晩餐②
「まぁ、仕方ないわね。今回は諦めなさい」
アルムが笑ったところでイリーナがアルムに言う。
「どういうことです?」
イリーナの言葉にシオンは首を傾げながらイリーナに尋ねた。
「ああ、アルムはシオン君が心配でね。何とかして一緒にいようとしたのよ」
「は?」
「私はシオン君は断ると思ってたわ。シオン君は冒険者としてすでに生計を立てているから、私達の保護下に入る事はないものね」
「まぁ、保護されるほど強大な敵と戦うと言うことはありませんからね。俺もルフィーナもしがない冒険者ですから身の丈に合った依頼をこなすつもりです」
「なるほどね」
イリーナはそう言うとアルムに視線を移した。
「聞いての通りよ。シオン君はもうアルムに守られるだけの無力な人じゃ無いのは確かよ。さっきのアルムとの試合で保護すべき対象ではないのは確実よ。むしろ、場合によってはこちらを助けてもらうだけの実力を有しているのは間違いないわ」
「そりゃ、俺だってシオンの実力は高く評価してるさ。ヴィアスもそうだろ?」
アルムはヴィアスに話を振るとヴィアスもニッコリと笑って頷き口を開く。
「ああ、アルムとあそこまで戦えるのだから保護すべき対象ではないのは確実だよ。アルムは本当にシオンさんに対して過保護だな」
「うっせ、ほっとけ!!」
「私もシオンさんの実力は評価しますけど、お姉様の助力あっての事です!!」
そこにアルティナが口を差し挟んだ。アルティナからすればルフィーナが過小評価されるのは嫌だったのだ。
「確かにルフィーナの助力が無ければ兄さん相手に五分持つ事は出来なかったよ」
アルティナの言葉にシオンは即座に賛同する。
「それは当然だな。シオンとルフィーナさんは互いに弱点を補うだけじゃなく、連携により力を増してる」
「ああ、良いコンビだと思うよ」
「私もそう思うわ」
アルム達もシオンの意見に賛同するとアルティナの機嫌は一気に跳ね上がった。ルフィーナの面目が保たれた事が単純に嬉しかったのだろう。
「すみません。お聞きして良いですか?」
話が一段落した所でシオンが声を発する。シオンの視線の先にはイリーナがおり、イリーナはにっこりと笑って頷いた。
「兄さんは前衛、ヴィアスさんは後衛、アルティナさんも前衛だと思うけど……イリーナさんは?」
シオンの質問にイリーナは即座に返答する。
「私は全部よ」
「え?」
イリーナの返答にシオンだけでなくルフィーナ、エルリアは驚きの表情を浮かべた。シオン達の反応が良かったのだろうイリーナは満足そうに話を続ける。
「私は近接戦闘全般、魔術戦、治癒術、斥候なんでもこなすわ」
「何ですかその反則技は……」
イリーナの返答にシオンはボソリと心情を吐露した。
「イリーナは俺達の連携の繋ぎとしてなくてはならない存在なんだよ」
「だろうね」
アルムの言葉にシオンはまたも即座に返答する。アルムの言葉通りならば、イリーナはアルム達のチームになくてはならない存在である。
どのような連携技でも必ず途切れる時がくる。それは個人レベルであっても、チームであってもだ。その途切れた瞬間に攻撃を受ければいかな強者であっても不覚を取ることは十分にあり得るのだ。ところがその途切れた瞬間を補う事の出来る存在がイリーナというのなら理論上はアルム達に死角は無くなるのだ。
しかもアルム達のような超人達の連携の繋ぎを行えるという事はイリーナもまた超人と呼んで差し支え無いような実力を有している事になるのだ。
「しかし、兄さん達は凄まじい力を持ったチームになってるけどそんなに強くなって誰と戦うの?」
シオンがやや呆れた様に言うとアルムはあっさりと言う。
「知らん」
「あ、そうなの?」
「ああ、どっかのとち狂った王様が世界征服を目指して世界中に戦争をしかけるなんて物語の中だけの話だ。魔王と呼ばれる存在だって、魔族の王が名乗ってるだけで別に悪というわけじゃないしな」
「そりゃそうだよね」
「まぁ勇者の祝福を持ったものが現れるというのは、とんでもない巨悪が現れる予兆とも言うからな。何かしらあるのかもな」
アルムはそう言うとニカッと笑う。
「兄さんは相変わらず呑気だな」
「何を言う。どのみち考えた所で正解が分かるわけでもないから悩んでも仕方ないさ」
アルムの意見にシオンは頷かざるを得ない。正直な話、この世界のどこかで巨悪が目覚めようとしていようが実際に行動を起こしていない以上、対処のしようがないのも事実である。
「だからこそ俺達はその時が来るまで強くなるだけさ」
(確かに……兄さんの言う通りだ。俺とルフィーナが少しでも兄さん達の露払いをしてみるさ)
アルムの言葉にシオンは頷きつつ心の中でアルム達の助けになる事を誓っていた。
「シオン、確認しておきたい事がある」
「何?」
「いつまでこの王都にいれるんだ?」
「ルフィーナとギルドを出てから話し合ったんだけど三日滞在させてもらおうと思ってるんだ」
「そうか、三日か……」
アルムはそう言うと少し何かを考え込んでいた。




