どんな〝ルーシ〟を望む?
「る、ルーシ?」
メントは、ぬいぐるみのように落下してきたルーシを抱っこする。
「なあ……、オマエらはどんな〝ルーシ〟を望むんだ?」
「は?」
されども意識は途切れていない。それに加え、意味不明なことを口走る始末だった。
それでも、パーラだけはルーシの言っていることの意味を理解しているようであった。
「私は、ルーちゃんに死んでほしくない。だからここにいる。どんな悪事を働いても、ルーちゃんが私を守ってくれたのは嘘じゃないもん。だから──」
刹那、ルーシは閉じかけていた目で捉えてしまった。パーラの背後に、未だ息絶えないスオミ・アウローラが立ち上がったという、悪夢を。
スオミは最初なにも言わなかった。だが、そんなことはどうでも良い。パーラが、あのパーラが、誰も傷つけなかった最愛の恋人が、スルリと刺され、力なく倒れ込む。
「て、てめえ……!!」
「どんなルーシを望む、だぁ……?」
スオミ・アウローラは、今にも死に絶えそうな顔色で、
「そりゃあ、悲劇という喜劇に飲み込まれ、絶望するおめえの面だよ……!!」
勝利宣言でもするかのような態度だった。
「ああ、そうかい……」
ルーシはシャツとベルトの間から拳銃を取り出し、スオミの頭に銃弾を放った。これで完全に絶命したスオミを一瞥し、ルーシはメントへ言う。
「パーラへ死に装束は似合わねェ。メント、私の魔力を使え。もう、ずいぶん失った。もう、生きる意味も見いだせない」
淡々とした口調の中、まだ現状を把握しきれていないメントだったが、ルーシが手を彼女に差し出してきたことで、ついにすべてを知る。
「……オマエ、死ぬつもりか?」
「ああ……、これがルーシという人間に課せられた原罪だ。いい加減楽にしてくれ。パーラも、ルテニアも、エウロもいねェ世界で生きたいとは思えない」
「ぱ、パーラはまだ死んでねえだろ?」
「オマエだって見たはずだ。あんな攻撃くらって、もう呼吸もまともにできていない。でも、私の魔力があればロスト・エンジェルスまで帰れる。あとは頼んだぞ、メント。うっ……」
これで何度死んだ? この世界へ来るために死んで、パーラを守るために、愛と平和の守護神の義務を果たすために、これまでだって死んできた。その度に蘇ってやったが、さすがにゲルマニカという異国の地だったら、ルーシの魂だって鎮魂されるはずだ。
*
「……、」
D-スペックは、失望をあらわにした。
「なんで、オマエらは根性がねェんだ? 立てよ、カルティエ・ロイヤル」
地面に横たわるカルティエ・ロイヤルと、呼吸を乱しながらも立っていられるD-スペック。その差は歴然だった。
「もうじき、この帝都も滅ぶ。ロスト・エンジェルスも滅びるだろうさ。ああ、おれはなにがしたかったんだろうな」
「なにがしたかった? ふざけるなよ。アンタの始めた陰謀だろう。ディーさん」
ジョイントをくわえ、首をゴキゴキ鳴らすジョン・プレイヤーが、眼前に立っていた。
「ハハッ、オマエはどこまでも化け物じみてるな。まだ魔力が切れないのか」
そして、D-スペックはすべての希望が途切れてしまったかのように、ジョンの矢をくらった。




