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第94話 河原での朝


「ほお~暗くなってくるとはっきりわかるな。このライトってやつは便利なもんだぜ」


「こっちの魔道具だと金貨何枚もかかるし、魔石がすぐになくなる。これが銀貨1枚もあれば買えて、銅貨数枚でしばらくもつなんて考えられない」


「改めて考えると便利だよね」


「キュキュウ!」


 晩ご飯を食べ終わったころには日も暮れてきた。すでにテントの中に入ってランタンの明かりをつけている。一応こっちの世界にも魔道具があるらしいけれど、維持費も結構高価だから、普通は焚き火をして野営をするそうだ。


 これは充電式のランタンだけれど、単三電池なら数百円でしばらく使える。それにもういくつかアウトドア用のライトを購入したが、これよりも明るいライトもたくさん売っていた。


「それにこのテントも軽いうえにこれだけ大きいんだからすげ~よ。冒険者に売るだけで大儲けできそうだぜ」


「確かに移動が多い冒険者や商人にとても需要がありそう。早計に他の人には見せない方がいいかも」


「言われてみると俺の世界のキャンプ用の道具はこっちの世界の人にとってはだいぶ便利だよな。セレナさんにも秘密にしておかないと」


 アウトドアショップで販売されているキャンプギアはこちらの世界の人からしたら安価でとても便利な道具だ。もしもお金が必要になったらいい商売ができそうである。まあ、その分面倒ごとも多そうだから絶対にしないけれど。


「こっちの寝具も柔らかくて寝心地もいいしな。ふあ~あ、そんじゃあさっさと寝っか」


 ヴィオラはビールを飲んでいたし、すぐに横になってしまった。まだ時間は早いけれど、明日も朝は早くに出るし、俺もヴィオラに運んでもらっているだけとはいえ疲れたからもう寝るとするか。


「おやすみ、ヴィオラ。リリスはまだ寝ないの?」


「少しだけ動画を見てから寝る」


「……そう。ほどほどにね」


 もちろんリリス愛用のタブレットは持ってきているようだ。さすがにここだとネットは通じないが、昨日家でいろんな動画を予めダウンロードしていたらしい。


 最近では俺の世界の家付近にあるおいしいご飯やスイーツのお店を紹介する動画なんかを見ていた。たぶん戻ったら行ってみたい場所の情報を集めているのだろう。なんかもう俺よりもリリスの方がタブレットを使いこなしているような気もするな。


「それじゃあお先に。ハリーもお休み」


「キュウ~」


 ちなみにテントの中では一番奥に俺、ハリー、リリス、ヴィオラの順番で横になっている。いろいろと揉めたが、結果的にこう落ち着いてよかったよ。さすがにリリスとヴィオラに挟まれたまま寝られるほど俺も男として枯れているわけではないからな。ハリーの可愛らしい寝顔を見ながらぐっすりと眠るとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「キュウ~!」


「う~ん、おはよう」


 昨日は一度も目が覚めることはなく、ぐっすりと眠れたようだ。疲れていたということもあるけれど、危険な魔物の侵入を防いでくれてる結界があるのと、リリスとヴィオラがいてくれるとだいぶ安心感があったからな。


「すう……」


「くか~……」


 2人はまだ寝ているようだ。リリスは昨日どれくらい遅くまで起きていたんだろうな。


「………………」


 それにしても改めて女性と同じテントに寝ていたと考えるとヤバいな……。2人の寝顔を見ると完全に美少女と美女だ。まあ、ヴィオラは寝相が悪くて少し離れた場所で横を向いているけれど。


「2人を起こさないように朝食の準備をしようか」


「キュキュ」


 もちろん寝ている2人に変なことなんてしないけれど、このまま2人の寝顔を見ていたらいろいろと危険だ。俺が一番に起きることも考えて、食材の一部は収納魔法から出してもらっておいた。


 朝の気持ちの良い空気を楽しみながら、まったりと朝食の準備をするとしよう。




「ふあ~あ。おっす」


「おはよう、ヴィオラ。ちょうど朝食ができたところだよ」


「キュウ」


 ハリーと一緒に朝食を作っているとヴィオラがテントから出てきた。……ただでさえ露出の多い服がはだけているのでもう少し自重してほしいものだ。


「うまそうな匂いだな。テントの中にも漂ってきたぜ」


「今日は洋食系の朝食にしてみたよ。リリスを起こしてきてくれる?」


「わりいけどケンタに頼むぜ。ちょっと頭がいてえから、川で顔を洗ってくる……」


「了解……」


 少しフラフラした様子で川の方へ歩いていくヴィオラ。一応支障が出ないくらいでビールを止めたつもりだったのだが、少し多かったみたいだ。やっぱりこっちの世界のお酒よりも酒精が強かったのだろう。


「リリス、朝食ができたよ」


「キュ!」


「ううん……おはよう、ケンタ、ハリー」


 ハリーと一緒にテントへ入り、リリスを起こしてあげる。眠そうに目をこすりながら起きるリリスの様子はなんだか微笑ましい。


「もしかして、昨日は遅くまで起きていたの?」


「……見ていた動画が止まらなくなった」


 ……うん、夜更かしあるあるだな。やはり寝る前の動画視聴は止めておいた方が良さそうだ。


 ヴィオラも二日酔いみたいだし、安全のことを考えて少し出発を遅らせた方がいいかもしれない。


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