19話 覚醒
狂鬼が爆発したように黒い煙が吹き荒れる。今までのどのエリアボスよりも巨大な辺り一帯を覆い隠すほどの黒い煙は、余すことなく鈴鹿へと吸収されていった。
滅却の拳によって破壊された左腕も、狂鬼が倒れたことで治癒が再開される。狂鬼の滅却の力の残滓がこびりついているため再生は遅々としたものだが、僅かずつでも確実に再生されていた。
だが、そんな喜ばしい事象も鈴鹿の視界には映らない。凄まじい力が煙と共に鈴鹿に吸収される中、握りしめた狂鬼の心臓が、その姿を変えてゆく。
幾重にもガラスが重なり、中の力を封じ込めようとする水晶のようなモノ。それは5区のエリアボスを倒すことで得られるアイテム、宝珠であった。しかし、鈴鹿の知る宝珠はシンプルな丸い水晶で、中に煙が渦巻いているだけだ。今鈴鹿の手中に収まる宝珠は内部が複雑怪奇な構造をしており、中心に封じ込められている煙も数種類が渦巻いているように見えた。
通常の宝珠よりも何段階も格が上がったような宝珠。それが鈴鹿の手中に収められている。
そして、鈴鹿はその宝珠を迷うことなく使用する。それこそが鈴鹿が求めた力であり、自分の力で掴み取った狂鬼の力の根源であることを理解していたから。
厳かな気配の宝珠であるが、使い方は今までの宝珠と変わりはしなかった。しかし、宝珠から解放された煙の量は今までの比ではない。まるで狂鬼から溢れた莫大な煙の様に、複数の色の煙が鈴鹿へと吸い込まれてゆく。
脳を揺さぶる衝撃。一瞬自分自身が立っているのかどうかも理解できないほど脳へと流し込まれる大量の情報。目の前がブラックアウトし、チカチカと明滅を繰り返す視界。
脳への過負荷となる強化はすでに止めているというのに、それと同等以上の負荷が脳を締め上げる。鈴鹿は聖神の信条や自己再生があるため、廃人まっしぐらの脳への負荷も吐き気を伴う程の凄まじい頭痛を感じるだけで済むが、不死でもなければこの宝珠を使った時点で再起不能な障害を脳に負っていたのではないだろうか。
芋虫が蛹の中で蝶へと完全変態を遂げるように、鈴鹿の細胞一つ一つが生まれ変わろうとしていた。
もはや痛みは感じなかった。何か超次元的な存在に身体を弄繰り回されているような気分だ。鈴鹿という矮小な器に押し込めるにはあまりにも大きな力のため、器を作り変えるような、そんな変化が行われていた。
どれくらい放心していたかわからない。そう長い時間ではないだろう。目覚めた鈴鹿が見る世界は一変していた。
溢れ出る全能感にただただ酔いしれる。何でもできる、どんなことでもできる。今なら神にだってなれそうだ。
そんなことを本気で考えるほど、鈴鹿の体内で莫大なエネルギーが渦巻いていた。
今ならば例え狂鬼が相手であっても、あそこまで苦戦せずに倒すことができるだろう。そう確信できるほど鈴鹿は何段階も強くなっていた。まるで存在進化の様に、鈴鹿という存在ごと上位の存在へと押し上げられていた。
自分の変化を噛みしめる様に、鈴鹿は己と向き合う。今すぐにでもこの力を試したくてしょうがない。狂鬼が見ていた世界、狂鬼という隔絶した強さを持っていた存在の力を受け継いだのだ。振るいたくなるのも当然だろう。
湧き上がる衝動。押さえつけようにもうまくいかない。脳を強化し続けた弊害か、鈴鹿の自制心はだいぶ緩々になってしまったようだ。
あれだけ自分の弱さを嘆いたというのに。スキルという仮初の力に浮かれて思い上がるなと自分を戒めたのに。たまたま運良く手に入った力を高らかに自慢するのはダサいとわかっているのに。
それでもこの力を振るいたくてしょうがない。凄いだろうと見せびらかしたくてしょうがない。
体内で渦巻く超越した力たちが、鈴鹿を後押しするように獲物を寄こせと疼きだす。
「狂鬼。俺はあんたの力にふさわしい奴になるよ」
鈴鹿は立ち上がる。狂気的な笑みを浮かべながら。
「けど今日は無理だ。見逃してくれ! 止められねぇだろこんなのッ!!」
狂鬼と戦い自分自身の力がどれほど不足しているかを学んだ。そのためにスキルやステータスに依存しない力を手に入れようと決意した。しかし、今日ばかりはできそうにない。
溢れ出る全能感に酔いしれる。
これは麻薬だ。
一度浸ってしまったら、この快楽をまた味わうために何度も何度も繰り返したくなるだろう。
