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狂鬼の鈴鹿~タイムリープしたらダンジョンがある世界だった~  作者: とらざぶろー
第一章 1層1区攻略

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3話 パラレルワールド

 はい、どうもこんにちは。定禅寺じょうぜんじ鈴鹿すずかです。


 全財産をFXで溶かし絶望に打ちひしがれながら眠りにつけば、目を覚ましたら中学三年生にタイムリープした時をかけるおっさんこと、定禅寺じょうぜんじ鈴鹿すずかです。


 タイムリープしたなんて混乱してましたが、未来の情報チートを使って株で大儲けできると知れば喜びのほうが大きかった。当然だ。このご時世お金に悩まなくていいだなんて望外の幸せだろう。そんな幸せがこの先手に入るのだ。浮かれもするだろう。


 ですが皆様。雲行きが怪しくなってまいりました。


「なんだってばよこの歴史は……」


 期末試験が終わったにもかかわらず、鈴鹿は社会科の教科書を開いて頭を抱えていた。そこに書かれていた内容は、途中から鈴鹿が知っている歴史とは大きく異なっていたのだ。最初はパソコンを使って調べていたが、あまりの内容にネタかと思い教科書を開いてみたのだが、同じことが書かれていた。


 19世紀までは鈴鹿の知る歴史と変わらなかった。平安京もあるし、鎌倉幕府もこの時の教科書では1192年に作られているし、江戸幕府を治めていたのは徳川家だ。


 だが、20世紀がおかしかった。鈴鹿の知る歴史では、第二次世界大戦が終戦したのが1945年。そのあとGHQが来てサンフランシスコ平和条約を結び、あれよあれよと高度経済成長期を迎えバブルを経て俺が生まれた。あまり歴史については不勉強だったためうろ覚えなことが多いが、大筋は正しいだろう。


 しかし、この世界線では違った。第二次世界大戦が終戦した1945年までは一緒。だがその5年後の1950年、世界にダンジョンが出現した。何かの隠語でも比喩でもない。漫画やラノベに登場するあのダンジョンがこの世界に出現したのだ。


 今では100を超えるダンジョンの数があるが、初めて出現した当時のダンジョンの数は10。列強と呼ばれていた国々に加え、アフリカや南米、敗戦の傷跡深い日本にも現れた。


 第二次世界大戦という凄惨な戦争を終えたばかりということもあり、どの国も疲弊していた。本来であれば国力を回復する必要があるこの大事な時期に、異界へと続く門、後にダンジョンゲートと呼ばれるものが突如出現した。そして、そのゲートを潜れば新たな世界へ行くことができたのだ。


 これには為政者たちも初めは歓喜した。新しい領土(・・・・・)が突如現れたのだ。他国から切り取る必要もない。中の世界は未知数ではあるが、豊富な資源が眠っているかもしれない。そんな将来の金山になりえるかもしれないダンジョンに、各国はすぐに軍を派兵した。


 ゲートの中には確かに広大な土地があった。天候も安定しており、リゾート地にでもできるかもしれない環境だった。


 モンスターさえいなければ。


 その広大な土地には地球上の生物ではないまったく別種の生物がいた。可愛らしい生き物ではない。野生動物を数倍凶暴にしたような気性に、体躯も一回りも二回りも大きい生き物。それは地球上の生き物とは別の呼び方として、モンスターと言われるようになった。


 モンスターは一様に、人間が視界に映ったとたん我先にと襲い掛かってくる性質を持っており、侵入してきた軍隊へ殺到した。ただ、ゲート入口付近にいるようなモンスターたちの強さはたかが知れているため、銃器を持つ軍は驚きから多少乱れこそすれ制圧することは容易であった。


 これならば占拠できるとさらに進軍させたはいいものの、そう上手くはいかなかった。奥へ進めば進むほどモンスターは強くなり、銃器では殺しきれずに反撃を受け被害を受けることも増えてきてしまった。ダンジョンの奥行きはまだまだ深く、最果てでのモンスターの強さも想像できない。


 さらに、入口付近のモンスターを殺しつくしたはずだが、翌日には何事もなかったようにモンスターが現れるのだ。偶然などではない。それが数日も続くのだ。そこまでくればたまたまではないと理解でき、言い知れぬ不気味さが軍を支配した。


 入口付近でモンスターを倒しても得られるものはたかが知れている。それよりも、軍隊を動かすコストのほうが高くつく。敵を倒すには銃弾を消費するし、兵站だって必要だ。ましてや不意に強力なモンスターが現れれば、せっかく終戦したというのに軍人が死んでしまうこともあった。


 それ故、多くの国がダンジョンを放置する方向に動き出した。決め手となったのは、ダンジョンからモンスターが出られないことが分かったからだ。調査のために入り口近くのモンスターを捕らえゲートを潜り抜けようとしても、モンスターだけは潜り抜けられず消えてしまったのだ。


 モンスターは脅威だが、ダンジョンから出られないのであれば脅威ではない。当面の間はダンジョンの調査を縮小し、戦争で失った国力を復興させる方に注力しようとなったのだ。もちろん、ダンジョン周辺は万が一モンスターが出てきてもいいように軍事拠点を築いたりはしたが、内部調査は各国の動きに注力しながら遅々としたものであった。


