告白①
本日は二話同時公開になりますので、こちらが昨日の続きとなります。
翌朝、シオンとルフィーナがドルゴーク帝国に向けて出発する日である。朝食をとり、旅の確認をすませたシオンとルフィーナは屋敷の前でアルム達の見送りを受けていた。
見送るのはアルム、イリーナ、ヴィアス、アルティナとエルリアである。エルリアは屋敷に残ることになった。元々ヴィアスの元に身を寄せるつもりであった以上、予定通りの結果と言えるだろう。
「それじゃあお世話になりました」
シオンがそう言うとルフィーナも頭を下げる。王都に着いてからの三日間はシオンとルフィーナにとって、とても有意義かつ心安まる三日間であった。
「お姉様、また会いに来てくださいね。約束ですよ」
アルティナは目尻に涙をためてルフィーナの手をとる。ルフィーナも少しばかり涙をためつつニッコリと笑って言う。
「うん。もちろんよ。これからは時間を作って会いに来るわね」
「はい♪」
ルフィーナの言葉にアルティナはニッコリと笑って言う。ルフィーナの時間を作ってというのはアルティナとの再会の優先順位が非常に高いことを示していたからだ。もし優先順位が低いのなら『時間が“あれば”』という表現だったはずである。
「シオンさん。この間は本当に申し訳ありませんでした。お姉様を頼みます」
「ああ、分かった」
シオンはアルティナの言葉に真剣に返答する。アルティナにとってルフィーナはかけがいのない存在であるのは間違い無い。それにシオンは誠実に答えたに過ぎない。それを感じたのだろうアルティナは嬉しそうに微笑むとちょいちょいと手招きをする。
「ん?」
「ちょっと耳を貸していただけますか」
「あ、ああ」
アルティナの言葉にシオンは首を傾げながらアルティナへと近付いた。ルフィーナも訝しげに見ているのだが止めるような事はしない。アルティナがこの段階でシオンに嫌悪感を持っていないとは言い切れないのだが、それでも危害を加えることは絶対ないという確信を持っていたのである。
「良いですか……お姉様を悲しませたら承知しませんよ」
「もちろんだ」
「本当に分かってます? 男性はとにかく目移りするものと聞いてますからね」
「目移り?」
アルティナの言葉の意図が分からず、ついそのまま鸚鵡返しにしてしまう。シオンの反応にアルティナは察しが悪いわねといわんばかりの視線を向けるとさらに続ける。
「だから、浮気なんかしてお姉様を傷付けたら許さないと言っているんですよ」
「なっ!!」
シオンの驚きなど意に介することなくアルティナは話を続けていく。
「何驚いてるんです? お姉様の幸せのためにシオンさんの浮気は絶対に見逃すことは出来ません」
「う、浮気なんてするわけないだろう!!」
ついにたまりかねてシオンは大声で否定する。シオンの否定の言葉によって周囲の者達にアルティナのヒソヒソ話の内容が完全にバレてしまった。
「な、アルティナ!! あんた何言ってるのよ!!」
ルフィーナがアルティナに詰め寄るとアルティナはこれもまた意に介した様子はなく。どうどうとルフィーナを両手で宥める。
「お姉様、任せて下さい」
「何を任せるの!?」
「お姉様の幸せのために私は命一杯動きます!!」
「だから何を任せるの!!」
「シオンさん、良いですか!! お姉様の不幸は私の不幸!! お姉様を苦しめる者は誰であっても許しませんから」
アルティナはまったく動じることなく言い放った。アルム達は止める事なく苦笑を浮かべながら事の成り行きを見守っている。
「この間も言ったけど俺はルフィーナとつき合ってないから浮気もクソもないだろ」
「お姉様と恋人でなくてもシオンさんは他の女の人と付き合うことは許しません!!」
「何なの!!この暴君!?」
シオンの正直な感想にもアルティナは意に介した様子はない。
「暴君でも何でも構いません。良いですね?」
アルティナはシオンに妙に座った目で言う。シオンはここに来て抵抗を諦めると静かに頷いた。元々、ルフィーナ以外の女性とふれあう機会が極端に少ないシオンであるため、アルティナの言葉を裏付ける程女性の接点が無いのである。
「よし、話はつきましたよ。お姉様♪」
アルティナは満足そうに笑うとルフィーナに言う。アルティナの言葉にルフィーナは顔を赤くしつつ小さく頷いた。
(これ以上はルフィーナの精神がもたないな)
シオンはそう判断するとアルムに話を振ることにする。
「兄さん、世話になったね。もらった剣と手甲は使わせてもらうよ」
「あ、ああ、シオンも気を付けてくれ」
「うん。何か困った事があったら遠慮無く俺達を呼んでくれ。少しは役に立つと思うよ」
「期待してるよ」
アルムはにっこりと笑って頷く。露骨な話題そらしではあったがシオンの言葉はアルムにとって嬉しいものであったのだ。
「エルリアさんもお元気で」
シオンは次いでエルリアに声をかける。エルリアがここに残る以上、ここでお別れであるのだ。
「ええ、あの時二人に助けてもらわなかったら今頃どうなっていたかわからないわ本当にありがとう」
「シオンさん、ルフィーナさん改めて母さんを助けてくれてありがとう。君達がいなかったら母さんは殺されていたかも知れない」
「いえ、気にしないで下さい。俺達はやるべき事をやっただけですから」
シオンはそう言って笑う。実際にシオンにしてみればあのような場面に出くわして素通りするような事は決してしない。むしろ当然の事であった。
「それじゃあ、兄さん、みなさんまた来ますね」
「アルティナも頑張ってね。また来るわ」
シオンとルフィーナはにこやかに言うとアルム達もにこやかに笑って答えた。
「じゃ、行こうか」
「うん♪」
シオンはルフィーナに声をかけると出発する。背後からアルム達の見送る声が聞こえる。シオン達は時折振り返りながらアルム達に手を振り屋敷を後にするのであった。




