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そして手を組む二人

「【偽造者】? 何その犯罪臭漂う祝福(ギフト)!!」


 シオンから祝福(ギフト)を聞かされたルフィーナの反応は中々酷いものである。


「お前に言われたくないよ。【暗殺者】だって相当に犯罪者の感じがするぞ」


 ルフィーナの反応に憮然とした表情を浮かべたシオンの言葉にルフィーナも苦笑した。


「それでシオンの【偽造者】って具体的に何ができるようになるわけ?」

「俺はこの世のありとあらゆるモノを『偽造』することができる」


 シオンの説明に対するルフィーナの反応は鈍い。いまいちピンとこないようである。


「ありとあらゆるモノと言う事は当然ながら「スキル」もそれに当てはまる」

「どういうこと?」

「だから俺は他人のスキルを偽造すればそのスキルを使う事が出来るという事だよ」

「それって無敵じゃない?」


 ルフィーナの問いかけにシオンは頷く。まさしくルフィーナの言う通りで使い方を間違わなければ敗れる事は決して無い祝福(ギフト)である。実際にシオンは用心深い性格で準備に余念はないために、これまでの冒険者としての仕事で危なげなく達成できたのである。


「まぁな、もちろん完全無欠の力じゃないから注意は必要だがな」

「なるほどね。でその弱点って?」


 ルフィーナの問いかけにシオンは少しばかり逡巡するが、これから行動を共にする以上伝えておく必要があると考えると口を開いた。


「まずは俺の能力は外部に漏れて偽造が見破られるとスキルが消えてしまう」

「消える? 祝福(ギフト)が消えてしまうと言う事?」

「いや、知られた相手にはスキルが発動しない(・・・・・)

「なるほどね。それは厄介な条件ね」

「まぁな。でもそれぐらいの代償で済むのは有り難いさ」


 シオンは肩をすくめながらルフィーナに返答する。代償無しにで強大な能力を使うことなどあり得ない。むしろ偽造が見破られた相手だけに「スキル」が発動しないというだけですんで幸運と言うべきだろう。


「なるほど、それで仲間以外に祝福(ギフト)を隠してたというわけね」

「そういう事だ」

「他には?」

「偽造によって同時に使えるスキルは三つまでだ」

「三つ……」

「これは厄介だがな。今後増えるようになるのかそれとも変わらないか分かんないがな。現時点では三つだけだ」

「それで事あるごとに何かしていたわけね」


 ルフィーナは納得した様な表情を浮かべた。


「シオンの祝福(ギフト)については納得したけどよくそれを私に話す気になったわね?」


 ルフィーナの言葉にシオンは首を傾げる。その様子を見てルフィーナは顔を苦笑を浮かべつつ言う。


「だって、シオンの能力って人に知られるとまずいじゃない。それを仲間になったとは言え私に言うなんて危機意識が足りないんじゃない?」

「まぁそう言われればその通りなんだが、ルフィーナは仲間になったら裏切るような事はしないと思ったのが理由の一つさ」


 シオンの言葉はルフィーナへの信頼を表したものであったためにルフィーナは嬉しそうな表情を浮かべると続きを促した。


「もう一つは?」

「ルフィーナの境遇が俺とあまりにもそっくりだったから仲間意識が芽生えたというわけだ」

「え? 私と同じ……まさか?」


 ルフィーナの訝しむ声を受けてシオンも自分の境遇を話し始めた。兄が【勇者】、自分が【偽造者】の祝福(ギフト)を発動した事、自分がそれにより兄の足を引っ張る存在になり両親に虐待された事、兄が修行のために家を出てからさらに虐待が酷くなった事、虐待に耐えかねて両親を殴り飛ばし家を出た事を包み隠さずルフィーナに伝えたのだ。


「固有名詞の違いはあるけど全く私と一緒ね」

「ああ、祝福(ギフト)というものが何なのか正直よくわからないが迷惑な話だ」

「確かにね。何も悪い事をしてなくても犯罪者予備軍扱いは正直納得いかないわ」

「俺もだ。この世の中には俺達みたいな連中はたくさんいるんだろうな」

祝福(ギフト)によって生き方が決められるというのは好きじゃないわね」

「犯罪者関連の祝福(ギフト)を発動した者は周囲からそういう風(・・・・・)に扱われる。そして本人も犯罪行為に手を染めるようになって歪んでいく」

「そう考えると歪む原因の一つに祝福(ギフト)があるわけか」

「結局犯罪行為に走る者が悪いけどさ。それを強いる世の中も気にくわないな」


 シオンの怒りを込めた言葉にルフィーナも頷いた。犯罪行為に陥ったのは本人の責任である事は理解しているのだが、それでも他の道を周囲の者達から潰され犯罪者への道を歩まされることになった者に対して同情の余地はあるというものである。


「この世界に住む者達は祝福(ギフト)に支配されている。それが気にくわない。だから俺はこの【偽造者】の祝福(ギフト)を使いこなして支配する。俺こそが俺の人生の主役だ。祝福(ギフト)なんぞに支配されてたまるか」


 シオンの言葉にルフィーナも力強く頷く。祝福(ギフト)によって人生を歪められた二人のシンパシーというやつである。


「うん、納得出来ない。私も祝福(ギフト)なんかに負けないわ」

「おう。こんなもんに負けてたまるか!!」

「私達で冒険者の最高位まで上り詰めて見返してやろう!!

