表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

570/582

第536話 管理者代理代行の引き継ぎ

コミカライズもよろしくお願いします!

 音は無かったと思う。

 私の攻撃はヴォルガロンデの剣を斬り砕き、彼の胸に大きな傷をつけた。


ギャリィィィン


 解けて足下へと零れていく金色の鎖。

 同時に私の力も抜けてその場に倒れた。

 でも地に伏したのは私だけではなく、ヴォルガロンデも同時にその場へ倒れた。




 目を覚ましたのは元の部屋だった。

 あれからどのくらいの時間が経ったかはわからない。

 でも目の前には心配して覗き込んできている七人の顔があった。


「セシル!」

「良かった……目を覚ましたのね!」


 一番に声を上げたのはユーニャ。抱き着いてきたのはリーライン。

 みんなをあの戦いに巻き込まなくて本当に良かった。

 ヴォルガロンデの力は私の想像を遥かに超えていて、今まで戦ったどの相手よりも絶望的に強かった。


「……っ! ヴォルガロンデはっ?!」

「彼なら……」


 顔を横に向けたミルルの視線の先を追うと、三人の神に囲まれたヴォルガロンデが床から起こされたところだった。


「ごほっ! ……おめ、でとう、セシル……君の、君達の強さは……本物だったよ」


 咳き込んだ拍子に血を吐き出したヴォルガロンデは私の攻撃を食らったせいで瀕死なのにその顔には笑顔が浮かんでいた。


「ねぇ、こんなことしなくても良かったんじゃないの?」

「そうは、いかないよ……。僕がやってきたことを、君によって、証明してほしかったんだ……。僕は、間違ったことは、していなかった……」


 何が彼をこんな風にしてしまったのかわからないけど、長く生きたせいで空虚になってしまったというなら、何故その間に拠り所となるものを作れなかったんだろう。


「あ……そうだ。ヴォルガロンデ、貴方は魔物の魔石から魔物を復活させることは出来るの?」

「あぁ……昔、そんな研究もしたっけ……」

「これを」


 私はチェリーに起こしてもらって彼に近付くと、左腕のバングルから二つの魔石を取り外した。


「これ、は?」

「きっと、貴方のことをよく知ってる人だと思う」

「……そうか。君が、持っていてくれたんだ……セシル、よく、覚えておくといい……擬似生命創造」


 ヴォルガロンデは私も持っている擬似生命創造のスキルを使って魔石に魔力と神気を流していく。


「今の僕には、これ以上、出来そうにない……でも」


 彼の手の中にあった魔石が強い光を放つと、その光が徐々に膨らんできて人のような形を取り始めた。


「……ここは……?」

「ふむ? これは、転生ではないようだが……?」


 現れたのは亡くなる直前のフルハと、エルダーリッチではない受肉したデリューザクスの姿だった。


「フルハ」

「……セシルはん、言いはりましたかいねぇ? お懐かしゅうございます」

「ありがとう。それより、そっちの人は見覚えある?」


 私が指差した方を見たフルハは、その顔を凍りつかせた。


「ヴォルガロンデ……? ヴォルガロンデやないのっ?! なんですのこの傷はっ!」

「はは、久し振りだね、フルハ……それと、デリューザクスも」

「ヴォルガロンデ、お前……」


 少しだけ二人と話す時間をあげたい。

 私は奥さんたちに支えられながら壁際に移動する。

 身体の傷はほぼ治っているけれど、MPを無くした魔渇卒倒と闘気と神気を放出し尽くしたせいでまともに動くことが出来ないでいた。


「ごめんなさいなの……私、またセシルの役に立てなかったの……」

「キューも……何一つ良いところなかった……」

「ネルも。セシル姉の盾にだってなるつもりだった。なのに寝てただけ。自分が許せない」


 戦闘面では特にやる気の高いチェリーが落ち込むのも、やってきたばかりのキュピラとネレイアが涙ぐむのもわかる。

 でも私はみんなを巻き込まなくて良かったと心の底から思っている。


「それを言ったら、ここにいる者はみな誰も役立たずでしたわ。でも、それで誰かが死んだらセシルはきっともっと悲しみますわよ」

「ミルリファーナ様の仰る通りです。セシーリア様がこうして無事だったことをまずは喜びましょう。反省も、修行も、またこれからやれば良いのですから」


 私の言いたいことは二人が全部言ってくれちゃったよ。

 なんで私が考えてることがそんなにわかるんだろう?


