14話 焔熊羆
山鯨を撃破した鈴鹿は、腕を伸ばして身体をほぐしながら辺りを見回す。
「もうすっかり日も暮れちゃったな」
学校帰りの放課後から探索しているため、初日は5区に辿り着くころにはすでに夕暮れ時である。そこからエリアボスと戦いを始めれば、夜にもなるというものだ。
猿猴も迅夜虎豹も日付をまたいでの戦いであったが、山鯨との戦いはそこまで長引くことはなかった。時刻もまだ20時前であり、ここから野営の準備に取り掛かっても十分休むことが出来そうだ。
「あ、牙落ちてる。強奪のスキルかな? とりあえず収納で良いか」
鈴鹿が叩き折った牙が転がっているため、拾い上げて収納にしまった。牙が武器か何かに変わってくれたら嬉しいのだが、牙はただの牙だった。
「はぁ、ウリ坊のせいで土汚れがひどくて最悪だ。風呂入れないのが野営の欠点だよな。不快すぎる」
ぶつぶつ文句を言いながらも、山鯨の戦闘で耕された場所の中からましな場所を見つけ、野営の準備を進めてゆく。
最近は昼夜問わず戦い、終わったら帰ることが続いていたが、今回は違う。山鯨も時間をかけず倒せたため、今日は野営して体力と魔力を回復し、明日の朝から残る2体のエリアボスを倒すつもりだ。
鈴鹿は手早く準備を進めてゆく。今日の夜ご飯はスープパスタだ。卓上サイズの小さなコンロを取り出し、トマトベースのスープに海鮮をふんだんに入れ、折ったパスタを中に入れれば完成する。事前にトマトベースのスープは作って持ってきているため、海鮮とパスタを入れればすぐできる。平日はあまりやることが無いので、事前にご飯の準備をしておくこともできた。
麺が茹だるまでに濡らしたタオルで全身を拭き、少しでもスッキリできるように努める。お風呂に入れれば文句無しなのだが、水魔法も使えない鈴鹿では叶わぬ夢である。
全身をタオルで清め服も着替えたことで少しはすっきりした鈴鹿は、出来立ての海鮮スープパスタをいただく。エリアボスとの戦闘の後ということもあり空腹だったため、黙々と一心不乱にパスタを平らげた。
「はぁ~美味かった。休む前に戦利品確認するか」
まだ寝るには早いため、後片付けを済ませ、ステータスを表示した。
「魔力操作と毒魔法のスキルレベルが上がってる。うんうん、いい感じだな。それに怪力なんてスキルも覚えてる」
新たに怪力というスキルが発現していた。数字が書いていないため、固定型のスキルのようだ。名前からもわかる通り、力が増幅するスキルである。
「新スキルは嬉しいけど、何でもいいからスキルレベル10到達しないかなぁ」
力こそパワーで立ち向かったため、体術や身体強化もワンチャン上がっていないか期待していたが、結果は怪力というスキルの獲得であった。それでも、魔力操作と毒魔法のスキルが成長しているのだから凄まじい。
レベル8など、あの蠱毒の翁と同じスキルレベルだ。あそこまで毒魔法に傾倒した者が辿り着いたレベルに、鈴鹿は追いついていた。やはりレベル差による成長補正が効いているのだろう。ステータスが十分高ければ、山鯨の突進も正面から受け止めることだってできる。レベルが低くステータスが低いからこそ、スキルで補うためにスキルレベルが成長しているのだ。それもこれも『聖神の信条』で死なないからこそできる、荒行ではあるが。
ここまでくるとレベルやステータスに一喜一憂することもなく、そろそろレベル100に到達しそうだぁという感想しか出てこない。このペースで行けば、明日にはレベル100を超えて存在進化できそうだ。
「ドロップ品はぁ~……なんか多いな」
収納には、魔石も含めれば9個もドロップアイテムが収まっていた。
「武器2つも出てるじゃん。戦槌に猪首狩?」
とりあえず出してみる。戦槌は読んで字のごとく、立派なハンマーであった。灰色の下地に朱色のアクセントが添えられた戦槌は、側面から二本牙が生えており山鯨を彷彿とさせる。
