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天才美少女三姉妹は居候にだけちょろ可愛い。【書籍発売中】【3巻発売決定】  作者: 秋月月日
第三部

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第78話 規格外


 切った野菜と買った肉をバーベキュー台の近くまで運んだところで、ようやく食事時の時間になった。


「準備も手伝ってもらったし、食材も分けてくれたんで、このままバーベキューにふくちゃんを参加させてあげたいんですけど……いいですか?」


 それぞれの椅子に座った三姉妹と日比野さんに向けて、俺は自分の要求を投げかける。

 ふくちゃんをバーベキューに参加させたいという考えは、精肉店からロッジに戻るまでの道の時点で頭の中にあった。食材が手に入ったのは彼女のおかげだし、荷物まで運んでもらっているから、何か恩返しをしたいと考えていたからだ。

 俺からの提案を聞いた一夜さん達は、少し考えた後、表情を緩ませた。


「私は構わないわよ。福澤さんとは一度お話ししたいと思っていたし」

「あたしもさんせーい。断る理由なんてないもん」

「私も異議なし」

「わたしは保護者だから、三人がいいって言うならいいんじゃない?」


 返って来たのは揃いも揃って賛成の言葉。反対されるとは思っていなかったけど、もしもの可能性を考えていたので、事が上手く運んでくれたことに俺は安堵の息を零した。


「という訳で、ふくちゃんも夕飯を食べていってくれ」

「ありがとうございますセンパイさん♪」


 可愛らしく微笑むふくちゃんに、ついドキッとしてしまう。今まで周りにいなかったタイプの女子だからか、どういう距離感で接すればいいのかがまだいまいち掴み切れていない。

 俺は網の上に肉や野菜を置きながら、三姉妹の方に視線をやる。


「……それで、ずっと気になってたことがあるんですけど」

「どうしたの?」

「何で俺以外、全員水着を着てるんですか……?」


 海水浴の時間は終わったはずなのに、俺以外の全員が昼間とは違う種類の水着を身に着けていた。しかも、さっきロッジに来たばかりのふくちゃんまで水着を身に着けている。なんだかサイズが合っていないような気がするんだけど、本当に彼女の水着なのか、それ?


「せっかく海にいるんだもの。水着を着ていたっていいじゃない」

「油が跳ねたら大変なことになりますよ……?」

「センパイは真面目ですねー。こういうのは雰囲気を楽しまないと!」

「そういうものか……?」


 水着でバーベキューなんて普通に常軌を逸している気がするんだけど、みんながそれでいいと言うのであれば俺があえて水を差す必要もないか……。

 気にするなと言うのでとりあえず気にしないことにしつつ、肉焼きを続行する。


「それにしても、ふくちゃんのそれ……やばくない?」

「二葉さんに水着を貸してもらったっちゃけど、ちょっと小さかったかもー」

「二葉のサイズで小さいって、どんだけ大きいのよ……」

「私より大きい人、初めて見た」

「ほほう。これはお姉さんも驚きのビッグサイズね……」


 肉を焼く俺を他所に、勝手に盛り上がる女性陣。しかも彼女達の視線はふくちゃんの身体のある部位に集中されているようだ。ようだ、と表現しているのは、俺があえてそちらを見ないようにしているからである。

 煩悩を脳内で消し飛ばしながら肉を焼き続ける俺に構わず、女性陣の会話は盛り上がっていく。


「凄い……何を食べればそんなに大きくなるのかしら……」

「一夜さん、女性の魅力は胸の大きさだけじゃ決まらんと思うとよ?」

「理来と同じことを言うわね……」

「でも、あたしも気になるな―。どうやったらこんなに大きくなるの?」

「そんな特別なことはしとらんったい。たくさん食べてたくさん寝るぐらい?」

「睡眠は大事」

「くっ……これから睡眠時間を増やそうかしら……!」


 おお、いい焼き目だ。流石はふくちゃんがおすすめしてくれた肉。どれどれ、味見を……うわ、美味っ! 噛んだそばから口の中で溶けていくぞ!?

 魅力的な光景から必死に逃避を続ける中、現実は非情にもその魅力度を高めていく。


「ねえ。あなたの胸、少し触ってもいい?」

「いいですよー」

「えいっ……おお……凄い重さ……」

「わ、私もいいかしら?」

「あたしも触りたーい」

「じゃあわたしも……」

「先生が触ったら警察に通報しますからね」

「この流れでもダメなの!?」


 女性陣がふくちゃんに群がり、その胸に触れては思い思いの感想を言って――ということが一分ほど続いたところで、俺の我慢の限界が来た。


「はいそこまで! 肉が焼けてますからみんなで食べてくださいね!」

「あ、センパイがキレた」

「あまり言わないであげなさい、彩三ちゃん。加賀谷くんもきっとふくちゃんの胸を揉みたかったのよ」

「センパイさんも揉むー?」

「え、いいのk……揉まねえよ!」

「今ちょっと揺らいだわよね」

「理来のえっち」


 この流れで責められるのは本当に理不尽じゃないだろうか。

 焼けた肉を皿に移しながら、俺は心の中で静かに涙を流した。

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