それでも今日限り。今日限りだからこそ、今だけは好き放題しよう。大盤振る舞いだ。この力を試そうじゃないかッ!! そうと決まれば敵を探さねば。この力を試すにふさわしい敵を。
そう思い鈴鹿が周囲を見回し、はたと気づく。そういえばスマカメどうしていたかなと。スマカメなんて構っていられる相手ではなかったため、確か狂鬼と戦うタイミングで落としたはずだ。あれは回収しないといけないな。さすがにもったいない。
鈴鹿がいるところは最初に狂鬼と遭遇した社のような屋敷から少し離れたところだ。そう大きく移動していないため、見つけるのは容易であった。
【まだ青空配信か】
【あと二日はかかると見たね】
【まだ1時間くらいだしな】
鈴鹿が近づくと、コメントの声が聞こえてきた。スマカメはひっくり返っており、レンズは上を向いている。鈴鹿が狂鬼と戦っている間、配信ではずっと空を映していたのだろう。
それなのに、コメントが流れている。よくもまぁ、つまらぬ配信を見続けてくれているものだ。感謝である。
「あっ」
その時、鈴鹿は素顔を晒していることを思い出した。狂鬼によって顔面を殴られた時、兎鬼鉄皮からドロップした『兎の鬼面』が滅却の力により破壊されたのだ。
しょうがない。顔は出したくないから代わりを着けよう。確か『大蛇のマスク』があったはずだ。そう思い収納を見てみると、見覚えのないアイテムがあった。
「『狂鬼の面』か。俺のお面壊したお詫びの品か?」
狂鬼の面とは、なんともこのチャンネルにふさわしいお面じゃないだろうか。
早速収納から取り出し取り付ける。狂鬼の面はマスクタイプの様で、口元だけを隠すタイプの面であった。どのようなギミックかはわからないが、面を口元に持っていくと自動で鈴鹿の口元に吸い付くように張り付いた。呼吸も苦しくないし、呪いの品のように外れないわけでもない。
「ん? すごっ、なにこれ。口が同化してる」
『狂鬼の面』は鈴鹿の口元に吸い付くと、そのまま一体となった。口を開けば面の口の部分も開く。鬼の口が再現されたような面だ。これなら面を着けたままでもご飯を食べれるのではないだろうか。配信にはもってこいの面かもしれない。
「うし。これなら問題ないな」
目元は露出しているが、そこはしょうがないだろう。気にし過ぎたら負けだ。
なおもコメントがちらほら流れているスマカメを見えざる手で拾い上げる。
【おお!?】
【終わったのか!?】
「お待たせ~。ごめんねカメラ。ちょっと相手強くてそれどころじゃなくてさ」
ここまで離れず見てくれていた視聴者に謝りを入れる。鈴鹿であれば数分でもカメラが放置されてたら見るのを止めているだろう。根気強い視聴者に感謝だな。
【そんな強かったの!?】
【てか眼!! 仮面変わってる!!!】
【あの鬼何? 本来のエリアボスとは違ったみたいだけど……】
【何そのお面!! というか狂鬼さんめっちゃイケメン!!!】
【目元だけでも溢れ出る美形……。さすがここまでリスクしょってステータス上げてる探索者はやばいな】
【それより狂鬼さん怪我してない?】
「そうそう。ほら。そのうち治りそうだけど、ここまで追い詰められたわ」
そう言って肩口まで回復した左半身をカメラへ向ける。
狂鬼との戦いは死闘であったが、攻撃はそう喰らっていない。まともに喰らったのは最初の仮面を破壊された攻撃と、左肩から左腕を毟り取られた時くらいだ。それ以外で喰らっていたら狂鬼の滅却の権能でそもそも死んでいただろうが。
【ひぃい、グロい】
【狂鬼さんの自己再生でもそんな治り遅いの?】
「ああ、ごめんごめん。自己再生でもこんなもんだね。腕生えるだけありがたいけど」
安易にグロ映像を見せるのは本意ではない。謝りつつ、傷口を隠す。
【時間かかっても欠損治るの凄いよな】
【狂鬼さんですらあんな大怪我するって、いったい何者だったんだあの鬼は】
鈴鹿の腕の治りが遅いのは狂鬼の滅却の力の残滓が残っているからで、ただ毟られただけだったらすぐに腕が生えていたことだろう。治るからいいが、死してなお爪痕を遺す狂鬼の強さはたしかに異常なものだった。
【あの鬼ってどんなエリアボスだったの?】
【他にも鬼っていた?】
【そのマスクってエリアボスのドロップ品?】
【宝珠どうだった?】
【戦闘の様子教えてよ!】
