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兄との再会①

 帝都に戻ったシオンとルフィーナは早速、冒険者ギルドへと足を運んだ。依頼達成の報告を行わないといけないし、ルフィーナの本当の以前の顔は変装であった事を伝える必要があったからである。


 素顔になったルフィーナが帝都を歩くと十人中十人は振り返っているぐらいだ。


(まぁ仕方ないな。ルフィーナって本当に美人だからな)


 シオンもルフィーナに見とれる者の気持ちは十分にわかるために特段責めるようなつもりはない。


「う~ん、やっぱり目立つわね。これも私の美貌がなせる業ね」


 ルフィーナは自分の容姿について謙遜したりしない。ただ自分の容姿が人目を引くものである事を十分に理解した上で冷静に判断しているに過ぎない。それにルフィーナは決して他者の容姿を陥れるような事はない。

 ルフィーナにとって容姿というものは拘るようなものではないのである。ある意味美しく生まれた者故の無頓着さと言えるかも知れない。


「まぁその辺りの事は正直、正しいと思うがあんまり声高に話すと嫌われるぞ」


 シオンのせっかくの忠告であったがルフィーナは全く堪えた様子は無い。


「別に構わないわよ。シオンが嫌だというのなら改めるけどね」


 ルフィーナの言葉にシオンは端と悩む。


(さて、ルフィーナのこの態度って俺は嫌かな? うん……別に嫌じゃないな)


 シオンはすぐに答えを出した。ルフィーナが美人なのは事実であるし、自分の美貌を使って他者を辱めたわけではない。そのため、別に嫌だという感情は芽生えなかったのである。


「うん。別に嫌な気持ちはしないな。あとは余計なトラブルがおきなきゃ問題無いさ」

「了解~♪ 余計なトラブルを起こすつもりはないから安心してね♪」


 ルフィーナはそう言うとにっこにこと笑いながらシオンに返答する。


「さ、話もまとまったし、冒険者ギルドへ行くわよ」

「だな」


 シオンとルフィーナは冒険者ギルドへ再び歩き出した。それからしばらくして二人は冒険者ギルドへ到着する。

 扉を開けて中に入るとルフィーナの姿に見とれた冒険者達の姿が目に入った。この辺りはもはや様式美のようなものなのでシオンもルフィーナも気にすることはない。


 またシオンの腕前を侮るような者はこの冒険者ギルドにはいないために悪い絡みを行うような者もいないのである。一年間のシオンの冒険者としての活動から冒険者達は敵に回すよりも味方にした方が得だと言う事を理解していたのだ。

 シオンは裏切りは決して許しはしないが反対に自分から裏切るような事は決してしないために冒険者達にとって信頼できる少年であったのだ。


「よう、シオンその可愛い子はお前のこれか?」


 二十代半ばの冒険者が小指を立ててシオンに話しかけてきた。何度か仕事を共にしたことのある冒険者で名をエシオスという。

 エシオスは気の良い青年であり現在『ゴールド』クラスの冒険者だ。


「はい。実は今度付き合うことになったんですよ」

『おおぉ~』


 シオンが照れもなくエシオスに言うと周囲の冒険者達も驚きの声を上げた。


「ちょ、ちょっとシオン」


 ルフィーナが顔を赤くしてシオンの袖を引っ張ったがシオンはそれを無視する。


「おいおい、見せつけてくれるねぇ~。シオン俺達にその子を紹介してくれや」


 エシオスの言葉にシオンはニコニコと頷くと返答する。


「ええ、彼女はルフィーナといいます。この間、冒険者になったばかりなんですが、新人研修をきっかけに仲良くなって付き合うことになったんですよ」

「ほぉ~上手くやりやがったな」

「ええ、上手くやりました(・・・・・)


 シオンの淀みない返答を受けてルフィーナは顔をさらに赤くしてうつむいてしまう。先程まで“私の美貌云々”自信たっぷりに言っていた姿からはまったく結びつかない姿だ。

シオンの言葉とルフィーナの態度から深読みした冒険者達の中から“ヒュ~”というような声が発せられた。


「まぁ、話は後にさせてもらって先に報告させてもらって良いですか?」

「ああ、すまないな。つい二人の関係が気になったからさ」

「あはは、別に良いですよ」


 シオンはそう言うとルフィーナを伴って受付嬢の所に向かう。


(もう、どういうつもり?)


