表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/75

不穏な会話

「かなり精巧だな。水鉄砲だとは思えない」


 冒険者用の武器の中にも、銃火器は存在する。

 とはいえそれは従来のものとは違い、魔石のエネルギーを取り出し発射するタイプの武器である。


 本体価格が非常に高く、攻撃する度に高価な魔石を消耗するため、低ランク冒険者には縁の無い武器である。


 ソラは銃を構えて、引金に指を添えた。

 そこに魔物がいると想定して、狙い澄まして、引金を引く。

 次の瞬間、


「――うわっ!?」


 反動で水鉄砲が浮かび上がった。

 慌てて力を込めていなければ、今頃ソラの額にはたんこぶが出来ていたことだろう。


 凄まじい反動だった。

 射出された水も、ソラの目では捉えきれないほどだった。


「えっ、何コレ、本当に水鉄砲なの?」


 あまりの威力に、ソラは目を白黒させる。

 そういえば、とふと説明文を思い返す。


『恐るべき魔導技術が込められた武器』


「水鉄砲って名前が付いてたから油断してたけど、これって武器なのか?」


 攻撃力も55と、精錬前では全ての武器の中で一番高い。

 この攻撃力が水鉄砲の威力だとすると、確かに引金を引いた時の強い反動にも頷ける。


 そうなると射出される水も、ただの水ではあるまい。


「水魔法が込められてるのか」


 炎に次いで、二本目の魔法武器だ。

 先ほどの苦労が、一気に報われた。


 攻撃力がかなり強いが、一日に十度しか発射出来ないので、常用は不可能だ。


「これはいざという時用だな」


 水鉄砲は炎剣と違い、単体攻撃に特化している。

 ボスに近づく前に、ダメージを負わせる手段として有効だろう。


 早速、水鉄砲を精錬する。


名称:完璧な水鉄砲 ランク:SR

攻撃力:+55→71  精錬度:―→2

装備条件:AGI50→70


 続いて、イヤーカフだ。

 相変わらずフレーバーテキストがマッドだ。ちっとも装備したいと思えない。

 だが、間違いなく有用だ。

 ソラはげんなりしながらも、耳にカフを装着するのだった。


「どうか、呪われませんように……」



名前:天水 ソラ


名前:天水 ソラ

Lv:40(MAX) ランク:D

SP:40 職業:中級アサシン

STR:85 VIT:69

AGI:74 MAG:0 SEN:36→66

アビリティ:【成長加速】【中級二刀流術】【弱点看破】+

スキル:【完全ドロップ】【限界突破】【インベントリ】【隠密】【気配察知】

装備(効果):ライフブレイカー、鬼蜘蛛の足剣、革の胸当て+、亡者のローブ、ゴブリンキングの小手、漆黒のブーツ、疾風の腕輪(AGI+30)、湖水のネックレス(VIT+30)、鬼蜘蛛の憤怒(STR+30)、骸骨兵のイヤーカフ(SEN+30)






 翌日から、ソラは積極的にテンポラリーダンジョンを攻略していった。

 それと同時に、少しずつではあるが使わない武具の売却もおこなっていく。


 インベントリにある使わない武具は、いまや百に迫ろうかという勢いだ。

 ある程度整理しなければ、使う装備や新しいドロップの確認にも支障を来してしまう。

 なので一店舗で一点、複数店舗を梯子して売却していく。


 冒険者カードがDランクになったからか、店員に疑惑の目を向けられることはなかった。

 あるいはあの店員だけが、特別におかしい性格だったのかもしれない。


 武具が売却出来たおかげで、少し高くてもテンポラリーダンジョンを落札出来るようになった。

 けれど、無理はしない。

 無理に入札しても、価格が暴騰して逆恨みされるだけだ。


 テンポラリーダンジョンの場所は、入札時点で判明している。

 オークションで恨みを買えば、テンポラリーダンジョン前で〝お礼〟が待っている、という可能性が出てくる。


 厄介ごとは御免である。

 ソラはお行儀良く、誰からも恨みを買わないように、テンポラリーダンジョンを落札していくのだった。




「はぁ……全然駄目だな」


 Dテンポを攻略した後、ソラは地上を歩きながらため息を吐いた。

 今日でDテンポ攻略二十回だ。


 にも拘わらず、欲しいアイテムが出てこない。

 ソラが狙うアイテムを持っている魔物に、当たらないのだ。


「別のランクのダンジョンを回った方がいいのかなあ」


 公園のベンチであれこれ考えている時だった。

 ソラの耳が、冒険者同士の会話を捉えた。


「もう五日も帰ってこないんだってな」

「あれ、どっかのパーティが救助に行ったんじゃなかったっけ?」

「そう。そっちも帰ってこないんだって」

「マジかよ。中に入った奴ら、一度も出てこないのか?」

「ああ」

「変異ダンジョンか?」

「さあ。でも、後から冒険者が侵入出来るから、変異じゃないかもな」

「うーん」


 どうやら、テンポラリーダンジョンに入った冒険者が、戻ってこないようだ。

 冒険者の話をそれとなく聞きながら、ソラはホットドッグを頬張った。


(イヤーカフのおかげで察知範囲が広がったのはいいけど、聞こうとしてない他人の会話まで丸聞こえなんだよなあ)


 ソラは軽く、耳の頭を撫でた。

 そこには先日手に入れた、SEN値を大幅に引き上げるイヤーカフが填まっている。


 SEN値が上がったおかげで、【気配察知】が届く範囲が大幅に広がった。

 また戦闘中に、相手の攻撃の気配に素早く気づけるようにもなった。


 魔物の危険度が、ぐっと下がった。

 その反面、耳を澄まさなくても遠くにいる人の会話が聞こえてくるようになった。


 これが良いのか悪いのかは、わからない。

 この力に気づいてから、ソラはなるべくカップルがいなさそうな場所を歩くようにしている。


 でなければ、睦み言葉を聞かされかねないからだ。

 独り身のソラに、それはキツイ。


 心の安寧のためにも、ダンジョン攻略時以外は外すべきか?

 本気で考えている時だった。


「もうすぐ、スタンピードじゃないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