第149話 二人のステータス
自分のステータスボードに驚いてげんなりしていたせいで、アイカとクドーのステータスをよく見ていなかった。
しかし、二人とも転移・転生者と言ってるだけあってなかなか…いや、とんでもなく驚きのステータスやスキルを持っていることが目の前のボードで明らかになった。
アイカ
年齢:93歳
種族:夜人族/女
LV:182
HP:23,784
MP:131,565k
スキル
言語理解 MAX
魔力感知 MAX
補助魔法 7
身体強化 5
威圧 3
投擲 MAX
格闘 MAX
爪術 MAX
魔闘術 4
礼儀作法 5
料理 7
ユニークスキル
吸血 4
魔力強奪 5
精力吸収 8
炎魔法 6
氷魔法 4
天魔法 7
地魔法 2
上級光魔法 5
空間魔法 1
魔法同時操作 MAX
魔力運用 7
魔力圧縮 3
詠唱破棄 MAX
精神再生 2
隠蔽 MAX
探知 8
四則魔法(下級) 2
成長倍化 9
魔道具作成 3
レジェンドスキル
邪魔法 7
新奇錬金術 8
超速調合 6
新奇魔法作成 4
神の祝福
神の眼
タレント
転移者
転生者
格闘マスタリー
錬金大師
病魔の天敵
魔工技師
七転び八起き
憎悪
憤怒
…ナニコレ?
私も自分のことを人外ステータスだと思ってたけどアイカも十分すぎる。
能力が戦闘よりも錬金術や調合に偏っているけど、魔法だって新奇魔法作成まで覚えているし純粋な戦闘力だってかなり高い。
知らないスキルもいくつかある上にかなりスキルレベルが上がっているのは成長倍化っていうスキルと見た目に反して高い年齢のせいだろうか?
それもそのはず、私は自分のことを人外とか思っていたけどちゃんと種族は人間になっていたのに対し、アイカは種族そのものが人間ですらない。
夜人族ってなんだろう?ユニークスキルからなんとなく察することは出来そうだけど。
そしてクドーのステータスは…。
クドー
年齢:227歳
種族:神狼族/男
LV:169
HP:162,382
MP:712,270
スキル
言語理解 8
気配察知 MAX
魔力感知 3
魔力循環 7
魔力操作 4
魔力自動回復 6
瞑想 3
火魔法 2
風魔法 4
土魔法 2
光魔法 3
闇魔法 2
威圧 7
解体 MAX
調合 4
ユニークスキル
人化 MAX
氷魔法 MAX
魔人化 4
魔獣化 8
隠蔽 MAX
魔道具作成 1
鍛冶 8
彫金 7
細工 9
レジェンドスキル
武具自在 3
情報共有 7
天地無用 4
神の祝福
物質図鑑
タレント
転移者
転生者
近接武器マスタリー
遠距離武器マスタリー
格闘マスタリー
鍛冶師
細工師
デザイナー
蛮勇
怨嗟
こっちもこっちで武器戦闘に関するスキルが高い!
武具自在ってなんだろう?
スキルの欄にいろいろな武器が記載されている私と違い、クドーは何も無いので恐らくそれが関係しているのかもしれない。
同じように天地無用も聞いたことがないスキル。逆さまにするなって意味じゃないよね?
アイカのステータスも同じだったけどこの二人のスキルは私のスキル鑑定では内容まで見ることが出来ない。
アイカに神の眼を使ってもらわないと無理ということなんだと思う。
ひょっとしたら魔法無しの戦闘なら私でもクドーには敵わないかも…今度訓練してもらおうかな?
ただ魔法に関しては氷魔法以外は苦手みたいでほとんどレベルが上がっていない。
あとアイカと同じように生産系、主に鍛治に関することに偏っている。
加えて今のこの状態を作り出すために使ったスキル情報共有もかなり特殊なものみたいでレジェンドスキルになっている。
知識系スキルや鑑定系スキルがないのでそこに集約されているのかな?