コメントからは狂鬼の詳細を聞こうとするものが溢れている。そりゃあ、ずっと青空中継だったら詳細を聞きたくなるだろう。普段ならカメラをしっかり撮影する鈴鹿がそれすら放棄し、あまつさえ左肩から先を失うほどの相手なのだ。興味も尽きないだろう。
しかし、鈴鹿は一切合切コメントへの返信を行わない。
「すまん! すまんすまん! その辺は今度ゆっくり話そう!!」
視聴者を蔑ろにしたいわけではない。むしろ逆だ。楽しませたいとも思っている。だから配信を続けているのだ。
スマカメを落としても配信が続いていたのはちょうどよかった。それも放置されてるのに残り続けてくれていたんだ。ならみんなを楽しませないとダンチューバーとして失格だろう。
「あの鬼はクソ強かったし、俺はその鬼に勝った! それが事実で、それが全てだ!!」
そう。鈴鹿は早く自分の力を試したくてしょうがなかった。込み上げる衝動を抑えるのに必死だった。だからダラダラと雑談するつもりはない。
【なんか狂鬼さんテンション変じゃない?】
【怪我してハイになってる?】
【いつもこんな感じじゃない?】
【アドレナリン出まくってるからな】
「というわけで! さっきの戦いはみんなに見せれなかったから! 次行くぞ次!!」
鈴鹿は提案する。予定が変わってしまいせっかくのエリアボス戦を青空のみで終わってしまった視聴者に、爛々と黄金の瞳を輝かせながら鈴鹿は言う。
【次?】
【次回の話?】
「2層5区にはエリアボスがまだ2体も残ってるんだ!! さぁ行こう!! すぐ行くぞッ!!!」
結局視聴者を置き去りにしながら、鈴鹿は別のエリアボスがいるであろう場所に向かって爆走する。
スマカメが壊れないように見えざる手で包みながらも、コメントの音声は聞き取れない速度で鈴鹿はひた走る。コメントからは何だ何だと状況が読み込めていない内容が流れているが、当の鈴鹿の耳には入ってこない。
狂鬼チャンネルの視聴者も鈴鹿の暴走モードは慣れたもので、鈴鹿を無視してコメント内で議論が行われる。狂鬼チャンネルの視聴者には探索者やギルド関係者も多くいるため、専ら先ほど出現していた鬼のエリアボスについてだ。
【やっぱりあの鬼はユニークモンスターだな。狂鬼さんがここまでダメージ受けてるくらいだし】
【2層5区のエリアボスとは特徴違ったしな。それに周りに鬼が1匹もいなかったし】
【2層5区は複数系のエリアボスなんだっけ?】
【そうそう。あの集落の鬼がわんさか出るらしい】
【まぁ、あの感じだとそうだよね。とても勝てる気はしないけど】
【あの集落単位の鬼が来るとか無理だろ……何体いるんだよ】
【でも狂鬼さんならそこまで苦労しなそう。エリアボス以外のモンスターは敵にならなそうだし】
【普通なら適正エリアのモンスターの大群とか絶望過ぎる光景なんだけどな……】
【集落単位とか立派なモンスタートレインだからな】
【てかあの灰色の鬼のユニークモンスター強すぎない? 集落の鬼を倒したかわからんけど、エリアボスは倒してたっぽいし】
【普通ユニークモンスターってエリアボス並みじゃないの? 怪我とかしてなさそうだったし、明らかに灰色の鬼はエリアボスより強かったみたいだけど】
【普通はユニークモンスターはエリアボス並み。戦ってもいい勝負のはず。ただ、数集めるタイプのエリアボスは本体が若干弱いからそのせいかも。けど、あんな無傷にはならないはずだけど……】
【ユニークモンスターはダンジョンの試練にも該当するからな。狂鬼さんクラスに合わせた試練があのユニークモンスターだったんじゃね?】
【実際いつも余裕の狂鬼さんが大ダメージ負ってるしね。適正っちゃ適正なのか】
【じゃあさらっと次のエリアボスに向かってるけど、狂鬼さん試練乗り越えたってこと?】
【そうなるのかな?】
【試練って乗り越えたら何があるの?】
【特殊なアイテムとかスキルとかがもらえるらしい】
【あの新しいマスクとかもそうなのかな?】
【かも。いろいろ聞きたいけど狂鬼さんが狂鬼モード入ってるから聞けても次回だろうけど】
【完全にスイッチ入ってるよね】
【雷鳥戦みたい。ああなったら止まらないよ】
コメントが議論していると、ほどなくしてエリアボスがいるであろう一帯にたどり着いた。
岩石砂漠が広がる一帯は巨大な岩々がそこかしこにあり、まるで2層4区の渓谷エリアの様でもあった。そんなエリアを奥へ奥へと進んでいけば、薄暗い広々とした一角へとたどり着いた。
