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第111話 15歳のイングリス・天恵武姫護衛指令19

 それから、一週間――

 リップルの状況は現状維持で、イングリス達も変わらず交代で護衛についていた。


 今日はイングリス達一回生の担当の日。

 リップルが意識を失い魔石獣が出現すると、レオーネがすぐに新型魔印武具(アーティファクト)の力で空間を隔離。


 イングリス達はその魔石獣の掃討に移る。

 今日も現れたのは、少し前から姿を見せ始めた強化型の獣人種の魔石獣である。


「わたしに、任せて!」


 イングリスは真っ先に前に出ると、両手の人差し指をぴっと立て、魔石獣に向ける。

 そして両手から迸る霊素穿(エーテルピアス)の青白い光。


 ビシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!


 顔面から始まり、首、肩、胸、腹、脚、足――

 無数の穴が穿たれて、魔石獣は一歩も動けずにその場に崩れ落ちて消えて行く。


「あ、あれ……?」


 ラフィニアがイングリスの動きに首を捻っていた。


「まだ来るわ――! 気を付けて!」


 レオーネが警告を発する。


「うん、任せて!」


 イングリスはラフィニアには構わず、新しい魔石獣に向かい――


 ビシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!


 再び有無を言わさず、霊素穿(エーテルピアス)を乱射した。

 為す術も無く、魔石獣は蜂の巣と化して行く。


「クリス……?」


 更にラフィニアが首を捻る角度が深くなる。


「まだ来る……もう一体!」


 イングリスは何もない空中を見つめて言う。


「え……? でも何もいないわよ?」


 そうレオーネは言うが、イングリスは魔石獣出現の予兆、空間が歪む魔素(マナ)の動きを感じ取っているのだった。


「ううん……分かる、感じるから――!」


 イングリスは頭上のその地点へ向け、掌を翳す。

 ――霊素弾エーテルストライク


 スゴオオオオオォォォォォーーーーッ!


 巨大な霊素(エーテル)の弾丸が、上へ向かっていく。


「ちょ……ちょちょちょっ!? クリスさっきから何をやって……!」

「はあぁぁっ!」


 イングリスは直後に、霊素弾エーテルストライクを追うように地を蹴る。

 そして、霊素弾エーテルストライクの進路上にふっと現れる魔石獣の姿。

 先読みは当たり、現れた瞬間に魔石獣は霊素弾エーテルストライクに飲まれ、消滅する。


「ああ……」


 飛び上がったイングリスは、そこで残念そうに呟いて動きを止める。

 霊素弾エーテルストライクの光は更に上昇をして行き――


 バリイイイィィィィン!


 ガラスを割るような大きな音が響き、レオーネが魔印武具(アーティファクト)で生み出した空間が崩壊して行く。


「す、凄い威力――! こんなあっさり空間が壊れるなんて……!」


 以前はミリエラ校長が生み出した『試練の迷宮』の空間も破壊したのだ。当然の結果ではある。

 空間が崩壊すると、周囲の景色が元いた校庭へと移った。

 霊素弾エーテルストライクは夕焼けの空を高く高く、昇って見えなくなって行った。


「ははは……きれいな打ち上げ花火みたいですわねぇ」


 リップルを介抱しているリーゼロッテが、半分呆れたように感想を述べる。


「うーん……」


 が、イングリスは相変わらずの渋い顔である。


「どうしちゃったのよ、クリス? いつもは相手が倒れてたら、泣いても叫んでも無理やり起こして戦いを続けさせようとするのに……そんなに速くやっつけちゃって」

「……わたし、そこまで血も涙もない事はやってないけど――?」

「いや、それに近い事をやっていたわよ……?」

「さすが、ラフィニアさんはイングリスさんをよく分かっていらっしゃいますわ」


 レオーネとリーゼロッテは頷いていた。


「…………」


 と、ぽんとラフィニアが手を打つ。


「あ! あたしに隠れて何か美味しいものを食べようとしてる!? だから早く帰りたかったの!?」

「違う違う。わたしは研究してるだけだよ?」

「何の?」

「ん。新技」

「「「新技!?」」」

「そう! ラニもレオーネも新しい技、覚えたでしょ?」

「ええまあ、技というか……」

魔印武具(アーティファクト)奇蹟(ギフト)だけどね?」

「うんうん。でもちょっと羨ましかったから、わたしも何か開発しようと思って」


 と、イングリスはキラキラと嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。


「でね、過去最大威力を目指してみようかなって!」


 となるとやはり、霊素(エーテル)を使った戦技となる。

 最近霊素穿(エーテルピアス)を両手で撃てるようになった事から、イングリスの霊素(エーテル)制御能力は上がっている。

 となればできそうな技を思いついたのだが――今の所、試行錯誤である。


「へ、へぇ……な、何か恐ろしい事が起きる気がしなくもないわね――」

「そ、そうね――」

「い、今でも十分過ぎるほど強いと思うのですが――」


 イングリスは静かに首を振る。


「人と比べてどうじゃなくて、自分が納得行くかどうかだから――で、強い新技をやろうとしてるから、どうしても練習も強めになるの。でも強めにするとすぐ相手を倒しちゃうから――ああ、強い敵が出て来てくれるといいなあ……」

「……結局いつもと同じ結論に落ち着いたわ、さすがクリスはぶれないわね――」

「ははは……でも、私達も置いて行かれないようにしなきゃね」

「とりあえず、リップル様がお目覚めになられたら、校長室に戻りましょう? 引継ぎの時間ですから」


 次はシルヴァ達三回生の当番の時間である。

 校長室で、今回の当番時の出来事について報告と引継ぎを行うのだ。


 イングリス達は目を覚ましたリップルと共に、校長室へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] イングリスが英雄王として、建国した国のその後の話が気になる。また、英雄王になるまでの人生も気になる。この世界では、英雄王はどのような扱いなんだろう。 [一言] イングリス=英雄王と皆が…
[良い点] お久しイングリスちゃん 相変わらず飢えてる
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