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第55話 森の中で

単日のPVで初めて1000を超えました!

かなり嬉しいです!

 さて、依頼を受諾した私は昨日と同じ森に来ている。

 昨日薬草を採集した場所よりもだいぶ奥に依頼の花は咲いているとのこと。しかもノーラルアムエの花はちゃんとした処理をしないと摘んでから一日でしおれて腐ってしまう。なんてワガママな花なんだろうね。

 とにかく森の奥に向かわないといけないので私は急いで腐葉土でふかふかしている地面を蹴っていく。

 但し途中に見かけた珍しい薬草や毒草は回収しておいたのは言うまでもない。


「さて、だいぶ奥まで来たはずなんだけど…」


 感覚で言うなら入り口から七千メテルは入っている。かなり広い森のようでリコリスさんから聞いた話だと隣の領地の中ほどまで続いているという。

 確かにこれでは迷子になって餓死でもしようものなら森の中をさ迷うアンデットになってもおかしくないだろう。そんな将来は死んでもお断りよ。…というか死んだらアンデット一直線か…。

 そんな心の中のツッコミを軽く流して気配察知と魔力感知を使用、更に知覚限界も使って検知範囲を最大まで広げていく。

 急激にMPが減っていくが魔人化ほどの減少量ではない。これで魔人化まで使っていた以前リードとユーニャを探しに行ったときは馬鹿みたいな勢いで減っていったのを覚えている。スキル四つ同時使用は通常の数十倍MP消費があると思う。恐らく三十分ほどで枯渇するだろう。

 もっとも、今はそんな状況にまではならないけどね。


 検知範囲を最大まで広げているおかげで魔物の気配もかなり鋭敏にわかる。リコリスさんの言った通りマッドベアよりも強い魔物がゴロゴロいるけど別に無理に戦う必要もない。

 それよりも魔物とは違う反応が少し先から感じられる。


「なんだろう?」


 魔力感知と気配察知だけ使いその方向へ向かうと森の中の開けた場所に出た。そこだけは日の光が差しており花畑になっている。こんな光景を童話の挿し絵で見たことがある気がする。

 その中に依頼のノーラルアムエの花が…あればよかったのにさすがにそんなうまい話はないらしい。でも確かにここには変に高い魔力が溢れておりその原因はここにあるのは間違いない。

 しかしどの植物を見ても珍しいものではあるけど魔力を放出しているようなものはない。再度知覚限界も使いその魔力の発生源を探る。


 確かにこの花畑のほぼ中心に魔力の反応はあるがどうにもその原因がわからない。


「うーんん?ひょっとして地下、かな?」


 知覚限界は検知範囲を広げるスキルだけど今までは半球状にしか広げていない。今までは気にしたこともなかったけどそれを地下に向けて広げてみる。

 すると地面の下、数メテルほどの所に大きな魔力の反応がある。

 なんだろう?

 ひとまず珍しい薬草は採集しておいて心苦しいけど花畑を地魔法でまるごと持ち上げることにする。


ゴゴゴゴッ ガッ


 そして持ち上げたところに出てきた岩の塊を見ると鈍い金色に輝く鉱石が見えた。とりあえずもう一つ地魔法でその鉱石の塊も持ち上げて横に置くと花畑を元に戻してからゆっくりと観察することにする。

 鉱石の塊は私の身長よりも大きく横幅は四メテル以上。鈍い金色。金かなと思ったけど重さはそれほど感じないので金ではない。黄鉄鉱、いわゆる愚者の金かとも思ったけどそれも違う。明らかに比重が軽すぎる。

 魔力を帯びた金属なんて前世にはなかったのでこれがなんなのかまったくわからない。

 とりあえず珍しい金属であることに間違いは無さそうなのでなんとか持ち帰ろう。


「でもさすがにこのサイズと重量だと魔法の鞄に入るかな…うわっ?!」


 私が腰ベルトの武器を入れている鞄を開いて鉱石に触れるとそれはあっという間に収納されてしまった。

 こういうことがあるなら無駄に心配しないように腰ベルトの容量の確認をしておくんだったね。でも入るのは入ったから結果オーライってことで。この鉱石は魔力も帯びてることだしギルドではなくアドロノトス先生に見てもらうことにしよう。

 この鉱石の魔力のお陰でここだけ珍しい薬草の花畑になっていたのかもしれないね。

 さ、依頼の続きをしようかな。


 花畑は結局ノーラルアムエの花が無かったので私はまた魔力感知と気配察知、知覚限界を使って森の散策をすることにした。

 時間はまだ三の鐘が鳴ってしばらく。帰る時間を計算しても探索の時間はまだまだある。

 しばらく森を進んでいくと今度は汚れた池に出た。池というには川から水が流れ込んでいる様子もないので水溜まりと言った方がいいかもしれない。深さはかなりありそうだけど濁っている上に藻や水草がかなり茂っているのでどのくらいかは測れそうにない。

 しかしただの水溜まりにしては広い。対岸まで百メテルはゆうにあるし幅はそれ以上あるだろう。

 川はなくても森の中の水分が土を通してここに集まってきているのかもしれない。

 そして森の中では確実に水を得られるためか近くには魔物の反応がいくつもある。あまり長居するのは避けた方が良さそうだ。

 周りは木々に覆われていて肉眼だけに頼っていると簡単に魔物に襲われてしまうだろう。それこそ気配察知のある私や斥候職であるシャギルさんのような人がいれば別だけど。

 立ち去るため踵を返そうとした時に対岸の木に巻き付いた蔓がつけている花が目に入った。

 出発する際に見せてもらった依頼書に描いてあった絵と同じもの。椿と百合を足したような白い花で茎は薔薇のように蔓状になっているという条件にもピタリとハマる。

 ここからだとちょうど対岸の反対側なので周囲を回っていけばすぐに辿り着くだろう。池の周囲はぬかるんでいて足を取られやすいので少しだけ離れて木々を縫うように森の中を走っていく。

 池の形が思ったより複雑な形をしていたため十分ほど走ってようやく花のところまで辿り着いた。

 花からは甘いような香りが放たれていてつい引き寄せられてしまう。これだけ良い香りのする花なら贈り物としても最適かもしれない。

 それにしても本当にうっとりするような香り……なんだろう?脳内で警鐘が鳴っているような気がしなくもないんだけど…。


---スキル「異常耐性」を獲得しました---


 え?何?