「それはセシルのことをみんなが本当に大好きだからだよ」


 そしてみんなに輪をかけて思考を読んでくるのがいつも側にいてくれる水色の髪をした愛しの女性(ひと)


「ユーニャ、私の考えてること全部読むのやめてよ……」

「ふふ、ごめんね。セシルのことばっかり考えてるせいかもしれないね」

「……ありがと」


 まだ目の前がぐるぐるしてるし、全然身体に力が入らない。隣に寄り添うユーニャとミルルの柔らかい胸に挟まれているのに不埒なことが頭に過ることもないくらい余裕がないらしい。


「セシーリア、これ」

「……これ? って?」


 リーラインは私に一本の短剣を差し出してきた。

 しかしそれは私が持っていたものじゃないし、装飾は宝石が散りばめられ、刀身にいたっては薄く透けた金色のガラスのような見事な美術品としか言えないものだった。


「貴女が倒れていたところに落ちていたのよ」


 言われて腰ベルトに指を当てて中身を確認してみると確かに私の短剣は無くなっている。

 異空間にも入っていない。


「私の、かなぁ……? でももう一本は無くしちゃったみたい」

「またクドーに頼んでみたらいいじゃない。きっと喜んで作ってくれるわ」


 それもそうか。

 私はリーラインから受け取った短剣を腰ベルトへと収納する。

 ちょうどその時、カツンカツンと小さな音がしてヴォルガロンデの方を見るとフルハとデリューザクスの姿が消えていた。


「……ありがとう、セシル。最期に、友だちに会えて、嬉しかったよ……」


 既にこちらを振り向く力すらないのか、掠れた声で告げるとヴォルガロンデは大きく息を吐き出した。


「僕が、死ぬと、同時に君へ、管理者代理代行としての……情報が全て、流れていく、はずだ……。種族進化、したときと同じような、感じ、かな……。種族は、変わらない、けど……身体は変わる、から……」


 あぁ、英人種になった時のアレね。

 白い繭に包まれて動けなくなっちゃったんだよね。

 でも種族は変わらないけど、身体は変わるってどういうこと?


「少し、時間はかかると思うけど……頑張って。ここにいる三人も、君へ引き継ぎが終われば、好きに使っていいから……」


 三人とも凄い美女で好きに使っていいって言われてもね?

