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第56話 チートなら空も飛べるはず

 虎を倒した後、腰ベルトに収納する間もなく今度は四つの魔力反応が迫ってきていた。

 しかも虎の血に塗れてしまったことでそれ以外の魔力反応もかなりの数が私に向かってきている。どうやら一つ一つに時間を掛けてはいられないらしい。

 今迫ってくる魔物はさっきの虎と同じくらいの強さ。それ以外の遠くから迫ってきているのはそれよりは弱いものの数だけはかなりの数がいる。

 しかしさっきの虎のように一体だけで襲ってくるなら電気触(スパーク)で痺れさせてから止めを刺せばいいが、数が多いと他の魔物の止めを刺してる間に残りの魔物が麻痺から復帰してしまう。

 さて、次はどういう方法を取ろうか?これ以上の電撃魔法だとさすがに体が黒焦げになってしまうし、火は以ての外。さっきの虎と同様のスピードなのだとしたら地魔法の石射(ストーンショット)では避けられてしまう。水に閉じ込めるか氷漬けにしてしまうか、だろうか?

 それかもういっそ問答無用で全部普通にやっつけてしまおうか?

 とりあえずシンプルな方法で試してみて、駄目だったら普通に片付けよう。

 …ちなみにシンプルな方法とは?

 もちろん、鈍器で殴る!

 それじゃ準備しておこうかな。


岩弾砲(ロックバレット)


 今は周囲に誰もいないので自重はもちろん遠慮すらするつもりがない。自分の周りに岩でできたバスケットボール大の弾丸を百発ほど浮かべた。あとは発射と念じればいつでも対象に向かって飛んでいく。

 そして森の奥から四体の魔物が走ってきた。犬?ではない、狼の魔物だ。動物の狼と同じなのだろう、複数の個体が協力して狩りを行うようでバラバラに、それでいて連携の取れた動きを始める。

 私は浮かべた岩の弾丸の一つを先頭の一体に向けて発射する。


バガッ


 しかし先頭の狼はその身を引くことで躱し、入れ替わるように二番手の狼が先頭になり私に向かってくる。無論、それに合わせて再び岩の弾丸を発射する。しかしまたその身を引いて躱しまたその後ろの狼と入れ替わる。

 キリがないね。あまり時間を掛けていると残りの魔物がここに到着してしまう。じゃあ逃げ道まで全て無くしてあげよう。

 私は弾丸を全て発射すると狼達は最初避けていたが徐々に被弾し始める。威力自体はそこまでないだろうがそれでも当たれば動きは鈍る、そして鈍った動きでは私の魔法は避けられない。頭にぶつけてしまえば脳震盪くらいは起こすし、当たり所が良ければ(?)即死するはず。

 私の周囲に外れた弾丸が空けた穴が何十個もできたが狼達は全く動かなくなっていた。


 狼達を撃退した後、周囲には十数体の魔物の反応が近付いている。というか、この森の奥にいる魔物は血の匂いに敏感すぎるでしょ?!

 再び岩弾砲(ロックバレット)で自分の周りに岩の弾丸を浮かべると迎撃態勢に入る。これで始末できなかったらさすがに余裕はなくなるだろうからその時は威力の高い特異魔法で殲滅することにしよう。

 さぁ、ちょっと頑張らなきゃね!




「はぁ…しんどかったぁ…」


 結局あの後マッドベアより強力な熊の魔物に襲われて、猿、蜥蜴、鳥、別の狼等々と立て続けに連戦することになった。しかも一段落して花を採集しようとしたんだけど、手を伸ばしたらまた別の大蛇が来てそちらもまた倒した。というか花に手を伸ばすだけで襲ってくるあの蛇はこの花の守護者か何かなんだろうか。

 おかげで残りの魔力もかなり減ってしまったけど、とりあえず無事で怪我一つないのは僥倖だ。そして倒した魔物も大きな傷もない状態で倒すことができたのでそれなりに買い取り額が高くなってくれる…といいなぁ。

 私は倒した魔物に全て止めを刺して腰ベルトに収納していく。流石にかなりの数があって入りきらないかなと思ったこともありました。どうやらそんなものは杞憂のようであっさり全部収納されてしまった。私の作った魔法の鞄はどれだけの容量があるんだろ?

 約五十体ほどの魔物を全て収納し終わると洗浄(ウォッシュ)を使って体についた返り血を洗い流した。

 その後今度こそ花を採集しようやく一段落した。ちなみに花は全部で十五輪あったので依頼は達成と見ていいかな?

 さて、ここからが問題。

 今は四の鐘が鳴ってしばらく経ったところ。こんなに魔物に襲われるならゆっくりお昼ご飯も食べられないので早々に街に戻った方が良さそうだ。


「で、対岸の向こうから来たはずなんだけど…街ってどっちだろ?」


 さすがに森の中を当てもなく歩いていたので既に街の方角を見失っていた。

 このあたりは高い山もないので目印になるようなものは何もない。これが日本のコンクリートで出来たジャングルなら目印になるものはいくらでもあるのにここは異世界の森。

 もうね、当たり前なんだけど、木しかない。水溜まり…池もあるけど。

 仮にさっきの花畑に戻れたとしてもそこからまた街の方角だってわからない。どこかに目印となるようなものでも置いておけばよかった…。

 こんなところで遭難とか洒落にならない。リコリスさんに言われた通り餓死してアンデッドになってしまう。そもそも明日のリードの訓練に遅れるわけにもいかないしね。いくらなんでも初日に遅刻したらクビは間違いないだろう…いきなり無職は困る。


「あー…もうどうしよう。日本ならスマホのGPSで自分の位置も街の場所もすぐわかる…の、に…?」


 GPS?