もう一つの猪首狩は、戦斧であった。両刃の斧は柄の部分が短く、まるで猪首のような見た目をしている。こちらは黒地に朱色の差し色が入っており、デザインも良い。
戦槌や戦斧は力で押し切るタイプの武器のため、鈴鹿の戦闘スタイルにマッチしていると言える。しかし、悲しいかな『聖神の信条』によってせっかくのエリアボスの武器も扱うことができない。
「めっちゃカッコいいのに……。これも収納の肥やしなんてあんまりだ……。いっそヤスにでも渡してみるか? ……いや、あいつにはもったいないな。しまっとこう」
仲の良い友人を思い浮かべるが、過ぎた武器は持て余すと判断しその考えを振り払う。一瞬、大学に入ったら探索者サークルでモテ無双するんだと吠えていた兄の姿がよぎるが、逡巡することなくその案も却下した。
「あ、一式防具じゃないか、これ」
鋼纏山鯨の防具を取り出してみると、ごつい数珠の装飾品が出てきた。狡妖猿猴の防具のように、防具なのに装飾品の形をしているのは一式防具の特徴だ。
大玉の数珠のブレスレットは鈴鹿の趣味ではないが、とりあえず装着して着替えてみた。
「甲冑か!! うん! 不採用!!」
換装された防具は、全身鎧の甲冑タイプ。鏡が無いため全身は見まわせないが、立派なその防具はカッコよくはある。だが、鈴鹿の戦闘スタイルとは合っていないため、狡妖猿猴の防具を引き続き使うことにした。使える一式防具の予備があれば嬉しかったのだが、残念である。
「次は~『猪勇の数珠』か。うん、いらないかな」
出てきたのは、こちらも大玉の数珠。今度はネックレスタイプであった。こんな数珠が似合うの弁慶くらいじゃないかとも思える代物で、細身で小柄の鈴鹿には全然似合っていない。
効果は体力と防御を25%上昇させ、鉄壁のスキルを得られる。強いには強いのだが、見た目が気に入らないため不採用となった。
「次は素材系か。肉塊が非常に気になるな。これは食べれる奴だよね。家帰ったら出してみよ」
素材系は牙も含めて計4つのアイテムが格納されていた。気を引かれたのは肉塊であるが、今出してしまうと地面に落として汚してしまう可能性もあるため、帰ってからの楽しみにしておくことにした。
「ん!? おお!! とうとう収納袋がドロップした!!」
早速取り出してみると、大きな背嚢であった。登山用のリュックのように細長くなく、どちらかというと横幅が大きい形をしている。収納系アイテムは十両蛙の『関取の明荷』に続いて二つ目である。
「めっちゃでかいじゃん。これあれば野営もっと快適になるんじゃね」
野営を重ねた鈴鹿の今のスタイルは、とても簡素なものだ。荷物を減らし最低限の道具で野営をしている。しかし、この背嚢があれば余計な物も持ち込むことができる。なんなら薪だって持っていける。ダンジョンで寝泊まりすることをキャンプと勘違いしている鈴鹿は、少しでも充実させようと必死なのだ。
「はぁ~、いいものゲットしたわ。あとは魔石と宝珠か。魔石は小かな。残念」
山鯨のレベルであれば、40%の確率で中魔石がゲットできるのだが、今回は抽選に外れたようだ。それでも、これだけ他のアイテムが得られたのだからついていると言える。
鈴鹿は鋼纏山鯨の宝珠を取り出し、魔力を流して宝珠の力を取り込んだ。
「スキルは~『金剛』か。俺も鋼を纏えるようになったってことかな」
得られたスキルは金剛。成長型ではなく、固定型のスキルであった。効果は流す魔力に応じて身体を硬化させることができる。
金剛は防御面に優れたスキルだ。タンク職であれば耐久力が著しく上がるだろうし、後衛職だって不意打ちがきても安心できる。しかし、『聖神の信条』や自己再生のスキルを保有する鈴鹿であれば、どんな怪我も瞬時に治るため紙装甲であっても問題は無い。
だが、鈴鹿はこのスキルを手放しで喜んだ。理由は簡単。身体が堅固になるというなら、より一層毒手が強力になるということだからだ。
