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狂鬼の鈴鹿~タイムリープしたらダンジョンがある世界だった~  作者: とらざぶろー
第九章 修練の3層5区

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16話 チーム狂鬼の特訓

 高知ダンジョン。低層であるこのダンジョンは、よく見られる地方のダンジョンと大きく変わり映えはしない。四国唯一のダンジョンということもあり育成所の利用者はそれなりにいるが、出雲ダンジョンの様に3層が封鎖されているようなこともない。


 西日本に位置する高知であるが、大阪ほど極端な探索者優遇思考は持っていない。その大きな理由が、三級ギルドのみ活動している点であろう。探索者は強さこそ至高。その考えで言えば、存在進化すらいたっていない三級探索者は落ちこぼれ扱いを受ける。この地で活動する探索者にも、大阪や京都で肩身の狭い思いをしてきた者もいる。


 そんな者たちが多く活動しているためか四国は治安も良く、ダンジョンも適切に運用されている。


 平和な高知ダンジョンの2層3区。そこに鈴鹿たちはいた。


「じゃあヨキとはここでお別れね。モンスターに見つからずに辰砂大鬼しんしゃのおおおにの元まで行くこと。辰砂大鬼を倒すこと。この二つがヨキの特訓です」


 いつも通りフワッとしたひどい訓練内容を、鈴鹿が説明する。だが、そのことにヨキも灰ヶ峰もつっこみはしない。ヨキは鈴鹿の指示をこなせない自分が悪いと考えているし、灰ヶ峰は諦めている。


 気配察知と気配遮断のスキルを発現させレベルを上げるために、ヨキには一人で4区5区を踏破させる。そして、前回同様足りない戦闘経験を補填するために、大量の鬼が湧いて出る辰砂大鬼と戦ってもらう。


「モンスターに見つかったら倒して、また見つからないように進むんだよ。引き連れたまま逃げるとモンスタートレインになるからね」


「心得てます。見つからないよう気を付けて進みます」


「地図も持ったね。方角としてはあっちの方だから、迷わないようにね」


 ヨキはマップのスキルを持っていないため、迷う恐れがあった。鈴鹿はヨキとパスがつながっているので迷子になっても探し出せるので構わないが、辰砂大鬼に辿り着けないとなると特訓できないので問題だ。


「じゃ、なるべく死なないように、頑張っていきましょう!」


「はい。必ずや倒して見せます!」


 前回はぼこぼこにやられて何度も死んでしまったので、次こそは必ずと決意の炎を燃やすヨキ。鈴鹿もヨキには頑張ってもらいたい。早く3層を一緒に探索できた方が、鈴鹿的に楽なのだ。ヨキが死ぬ度に2層5区へ行かなければならないのは手間でしかない。


 前回はヨキが死んだら蘇生しに戻り、ヨキを蘇生したら今度は灰ヶ峰が死んで戻り、灰ヶ峰を蘇生する頃にはまたヨキが死ぬという、蘇生のピストン運動をする羽目になったのだ。そんなポンポン死ぬようなことをさせている鈴鹿が悪く、ヨキに至ってはダンジョン探索すらしたことないというのにいきなりエリアボス倒してこいという無茶苦茶なことを言っているのだ。100%自己責任である。というより、ヨキも灰ヶ峰も良くまた鈴鹿と一緒にダンジョンに行こうと思えたものだ。


 彼らは文字通り死んでいるのだ。知覚できない攻撃で即死という訳ではない。ちゃんとした痛みを伴って、ちゃんとした致命傷を受け、それでもあがき続け、その結果死んでいる。鈴鹿はこの際置いておくとして、普通なら死ぬようなレベルの怪我を負っても再度挑もうと思えるものだろうか。


 普通の探索者と比べてはいけない。多くの探索者が大なり小なり死にかけた経験をしている。ただ、彼らは自分たちの実力に見合う相手と戦って、生死を彷徨うのだ。次こそは負けない。そう気持ちを強く持つことだってできるだろう。