---スキル「異常耐性」の経験値が規定値を超えました。レベルが上がりました---


スキル「異常耐性」1→4


 新しいスキルを覚えると同時に頭の中がクリアになっていく。辺りにはまだ甘い香りが漂っているものの惑わされるような感覚は薄らいできている。


---スキル「異常耐性」の経験値が規定値を超えました。レベルが上がりました---


スキル「異常耐性」4→7


 …まだ完全に耐性が身についてなかったらしい。

 今度こそ頭もはっきりしたので花に近寄ろうとしたところで急速に近寄る個体の魔力を感知した。

 方向は池?!

 池の方に体を向けると水面にさざ波が立って何かが近寄ってくるのが目に見えてわかる。花の香りに惑わされた動物や魔物を狙って捕食しているのか一直線に向かってきている。

 感知した魔力の大きさからマッドベアより遥かに強力な魔物。立っているさざ波から察するに大きさも五メテル以上ある。というか水の上を移動しているので丸見えだけど…すっごいでっかい蛇!


シュパッ


 大蛇は滑らかな動きで綺麗な音を立て勢いそのままに私に大口を開けて食いついてきた。大きく開かれた口は簡単に私を飲み込んでしまえるほどの大きさがあり、食いつかれたら最後、蛇の栄養になるしかない。

 飛びかかってきた大蛇に合わせて左の短剣を抜いて構える。ギリギリまで引き寄せて避けるのと同時にその首に刃を立てられるよう短剣に魔力を込めていく。

 さすがにこの大きな口を開けて襲いかかってくる蛇を目の前で見ているのはかなり怖いものがあるけど、私の動きは蛇の速さを格段に上回るので慌てる必要はない。

 蛇が私に食い付こうとした瞬間に身を捻って避けるとその動きのまま一回転して蛇の首に短剣の刃を立てる。


「やっ!」


ザンッ


 左手に肉を裂いた感触がしたかと思うと大蛇は首と胴を切り離されて絶命していた。

 あっという間に倒してしまったので蛇の頭と胴はまだビクビクと動いているが、当然襲いかかってくる気配はない。

 ここまで大きいと皮を剥いだり血抜きをしたりという作業が難しくなりそうなのでそのまま腰ベルトに収納して今日もギルドで判断してもらうことにしよう。

 長い胴体を収納して切り離した頭をどうしようか考えていたところで再び魔物の反応が近寄ってきた。

 魔力の反応は今倒した蛇と同じくらい。恐らく今度は蛇から出る血の匂いに誘われてきたのだろう。しかも今度は森の中から来る。数は一番近いので一体。少し離れたところから向かってきているのが四体。強さはそこまでではないもののどれもあまり傷を付けないよう一撃で倒してしまうとなると少し面倒だが、やるしかない。

 森からいの一番飛び出してきたのは前世の図鑑か何かで見たサーベルタイガーのような牙が大きく口から突き出た全長四メテルはある虎だった。私の側にある蛇の頭を目掛けてきたかと思えば角度を変えて私に向かってきた。そりゃ蛇の頭より私の体のほうが少しは肉があるかもねっ!

 私は右手に魔力を集中して昨日使った石射(ストーンシュート)を用意する。先端を尖らせて貫通力を上げておけば昨日のマッドベアの分厚い毛皮も貫ける強力な弾丸になる。

 そのまま私に飛びついてくるのをよく見て虎に弾丸を打ち込む。しかしさすがに猫科の魔物だけあって単発の弾丸は簡単に避けられてしまった。

 というかどんな反応速度と瞬発力なんだろう。それこそ前世の銃と同じくらいの弾速はあるはずなんだけど!

 最初の弾丸が外れたのは予想外だったので仕方なく別の魔法に切り替える。


「だったらこれならどう?!電撃魔法 電気触(スパーク)

「グオオオオオオォォォォォォォォッ!」


 私オリジナルの特異魔法の電撃魔法で一番弱いもので痺れさせて相手の動きを止めてしまうゴブリン村でも使ったことのある魔法。これだけ大きい虎なら命を奪うのは確実に無理だけどこうして痺れさせてしまえばトドメを刺すのは簡単にできる。

 本当は川で魚を獲るために作った魔法なのにね。

 動けない相手の命を奪うことに抵抗がないわけではないけどここで私がこの虎を見逃してしまえばそのうちどこかで見ず知らずの冒険者が命を落とすことになるかもしれない。残酷かもしれないけどこれも必要なことだ。

 私は痺れて動けなくなっている虎を仰向けにすると胸のあたりに短剣を突き刺して切り裂き内臓を露出させ、肋骨に覆われた肺を短剣で潰しながら心臓に辿り着く。そのまま短剣で心臓を切り離すと虎の命は完全に消えた。

 感傷に浸る時間はない。

 私の手が血に塗れていることもあり、匂いに惹かれたか更に奥から近寄ってくる四つの反応が私に向かって真っ直ぐ近寄ってきている。

 なかなか休ませて貰えそうにないね。

今日もありがとうございました。

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