火を見るより明らかな結果
「ぐおあッ!?」
攻撃を食らわなければそれが最大の防御となる。ルーシはかろうじて有効射程距離である空中から、翼を使ってエアーズにトドメを刺そうと、一旦黒紫の翼を縮める。
「この馬鹿ガキが……!! だが、威力溜めてるんなら防衛体制はとれないよなぁ!?」
「そう思うのなら攻撃してこいよ。ビビっているのか?」
「上等だ、ゴラ!!」
無機質な灰色の高射砲らしき物体が、エアーズの頭上に出現する。
ルーシは不敵に笑い、手を広げて彼を小馬鹿にした。
「頭に血ィ上りすぎているんじゃねェか?」
なんの因果か、それが発射される瞬間とルーシの翼が再び跳ね上がるのは、同じタイミングのようであった。
そして、ふたつのエネルギーがぶつかり合う。単純な質量同士のぶつかり合い。エアーズもルーシも、すでに冷静ではない。
「おらぁ!! 威力で負けてるぞ、クソガキィ!!」
若干ではあるが、ルーシの翼は力負けしていた。そのセリフはエアーズの強がりではないのだ。
しかし、それでもなおルーシはヒトを翻弄する。
「ああ──、羽根をひとつしか使っていないからな……!!」
矢先、ルーシの背中が光った。そして爆発的に伸びていったもうひとつの羽根は、エアーズの背後に回り込んだ。
「てめェッ──!?」
「──なんだよ?」
背中を圧倒的な破壊力で貫かれ、ついにエアーズは力を失い地上へ落下していった。
「はあ、はあ……」
ルーシはある事故によって、脳の働きをすべて魔力に任せている。そのタトゥーまみれな右腕には腕時計が巻かれていて、秒針がゼロを指した瞬間、その幼女はどんな状況であろうとも寝落ちしてしまう。たとえ、この大空にいても、だ。
「あとは任せたぞ……」
時計がゼロを指した。ルーシは意識を失い、眠り始める。平然と1週間起き続ける、基、パラノイアじみた性格の所為で眠ることもままならないルーシが、半強制的に眠りにつく。
その窮地を救うのは、タイペイと彼女の連絡を受けて現れた、マーベリックだった。
「プレジデント!」
マーベリックはルーシの旧友であり、前世において21世紀最大の怪物がそうなり得た理由のひとつだった。短い空間移動を繰り返し、マーベリックはルーシを抱き寄せる。
「嫉妬しちゃうなあ」
兄、基、姉、いや、やはり兄を抱きかかえる相手に、タイペイは冗談を言ってみる。
「タイペイ、プレジデントを預かって」
「うん、クーアノンが最後の抵抗を企ててるんだね」
「そう。でも、あのエアーズってヤツが人間の中ではトップクラスだったみたい」
「ルーシ相手に良い勝負してたもんね。まあ良いや。ルーシは邸宅に戻しとくよ」
タイペイはルーシを抱え、その場から姿を消した。
その後ろから、続々とヒトが現れる。
だが、こちらにも味方はいる。
「姉弟があんなに苦戦するなんてなぁ。信じがたいぜ」
「アイツの能力はピーキーなところありますからね、アニキ」
「後始末は我々がすると?」
「そうでしょう、峰総長」
スターリング工業の最高幹部が揃い踏みした。結果は火を見るより明らかだ。




