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第525話 披露宴

コミカライズもよろしくお願いします!

お盆期間連続投稿!

 披露宴。

 それは結婚した二人を祝うための場。

 私の場合はそれが七人いるというだけのこと。

 一人、会場の入り口で招待客を迎え入れている。

 ディックとレーアだけは先に来ていたので、会場入りしてもらっており、それに息子であるコルとルイマリヤも付き合ってくれている。

 申し訳ないと思いながらも二人は貴族院からの付き合いなので、なんだかんだと気が知れた仲なので私も心配はしていない。


「やぁセシーリア。本日はお招きありがとう」


 他の人より先んじてやってきたのはアルマリノ王国次期国王であるアルフォンス殿下とルーセンティア殿下。

 最近ジュエルエース家と王家は確執があって不仲なのではという噂があるので、それを払拭したかったのだと思われる。


「いえ。この度は私どもの私的な催しに参加いただきましてありがとうございます」

「国王である父に代わり祝言を贈りたい。本当におめでとう」

「セシーリア、おめでとう」

「ありがとうございます、殿下。ルーセンティア殿下も、お忙しいところ来てくださったこと感謝いたします」


 アルフォンス殿下達に礼を告げ、案内をメイドへと引き継ぐ。

 今日の招待客の中では彼等はそれほど高い地位にはない。


「セシルはんっ、お待たせや!」

「ヒマリさん! 遠いところをありがとうございます!」

「なんのなんの! かまへんて! それよりこないな目出度い席に呼んでくれてありがとぉな! ウチの馬鹿娘とも話したいしな!」

「アイカならどこかで飲みながら不貞腐れてますよ」

「あんの馬鹿娘は……っ! 自分の恩人やろうが……っ!」


 やや怒り気味のヒマリ陛下を別のメイドに案内させると、私はまた別の対応に入る。


「セシル! 来たぜ!」

「あぁヘイロン。ようこそ。態々第三大陸までありがとう」

「ウチの最重要取引先だからな! 世界の裏側でも行くさ」

「ホンイーさんもありがとう」


 ヘイロンと一緒に来たのは彼の経営するシーロン商会を実質的に仕切っているホンイー女史。それと見たことのない少女が一人。


「いえ。ユーニャさんともまたお話したいと思っていましたので。セシーリア殿、本日は誠におめでとうございます。シーロン商会を代表してお祝い申し上げます」


 彼女は商談の際にユーニャと仲良くなってくれて、今日も一緒にお祝いしたいと忙しい中ヘイロンと一緒に来てくれた。


「後ほどユーニャさんにもお祝い申し上げたく存じます」

「えぇ、ユーニャも喜ぶよ」


 態々第五大陸から来てまでお祝いしてくれるなんて嬉しい以外になんて表せばいいんですか。

 それからはガットセント王、エルフの国の女王も来てくれたので挨拶を交わすと招待客のリストを眺めていた。


「とりあえずこれで招待客は全員?」


そのまま近くに控えていたモルモへと声を掛ける。


「はい。セシーリア様がお送りした特別招待状のお客様は全てご到着されております」


 特別招待状、ね。当然普通の招待状もある。

 普通の招待状は基本的に参加でも欠席でも構わないと書いておいた。

 その最たる例は遠いから無理しないで良いと言っておいたルイマリヤ嬢の父であるローヤヨック侯爵。

 彼はギリギリ王都に到着したらしく、ほとんど旅装のままだった。


「すまないねジュエルエース大公。娘の義母殿の結婚披露宴だというのに時間に遅れてしまって……」

「遅れてなどいませんよ。それにわざわざ遠いところを私のために足を運んでくださったことが何より嬉しい。さぁ、まずはゆっくりお休みください」


 彼は本当に義理堅い男だ。

 ルイマリヤの父親としても、貴族としても、取引相手としても、私がクドーを除けば最も信用している男と言えるだろう。

 彼のところに招待状が届いたのは直前だろうにこうして馳せ参じるとは、本当に尊敬出来る人だと思う。


「おめでとう、セシル」


 そして尊敬は出来ないけれど、昔馴染みの顔も挨拶に訪れてくれた。


「ありがとうリード」

「セシルにそう呼ばれるのは久し振りだな。だが……いや、しかしこうしてみるとあの時私に見向きもされなかったのは納得してしまったな」


 違うよリード。

 あの当時はまだ本当に頼りになる男性と結婚するつもりだったんだよ。そうならなかったっていうだけで。


「私からもお祝い申し上げますセシーリア」

「カリオノーラ様、ありがとうございます」

「後ほど奥様方へもご挨拶しますけれど……いきなり七人とは驚きました」

「えぇと……私は思ったよりも独占欲が強かったみたいでして」

「まあっ! ふふっ、そんな貴女の話も聞いてみたいわ。では旦那様、参りましょう」

「そうだな。セシル、また後で」


 リードとその奥さんである第三王女のカリオノーラ様は仲良く腕を組みながら会場へと向かっていった。


「ジュエルエース大公閣下、本日はお招きありがとう存じます」


 続いて声を掛けてきたのはピルバイド・ジブリフ。もとい、ピルバイド・テュイーレ。


「セシル! 結婚おめでとうございます」

「ピルバイド卿、ニーヤありがとう。会うのは二人の結婚式以来だね」

「仕方ありませんわ。私達も忙しかったし、それに輪をかけてセシルの方が忙しそうなんですもの」


 ネイニルヤ•テュイーレは貴族院時代から仲良くさせてもらっている先輩だ。

 昨年の秋、ちょうどデルポイがブランド部門のことでゴタゴタしている時に二人は結婚した。

 私もリーラインと一緒に参加させてもらったけれど、状況が落ち着いていなかったためにすぐ帰ることに。当時のことは凄く気にしていたのだけど、こうしてこちらの招待に応じてくれたことは素直に嬉しい。


