26 人材発掘(3)
ブクマ&いいね&評価&誤字報告ありがとうございます!
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
お陰様で、書籍化が決まりました!
これもひとえに、読んでくださる皆様のお陰です。
ありがとうございます!!!
夜も更け、後は寝るだけとなった時間。
私の世話を一通り終えたマギーが、部屋の入り口の前で静かにお辞儀をする。
「それでは、おやすみなさいませ」
「今日も一日、ありがとう」
いつも通り、お礼を伝えると、マギーは静かにドアを閉めて退室した。
部屋の中に残るのは私一人。
寝る前の束の間、ベッドの上でぼんやりと考える。
思い返すのは、昼間ホリーと話したことだ。
やっぱり、コッコは飼いたい。
卵だけでなく、その肉も欲しい。
コッコの肉は淡白だけど、前世の鶏肉よりも旨みが強く、トマトソースに合いそうなのよね。
そうなると、やはり多くのコッコが必要だ。
問題は飼育員。
屋敷で食べる分だけを賄うなら、【鳥使い】を雇ってもいいだろうか?
考えても始まらないわね。
屋敷の使用人をどうするかは、私一人では決められないもの。
でも、父や叔父に相談するとしても、何かしらの有益な情報が欲しい。
その情報を元に、コッコを飼育する許可を得やすくしたいところだ。
ここは検索機能の出番か。
(大量のコッコを飼育するのに必要な【称号】は?)
何から調べようかと考え、真っ先に頭に浮かんだのは【称号】のことだ。
昼間にも話していたからだろう。
パッと思い付いたのは【鳥使い】だったけど、もしかしたら他にも条件に合致する【称号】があるかもしれない。
そう思って検索してみると、目の前に半透明のウィンドウが現れ、そこにズラズラと検索結果が表示された。
検索結果にはタイトルが大きな文字で、その下に少し小さな文字で概要が記される。
ウィンドウの左上に件数が表示されているけど、結構な件数で、ざっと目を通すだけでも大変そうだ。
気を取り直して、表示されている内容を上から順に流し読みした。
最初に表示された結果は、やはり【鳥使い】だった。
その後も暫くは【鳥使い】に関する情報ばかりが表示される。
上から下へと結果を見ながら、思ったような情報が得られないことを残念に思っていると、ふと違う【称号】が目に入った。
「【ブリーダー】?」
何それ。
確か、動物の繁殖を行い、簡単な躾なんかをする職業だっただろうか?
前世では聞いたことのある単語だけど、今世では聞いたことがない単語だ。
そんな【称号】もあるのね……。
驚きつつ、検索結果の詳細を見ようと意識すると、ウィンドウの内容が切り替わる。
何々?
読み進めていくと、今まで知らなかったことが色々とわかった。
まず、【ブリーダー】という【称号】の効果だけど、こちらは想像通り、動物の繁殖に効果がある【称号】だった。
この【称号】を持つ人が雛のときから魔物を育てた場合、育てられた魔物は命令を忠実に聞くようになるそうだ。
【ブリーダー】のすごいところは【魔物使い】とは異なり、育てる魔物の数に制限がないところだ。
つまり、雛から飼育すれば、何百匹のコッコに言うことを聞かせることができるようになるということだ。
これなら、私が求める大規模養鶏も実現できそうね。
ついでに言うと、育てる魔物の種類も制限がないので、コッコではなく、もっと凶暴な魔物も手懐けることが可能らしい。
そして、同時に何種類もの魔物を育てることもできる。
ということは、コッコと同時に大量の馬の飼育も可能なのだろうか?
可能なら、馬好きの叔父が喜びそうだ。
次にわかったのは、この世界には一般に知られていない【称号】がまだ沢山あるということだ。
その中には【ブリーダー】のように、一見しただけでは、どういう効果があるのかわからない【称号】もあるらしい。
そして、そのような【称号】は所謂ハズレの【称号】とされているようだ。
効果が不明な【称号】を持っている人は、【称号】を持っていない人と同じ扱いとなるらしい。
むしろ、貴重な【称号】持ちであるにもかかわらず、ハズレだったということで、却って不遇な扱いを受けることもあるみたいだ。
こうして検索結果に出てきたということは、世の中に【ブリーダー】の【称号】を持つ人がいるのだろうか?
(【ブリーダー】の【称号】を持つ人)
気になって検索すると、新たなウィンドウが表示され、そこに結果が表示された。
件数は非常に少ないものの、いることはいるらしい。
結果には人名、性別、年齢、在住地などが表示されていて、在住地が屋敷から近い順に並んでいるようだ。
キーワードには在住地の条件を入れていなかったのだけど、勝手に並び替えてくれたのか。
今まで気付かなかったけど、結構気が利いた作りなのね。
「あら、近い」
そうして、検索した【ブリーダー】の【称号】を持つ人だけど、灯台下暗しというのか、意外なほど近くに存在した。
一番上に表示された人の在住地は、うちの領地だったのだ。
表示されている名前に意識を向けると、ウィンドウの内容が切り替わり、詳細な内容が表示される。
読み進めていくうちに、眉根を寄せてしまったのは、その人があまり良い扱いを受けていないのがわかったからだ。
その人の名前はノア。
歳は十四歳。
農家の五男で、うちの領地でも端の方の村に住んでいる。
村で唯一の【称号】持ちであるにもかかわらず、その【称号】がハズレだったために、村での扱いはあまり良くない。
それどころか、家族内での扱いも良くないようで、兄弟からは何かにつけて雑用を押し付けられ、酷使されていた。
なまじ【称号】を持っていることで、妙な嫉妬があるみたいね。
そうして、ノアについての情報を読み進めたが、自分に自信がないくらいで、他に難は見つからない。
不遇な扱いは受けていても、性格に捻くれたところはなく、村の人たちからの評判も悪くない。
精々、情けない奴だと思われているくらいだ。
年齢の割に体格は小さめだけど、健康で、コッコや馬の飼育係は十分に務まりそうだ。
何より、うちの領地の人間ってのがポイントが高い。
うちの領地の人間であれば、父か叔父の許可さえあれば、居住地を移動させることができるので簡単なのよね。
知れば知るほど、コッコの飼育員をお願いするのに、うってつけな人物に思える。
父と叔父の許可が取れれば、次に問題になるのはノア本人の意思だろう。
こちらは検索機能ではわからないので、まずは本人に話をしに行かなければいけない。
村から人材を寄越してもらう場合、村長に使いを出すのが一般的だけど、今回は私が直接話をしに行った方がいいような気がする。
何せ、欲しい人材というのがハズレの【称号】持ちだ。
色々な理由を付けられて、村長に都合の良い、別の人を寄越されても困る。
領主の屋敷って、村の人達からすると良い就職先らしいしね。
……うん、ノアには直接声を掛けに行こう。
そうと決まれば、まずは叔父に許可を貰わないとね。
朝起きたら、早速叔父との面会を取り次いでもらえるよう、執事のウォルターに相談しよう。
そうやって、明日の予定を決めると、睡魔が襲ってきた。
色々と調べていたら、結構時間が経っていたようだ。
よし寝よう。
私は睡魔に逆らうことなく、期待を胸に抱いて眠りに落ちた。
前書きにも書きましたが、この度、オーバーラップ様より書籍化することになりました。
こうして二作品目の書籍化のお話がいただけたのも、日頃から応援してくださる皆様のお陰だと感謝しております。
本当にありがとうございます。
書籍は5/25に発売予定です。
予約などが始まりましたら、また改めてご連絡いたしますね。
今後とも、よろしくお願いいたします。