「ああ!! やってやろう!!」

「シオンの偽造スキルが私も使えたら便利なんだけどね~」

「え?」


 ルフィーナの言葉にシオンは虚をつかれたかのように一声上げた。ルフィーナの言葉にシオンは何かしらひっかかるものを感じたのだ。


(ひょっとしたら……)


 シオンは試してみる価値ありとしてルフィーナに話しかける。


「ルフィーナ、お前魔術は使えるか?」

「え? ううん、私は魔術は使えないわ」

「そうか……ちょっと試してみよう」


 シオンは懐から一つの木札を取り出すとルフィーナに手渡した。


「これが偽造スキルの?」

「ああ、この木札を割ると俺はスキルが使用できるようになる。これを割ってみてくれ」

「割れば良いの?」


 ルフィーナは躊躇うこともなくボキリと木札を割る。するとルフィーナが不思議な感覚を感じたかのような表情を浮かべた。


「どうだ?」

「あ、ちょっと見てて……」


 ルフィーナは左手をかざすと掌に拳大の火球が現れた。ルフィーナは興奮と戸惑いが絶妙にブレンドされた表情が浮かぶと火球が放たれた。


 ドゴォォォォォォォッォォォォ!!


 ルフィーナの放った火球が地面に着弾すると大爆発を起こした。シオンが偽造スキルを使用した時の火球の威力と遜色ない威力である。シオンがルフィーナに渡した木札には「火炎魔術」のスキルが偽造されていたのだ。


「シオン、これ……」

「どうやら俺の偽造したスキルは他人も使用する事が出来るようだ。……マジかよ」

「これってとんでもない事よね?」

「ああ」


 今まで仲間を作る事を避けてきたシオンにとって仲間にも偽造スキルを渡すことが出来ると言うのは衝撃だった。事実上、シオンは仲間全てにスキルを使わせてる事が出来るというわけである。


「ルフィーナ、それじゃあこれも使ってみてくれないか?」

「うん♪」


 シオンはもう一枚の木札を手渡した。受け取ったルフィーナはその木札を躊躇いなく割った。


「どうだ? 二つとも使えそうか?」


 シオンの言葉にルフィーナは顔を曇らせると首を横に振る。


「ううん、前のスキルが上書きされちゃって前のは使えないわ」

「そっか。他の者が偽造スキルを使えるのは一つと言う事か。しかも上書きされてしまうと言う事はその辺でも俺よりも制限はあるわけだな」

「みたいね。でも祝福(ギフト)に縛られないスキル取得できるというのは大きいわよ!!」

「ああ!!」


 二人は興奮した口調で話している。この能力を上手く使えば冒険者の最高ランクである“ガヴォルム”に到達するのも決して夢物語ではないのだ。


「良し、俺達の今後の目的は」

「信用の出来る仲間を得て、“ガヴォルム”に到達すること!!」

「「そしてあいつらを見返す事だ(よ)!!」」


 シオンとルフィーナの声が重なり合うとお互いに自然と笑顔になった。心を許せる仲間の存在がこれほどありがたい事にシオンは今更ながら気づいたのである。


「よし、それじゃあとりあえずゴルグの方に戻るとしよう」

「うん、そうそう今夜もあの宿屋に泊まりましょうよ」


 ルフィーナは嬉しそうに言うとシオンはあの美人だが恐ろしい女将の顔を思い出してやや緊張の表情を思い浮かべた。


「そういえばルフィーナはあの女将さんに朝何を言われたんだ?」


 シオンの言葉にルフィーナはニシシというような笑顔を浮かべると人差し指を口元に持ってきて言う。


「内緒♪」


 ルフィーナのその仕草はあざといといえばあざといがそれを上回る可愛さでありシオンの頬に赤みが差した。


「あれあれ~♪ シオンったら顔が赤いわよ~♪ ひょっとして私の魅力に参っちゃった?」


 ルフィーナの言葉をシオンは表情を引き締めて返答する。


「ああ、ルフィーナの美しさに俺はもう心を鷲づかみにされてしまった。もうお前の事しか考えられないんだ」

「ふぇ!!」


 シオンの言葉に今度はルフィーナが顔を赤くするとモジモジとしだした。これほどの美少女なのにルフィーナは初心であった。


 ルフィーナの反応を見てシオンがニヤニヤしているとルフィーナは自分がからかわれた事に気づいて先程までとは異なる赤さを顔に浮かべた。


「あんたねぇ~私をからかうなんて良い度胸じゃない!!」


 そこからゴルグまでの距離をシオンはルフィーナに追われながら帰る事になった。ルフィーナの追跡ははっきり言って暗殺者のスキルをふんだんに使うという中々緊張感溢れるものであった。

 ようやくプロローグ的なものが終了です。4万字をすでに越えているという……計画性の無さですが今後ともよろしくお願いします。

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