広いエリアは岩石砂漠ではなく、地面が柔らかそうな砂に変質していた。周囲は巨大な岩々に囲まれているため、このぽっかりと空いたエリアだけ砂が変質しているようである。
一目見ただけで周囲とは違う特殊なエリア。しかし、エリアボスの姿は見られない。
【なんもいない。ここじゃないのかな?】
【隠れてるのか?】
【砂の中とか?】
「迅夜虎豹を思い出すなぁ!! オイッ!! もうそんなクソみてぇな手は通用しねぇえんだわ!!!」
そう言うや否や、鈴鹿は駆けだした。普通であれば砂に足が埋もれ動きにくいはずだが、体術のスキルがレベル10に至っている鈴鹿には何の障害にもなりえない。まっすぐ進んでいったかと思えば、突如鈴鹿の身体がぶれた。
そう思った瞬間、鈴鹿がいた場所に巨大なはさみが地面から出現し、鈴鹿の胴体を泣き別れさせようとはさみが閉じられる。当然とばかりに鈴鹿は地面から生えるはさみを回避すると、それを片手で掴み砂に隠れていた本体ごと空中へとぶん投げる。あまりの握力にはさみに指がめり込んでいた。やろうと思えばそのまま握り締めて手の形にはさみをむしり取れただろう。
「アッハッハッハッ!! でけぇ!! きめぇ!!」
二叉尾棘蠍:レベル156
砂から投げ飛ばされたのは巨大な蠍。名前の通り二又の尾っぽが生えており、巨大なはさみと二尾の毒針をメインで行使するエリアボスなのだろう。
本当なら砂中に魔法による範囲攻撃を撃ちこんで引きずり出したかったが、雷魔法は地面とは相性が悪いので仕方なく鈴鹿自身が動いた。
巨大なエリアボスを簡単に地面から引っこ抜いて投げ出した鈴鹿だが、そんな芸当は今までならできなかっただろう。できた理由は新しく発現したスキルによるものだ。
【は? ぶん投げた!?】
【あのサイズのエリアボスを投げた???】
【狂鬼さんなんか焼けた? 日陰だから?】
【肌の色おかしいよね?】
【眼とか凄い。狂鬼さんの存在進化の姿初めて見た】
【あっ、存在進化の姿か。ほんとだ。角生えてる】
【あのユニークモンスターに姿似てるね。灰色の皮膚だし】
【存在進化は同じ系統だと結構似たりするよね】
コメントから鈴鹿を考察するような内容が流れている。それは半分正解であり、半分間違いであった。
鈴鹿は棘蠍を引きずり出すために走った時、既に存在進化を解放していた。本来ならば額から一本の角が生え、黄金の眼の瞳孔が縦に長くのびるだけである。しかし、今の鈴鹿は肌の色が灰色に染まっていた。まるで狂鬼のように。
これは狂鬼から奪い取った宝珠から得られた、スキルの一つ。そのスキルの名は『鬼神纏い』。鈴鹿を狂鬼と同じ高みへと押し上げる破格の性能のスキルだ。
身体能力が上昇するのはもちろん、鈴鹿が希った狂鬼の技量、それらが『鬼神纏い』によって鈴鹿へと授けられる。それは鈴鹿の持つ体術スキルレベル10と相乗効果を生み、巨大なエリアボスの棘蠍だろうとも簡単に投げ飛ばすことができた。
「すげぇ!! すげぇよ!! こりゃあ強ぇえ訳だッ!!!」
鈴鹿の瞳に魔が宿る。全てを破壊する魔の権能が。それは狂鬼の宝珠によって鈴鹿に授けられたもう一つのスキル、『滅却の魔眼』による効果だ。
空中を舞う棘蠍を見る鈴鹿の瞳には、どこを攻撃すれば棘蠍が破壊され消滅するかが手に取るようにわかる。
わかるならば実践しよう。そうしよう。ちょうどいい相手がいるのだ。実践せねばもったいない。きっとこのスキルもそれを望んでいる。
棘蠍はあろうことか空中で態勢を整え、鈴鹿へと必殺の毒針を振り下ろす。二本の尾っぽが異なる方向から鈴鹿を狙い、巨大なはさみが回避する退路を断つために待ち構えられている。
しかし、鈴鹿はただただ笑みを深めるだけ。迫りくる毒針も、待ち構える巨大なはさみも、滅却の魔眼を通して視た世界ではなんとも儚く脆いものにしか見えないのだから。
「嗚呼、そんな弱いのによく頑張ったねぇ。褒めてあげよお!!!」
振り下ろされた毒針に拳を当てる。極夜の毒手が毒針の側面に淡く輝る滅却の灯に誘われる。力はいらなかった。超越した技量が備わった鈴鹿が毒針を打ちぬけば、尻尾は粉砕され傷口が広がるように破壊されてゆく。
それは二本の尾で同時に発生する。鈴鹿は一瞬の間に二本の尾を拳で打ちぬいていたのだ。
【え、尻尾粉砕された】
【もろすぎぃぃぃぃ】
【いや、狂鬼さんの攻撃の威力がおかしいだろ!!】