 だが、ヨキも灰ヶ峰も相手は格上のエリアボスだ。レベル的には釣り合いが取れていたとしても、決して一人で挑むような相手ではない。つまるところ、ヨキも灰ヶ峰も死が確定した戦いに挑んでいると言っても過言ではない。現に、前回は何度も死を経験している。


 これはゲームではないのだ。死んで、復活する。その一連の流れの中には、多くの痛みが介在する。


 一度目の死は思ったよりも簡単に受け入れられるかもしれない。なぜなら何も想像できないから。本当に復活するのかな。そんな緊張が大部分を占めるだろう。


 だが二度目。二度目の死はそうはいかない。一度目の死で味わった鮮烈な痛みを否でも思い出すことになる。


 確定した痛みを受け入れて前に進める者がどれほどいるのだろうか。それがただの痛みではなく、死であるのだ。想像を絶する恐怖が襲い掛かるはず。それでも踏み込んでいける者は一握りの異質な才能だろう。その才を二人は宿している。


 ヨキは自分の事を鈴鹿の道具だと捉えている。鈴鹿の役に立つために、鈴鹿の求めに応じるために、ヨキは全力を注ぐ。道具はただただ主人を満足させるためにあるのだ。やれと言われたら、ヨキは喜んで踏み込んでゆく。その先に待ち受けるのが死であろうとも、鈴鹿のためとあらばヨキは満たされながら死んでゆく。


 灰ヶ峰はヨキとは違う。いたってシンプル。復活されるならそれが最も効率よく強くなれることだと理解しているから、何もためらうことなく死んでゆく。自分の感情は勘定に入れず、ただただ事実のみで思考する。それができるのが灰ヶ峰の強さであり、灰ヶ峰の異質さだろう。


 類は友を呼ぶというが、奇しくも鈴鹿の元には死を恐れぬ者が集う形となった。


「じゃ、灰ヶ峰もここでお別れね。他の探索者やモンスターに見つからないように、淵の番の場所まで来ること」


 灰ヶ峰もヨキ同様、気配遮断と気配察知のスキルレベル上げのため一人でダンジョン内を探索してもらう。ヨキと違って灰ヶ峰は道中で死んでしまうと見つけることができないのだが、灰ヶ峰のレベル的に3層5区のモンスターであろうとも一人で倒すことができるので安心して一人にすることができた。


 鈴鹿は灰ヶ峰に別れを告げると、一足先に練鱗淵れんりんふちばんの下へと向かうのだった。




 ◇




 練鱗淵れんりんふちの番は高知ダンジョンでも変わらず、美しい火山湖のほとりで二匹のお供を連れて鎮座していた。


 鈴鹿はここに来るまでに5区のモンスターを何体か倒している。鳴鶴めいかくが素材を欲しいと言っていたので、渡すためだ。そのためだけにモンスターを狩って回るつもりはないが、見かけたモンスターを毒魔法や雷魔法で瞬殺するくらいなら問題ないのでアイテム集めも行った。


 まだ灰ヶ峰は来ないだろうから、碧雲へきうん重鎧じゅうがいの鱗をさくっと倒し、淵の番と向き合う。碧雲へきうん重鎧じゅうがいも面白いのだが、淵の番が別格過ぎて前座としても物足りない。


 二体を倒すと、淵の番が悠然と歩み寄ってくる。


「お前とは長い付き合いになりそうだ。よろしくな」


 いつも通り挨拶すれば、淵の番も聞き取れない声でいらえを返す。今回の淵の番は双剣を使うようだ。初めて戦った時は太刀たち、次の淵の番は槍を持っていた。碧雲へきうん重鎧じゅうがいと同じで、扱う武器が個体によって違うのだろう。こうなると全種類武器を揃えたくなってしまうが、そんなことをすれば他の3層5区のエリアボスと戦えなくなってしまうのでやれない。

9

 ちなみに、現在の鈴鹿のステータスはこれだ。


名前:定禅寺じょうぜんじ鈴鹿

存在進化:鬼神種きじんしゅ(幼)