「戦利品はこんなもんかな。明日はエリアボス戦の合間に、その辺のモンスターも倒してお金稼ぎもしとこうかな」
今の鈴鹿のレベルは93。5区に出現するモンスターはレベル70~100だ。相手を選んで戦えば、レベルは上がらずにアイテムだけゲットすることもできるだろう。エリアボスのアイテムを売却していない鈴鹿は、この数ヶ月収入がゼロであった。まだ貯えはあるが、支出しかないこの現状は好ましくない。
「さ、明日は5区探索の最後の日にするからな。いっちょ稼ぎますか」
明日の予定を決めた鈴鹿は関取の明荷から本を取り出すと、眠くなるまで読書に勤しむのであった。
◇
久しぶりにダンジョンでゆっくりとした時間を過ごした鈴鹿。最近は飲まず食わず寝もせずの過酷な環境で戦い続けていたため、実に人間らしい朝を迎えることができた。
ダンジョン内で寝泊まりする際は、区の狭間が推奨されている。区の狭間ではモンスターが出現しにくく、市販のモンスター避けを撒いておけばより一層安全を確保できるためだ。しかし、鈴鹿は気配遮断のスキルレベルが9もあるため、ダンジョンのどこで寝ていようともモンスターに発見されることは無い。今も5区の凶悪なモンスターの吐息が聞こえるほど近い場所にいるが、モンスターが気づく様子はなかった。
レベルが鈴鹿より低いモンスターたちを、毒魔法を使って即死させてゆく。ビクンッと大きく震えた後、モンスターたちは何が起きたかもわからぬうちに煙となって鈴鹿へと吸収されていた。
毒魔法がレベル8になったことで、より強力な毒も生成することができるようになった。毒手を極めんとする鈴鹿にとって普通の毒魔法はあまり使わないが、使えない訳ではない。
高いスキルレベルが補助するように、鈴鹿の想像以上の劇物がモンスターたちを襲っていた。
「いや~便利だなこれ。当面の目標は毒魔法のスキルレベル9にすることかな」
気配遮断と毒魔法の組み合わせは凶悪の一言に尽きた。気配遮断で接近し、感知しづらい毒を用いた攻撃はまさに初見殺しであった。レベルが上がらないように、90レベル以下のモンスターを相手にしているからかもしれないが、面白いように簡単にモンスターを倒せている。
そんな風に、毒魔法の本来の使い方を練習していれば、エリアボスがいるであろう開けた空間へとたどり着いた。
「う~ん、ラスボスの風格だな。これは順番間違えたかな」
4番目のエリアボスは、巨大な熊であった。
見ようによっては、山鯨と同じく岩や壁か何かと思わせるほどの巨体。長い毛並みに露出した肌はごつごつとした硬質なもの、二足で立った姿は6メートルを超えているであろう大きさだ。巨大な口からは息を吐くたびにチロチロと炎が噴き出し、頭から背中にかけて恐竜のような角が生えていた。どういう構造になっているのか不明だが、動くたびに身体の節々から轟々と炎が燃え盛っている。
焔熊羆:レベル120
まるで動く活火山の様な焔熊羆は、鈴鹿を見るや否や問答無用に火炎の塊を撃ってきた。
その攻撃を見て、いや、焔熊羆を見た時から鈴鹿は獰猛な笑みを浮かべていた。そして、脳裏に浮かぶのは試金石という単語。今の実力を測るにはちょうどいい相手だと、鈴鹿は焔熊羆を見据える。
鈴鹿は相手によって戦い方を変える癖があった。基本は殴るしかできないのだが、気配遮断を多用する迅夜虎豹には同じく気配遮断をメインで使い、猪突猛進しかできない山鯨には真正面から受けて立った。
そそられる相手が出てくると、その土俵で戦いたくなってしまう。それは自身のスキルを十全に活用せず、ある種の縛りを設けて戦っているようなものだ。それが鈴鹿の成長に繋がってもいるが、悪癖でもあった。
だからこそ、鈴鹿は事前に決めていた。残る2体のエリアボスは、今の実力を見極めるために戦おうと。具体的には、1体は全力でただ倒すことに集中して戦い、1体は聖魔法もフルに活用して戦ってみようと。