 ルフィーナがシオンに小さく語りかけた。


(ルフィーナがフリーだと言う事がバレれば結構なトラブルの種になりそうだからな。俺の恋人としておけば少しは言い寄るやつも減るかなと思ったんだよ)

(うう……恥ずかしいけど仕方ないわね)

(そういう事)


 シオンの意図を理解したルフィーナは顔を赤くしたつつ納得したようであった。


「あ、グレイスさん新人研修が無事終わりましたので報告に来ました」


 シオンは受付席に座っているグレイスに声をかける。


「……お疲れ様」


 グレイスは訝しがるような視線をシオンに向けつつ言う。シオンはグレイスの様子から何を訝しがっているのか即座に理解し説明をする事にした。


「グレイスさん、この子はあの新人のルフィーナですよ。ここに登録に来たときは変装してたんです」

「へ?」


 シオンの説明にグレイスは呆けた返答を行った。それを見たシオンはルフィーナに視線を移した。それだけでシオンの意図を察したルフィーナは頷いた。


「見た方が早いですからね。ルフィーナ、頼む」

「わかったわ」


 ルフィーナはそう言うと両手で顔を覆いいぱっと開くとそこには登録に来た時の顔になっていた。


「こういうわけです」

「驚いたわね。目の前で見ても信じられないわ」


 グレイスは驚きを隠そうともせずに言う。ルフィーナのスキルである『変装』は魔力でつくった仮面を被るというものだ。

 ルフィーナは魔術の素養はないために魔術は使えないと言っていたが、有する魔力は並の魔術師ぐらいはあるためにスキルを介したものであれば十分に発現することができるのだ。


「ルフィーナはこの容姿ですからね。一人旅をしてこの帝都にやってくるまでにそうとう危ない目にあったらしいです。そこで『変装』のスキルで仮面を被り余計なトラブルに巻き込まれないようにしたという話です」

「なるほどね。確かにルフィーナさんの本当の顔を見てしまえば納得ね。本当の顔を晒すのはやっぱりシオン君と恋人同士になったから?」


 グレイスの言葉にルフィーナは顔を瞬時に真っ赤にする。フリだとは理解しているがそれでも照れてしまうのはどうしようもないのである。


「ひゃ、ひゃい。一人だったら不安だったけどシオンがいてくれるから……その、安心して……」


 ルフィーナは顔を赤くしながらグレイスに返答するとグレイスもまたくすりと笑う。美少女の恥じらう姿は同性であっても眼福ものなのだろう。


「ルフィーナさんの事情は分かりました。でもね……」


 グレイスはそう言うと妙に力を込めた目でルフィーナをみやる。その視線を受けてルフィーナはゴクリと喉をならした。


「それでも登録にウソをついて私達を欺くのは許されません」

「すみません」

「私達ギルドと冒険者の関係は信頼関係ありきです。もちろん事情があるのは理解しましたが信頼関係を損なう事をやるのは貴女のためになりません」

「は、はい……」

「今回の件は情状酌量の余地はありますがまったく不問というわけにはいかないわ」

「う……はい」


 ルフィーナは小さくなり素直に頷いた。シオンはその様子を黙って見ている。ここで口をはさむことは出来ないと考えた故での行動である。


「それではもう一度登録をやり直しますし、それからペナルティが何かしら課されると思ってくださいね」

「はい」

「それではこちらの書類を書いてください」

「はい」


 ルフィーナは出された書類をきちんと記していく。ただし、祝福(ギフト)については前回同様に【隠密】と記入していたのは流石と言うべきだろう。


「出来ました」

「はい。それじゃあ、ペナルティの内容は後日伝えますね」

「わかりました」

「当然ですけどシオン君もペナルティに付き合うんですよ」


 グレイスはシオンに視線を移すとニッコリと笑って言う。


「え?」

「だってシオン君とルフィーナさんってコンビなんでしょ?」

「ですけど……」

「だったら、あなたも一緒にやればそれだけ早く終わるわよ♪」


 グレイスはニッコリと笑いながらそう言うとチラリとルフィーナに視線を向けた。グレイスの視線を受けたルフィーナもシオンに視線を送る。


(こいつら組んでるんじゃないだろうな?)


 シオンは心の中でため息をつく。グレイスには新人の時から世話になっているし、ルフィーナはコンビの相方だ。この状況で断る事は出来ないと思ったのである。


「はぁ……わかりましたよ。ルフィーナのペナルティを手伝います」


 シオンが白旗を上げると二人はニッコリと笑ったのである。


「あの……ちょっと良いですか?」


 そこに一人の男がシオンに声をかけてきたのであった。

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