「どや?これで納得したか?」
二人のステータスボードを食い入るように見ていた私にアイカがニヤニヤしながら話し掛けてきた。
その顔に気付いた私は咄嗟に顔を背けたけど、バッチリ二人に見られているので誤魔化しようがない。
あまりにマジマジと見てしまっていたせいで顔が赤くなっているのがわかるくらい熱い。
「まぁそう恥ずかしがらんでえぇやん。ウチはずっと前にセシルのステータス見てたから知ってるんやけど、クドーも実際に見た感想はどや?」
アイカは右手を繋いでいるクドーの方を向くと彼も私のステータスボードをじっくりと見ていた。
「アイカから聞いていたけど…これは…予想以上だな」
「予想?」
クドーの言葉に引っかかりを覚えた私はそのまま彼に問い返していた。
「アイカが見たステータスは聞いていたが内容が内容だけに話半分だった。でもまさか聞いてた以上とは…」
「…アイカはなんて言ってたの?」
「ん?ウチはただ『ウチらと同じくらい戦えて魔法が使えるメッチャすごい子』って言っただけやで?」
アイカの説明は私が想像していたより遥かに大雑把だった。
というかよくそれでクドーも予想出来たね?
「これ見たらセシルのステータスだって普通に思えるやろ?」
「…というか私自分のことを人外って思ってたけど…二人はそのまま人外じゃん」
「お?言うやないか!あっひゃひゃひゃっ!えぇやん!そのくらいどストレートに言ってもろた方がウチは好きやで」
「…そうだな。日本人らしくて好ましいとは思うけどセシルは遠慮が過ぎる」
クドーも少しだけ微笑んだところで私達の前に出ていたステータスボードが消えた。
クドーの情報共有スキルとアイカの神の眼が切られたからだろう。
「けど、宝石のこと頼む時のセシルは例外やけどな」
「むー…いいじゃん。好きな物は好きなんだし」
「えぇと思うで?そんくらい我が儘でえぇんや。ウチらかてそうなんやから」
いつも通りケラケラと笑うアイカはそう言うと私の頭にポンと手を乗せてきた。
なんかこの二人といると私って完全に妹扱いだね。
「セシルはまだ若いんやから、ちょっと我が儘なくらいでちょうどえぇ」
「若いって……確かにこっちの世界じゃそうだけど前世では二十歳になってたんだからね?」
「それでも足りへんやろ?ウチは前世で十七やからこっちと合わせたらもう百十のおばあちゃんやで?」
「俺も前世で七十まで生きたから、こちらと合わせたら三百歳くらいになるな」
…はい、確かに全然二人より若いです。
思った以上に年上過ぎて若干引き気味だけど。
「けど、二人共元日本人なの?」
「せやで」
その後二人から聞いた話だとアイカは元の世界のことをまだよく覚えていて、前世ではアニメや漫画が大好きだったらしく私と近い世代だったことがわかった。
どうも転生した時に時代にズレが起きてしまっているようだ。
その証拠にクドーは前世で乗った列車は蒸気機関車で駅舎ではそれなりに多くの人が乗っていたらしい。なのに私と約二百歳差ということはかなり顕著にズレている。これが江戸時代後期、日本に蒸気機関車が稼働し初めてすぐなら齟齬はないかもしれないけど。
ついでに言うとアイカは前世でも同じ名前だったようだけど、クドーはさすがに昔のことすぎて忘れてしまったらしい。
「とまぁそんなわけや。こっちの世界に来る時に会った神さんに祝福貰わんかったらもっと大変やったろうなぁ…」
「俺はそう思わない。まぁ助かったのは間違いないな。セシルも会っただろう?」
「え…何のこと?」
「せやから、この世界に来る時に神さんに会ったやろって」
「…多分、会ってない…かな?」
「…嘘やろ…?」
私は生まれ変わってセシルになった時のことを思い出してみる。
しかしいくら思い出そうとしても突然覚醒して目の前に何を話しているかわからないイルーナに抱かれるところからしか思い出せない。
そこでチクリと頭の片隅が痛む。
「転生ポイントを貯めなければならない」
「早く、早く貯めるのだ」
「全部だよ!」
「『新たなる管理者となるために今こそ旅立て。大いなる実りを持て。より強き魂の輝きを放て』
さぁ、いってらっしゃい」
「---神の祝福<経験値1000倍>を入手しました---」
しばらく聞いていなかったあの言葉が鮮烈に脳内を駆け巡った。
それだけじゃない。
「早く」なんて今まで言われたことがない。
そして…。
「『管理者』…?」
「ん?なんや『管理者』って?」
「…わかんない。…私の種族と性別の隣に書いてあるでしょ?」
「何も見えんが…アイカには見えるか?」
「いや?なーんも書いてへんで?」
あれ?アイカの神の眼でも見えてない?