形勢不利を悟った棘蠍が地中へ逃げようと決意した時には、鈴鹿は懐に潜り込んでいた。
極夜の毒手が硬く硬く握りしめられる。まるで得物を前に舌なめずりする獣の様に、鈴鹿の爛々と光り輝く眼が三日月のように細められていた。
棘蠍がろくな行動も起こせないまま、鈴鹿の拳が腹部にめり込む。滅却の魔眼の導きのとおりに。
結果、棘蠍は身体が崩壊をはじめ、程なくして巨大な煙へとその姿を変えていった。
【……え、倒した?】
【いくら何でも早すぎない?? 相手エリアボスだよね??】
【夢遊猫よりも弱くねコイツ】
【いや、そんなはずはない!はずはないんだけど……狂鬼さんがおかしいとしか……】
コメントが荒れるが鈴鹿には入ってこない。
足りない。全然足りない。敵が弱すぎる。こんなんじゃ不完全燃焼もいいところだ。ならば次に行こう。まだあと一体残っているのだから。
「くたばんの早すぎだろうがクソ虫ぃぃぃいい!!! 宝箱なんかじゃ足りねぇぞ!! 次だ次ッ!! 次行くぞッ!!! 次はもっと強ぇえ奴持ってこい!!!」
煙が晴れたあとにポツンと残された鉄でできた宝箱を問答無用に開くと、何がドロップしたかも確認せずに鈴鹿は駆けだした。視聴者を置いてけぼりにしながら、次なる獲物を求めて。
【え? エリアボス瞬殺したよね、あの人】
【おっきいだけの普通のモンスターとかじゃないよね?】
【いや、あれはエリアボスだろ。狂鬼さん普通に避けてたけど、地面からはさみ出現したの速すぎて見れないレベルだったし】
【わかる。気づいたらはさみ生えてたし、気づいたら狂鬼さんが倒してた】
【あれは二叉尾棘蠍。れっきとした2層5区のエリアボス……のはず】
【合ってるはずなのにあまりにも呆気なさ過ぎて自信が無くなる】
【え、このまま最後のエリアボス倒しに行くの?】
【正直瞬殺過ぎて見応えが……】
【わかる。さっきの蠍なんて何がしたいエリアボスなのか何もわかんないまま、すぐ煙になってたしな】
【存在進化してるのも初めて見たし、狂鬼さん本気出したらこんな強いの?】
【エリアボスだよ? それも普通のエリアボスよりもより強力な5区のエリアボスだよ? なんで瞬殺できるの?】
【強いとかじゃないだろこれ。バランス壊れてる。エリアボスが出現するから狂鬼さんのレベルが適正なのはわかるんだけど、戦いの様子が一切適正じゃないの何なの?】
【腕ももう肘くらいまで生えてきてるし、回復力も備わってるとか誰も倒せないだろ……】
【そもそも、片腕失ってる状態でエリアボスに挑みに行く狂鬼さんのイカれ具合が極まってる】
鈴鹿がテンション爆上がりで存在進化を開放し、あまつさえ手に入れた特級のスキルである『鬼神纏い』と『滅却の魔眼』を隠すこともなくダンチューブで配信しているため、鈴鹿の強さに視聴者が困惑している。
あれだけ早くエリアボスを倒せたのは『滅却の魔眼』によるところが大きいが、それを的確に攻撃できるのは鈴鹿の技量が恐ろしいほど上昇しているからに他ならない。
体術のスキルレベルが10になり、『鬼神纏い』によって狂鬼と同じレベルの技量が付与されているだけでなく、さらにもう一つのスキルがこれらのスキルを高めていた。
それは『武神』。狂鬼の宝珠から得られた三つ目のスキルにして最後のスキル。それが『武神』であった。
名前の通りこれは剣神と同格のスキルであり、破格の性能が約束されたスキルである。鈴鹿が狂鬼の強さに焦がれ求めたからこそ、手に入れることができたのだ。
『鬼神纏い』、『滅却の魔眼』、そして『武神』。逸脱したスキルが三つも付与された鈴鹿相手に、もはやいい勝負ができる者などいるのだろうか。
そんな者はいないと証明するように、鈴鹿は2層5区に住まう最後のエリアボスの下へとたどり着いた。
2層5区の奥地。そこでは泥濘が広がっていた。まるで2層3区のような光景。広がる水たまりはオアシスの様でもあるが、まばらに広がるそれは澄んだ水ではなく、濁りぬかるみ探索者の動きを阻害する天然の罠であった。
昨晩台風でも通ったのかと思うほど一帯が泥や水たまりに覆われているエリアの真ん中に、それはいた。
泥濘戦機乙型:レベル156
それは泥でできた巨大な蛸だった。蛸というには触手の数が些か多いが、フォルムは蛸のそれであった。水たまりなので深いわけではないはずだが、泥蛸は優雅に泥濘の上を滑るように移動している。