 いやいや、さすがにそれはちょっとやめよう。

 ひょっとしたらヴォルガロンデのことが好きだったかもしれないんだし。


「ニーディイオーネ、ビルザニッグ、エッツォワーナ、三人とも良いね?」


 三人の女神たちは何も言わずにただ首を縦に振った。

 もう余計なことは言わないつもりなんだろうか。


「……最後に、セシル。本当に、ありがとう……僕の作った世界で、僕を終わらせてくれて……感謝してる」

「私は、何も……でも、どういたしまして。ちょっと長く生きすぎたんだし、次の人生まで少し休憩したらいいんじゃない?」

「……は、ははっ、君は面白いこと言うね……。あぁ、そういうのも、いいかもしれないなぁ……良いアドバイスの、お礼に……僕の、本当に最後の力を、君たち、に……」


 ヴォルガロンデは少しだけ手を持ち上げると指先に小さな光を作り出してその場で弾けさせた。

 眩しくもない、何が起こったのかまるでわからないままにそれは終わったけれど、急速にヴォルガロンデの身体が透けていく。


「ヴォルガロンデ!」

「大公さまっ!」


 私とステラの声が重なり、ステラはヴォルガロンデに近寄ろうと駆け寄った。

 しかしその身に触れることは叶わず、既に胸の下まで消えている。


「さよなら、僕の世界……あとはセシルに……世界を……」


 そう呟いたヴォルガロンデは目を閉じると、完全に消えてしまうまで二度と開くことはなかった。

 なんという喪失感。

 世界から管理者に連なるものがいなくなった漠然とした不安のせいなのかはわからないけど、多分この心の引っ掛かりみたいな不安感は世界中の人が感じたに違いない。


 けれど、次の瞬間だった。


---管理者代理代行の引き継ぎが承認されました---


---この世界の管理者---不在。管理者代理---不在。管理者代理代行を最上位として登録します---


---管理者代理代行登録中---


---現時点でのレベル、スキル、タレント、その他条件を読み込んでいます---


---特性のあるスキルを最上位スキルへ強制ランクアップします---


---『神の祝福』を確認。アンロックシステムの付与を行います。……付与済み---


---error---

---『神の祝福』が重複。確認中…………前管理者代理代行によるギフトと判明---


---『神の祝福』を確認。アンロックシステムの付与を行います。……不可能---


---error---

---『神の祝福』のバグを検出。デバッグ作業開始---


---複数のオリジンスキルを確認しました---

---前管理者代理代行によるギフトを確認しました---

---オリジンスキルの書き換え実行---


---管理者代理代行登録完了---

---管理者代理代行名……『セシーリア•ジュエルエース』---

---管理者代理代行の補助作業者は三名です---


---条件を満たしました。タレント「亜神」が進化します---


---新たなタレント「管理者代理代行」が開花しました---


---レジェンドスキル「神ノ指先」を獲得しました---


---各種スキル・タレントのランクアップ完了---


---条件を満たしました。スキル「魔力譲渡」「補助魔法」「付与魔法」ユニークスキル「炎魔法」「氷魔法」「天魔法」「地魔法」レジェンドスキル「生命魔法」「暗黒魔法」「時空理術」「四則魔法(上級)」「新奇魔法作成」はレジェンドスキル「根源魔法」へ統合、融合進化しました---


---条件を満たしました。タレント「支配者」が進化します---


---新たなタレント「根源ニ至ル者」が開花しました---


---ユニークスキル「超槍技」はレジェンドスキル「絶槍」へ進化しました---


---ユニークスキル「並列思考」レジェンドスキル「並列存在」へ進化しました---


---条件を満たしました。タレント「暴君」「憤怒」「滅ボス者」を強制統合、融合進化させます---


---新たなタレント「魔王」が開花しました---


---レジェンドスキル「暴君」「」を強制統合、融合進化させます---


---レジェンドスキル「心砕ク者」を獲得しました---


---専用レジェンドスキル「限界突破」を獲得しました---


---特殊条件を満たしました。レジェンドスキル「絆紡グ者」「心砕ク者」はレジェンドスキル「心絆ス者」へ統合、融合進化しました---


---特殊条件を満たしました。レジェンドスキル「限界突破」が重複獲得されました。レジェンドスキル「限界突破」はレジェンドスキル「極限破綻」へ融合進化しました---



---本人特性による条件を満たしました---


---新たなタレント「君主」が開花しました---


---ユニークスキル「王威」を獲得しました---


---条件を満たしました。スキル「宮廷作法」ユニークスキル「殺意」「王威」はレジェンドスキル「神威」へ統合、融合進化しました---


---オリジンスキルの書き換え完了---

---前管理者代理代行のギフトを有効化。オリジンスキルは「セシーリア」に統合されました---


---『神の祝福』のデバッグ作業完了---

---神の祝福『_%~#』は神の祝福『DIVA』へと正常に登録されました---


---身体能力、精神構造の再構成と最適化を行います…………完了---


---管理者代理代行の情報をアンロック---

---管理者代理代行業務を記憶領域へ導入します---


---上位権限へのロックを掛けます---

---運営存在への命令権を付与します---


---管理者代理代行の引き継ぎは完了しました---



---引き続き補助作業者の登録を行います---


気に入っていただけましたら評価、いいね、ブックマーク、お気に入り、レビューどれでもいただけましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>レジェンドスキル「神ノ指先」を獲得しました  これでゴッドフィンガーとか鷹とか言う言葉が頭に湧いてきてしまった自分は、いけない子。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