6話 小鬼の次は鬼
木製小鬼との戦闘を終わらせた鈴鹿は探索を続ける。10分も歩けばまた別の木製小鬼の集団がいたため、問題なく煙へと変える。
「う~ん。こいつらはあんまり強くないなぁ。恐れ知らずな感じで突っ込んでくるだけで、なんて言うんだろう……そうだ! 烏合の衆って感じがするわ」
特に連携することもなく、鈴鹿を見つけたら『ヒャッハー!! イケイケー!!』と攻撃してくる。酩酊羊を思い出すが、こいつらは肉を落とさないのでうまみもない。
「あ、一本武器奪ってみるか。」
50%の確率で武器を落とすため気にしていなかったが、こいつらからは強奪のスキルで直接武器を奪える。強奪のスキルで奪った武器は強化されてしまい名前も変わるため売れないのだが、どんな武器になるか確認はしてみたい。
木製小鬼を探して歩いていると、また別の冒険者たちを見かけた。
「人多くて嫌だな。いなくなんないかなこいつら」
無理難題を想像しながら他の探索者を避け、木製小鬼を探す。探索者も多いがモンスターも多いのですぐに見つけることができた。
遠くに見えた集団へ近づいてゆくと、一匹だけ図体のでかいモンスターがいた。
木製鬼:レベル15
「おお、鬼が出たか。少しは張り合いあるかな?」
鬼は小鬼と違って身長も大きく、170センチ程度の大きさだ。体格もがっしりしていて、人相の悪さからオラオラ系の関わりたくないタイプの人物に見える。
小鬼の上位種とされる鬼だが、エリアボスという訳ではない。レベルも13~16の範囲で出現する一般的なモンスターだ。
「ガギガギガアアアアアアア!!!」
鈴鹿を見つけるや否や、木製鬼は雄たけびとともに突進してきた。親分狐は最初は舎弟狐を先行させて様子をみるような戦い方に対し、鬼は小鬼を押しのけて我先にと先陣に立つタイプのようだ。
レベルも高く図体もでかいためか、膂力があってなかなか力強い。だが、エリアボスでもない普通のモンスターであるため、ステータスは鈴鹿の方が高そうだ。何回か鬼の攻撃を防いで見せるが、押し負けることはなかった。
どうやって武器を奪おうかと考えていると、左右に散っていた小鬼が鈴鹿が背負っているリュックめがけて跳び付いてきた。舎弟狐のタックルを経験していたため簡単にはじくことができたが、どうやら荷物を奪おうとしてきたようだ。
一度距離を置いて鬼や小鬼の面を見れば、ニヤニヤと底意地の悪そうな笑みを浮かべている。どうやら鬼が相手の気を引き、小鬼が荷物を奪ったり邪魔してくるのがこいつらの戦法のようだ。
ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。ただ相手の嫌がることをするのが心底楽しそうにしている。その性根に、鈴鹿は嘆息した。
「お前らつまんねぇな。期待外れもいいところだわ」
鈴鹿の握る魔鉄パイプが仄かに色づく。先ほどと同じように鬼が向かってくるが、わざわざ攻撃を受けてやることもない。鬼が振り下ろすタイミングに合わせ懐へ踏み込み、振り下ろしている腕へ魔鉄パイプを振り上げた。
前腕の骨を砕き肉を引きちぎり、鈴鹿は魔鉄パイプで鬼の腕を武器ごと引き千切った。
「グガガッガアァアァアア」
痛みで吠える鬼を無視し、その隙に跳び付いてきた小鬼を地面へ叩きつけ煙へと変える。小鬼もやられるだけでなく武器を掲げて向かってくるが、鬼同様武器ごと腕を千切られて返す攻撃で煙へと変わっていった。
最後に、ぎゃーぎゃーうるさい鬼を始末すれば、残るのは地面に転がった小鬼の持っていた槍と鬼がもっていた木刀だけになった。
「さて、どんなアイテムに変わってるかなぁ」
鈴鹿の持つユニークスキル『強奪』によって得られたアイテムは、強化されてドロップする。これら木製の武器も強化されているはずだ。
わくわくしながらアイテムの詳細を確認した。
名前:木製の槍(鬼職人見習い作)
等級:普通
詳細:鬼職人の見習いが作ったしなやかで丈夫な木製の武器。小鬼たち憧れの一品。これを持っていると、小鬼が是が非でも奪い取ろうとする。
「……しょっぱいな」
『強奪』のスキルの効果で、ただの木製の武器も強化されたアイテムになっている。ただし、素材などは何も変わらず鬼職人の見習いが作成したということだけが変化点だ。
魔鉄と違って溶かして再利用などもできないため、用途は本当に木製の武器というだけ。丈夫なのはいいことだが、それだけでは今の魔鉄パイプで十分だ。
「こっちも似た感じかな?」
木製鬼が落とした木刀も同様の内容であった。
名前:堅木製の剣(鬼職人見習い作)
等級:普通
詳細:鬼職人の見習いが作ったしなやかで丈夫な堅木製の武器。鬼たち憧れの一品。これを持っていると、鬼が是が非でも奪い取ろうとする。
鬼のドロップは木製ではなく堅木製の武器になる。こちらも鬼職人の見習いが作成しており、等級は普通であり希少でもなかった。
「あ、良く見ると鬼のマークが彫ってあるな。意外と細かい」
堅木製の剣は両刃の形をしている。刀身も大きく太いため、叩き潰すには十分そうな剣だ。明らかに重そうな剣ではあるが、ステータスの高い鈴鹿なら簡単に振り回すことができた。
「悪くないけど、魔鉄パイプの方が取り回し楽でいいな。お蔵入りだ」
等級も高く魔力も流しやすい魔鉄パイプの方が、トータルで優れている。その分ドロップ率が悪いため、手に入れにくいのが難点ではあるが。
「鬼はもういいな。鬱陶しいし。他のモンスターいないかなぁ」
強奪した職人見習いの武器を収納に仕舞い、鈴鹿は探索を続けた。
日間ローファンタジー24位
注目度8位いただきました!!
ありがとうございます!!感謝しかありません!!
五章までは毎日20時に予約投稿済み、六章も書き終わって矛盾ないかチェック中です!!
感想も誤字脱字報告もブクマも評価もありがとうございます!!これからも応援していただけますと幸甚です!!