【え、まさかの海洋生物】
【なんで蛸?】
【泥濘戦機乙型。あれはゴーレムです】
【乙型? 魔法型かよ。厄介だな】
【ゴーレムはさすがに長期戦確定だな。雷魔法主体の狂鬼さん雷神バージョン見れる?】
ゴーレムと呼ばれるモンスターは、今までに甲・乙・丙の三種類が確認されている。甲型は肉弾戦メインの脳筋型で最も数が多い。乙は魔法型と呼ばれるもので、全体攻撃魔法などを乱発する非常に厄介なタイプだ。最後の丙は特殊機能を持ったタイプで、空中を舞う小型ドローンの様なものからレーザーを照射する攻撃を縦横無尽に行うようなタイプもいれば、超近接攻撃特化でありながらコアが別の場所にあり無限に回復し続けるものなど、一癖二癖あるタイプが多い。
優雅に泥濘を滑る泥蛸は乙型のため、魔法が主体のエリアボスのようだ。ゴーレムはどの型でもコアが残っている限り再生し続けるため、非常に耐久力が高いのが特徴である。倒し方としてはコアを破壊するか、再生エネルギーを枯渇させるほど破壊する必要があった。
「アッハッハッハッ!!! 蛸かよ蛸!! 最高かお前は!! 喜べ!! お前で最後だから一緒に水浴びしてやるぞッ!!!!!」
何かがツボに入った鈴鹿は、テンションを爆上げしながら泥濘地帯を驀進する。2層3区の泥濘地帯では靴に泥が跳ねるのすら避けるように、見えざる手を筋斗雲かのように使って避けていたというのに、まるで泥遊びを楽しむ大型犬かのように汚れることを一切躊躇わず泥蛸へと向かってゆく。
コメントにもあったように雷魔法を使えば汚れずに済んだかもしれないが、力に酔う鈴鹿にはそんな選択肢は生まれてこない。あるのは溢れんばかりに体内を渦巻く破壊の衝動を、目の前の泥蛸に拳でぶつけたいという欲求のみ。
棘蠍では何もかもが足りなかった。『滅却の魔眼』の相手を殲滅する導きが強すぎて、2層5区程度のエリアボスでは受け止めきれないのだ。鈴鹿の様に攻撃を全て避けるにはエリアボスは鈍重すぎており、さらに鈴鹿の近接攻撃超特化のスキル構成が避けることを許してはくれない。
その結果、脳汁溢れる鈴鹿は戦いを楽しむとか力を使う練習だとかエリアボスの戦いを視聴者が楽しみにしているとか、そんな些事を一切合切切り捨て、あの『滅却の魔眼』によって光り輝く場所に拳をぶち込みたいという情動のままに、泥蛸へと接近を果たす。
泥蛸も鈴鹿の接近に気づき、逃げるように泥濘を滑りながらも魔法を行使する。周囲の泥濘が底なし沼の様に変化し、脚を踏み入れた者の動きを完全に阻害する死の沼へと変化させた。さらに、海面のように地面が揺れ動き、泥沼にはまった者を下へ下へと引きずり込むように圧力をかけてゆく。
当然、攻撃の手はそんな優しいものだけではない。レーザービームの様に超高圧に射出される水が、射線上にある全てを切断してゆく。沼にハマった探索者たちを細切れにするために、ウォーターレーザーが触手の先から不規則な動きで射出され続ける。10本を超える足から放たれるウォーターレーザーは、近づくことすら困難を極める非常に厄介な攻撃であった。
しかし鈴鹿には関係ない。まるで羽にでもなったのかの様に、鈴鹿は泥濘に踏み込んでも沈むことはなかった。どのような歩法を使えばそんなことが可能なのかはわからないが、あらゆるスキルが鈴鹿の技量を底上げし、鈴鹿の動きを阻害する一切を無効化する。そのうち空中すら歩けるようになるのではと思えるほど、鈴鹿の技量はカンストしていた。
荒れ狂うウォーターレーザーを避けることも、鈴鹿にとっては児戯に等しい。不規則とはいえ射出元の触手は丸見えなのだ。それも生物的な動き方から逸脱しない動きしかあの触手はしてこない。そんなもの、当たる方がどうかしているというものだった。
「俺はなぁ!! 蛸は刺身も茹でんのも好きなんだよッ!!! お前はどんな風に調理されたいんだぁあ!!?? やっぱキムチ和えかぁあああ!!??」
泥蛸なので一切美味しそうには見えないが、鈴鹿はお腹が空いているのか蛸から食材となる素材がドロップすると思い込んでいた。だからここまでテンションが上がっているのかもしれない。
迫りくる鈴鹿を避けるために必死に後ろに滑りながらウォーターレーザーを射出する泥蛸。足元を泥沼にしたり、泥の波を発生させたりもするが、鈴鹿の歩みは止まらない。むしろ加速する。