レベル:151⇒168

体力:1018⇒1103

魔力:1256⇒1389

攻撃:1432⇒1595

防御:1175⇒1288

敏捷:1428⇒1590

器用:1101⇒1199

知力:924⇒992

収納:601⇒669

能力:武神、武芸百般の極致(new)、剣術(5)、体術(10)、身体操作(9)、身体強化(10)、魔力操作(10)、見切り(10)、金剛、怪力、強奪、聖神の信条、水魔法(3)、雷魔法(9)、毒魔法(10)、鬼神纏い、滅却の魔眼、見えざる手(9)、雷装、思考加速(9)、魔力感知(9)、気配察知(8)、気配遮断(10)、誘いの甘言、魔法耐性(7)、状態異常耐性(9)、精神耐性(7)、自己再生(8)、痛覚鈍化、暗視、マップ


 前回淵の番を倒してレベルが168となった。3層5区のモンスターはレベル160までなので、ここまで来るとモンスターを倒してもレベルが上がることがない。しかし、ドロップ率が激渋になるほどのレベル差ではないのか、はたまたそれにかこつけてアイテム狙いで通常モンスターを倒しまくっているわけではないからか、今のところドロップ率は渋いがそれなりに3層5区のモンスターからはアイテムを得られている。


 他に変わったことと言えば、水魔法が少し上がったのと『武芸百般の極致』が発現していることだ。このスキルは淵の番の宝珠から得られたスキルだが、ヨキに発現している『武芸の心得』よりも上位のスキルであることが名前からもわかる。


 ありがたいスキルではあるが、今の鈴鹿にとっては枷と言っても過言ではないスキルだった。何故なら、鈴鹿はスキルに頼らず自分の技量を押し上げたいと思っているのだから。


 狂鬼戦で感じた圧倒的な地力の無さ。狂鬼との間にあった隔絶した技量の差。そのことに歯がゆい思いをした。そして誓ったのだ。狂鬼の力に相応しい力を身に付けると。


 この世界の人間からすれば、鈴鹿が言っていることは見当違いもはなはだしいと笑われることだろう。何故ならスキルも自分自身の力であり、スキルこそが可視化された技量であるからだ。その観点からいえば、過剰ともいえるスキルたちのおかげで鈴鹿の技量はカンストしていることになる。現に、力をフルで使えば淵の番など何もさせずに完封することだって容易たやすく、瞬殺すらできるだろう。


 普通であれば、自分の努力や技術に応じてスキルは成長する。その点でいえば、鈴鹿の体術がレベル10もあるのは分不相応と言っても過言ではないかもしれない。だが、鈴鹿は普通ではない。死なないことをいいことに、レベル差倍以上もある5区のエリアボス相手に挑み続ける狂気の沙汰を実行した男だ。不死の権能すら脅かす強敵が現れたというのに、嬉々として立ち向かう頭の緩さ。強くなることに固執し、楽しければ痛みすらも無視できる異常性。そんな人間が、普通と同じな訳がない。


 狂鬼チャンネルの視聴者の中で、狂鬼の実力とスキルが釣り合っていないと思う者はアンチですらいないだろう。ダンジョンはどこまで行っても平等であり、探索者のリスクに応じて力を与えるのだから。分不相応な力を与えるようなことはしないのだ。


 よって、スキルで得られる力はその者の実力であり、素の実力以上のスキルレベルだから……というのはただの嫌みにしか聞こえない。それがお前の実力なのだと思うだけだ。


 しかし、それはこの世界に染まった人間の思考である。ダンジョンなんて書籍かゲームでしか知らない世界の知識がベースにある鈴鹿は、そうは思わない。鈴鹿の行動によって手に入れたスキルも、鈴鹿にとっては与えられた力だと感じてしまう。そう感じてしまう一番の要因は、この高すぎるスキルレベルだろう。