…つまり管理者っていうのは神様にも関係するような大事なのかな?
でも考えたところでわからないし、考察はいくらでも出来るものの答え合わせはこちらに来てからずっとされていない。
いつかは答えを教えてもらいたい。
「それで、セシルは神さんに会うてるんか?」
「よく思い出せない…けど会ってる、のかもしれない…。その時に経験値1000倍を貰ってるんだと思う」
「なんや、やっぱり会ってるんやないか」
会ってるなんて言えるのかな?全く覚えてない…わけではないけど、なんか違和感というか釈然としないものが頭の片隅で引っ掛かり続ける。
例えるなら錆びついた剣を引き抜こうとして途中で噛んでしまうような、宝石の奥に僅かな不純物が見えるような、そんな僅かな引っ掛かり。
けど今すぐどうにかできるものじゃないし、やっぱり頭の中で急かされる言葉通り、転生ポイントを貯めていくしかないだろう。ついでにeggも集めれば何かが開けていくかもしれないしね。
あんまり魔王種と戦いたいとは思わないけどさ。
「とりあえず、セシルも神に会ってるからこそ神の祝福を持っているのだろう?今はそれでいい」
「…せやな。それじゃさっきの話通り王都管理ダンジョンへ行こやないか」
「というか、よく私が今行ける期間だってわかったね?」
「そらそうや。五十年前に貴族院にいたことがあるんやしな」
そういえば以前そんなことをアイカが言っていた気がする。
今貴族院では学年の変わり目のため長期休暇に入っている。私も昨日リードをベオファウムへと送り届けてからここ王都に戻ってきたところ。
ベオファウムの冒険者ギルドで活動してきても良かったんだけど、ユーニャやアイカ、クドーがいるからと王都へと戻ってきた。ちなみに貴族院の寮は使えないので、仕方なく巡る大空の宿に部屋を取っている。
勿論冒険者として活動する予定だったので長居する気も無いし、リードが王都に戻る際には護衛として同行しなければならないのでそれまでにはベオファウムに戻らないといけない。領主様との契約では長期休暇の過ごし方は自由にしていいと言われているしね。
そんなわけで今の私はフリーの冒険者として活動しているようなものだ。
「知ってるならいいけどさ。それで今すぐ行くってことでいいの?」
「ウチらは問題ないで。セシルはどないや?」
「私もこのまま冒険者ギルドに顔を出す予定だったから別に構わないよ。一度ギルドに顔は出すの?」
「…いや、面倒だからやめておこう。今自分達が何階層にいるかはアイカがいればわかるからな」
「神の眼ってそんなに便利なの?」
「まぁわからんこともないけど、ちゃんとダンジョンの壁に書いてある層のしかわからんで?」
っていうかダンジョンに階層がいくつか書いてあるの?
「あ、その顔は『そんなん書いてあるんか?』って顔やな?隠されてて普通じゃ見えんし言語理解がMAXになってないと読めんけどな」
なるほど、それでアイカがいればわかるってことか。
でも管理ダンジョンなのにギルドを通さなくていいのかな?
「ギルドで常時依頼を受けると面倒になる。それに基本的にダンジョンに入るのは自己責任だからな。気にするな。それじゃ早速行くか」
他にもいろいろ聞きたいことや言いたいことはあるけどとりあえず私達は三人でアイカの店を出るのだった。
アイカ「結局ウチらのスキルってセシルよりはおとるんやない?」
クドー「気にすることはない。結局は使い方、戦い方次第だ」
アイカ「せやかてクドー」
クドー「なんだ?」
アイカ「って言ってみたかっただけや」
クドー「…そうか」
アイカ「ちなみにセシルのスキル見てどう思た?」
クドー「賞賛や驚嘆などという言葉では表しにくいな。素直に驚異と言うべきだろう」
アイカ「おいクドー。そこは脅威ちゃうんか?」
クドー「なぜ『おい』だったんだ?」
アイカ「古き良きお約束ってやつやんな」
クドー「そうか」
アイカ「せや」
すみません、どうしても書きたかったのですが閑話にするほどではなかったのでここで書かせて頂きました。
どこかでもう一回くらいは書くかもしれませんが…(笑)
今日もありがとうございました。