泥蛸は逃げきれないと悟り、攻勢に転じた。エリアボスとしての勘か、鈴鹿の攻撃を喰らえば死ぬと理解したか、ここに来て一切ダメージを受けていないはずの泥蛸は最大の攻撃を敢行する。
それは吸収。探索者の攻撃を泥濘の身体が無効化し、絡みついた触手が泥蛸の内部へと探索者を取り込む即死の技。探索者の内部に泥水を注ぎ込み、全身を圧縮することで取り込んだ探索者を圧殺する初見殺しの技。これを知らずに近接攻撃で泥蛸を削っていれば、突如内部に取り込まれ訳が分からないまま殺されることだろう。
泥蛸は鈴鹿を取り込むために、カラストンビを大きく開け鈴鹿へ喰らいつく。
「なんだなんだなんだぁあぁあああ!? もう逃げるのは止めたのかッ!!?? なら終わりだッ!!!」
反転して襲い掛かる泥蛸に、鈴鹿は一切動じない。始めからそう来ることを知っていたかのように流れる動きで攻撃を繰り出す。大量に注ぎ込まれた魔力を毒魔法と魔力操作のスキルによって封じ込められた極夜の毒手が、滅却の魔眼の導きに従い泥蛸へ叩きこまれる。
それだけで、身体の大半が爆ぜて跡形もなく消し飛んだ泥蛸。鈴鹿を取り込むはずだった魔力によって練り上げた泥たちは、虚しく消滅した。その衝撃の余波は止まることもなく、泥蛸を構成するコアまで侵食していき、やがて巨大な煙へとその姿を変えた。
【わん……ぱん?】
【え、ゴーレムでしょ? あの無限耐久地獄のゴーレムだよね?】
【狂鬼さんの攻撃力どうなってんの???】
【怖い怖い。なにこれ】
狂鬼との実力の差を痛感し、スキルに頼らず謙虚に生きようと思っていたが、出来なかった。でも今日はしょうがない。今日だけは、大盤振る舞いにスキルを行使する日だったのだ。生きていればそういう日もある。いちいち悩む方が無駄なのだ。
「さてさてさて!! なんとも弱くて呆気なく終わっちゃったけど!! これで2層5区のエリアボスは制覇しました!! あ! 宝箱またある!! やったね!」
何も嬉しさが伝わらないテンションで、サクッと宝箱を開封する鈴鹿。
「いやぁあっという間だったね!! 次回は3層攻略かな!! 次の配信はちょっと日が空いちゃうかもしれないけど、また予告するから見てね!! じゃ!!!」
コメントが詳細を求める様にもの凄い勢いで流れ出していたが、鈴鹿は聞こえていないかのように配信を停止した。
凄まじいスキルの数々で少々ハイになってしまっていたようだが、2体のエリアボスを倒したことで少し落ち着きを取り戻した。そうなると気になるのは泥だらけの現状だ。何も気にせず泥蛸に突貫したため、鈴鹿の全身は泥にまみれ非常に不快な状態だった。
「うし!! 帰ろう!! 帰って風呂だッ!!!」
まだ若干高いテンションのまま、鈴鹿はギルド備え付けのお風呂に入るために、ダンジョンを駆け抜けるのであった。
■狂天童子、二叉尾棘蠍、泥濘戦機乙型討伐によるステータス
名前:定禅寺鈴鹿
存在進化:鬼神種(幼)
レベル:128⇒151
体力:903⇒1018
魔力:1079⇒1256
攻撃:1214⇒1432
防御:1023⇒1175
敏捷:1208⇒1428
器用:965⇒1101
知力:832⇒924
収納:509⇒601
能力:武神、剣術(5)、体術(9⇒10)、身体操作(8⇒9)、身体強化(10)、魔力操作(9⇒10)、見切り(8⇒10)、金剛、怪力、強奪、聖神の信条、雷魔法(8⇒9)、毒魔法(8⇒9)、鬼神纏い、滅却の魔眼、見えざる手(8⇒9)、雷装、思考加速(7⇒9)、魔力感知(9)、気配察知(7)、気配遮断(9⇒10)、誘いの甘言、魔法耐性(7)、状態異常耐性(8)、精神耐性(7)、自己再生(8)、痛覚鈍化、暗視、マップ
Tips:辰砂大鬼の攻略方法
本来の2層5区に出現するエリアボス。付近一帯を支配下に治める大鬼。鈴鹿の場合は狂鬼が出現したためいなかったが、本来であれば集落に着く前に戦鬼頭が率いる哨戒部隊や暗殺鬼たちによる斥候が集落の周囲に展開されており、探索者たちがたどり着く頃には鬼たちの奇襲や集落で鬼たちが万全の準備で待ち構えている。
戦闘になると集落から100体を超える鬼たちが襲い掛かってくるため、持久戦を覚悟でひたすら鬼の数を減らすことを第一目標とすること。エリアボスである大鬼が指揮を執っているため一筋縄ではいかないが、鬼たちの装備の類はそこまで整っていないため、魔法による範囲攻撃がかなり有効である。
