24 人材発掘(1)
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実験場でジャガイモが最初に収穫されてから一週間。
一度更地になったジャガイモ畑には、再びジャガイモが植えられた。
種芋が沢山収穫できたとはいえ、短期間に二度も同じ作業をしてもらうことになったのは少し申し訳なかった。
お詫びとして、村の人たちにもフライドポテトを振る舞ったわ。
村の人たちは非常食としてジャガイモに馴染みがあったからか、微妙な表情をしながらも口にしてくれた。
けれども、一度食べた後は次々にフライドポテトに手が伸びたので、ほっとした。
これなら、他の村でも受け入れてもらえそうだ。
ジャガイモを再度植えたのは、実験のためだ。
今回は当初目標としていた通り、ホリーの歌や魔法を使わずに育てる実験となる。
領地中にジャガイモを食料として根付かせるためには、それぞれの土地で普通に栽培してもらう必要があるからね。
ちなみに、ホリーの歌が必要なくなったのかというと、そんなことはない。
種芋を収穫したときと同様に、作物の種を増やすために大活躍してもらっている。
今も新たな作物の種を増やすために、歌ってもらったところだ。
ここは屋敷の裏の少し離れた場所にある畑。
元々屋敷で食べる分の野菜を育てていた所だ。
実験場まで移動するのが面倒だったので、今回はこちらに少し間借りさせてもらって、新しい作物を育てることにしたのだ。
畑にはホリーとマギー、数人の庭師さんたちと一緒に来ていた。
庭師さんたちに来てもらったのは新しい野菜の作物の種を植えてもらうためだ。
種を植えた後にホリーが歌うと、地面から何本もの茎が伸び、茎からは葉が生い茂った。
通常の何倍もの速さで育つ作物を見て、庭師さんたちは目を丸くしていた。
初めて見ると、そういう反応になるわよね。
そうしてホリーが歌い終わった後には、緑色の隙間から真っ赤な実が顔を覗かせていた。
「どうかな? ソフィアちゃん」
「うん、いい感じね」
たわわに実った果実を一つ捥ぎ取り、ニンマリと笑う。
手に持つのはトマト。
前世ではお馴染みだった野菜だ。
ジャガイモの次に作ることになったのはトマトだった。
非常食として扱われているジャガイモよりも、この国の人たちには更に馴染みがない野菜だ。
私も現世では初めて見た。
クローネがどこかからか苗を持ってきてくれたので、世界のどこかにはあったんだろうけど。
次に育てる野菜としてトマトが選ばれたのは、トマトケチャップを作るためだ。
フライドポテトを食べていたら、欲しくなったのよね。
それで作ろうと思ったらトマトだけがなくて、ないのなら作ってしまえという話になった訳だ。
「それじゃあ、後はお願いね」
「かしこまりました」
試食用のトマトを確保して、残ったトマトの収穫を庭師さんたちにお願いする。
この後はトマトから種を取るよう、事前にお願いしておいたので、後は良きに取り計らってくれるはずだ。
種の一部はここに植えて、残りはジャガイモと同じように実験場で栽培してもらう予定である。
そして、庭師さんたちに後の作業を任せて、私たちは屋敷へと移動した。
「うまいやんけ!」
「このソース、じゃなかった調味料? ほんのりとした酸味がいいアクセントだね!」
「でしょ? こっちも同じ野菜から作ったソースなんだけど、良かったら食べてみて」
屋敷の食堂で、クローネとホリーに振る舞ったのは、フライドポテトとケチャップ、それからトマトソースを掛けたパスタだ。
ケチャップのために育てたトマトだけど、用途をそれだけに絞ってしまうのは勿体無い。
前世で好きだった料理には、トマトを使ったソースを利用したレシピが多くあったのだ。
基本のトマトソースに、ミートソース、魚介類をたっぷり使ったペスカトーレに、唐辛子の辛みが利いたアラビアータ。
今日出したパスタだけでも、ざっと思い付くだけでもこれだけある。
あぁ、トマトソースを塗ったピザ生地にバジルとチーズを載せたマルゲリータも美味しいし、トマトと卵を炒めた西紅柿炒鶏蛋もいい。
ムルグマカニも忘れてはいけないわね。
と、いけない。
前世の料理が恋しくて、ちょっと横道に逸れてしまった。
とにかく、トマトの可能性は無限大なのだ。