 そんな中、狂ったようにダンジョンを探索した国があった。日本である。


 焼け野原となった東京の復興を進めていた日本。そこに突如現れたダンジョン。


 当時敗戦国であった日本は非軍事化が進められており、他国のように組織だって調査を進めることができなかった。疲弊しきっていた日本。そこに追い打ちをかけるようなダンジョンの出現。他の国では軍人が率先して調査していたが、日本では民間人がダンジョンの中へと入っていった。


 女子供関係なくダンジョンの中に足を踏み入れれば、化け物どもがひしめき合っていることは容易に確認でき、人々を混乱させた。


 そこで、幾人かの日本人が立ち上がった。国からの命令ではない。ましてや連合国の指示でもない。これ以上大事な祖国を好きにはさせまいと、次代を担う子供たちを護るためにと、大和魂が発露した者たちだ。連合国とは違い、当時の日本では銃器もなければ刀狩で日本刀どころか脇差すらなかった。そんな状態で彼らはダンジョンに潜っていった。自分たちの国を荒らさせないために。


 結果、幾人もの死者を出しながらも日本はダンジョンの開拓を進めていくことができた。GHQはこれ幸いと、ダンジョンの様子などを自発的に探索している日本に任せ、労せず情報だけを得られる環境を構築することができた。


 ダンジョンの探索を進める日本。そんな日本から情報だけを得て国力回復に努める連合国。連合国からしたら、勝手に人的資源を浪費しながら情報をせかせか持ってくる日本が滑稽に見えていたことだろう。


 だが、そんな連合国の余裕もすぐに崩れ去ることとなる。


 日本がダンジョン探索を行った結果、特殊なアイテムやレベル、スキルなどの存在が公になった。ダンジョンで得られるアイテムは現代技術では再現できないようなアイテムであり、レベルやスキルは個が手に入れるには強力すぎる力が得られていた。その情報はとても無視できるようなものではなく、ダンジョンが現れた各国も率先してダンジョン探索に乗り出していた。


 しかし、事態は急変する。


 ダンジョンが出現して1年後。ダンジョンブレイクが発生したのだ。


 ダンジョンからおびただしい数のモンスターが溢れ出し、防衛のために設置していた軍事拠点など津波のごとく破壊し押し流していった。出てくるモンスターはゲート近くの弱いモンスターだけでなく、日本人が探索して発見した奥地で見かけたような強力なモンスターも混じっていた。


 ダンジョンは世界で一斉に出現したのだが、出現した場所は都市部などの人口が多い場所。そんな場所で起きたダンジョンブレイク。その被害は凄惨で、都市部がモンスターに占拠されるのにそう時間はかからなかった。


 世界が阿鼻叫喚で包まれる中、日本だけは違った。時差もなく一斉に各国でダンジョンブレイクが起きる中、日本のダンジョンからモンスターが溢れ出ることはなかった。後に専門家によって結論付けられた内容は、日本がダンジョンの探索を進めていたからだとされている。


 各国も日本の状況を見てダンジョン探索に取り組んだが、それはダンジョンが出現して半年以上経過してからだ。各国が様子見をしている間も、日本は攻略し続けていた。ダンジョンブレイクの未発生要因は、一定以上のダンジョン探索を行い、一定以上の人間をダンジョン探索させること、と非常にあいまいな結論が出されている。


 それが正解なのかはわかっていないが、ダンジョンブレイクを機に各国はダンジョン探索を本格化させ、その後は一度もダンジョンブレイクは起こっていない。


 そして、ダンジョンブレイクという世界的な災害は、日本復興の大きな足掛かりへと繋がった。


 世界各国が国という垣根を超え、ダンジョンから溢れ出したモンスターを討伐せんと動いた。しかし、溢れ出てきたモンスターは彼らが想定していた力を超えるものだった。銃器の効果は薄く、ミサイルを撃ち込んでも死なないどころか傷さえ負わないモンスターまでいる始末。後にモンスターのレベルが上がると魔力を伴わない攻撃は効果が薄れていくということが判明したのだが、当時はそんなこと知る由もなかった。対処のしようがないモンスターを前に、原爆を自国の都市に投下するなんて選択肢が大真面目に議論されていたくらい逼迫ひっぱくしていた。


 そんな中、日本ダンジョンの最前線をゆく探索者たちが救援活動を名乗り出た。ダンジョンの奥地でモンスターを狩り続ける者たちだ。モンスターの殺し方について彼らの右に出る者などいない。彼らは世界各地に派遣され、獅子奮迅の活躍をした。その結果、都市部に蔓延るモンスターを壊滅させ各地の都市奪還を成功させたのだ。


 この功績をもって日本は独立が認められ、その後もダンジョン先進国として今日こんにちまで世界の発展に貢献し続けている。

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― 新着の感想 ―
日本からもたらされる情報だけで情報の正確性が担保できる訳ないから、連合国側も自国のダンジョン放置なんてしないと思うわ。
こういう設定の方が現代にダンジョンあっても違和感ないかも 現代にダンジョンできて民間人がすぐ潜るなんて神の声でもない限り無理だろうし、未成年なんかでは許可おりるわけ無いでしょうし
なろうあるあるな間違いである“銃火器“を多用してらっしゃるので気になりました。 実は日本語に“銃火器“という単語はありません。 銃器もしくは火器でOKです。 大型高火力な火器、と一部に限定した意味合い…
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