『聖神の信条』は不死の効果がメインではない。むしろそれは副次的な効果で、本当のスキルの効果としては聖魔法を極めたルノアの能力の引継ぎであった。聖魔法を極め、超越者の頂まで登り詰めたルノアの力を、鈴鹿は余すことなく行使することができる。それこそ、レベルが52の状態で猿猴を完封できると確信できる程度には、使いこなせるはずだ。
だが、そうは言っても鈴鹿は聖魔法を一度も使っていない。せっかくの強力なスキルであるが、強力すぎるが故に封印していた。理由は簡単。自身の成長を阻害すると思ったからだ。それは今や確信となっている。
スキルは使い続けることでレベルを上げる。現に、武器が持てなくなった途端に剣術のスキルは成長を止めていた。その理屈で言えば、既にカンストしている聖魔法を使い続けてしまうと、他のスキルの成長の余地が無くなってしまう。それでも強くはなれるだろうが、幅広く強くなれる余地をむざむざ捨てるのはもったいない。
だからこそ、鈴鹿は聖魔法を封印し、モンスターによっては能力を縛って戦っていた。
それが今、解放される。
「まずは聖魔法以外だ。どこまでやり合えるかな」
聖魔法は最後にとっておく。それ以外のスキルを十全に活用し、鈴鹿は目の前の熊を仕留めにかかった。
地を焦がしながら突き進む炎の塊に対し、鈴鹿は気配遮断と隠匿の心得を発動しながら回避する。猿猴と至近距離で殴り合えるほどの鈴鹿であれば、何の工夫もされていない火球を避けるなど造作もない。
気配察知に敏感な迅夜虎豹すら見失う鈴鹿の気配遮断を、焔熊羆は見破ることができなかった。鈴鹿を見失った焔熊羆は周囲を睨むが、そんな無防備な姿は鈴鹿にとって殴ってくれと言っているに等しい。
魔力操作のスキルレベルが上がったことで、より潤滑に、より効率よく魔力が身体に満ち溢れる。それに応えるように、夜天の毒手も煌々と輝きだす。
仁王立ちしている焔熊羆の膝目掛け、鈴鹿は拳を振り抜いた。
「ガゥア゙!?」
突如受けた強烈な攻撃に焔熊羆から声が漏れるが、即座に鈴鹿に対し手を振り下ろし鋭利な爪で細切れにせんと反撃してくる。しかし、すでにそこに鈴鹿はいない。
またしても鈴鹿を見失った焔熊羆。攻撃された時は確実にそこにいた。遠距離攻撃などではなく、確かに気配を感じた。しかし、気づいたときには煙が霧散するようにそこには誰もいない。
どこに行ったと血走った眼を周囲に向けるが、ここにいますと答えるように再度膝へ打撃を受けた。硬質な毛で覆われているというのに、その衝撃はまるで戦槌のよう。思わずたたらを踏む焔熊羆だが、エリアボスも伊達ではない。
脚を潰すためか執拗に膝を狙う鈴鹿が3度目の攻撃を繰り出すタイミングで、焔熊羆の凶悪な爪が迫る。攻撃する場所がわかっていれば、高レベルの気配遮断であろうとも感知することができる。
しかし、鈴鹿は一歩も引かない。膝へ繰り出そうとしていた拳の軌道を修正し、振り下ろされた爪へ拳を振り上げる。結果は歴然。拳を振り抜いた鈴鹿に対し、焔熊羆は巨大な手を弾かれ無防備な姿をさらす。岩だろうと切り裂く焔熊羆自慢の凶悪な爪も、夜天を纏う鈴鹿の毒手には敵わない。これに怪力と金剛を併用すれば、焔熊羆の爪が勝る道理はなかった。
無防備な焔熊羆の膝へ流れるように拳を振り抜く。三度目ともなる攻撃は、膝を砕く確かな手ごたえを与えてくれた。
「ゴォガァア゙ア゙ア゙ア゙!!」
膝が壊れて沈む焔熊羆に、鈴鹿は止まらない。体術による歩法により焔熊羆の死角へ回れば、気配遮断によって焔熊羆は鈴鹿を見失う。
意識外からの強烈な攻撃は、焔熊羆の硬い外皮をものともせずにダメージを与えてくる。骨は砕け肉が潰れ、焔熊羆はたまらずに周囲を無差別に攻撃する。火炎を吐き、手を振り回す。しかし、狙いの定まらない攻撃が鈴鹿を捉えられるわけがない。現れては拳が焔熊羆を壊し、また消えては別の場所を壊してゆく。
「グゥアァァァアアァアアア!!!」
