第240話 殲滅戦8 英人種
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします。
進化と聞くと、どうしてもデジタルな魔物を思い起こします。
アルティメットな進化はすごくかっこいいので大好きなのです。
今までの自分との決別を、これからの生き方への決意を込めて叫んだ。
「強くなりたい!! もう大切な人達をなくさないように、今よりもっと! 誰よりずっと! 強く、なりたい!」
私の進化が始まった。
白いボードに浮かんだ進化承認の文字。
それを見たのを最後に鑑定結果を記したボードは一気に大きくなり、私の体を白い繭のように覆ってしまった。
何が起こっているかまるでわからなかったけど、繭の中にどんどん濃密な魔力と今まで感じたことのない何かの力が満ちていくことだけはわかった。
そしてさっき白いボードに浮かび上がった文と同じものが頭の中に響いた。
---種族進化が承認されました。英人種へと進化します---
---種族進化シークエンスを開始します---
---現時点でのレベル、スキル、タレント、その他条件を読み込んでいます---
---『管理者の資格』を確認。レベルリセット、スキルレベル半減、一部タレント剥奪は免除されます---
---一部種族外スキルを確認………『管理者の資格』により削除されません---
---『神の祝福』を確認。アンロックシステムの付与を行います。…完了---
---種族特性により専用スキルを付与します---
---ユニークスキル「闘技」を獲得しました---
---ユニークスキル「並列思考」を獲得しました---
---種族特性により各種スキル・タレントの統合・整理を行います---
---条件を満たしました。スキル「投擲」「弓」「戦斧」「格闘」「魔闘術」はレジェンドスキル「武技」へ統合、融合進化しました---
---ユニークスキル「超槍技」レジェンドスキル「絶剣」の統合に失敗しました---
---ユニークスキル「超槍技」レジェンドスキル「絶剣」は現状維持となります---
---条件を満たしました。ユニークスキル「理力魔法」「空間魔法」「隠蔽」「探知」はレジェンドスキル「時空理術」へ統合、融合進化しました---
---新たなタレント「時ヲ操ル者」が開花しました---
---条件を満たしました。タレント「剣闘マスタリー」「格闘マスタリー」「狙撃手」が統合、融合進化します---
---新たなタレント「武闘マスタリー」が開花しました---
---条件を満たしました。ユニークスキル「闘技」レジェンドスキル「武技」はレジェンドスキル「武闘技」へ統合、融合進化しました---
---条件を満たしました。タレント「魔ヲ極メル者」「理ヲ修メル者」「時ヲ操ル者」が統合、融合進化します---
---新たなタレント「支配者」が開花しました---
---身体能力の強化を行います…………完了---
---身体能力の強化に伴い肉体の再構成と最適化を行います…………完了---
---種族進化シークエンスを終了します---
---英人種への進化に成功しました---
種族進化はどうやらうまく成功したらしい。
けれど私の場合それだけでは終わらなかった。
---条件を満たしました。タレント「鉄壁」が進化します---
---タレント「鉄壁」を糧に、新たなタレント「護ル者」が開花しました---
---条件を満たしました。タレント「立チ向カウ者」「護ル者」が統合、融合進化します---
---新たなタレント「守護者」が開花しました---
---レジェンドスキル「守護者」を獲得しました---
---特殊条件を満たしました。タレント「英雄」「守護者」が統合、融合進化します---
---新たなタレント「勇者」が開花しました---
---レジェンドスキル「英雄」「守護者」が統合、融合進化します---
---レジェンドスキル「絆紡グ者」を獲得しました---
---専用レジェンドスキル「限界突破」を獲得しました---
ついで? にずっと訳がわからなかったタレントが全て進化してまさかの「勇者」なんてタレントまで生まれてしまったらしい。
白い繭はまだ解けないのでその新しいスキルを確認しようとスキル鑑定を行ってみた。
特に最近獲得したものを中心に…うわぁぁおぉ…。
並列思考:上位種族の証。同時に二つ以上のことを考えることが出来る。スキルレベルによりその思考の幅は広がる。
超槍技:槍、棒など長尺武器を持った戦闘能力が大幅に向上する。
武闘技:上位種族の証。魔力ではない別のエネルギー<闘気>を操作出来る。魔力と闘気によって身体能力、攻撃の威力、防御の性能がスキルレベル分倍加する。
時空理術:空間魔法に時の概念を追加し、目に見えない力をも操る術。
絶剣:剣を持った時の攻撃力がスキルレベル分倍化する。剣自体の能力も向上。
絆紡グ者:心から信頼を寄せる者からわずかに力を分けてもらえる。絆を紡いだ者から得た力は譲渡者の生死問わず有効。譲受者の死亡により元に戻る。
限界突破:自身の能力を十分間十倍にする。その後三日間行動不能になる。
…とりあえず一旦置いといて、タレントも確認してみよう…。
武闘マスタリー:戦闘中、全ての能力が上昇する。但し非戦闘時に能力半減。不意打ち注意。
支配者:魔、理、時をその手に掴む者。更に何を望む? 高速思考または並列思考により瞬間的且つ多発的な魔法の発動が可能になる。但し意図して魔力を操作しない時は能力が激減する。
勇者:希望を背負う者。専用レジェンドスキル「限界突破」「絆紡グ者」を獲得。
こっちも負けず劣らずだった!