 そういえばスマホのMAP機能は航空写真の機能があって遥か上空からその街を見たり、世界中のいろんなところを見ることができたっけ。

 よくそれでダイヤモンド採掘地や東南アジアの宝石取引所等を真上から眺めていつかは行ってみたいと思ってたっけ。

 話が逸れた。

 つまり、上空から見ればいい。でもさすがに魔人化しても遥か上空から見ることはできないだろうから何とかしてもっと高く飛ばないといけない。せめて百メテルは飛び上がらないと街の方角はわからないと思う。

 天魔法の風圧で上に押していくのが一番簡単な方法かな?うまく行けば空も飛べるかもしれない。ただ出来れば最初は一気に上昇したいところ。じゃないとさっきも襲われた鳥の魔物の餌にされるかもしれないし。つまりロケットやミサイルみたいに最初は一気に上昇、その後街の方角を確認したらそっちに天魔法の風圧で押していく、着地の際もいきなり高いところから落ちたら死んじゃうかもしれないから魔人化を使う。こんなとこかな?

 ロケットみたいに一気に上昇かぁ…あれって結局のところ反作用を使った推進力なわけだから、下方向に強い力を向ければ私の軽い体くらいなら反発した力で上に持ち上がるはず。

 最初に水の塊を作り出して空中に固定。どのくらい必要になるかわからないのである程度は適当に。だって私勉強はそれなりにしてたけど決して理系ではなかったんだからね、わかるわけない。

 その後それを丸ごと空気で覆い、どんどん気圧を上げていく。少しずつ水の塊が小さくなっていくのでそれに合わせて覆っている空気も増やしていく。

 いわゆるペットボトルロケットの原理だ。爆発魔法もないわけではないけどそれを自分の真下で炸裂させると私自身も大怪我では済まなくなる。

 かなり圧力を加えたところで自分の周りに空気の膜を張ってその発射装置の上に移動すると外側を覆っていた空気に出口を作った。


バシュゥゥゥゥゥッ


「うひぃあああぁぁぁぁぁぁっ?!?!!?!」


 思った以上の勢いで私の身体は上空へと飛ばされていった。

 身体にかかるGはジェットコースターなんてものは比にならない。視界がブラックアウトもせず意識を手放さずに済んだのは私自身がレベルアップして身体が丈夫になっていたからかもしれない。

 僅か数秒でかなり高いところまで上がることができた。眺めはとっても良い。良いけど…。


「たっ高すぎっ!やりすぎたあぁぁぁぁぁぁっ!!」


 とは言え動揺して目を閉じるわけにはいかないのでなんとか周りを見渡す。すると森の近くにある街を見つけることができた。よく見ると更に遠くに二つほど村も見えたけど今はどうでもいい。

 別の天魔法の風圧で自分の身体を上方向に向かうようにする。この高さまでくれば鳥の魔物に狙われることもないだろう。身体が安定したところで今度は街の方へ飛んでいく。


「うひゃぁぁっ!すごいすごい!私空飛んでるよおぉぉぉぉっ!」


 自分の身体だけを飛ばして空を飛ぶ感覚に感動する。ただそれなりの勢いがあるせいで風圧で目を開けていられない。

 それだとどこまで飛んでいいかわからなくなりそうなので自分の周りにもう一度別の空気の膜を作った。

 そうすることで風圧も気にならなくなり安心して飛ぶことが出来る。そして数分程度でベオファウム上空まで戻ってきた。あとは着地だね。

 今度は下から上に風を出してゆっくりと下降していく。最後は魔人化を使う予定だったがこっちの方が確実安全に下りられそうだったので急遽変更したわけだ。

 ベオファウムから少し離れたところに着地した私はその場で手と膝をついてうずくまった。何はともあれ無事に帰ってこれたことがまずは嬉しい。それよりも。


「空飛ぶのって…楽しいぃぃぃっ!」


 でも、出来ればもう少し安全に飛びたい。これもまたアドロノトス先生に相談だね!絶対確実安全に空を飛べるようになってやる!

 私は高揚した気分のままスキップするかのように街へ向かい、入り口の門へ辿り着いた。


「お?お帰り嬢ちゃん。随分いい笑顔だが依頼はうまくいったのかい?」


 街に入るところで昨日も会った門番のおじさんに声を掛けられた。ちなみに昨日はギルドカードを持っていることをとても疑われて入る前に一悶着あったんだけどね。でもその甲斐があって私のことをよく覚えていてくれたようだ。


「ただいま。うん、今日もバッチリだよ!はい、カード」

「あいよ。…うん、通ってよし!バッチリってことはなかなかいい稼ぎができてるってことか?」

「んー…いい稼ぎになったのかはギルドで鑑定してもらってからかなぁ?」

「ははっ!そりゃそうだな!じゃいい金になったら欲しいもんいっぱい買うといいさ」

「…そういえば…昨日のお金も全く使ってないや。今日は買い物もしてみようかな?」

「それがいい。金ってのは使ってナンボだからな」


 ナンボって…日本の方言よね?なんで異世界にあるのよ…。というが言語理解のスキルのせいで私に都合のいいように翻訳されてるのかな?

 私は門番さんに「ありがとー」と振り向きながら手を上げて挨拶するとおじさんも手を振って挨拶してくれた。

 一仕事終えてああいう人と話すとなんか和むね。

 さて…それじゃ今日もヴァリーさんとやり合うとしますかっ!

今日もありがとうございました。

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