鈴鹿の攻撃に耐え切れなくなった焔熊羆は、全身から炎を吹き出し全方位を燃やし尽くす。あまりの火力に地面がガラス状に溶けだし、熱波を受けて樹々が燃え盛っている。
鈴鹿は無理をせずに引くと、焔熊羆に向かって液状化した毒を大量に放出した。炎を鎮火するように放出された液状の毒は、焔熊羆にとってその先に鈴鹿がいるという証明であった。
全周囲に散らしていた炎に指向性を持たせ、毒を飲み込むように放出される。あまりの火力に鈴鹿が放出した毒は蒸発し、炎に飲み込まれてゆく。
焔熊羆は耳を澄ませるが、人間が呻く苦痛の声は聞こえてこない。生き物が焼ける匂いもしてこないため、小賢しく避けたのだろう。そう判断した時、焔熊羆の身体に異常が訪れる。全身を突き刺すような痛み。転げまわりたくなるほどの搔痒感。
焔熊羆が蒸発させたのは劇毒の液体。蒸発し気化された猛毒は空間を汚染し、焔熊羆を内部から侵してゆく。硬質な毛は爛れる様に抜けてゆき、いくつかの臓物が機能不全に陥っていた。生命を維持することで精一杯の焔熊羆は何と隙だらけなことか。
4つ足の状態になったことで顔まで殴れるようになった鈴鹿は、呻く焔熊羆に構わず殴りつける。とりあえず鈴鹿を近づかせないために全身に炎の鎧を纏うが、液状化した毒が炎の鎧を蝕み、気化した毒が焔熊羆を汚染する。
満身創痍の焔熊羆だが、エリアボスとしての矜持か、はたまた追い詰められたが故に辿り着いた境地か。周囲に何度も大爆発を起こして強制的に空気を入れかえ、自身の周囲を毒が気化しない極低温の炎の膜で覆うことで、鈴鹿が接近したことを知覚できるようになった。
顔へ迫る拳。焔熊羆は毒で崩れ行く身体に鞭を打ち、今日一番の速さで拳へと嚙みついた。たしかな嚙み応え。捉えたと思った直後、噛み付いた腕は霧散する。
焔熊羆が残る僅かな力を振り絞って噛み付いた先は、鈴鹿が用意した撒き餌、見えざる手であった。
爆風でどれだけ空気を入れ替えようとも汚染し続ける毒。炎の膜で攻撃を知覚できるようになっても、本人かスキルによるものか判断することができない。それでいて、全身を磨り潰す様に絶え間なく殴打が降り注ぐ。
焔熊羆は己の力を十全に活かすこともできず、あっけなくその姿を煙へと変えた。
■焔熊羆討伐によるステータス
名前:定禅寺鈴鹿
レベル:93⇒98
体力:728⇒753
魔力:815⇒853
攻撃:886⇒934
防御:790⇒825
敏捷:877⇒925
器用:760⇒789
知力:692⇒712
収納:369⇒389
能力:剣術(5)、体術(9)、身体操作(8)、身体強化(9)、魔力操作(8)、見切り(8)、金剛、怪力、強奪、聖神の信条、毒魔法(8)、見えざる手(6)、思考加速(6)、魔力感知(7)、気配察知(7)、気配遮断(9)、状態異常耐性(8)、精神耐性(7)、自己再生(8)、痛覚鈍化、暗視、マップ
■焔熊羆のドロップアイテム
焔熊羆の防具、焔熊羆の爪・毛皮、焔熊胆・焔臓、収納袋、小魔石、焔熊羆の宝珠
Tips:焔熊羆の攻略方法
戦闘非推奨のエリアボスである。
見た目通りの攻撃力、見た目にそぐわぬ俊敏さ、想像以上の耐久性。硬質な毛に覆われた焔熊羆はダメージを与えることも難しく、生半可な威力の魔法ではダメージを通さない。また、接近戦においても熱波渦巻く炎の障壁に護られているため、近づくことも容易ではない。
5区のモンスターである臥熊の装備が耐火性能に優れているため、これに準ずる装備を一式揃っていなければ戦闘は避けるべきである。
明確な攻略方法は存在せず、然るべき装備、然るべき技量を備えて戦うことが最善手である。
焔熊羆の行動パターンとしては、序盤は火魔法を周囲に飛ばす程度であり、接近も容易である。一定量のダメージを与えると炎の鎧を纏い、全方位への火魔法と爆発を伴う魔法を多用するようになる。
耐火装備を頼りに張り付き、高火力の攻撃をもって短期決戦を目指すべきである。