こうなると統合とか進化する前のスキルやタレントも確認出来たら良かったんだけど…さすがに私のスキル鑑定じゃこそまでの能力はない。
今度アイカに相談してみよう。
それにしても…。
武闘技と絶剣のスキルレベルがMAXになったら剣の攻撃力が百倍ってこと? 戦帝化もスキル分身体能力と魔力が上がるわけだけど、あれもスキルレベル分倍加だと思う。
これに限界突破を加えたら……一万倍……。
すごいことになっちゃいそうなんだけど。
ただ、唯一安心なのは武闘マスタリーと支配者のタレントだね。これらがあるおかげで普段の日常生活ではかなり力を抑えておけるみたい。
歩くだけで魔力垂れ流しとか家のドアを開けようとして家ごと吹き飛ばすようなことは無さそうだ。
能力半減と能力激減でどの程度まで落ちるのかわからないけど、今までと変わらないくらいなら余程強い相手からの不意打ちじゃない限りはなんとでもなると思う。
そしてスキルとタレントの確認が終わったところで私を覆っていた白い繭が薄くなってきていることに気付いた。
ようやく外に出られるらしい。
体感時間は五分くらいだったから封神縛絶陣の効果は既に切れてしまっているはずだからアイカとクドーが心配だ。
うっすら外が見えてきたところで白い繭は薄氷を割ったようにパリンと軽い音を立てて砕け散った。
ほんの少しの時間だったはずなのになんだか随分久しぶりな感じがしたのは気のせいだと思いたい。
当たり前のように正面百メテルくらい先に邪黒塊が地面から少し浮いたところで気持ち悪い七つの体を生やし、いくつもの目や口から変な汁を垂れ流していた。
そしてアイカとクドーはというと。
「や、やっと出てきたんか…」
「…そんな長くかかった?」
「あんなとんでもない魔物を俺達二人で抑えておくのがきつかっただけだ。時間通りのはずだ」
普通に話している二人だけど身体のあちこちに傷があって流血してる上、服はボロボロ、感じられる魔力から察するにもうほとんどの力を出し切っている。
「聖光癒」
とりあえず治療のため回復魔法を使うと二人とも今にも膝をつきそうなほど疲労困憊だったはずなのに自分の体を見ながら目を見開いていた。
「な、なんやこれ? HPだけやのうてMPまで回復しとるんやけど…」
「…より一層セシルが凄まじくなったということか…」
まさかこんなことが起きるとは思ってなかったけど、それでも前よりずっと使い勝手がよくなったと思うことにしよう。
気にしたらキリがないし、進化したばかりでどういう変化が起きたかもよくわかってないんだしね。
「さてと…それじゃいろいろ試したいところだけど、早めに終わらせないとね」
未だに驚いている二人の間をすり抜けて邪黒塊と対峙する。
さっきまではとても恐ろしかったのに、今では何も感じない。
いつも通り、そこらの魔物と向き合っているくらいにしか感じられない。
「武闘技」
右手でだけ剣を抜いて左手は自由にした。
普段からしているかなり汎用性の高い構えなので、これなら相手がどう出ても対処出来る。
そしてさっき覚えたばかりのレジェンドスキル武闘技を使うと戦帝化を使ったのと同じくらいの力が溢れてきた。
私自身、そのあまりに圧倒的な力に驚きを隠せないけど、それを隙を捉えたのか邪黒塊はその体から生えたいくつかの魔物から武器による衝撃波を放ってきた。
さっきクドーが盾を使って必死に抑えた攻撃だ。
ガキィィィィィィン
右手の剣を軽く一振りすると亢閃剣と同じような斬撃が飛んでいって衝撃波を完全に相殺してしまった。
全然力入れてないんだけど…。
どうやら慣れないうちは自分の身体なのに持て余しちゃうかもしないね。
私は攻撃するべく邪黒塊に近付こうと足に力を込めた。
ぱぁんっ
「うわっ?!」
ドンッ
本当の意味で次の瞬間には邪黒塊にぶつかりそうなほど接近していて、自分が地面を踏み込んだ音を完全に置き去りにしてきてしまった。
しかし慌てている私がいる一方でもう一人の私というべき並列思考が攻撃するために身体を動かしていた。
剣を順手に持ち、魔力と闘気を十全に込めた一撃を。
ズドンッ
強めに刺したつもりだったけど、その一撃は邪黒塊の身体を貫通して大地にまで届いていた。
邪黒塊の身体は黒いドロドロがたっぷり集まってその大きさは直径二十メテルを超えている。その上少なくともさっきの黒い魔物達と同じかそれ以上の防御力まで併せ持っているはずだから普通はこんな簡単に貫けるはずはないのだけど…。
少し考えていると両脇から黒い触手が迫ってきたので慌てて邪黒塊から離れた。
しかもまたしっかり力を込めて踏み込んだため天辺が大きく陥没してしまって折角生やした触手も全て潰れてしまっていた。
自分自身でやったことなのに唖然として見ているとアイカとクドーも私が想像を超える進化をしたことで開いた口が塞がることなく、目も見開いたまま邪黒塊の惨状をただ見ていた。
うん、これならイケるね!
今日もありがとうございました。
年末年始毎日中です!
新しい年を進化した新しいセシルと迎えられたのがとても嬉しいです!