「あとでミルルにもお祝いを伝えますわね」


 私にだけ聞こえるくらい近づいてからそっと告げたニーヤはニッコリと微笑んでいた。


「ありがとう。また後でね」


 ニーヤと別れた私はそれからも招待客が来るのを会場の入り口で待ち続けた。




 ミルルだけは姿を変えさせているとはいえ、会場の半数の人は本当はミルルが生きているというのは周知の事実。

 そんなことは気にせず、私は数人ずつ連れ添う奥さんを変えながら招待客へと挨拶を交わしていく。

 ここには私自ら入り口で招待客を迎い入れたので変な人は来ていない。仮にいたとしても、私か奥さん達、もしくはソフィアに言い寄ろうものならその身で贖うことになっただろう。


「セシーリア、今日の装飾品も見事ですのね」

「ルーセンティア殿下、ありがとうございます」

「リーライン殿下……いえリーライン妃の装飾品も髪色やドレスと相まってとても素敵ですわ」

「ありがとう存じます、王太子妃殿下」


 アルフォンス殿下そっちのけで女子会を開きそうな勢いで話したいのはやまやまだけど、ここは公式の場。

 さすがに自重しながらとりとめのない話を続ける。


「そういえばセシーリア。クランの方も順調らしいじゃないか」


 ……ち。

 とりとめのない話だけで終わらせようとしてるのにこの王子は。

 私はクランが本格活動を開始したことを王族に報告していない。冒険者ギルドには勿論報告しているけど、別に報告の義務はないし何より今はそこまで親しくしたいと思っていない。

 ルーセンティア殿下やシャルラーン様と宝石の話をするのは楽しいから別腹だけど。


「えぇ。娘に任せているのですが、なかなか頑張ってくれているようです」

「折角なんだ、紹介してはくれまいか?」

「……恐れ入りますが、娘は平民として育てておりますので殿下にご挨拶するには教養不足にございます。平にご容赦を」

「今更だろう。我々の仲だ、多少の無礼や失言があったとて問題にはしないと約束しよう」


 面倒臭いなぁ。

 それにソフィアを王族なんかに関わらせるつもりはないって言外に伝えてることくらいわかるだろうに。


「ソファイア」


 しかしここまで言われたら呼ばないわけにもいかず、私は近くでどこかの令嬢と話していたソフィアを呼び寄せた。


「お母様、お呼びでしょうか」

「えぇ。紹介します、娘のソファイアです」


 私がソフィアの背中を軽く叩くと彼女はその場で恭しくカーテシーを取ってアルフォンス殿下たちに頭を下げた。


「ご紹介いただきました、セシーリア•ジュエルエースの娘ソファイア•ジュエルエースと申します。若輩ゆえ無作法がございましたらご容赦賜りたく。以後お見知り置きをお願い申し上げます」

「これは丁寧な挨拶をありがとう。私はアルフォンス・マスク•アルマリノ。この国の王太子だ。よろしく」

「アルフォンスの妻のルーセンティアと申します。セシーリアによく似て聡明なお嬢様ね」


 ……ルーセンティア殿下。今度貴女に特別な装飾品をお贈りしましょう。

 ソフィアと私が似てる?

 そんな嬉しいこと言わないで……涙が出そうなくらい。


「母には遠く及びませんが、今後とも精進する所存にございます」

「いや、クラン『宝石箱』の活躍は聞いている。今後も期待しているよ」


 それだけ話すとアルフォンス殿下はルーセンティア殿下を伴ってすぐにその場を去っていった。

 思ったよりあっさりしていたけど、なんだったんだろう?


「お母様、もうよろしいでしょうか」

「えぇ、ありがとうソファイア」

「ではわたくしお友達を待たせておりますので」


 ソフィアもまた私に一礼してさっき話していた令嬢の元へと戻っていった。

 ……あれ? そういえばどこの令嬢だろう?


「ようセシーリア」

「ヘイロン。改めて、来てくれてありがとね」

「なに。俺も第三大陸の様子を見たかったしな。それに……どうやらウチの娘と仲良くしてくれてるみたいで安心したぜ」

「娘?」


 私が聞くと彼は顎をしゃくって私の後ろを示した。

 そこにはソフィアと一緒に話している令嬢がいる。


「え? あの子ヘイロンの娘なの?」

「あぁそうだ。紹介しておこうか。ランファ」


 今度はソフィアがその場に待たされて令嬢がこちらにやってくる。

 私は構わないからと一緒に来るよう促してあげる。


「父上、参りましたわ」

「あぁ。紹介しよう、娘のランファだ」

「お初にお目にかかります勇者セシーリア様。魔王ヘイロンの次女、ランファにございます。お見知り置きくださいませ」


 びっくり。ヘイロンにこんな礼儀正しい娘がいるなんて。


「セシーリア•ジュエルエースよ。ソフィアと仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね」

「恐れ入ります」


 笑顔も可愛くてとても良い子のようだ。

 それに……魔王の娘だけあって魔力もとても高い。さすがにソフィアと互角とはいかないけれど、それでもウチの騎士団の副隊長クラス。レベル千は固いところか。


「お前、すごく失礼なこと考えてるだろ?」

「気の所為でしょ」


 ほんとびっくりだよ。

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