは気がつく。パーラの制服には、メリットとルーシが吸った煙草のニオイが染み付いていることを。


「パーラ、煙草臭せェか? 制服」

「うん!! めちゃ臭い!!」

「いじめの温床になりそうだな……。というか、ひとつ気になっていたことがあるんだ」

「な~に?」パーラは無邪気な笑顔だ。

「MIHの派閥ってどうなっているんだ? きのう、キャメル……お姉ちゃんから誘われたんだ。あの子も派閥を持っているのか?」

「……フランマ・シスターズって名前の派閥のトップだよ?」


 パーラはなにかいいにくそうだった。できれば口をつぐみたいのだろうか。


「そうかい。あの子がトップなら、さぞかし平和的なんだろうな。まあ、話したくなきゃ話さなくて良いんだが……他にもあるのか? 有力な派閥が」

「……5個ある」


「言いたくねェんなら言わなくて良いぞ?」


 ルーシはパーラを気にかける。そういうことをした相手だからだ。愛着があるのはなんら不思議なことではない。


「……いや、ルーちゃんが望むなら言う」


 パーラは普段の楽しそうな、陽気な、そしてなにも考えてなさそうな顔でなく、真剣な顔つきでいう。


「5個の派閥。5大派閥って言われてるんだけど、まずフランマ・シスターズが一番強いんだ。キャメルちゃんがトップだからね。シスターズっていうくらいだから、当然みんな女の子で、ランクはB以上。別にキャメルちゃんが望んでるわけじゃなく、キャメルを慕ってる人たちが強いからっていったら良いのかな?」

「なるほど。ランクBっていったらなかなかだしな」


 もっとも、きのうランクBを4人、一瞬で片付けたが。


「んで、キャメルちゃんはいじめをなくしたくて、いろんなことをしてるんだ。メンバーが悩み相談に乗ったり、先生と協力していじめをする生徒を止めたり……。でも」

「でも?」

「正直、いじめはなくなんない。フランマ・シスターズは深いところまで関与できないから。関与できないというより、もっと陰湿ないじめには気づくことができないからだね……」


閲覧ありがとうございます。

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