 例えば鈴鹿は剣術スキルが5あるため、それなり以上に剣を扱うことができる。しかし、この剣術について鈴鹿は分不相応な力だと感じていない。金属バットから始まり魔鉄パイプ、そして小太刀と剣術レベル1から頑張ってきたからこそのスキルレベルであり、自信を持てる技術がある。


 恐らく、凡人である鈴鹿の技量としてはそのあたりが自分自身で納得できるレベルなのだろう。レベル9や10はあまりに見えている世界が違いすぎて、『与えられた力』感が出てしまうのだ。そして、それら高レベルのスキルに比肩する技量を鈴鹿は持ち合わせておらず、そのレベルのスキルを手に入れているのは技量の高さ故でなく、圧倒的に足りない技量を狂気的な行動力によって補ったからに他ならない。


 純粋な技量に合わせたレベルではなく、イカレた蛮行がたまたま運良くいい出目でめを出しただけにすぎない。鈴鹿はそう感じていた。


 だからこそ、自分で納得するためにも技量を上げる。体術や武神、それに発現したばかりの武芸百般の極致は出来るだけ封印し、身体強化もできるだけ抑えた状態で淵の番と戦う。そうすることで、戦闘の技量を磨くのが今回の特訓の内容である。2層では全力の状態に身体を慣れさせることがメインであったが、3層では地道に淵の番と戦い修練する。


 今回の高知遠征ではみっちり修行して、何なら3層5区の残りのエリアボスとの戦闘まで終わらせようと思っている。ただ、その前に淵の番と稽古をしっかりと行う。武芸の達人である淵の番は修行に持ってこいのエリアボスなのだ。この達人である淵の番を師匠とし、できるだけ多くの事を吸収するつもりだ。


 淵の番が双剣をまるで生き物のようにうねらせながら鈴鹿へと斬りかかる。淵の番の攻撃は一つ一つが次の攻撃の起点であり、連撃に繋げる布石であり、どれもが致命の一撃となりうる。長年の修練の結果、それら一連の攻撃を無意識下で繰り出してくるのだ。思考する時間すらなく、直接脊髄が指示を出しているかのようなラグの無い洗練された攻撃。それでいて攻撃に手癖のようなパターンは見いだせず、不規則でいて規則的に別人のような攻撃を繰り出してくる。攻撃のリズムもパターンも目まぐるしく変わることで、対応が追い付かない。


「アッハッハッハ!! やっぱすげぇよお前!! もっともっと魅せてくれッ!!」


 黄金の瞳を爛々(らんらん)と輝かせながら、鈴鹿は淵の番の攻撃を躱してゆく。しかし、何度も避けきれず致命傷を負ってしまっていた。


 強すぎるスキルたちが最適な行動に導こうと鈴鹿を誘導するが、鈴鹿は自分が動きたいように動く。お前ら少し黙れ。そう意志の力でスキルたちを黙らせ、等身大の鈴鹿として淵の番と向き合う。結果どれだけ切り刻まれようとも、鈴鹿は気にしない。


 痛みを感じれば感じるほど、鈴鹿は成長を実感できる。今まではスキルの強化を目的に痛みを感じていた。だが、今は素の自分を高めるために痛みを受け入れる。


 痛み無くして成長せず。鈴鹿は死なないことをいいことに、今も不死の力を最大限利用しようとする。死ぬか生きるかの瀬戸際ほど人間集中できることは無い。延々と続く死線を、鈴鹿はたまに死へと突っ込みながら走り続けるのだった。

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― 新着の感想 ―
まあゲームでもブッパしてるだけじゃ厨キャラでも詰むしな。 上げれるとこは上げるってのはよく分かる。
実際のMMOでも養殖キャラはロクにスキル回しも出来ないし、対人なんて論外ですからね しっかり戦って、少しずつ積み上げた経験にこそ強さが生まれるのは分かります
鈴鹿のスキルに対する認識の話も何回もしてるから段々だるくなってきています。 同じ話がさすがに多すぎるように感じられて内容の薄さが気になり始めています。
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