鬼たちの数が半数を切ると、大鬼の虎の子の部隊である魔法鬼たちが現れる。魔法鬼は非常に厄介なため、第二目標として早急に数を削ること。鬼の数がさらに減ると、大鬼が戦場に現れる。
大鬼自体は2層5区のエリアボスの中では下位に位置する強さのエリアボスである。突出した能力もないため慎重に数人で抑え込みながら、残りのメンバーで鬼を狩りつくすこと。
鬼を残した状態で大鬼を追い詰めると、大鬼が咆哮に乗せて周囲の鬼の能力を飛躍的に向上する技を使うようになる。残っている鬼の数によってはその技が発動された時点で詰む可能性があるため、大鬼にはダメージを極力入れず、周囲の鬼を優先して殲滅する必要がある。
咆哮さえ攻略できれば、大鬼自体は問題なく対処できることだろう。
Tips:狂天童子の攻略方法
無し。戯れで逃がしてくれることを天に祈り、全力でその場を離脱することを強く推奨する。
Tips:二叉尾棘蠍の攻略方法
基本砂中に潜み、上を通りかかった者をはさみや毒針で攻撃する潜伏タイプのエリアボス。
主な攻撃手段は両手のはさみと二尾の毒針であるが、それだけでなく棘蠍ともあるように、体表に無数に存在する微小な棘を射出して麻痺や毒などの状態異常を誘発してくるため注意が必要である。
攻略方法としては釣り出しが非常に有効である。棘蠍は振動を検知して襲い掛かるため、魔法を使って砂に圧力をかければ、探索者と勘違いして攻撃を仕掛けてくる。その際に出現するはさみや毒針を攻撃し、ダメージが蓄積されると本体が出現して襲い掛かってくる。
そのタイミングで戦場を移し、岩石砂漠が広がるエリアに変えることで、棘蠍の潜伏をある程度阻止することが可能となる。
棘蠍の棘で発症する状態異常は、2層5区に出現する赤星蠍や黄襲蠍から得られる解毒薬によって解毒できる。一方、二尾の毒針での状態異常は2層5区では解毒薬が入手できず、中級状態異常ポーションでなければ治癒できないため注意する事。
土魔法を行使するが、土耐性の装備を整えておけばそこまでの脅威ではない。
一定以上ダメージを与えると、8本の足先とはさみに毒針と同じ効果の毒が付与されるようになり、表面の棘の毒針が途切れることなくばらまかれだすので注意すること。高火力の攻撃を行使して一気に仕留めることを推奨する。
Tips:泥濘戦機乙型の攻略方法
水魔法を行使する蛸型のゴーレムである。地面を泥濘や泥沼に変化させる魔法を使用し、フィールドを自身に有利なものへ改変する。挑戦者は泥濘によって機動力を奪われ、泥濘戦機自身は水魔法を駆使して機動力を確保し逃げ続ける。そして、泥濘に足を取られ動きが止まった探索者を遠くから魔法で集中攻撃する。それが泥濘戦機の主な戦法である。
シンプルに強い組み合わせの攻撃であり、泥濘戦機に追いついて近接攻撃を当てることは至難の業である。それ故か本体の強さは大したことは無く、触手による物理攻撃もそこまで警戒するほどでも無い。
泥濘戦機が展開する泥沼は大きく機動力が削がれるため、泥濘戦機と戦う場合は魔法での戦闘が推奨される。特に雷魔法が大ダメージを与えられるため、泥濘戦機と戦う前に1層5区の風雷帝箆鹿や2層5区の青天雷鳥を倒し、雷魔法が発現していると優位に戦うことができるので推奨する。
近接戦闘で戦いたい場合は、土魔法によって泥沼を固めて足場を確保するか、風魔法によるバフによって泥沼に沈みにくくするなどが挙げられる。それ以外で自力で距離を詰める場合、泥濘戦機を泥濘エリア端に追い詰めることも可能である。
泥濘戦機は自分が作り出した泥濘地帯から出ることがないため、隅に追い詰めることで泥濘戦機の動きを阻害することができる。しかし、泥濘戦機の身体は泥でできているため斬撃に耐性があり、削るような攻撃が有効であるため武器の選定も意識する事。
近接で挑む場合注意が必要なのが、泥濘戦機による吸収である。一定以上のダメージが蓄積されると、泥濘戦機は一転して挑戦者へ迫るようになる。その際、触手で掴んだ先から泥濘戦機の内部へと引きずり込まれてゆき、一度引きずり込まれるとそのまま内部で圧殺されてしまうため気を付けること。
斬撃などで触手を遠ざけようにも、泥でできているため傷ついた先から修復されて掴まれてしまうため、高火力の魔法で迎撃することがおすすめされる。




