第112話 無人島
翌日。
宿で朝食をとり、市場でたくさんの買い物をしたり食べ歩きをしてきた。午後はヴィオラとリリスの飛行魔法で海を飛びながらちょうど良さそうな島を探している。
「最高の景色だね」
「今日もいい天気だから景色もいいな。おっ、あそこの小さな島がちょうどいいか。一度あそこに降りるぜ」
「了解」
これまでの移動とは違ってゆっくりと空を飛んでいるので、みんなの声も届く。
青い空に白い雲、下には一面に広がる大海原。そして点々とする緑色の島の中にちょうどよさそうな大きさの島があったためそこへ降りていく。
「なんもねえが、寝泊まりする分にはここで十分だろ」
「人がいなくてのんびりできそう」
「うん、最高だね!」
「キュウ~♪」
俺たちが降りた島は本当に小さく、全長数百メートルもないくらいで、ここからでも島の先が一望できるくらいだ。奥の方には緑色のヤシの木が生えており、目の前には真っ白な砂浜が広がっている。
今日はここをキャンプ地とすることに決まった。
「よし、テントはこんなものでいいかな。あとは椅子とテーブルも出しておこう」
「うん」
砂浜から少し上のところに先日も野営する時に使った大きなアウトドア用のテントを張る。無人島でのキャンプなんて初めての経験だし楽しみだ。
「よっしゃ、早速海に入ろうぜ。なんだったらケンタも一緒に着替えるか?」
「………………ケンタ?」
「いや、あっちで着替えるから!」
ヴィオラがニヤニヤとしながらそんなことを言うので、つい即答してはいと答えそうになってしまったぞ。リリスがジト目でこちらを見ていなかったらあぶないところだった……。男だったら誰でも引っかかってしまいそうなトラップである。
ヴィオラも俺をからかっているのはわかるのだが、つい本気にしてしまいそうだ。男とは女の人にそんなことを言われたら勘違いしてしまう生き物なのである。
「よし、苦しくないか?」
「キュ。キュキュウ♪」
「はは、ハリーもよく似合っているぞ」
リリスとヴィオラがテントの中で着替えている間に俺とハリーも水着に着替えた。誰もいない無人島で一瞬だけでも外で真っ裸になるのは少しだけ解放感があった。己を解放したいという人はこういう気持ちだったりするのかな?
そしてハリーも水着を着ている。もちろんハリネズミ用の水着なんてないので、犬用の水着を購入して、それを切って背中を開けた手作りのものになる。
気温が温かくなってきて、小屋の前の湖で泳ごうかと思って購入しておいたものだ。ハリネズミのハリーに水着なんているのかとも思うかもしれないが、仲間外れは嫌だもんな。気に入ったのなら家で着る用の服を買ってあげてもいいかもしれない。
「おっ、ハリーはよく似合っているじゃねえか」
「可愛い!」
「キュウ~♪」
「………………」
ハリーに水着を着せ終わると、後ろから着替え終わった2人もやってきた。
ヴィオラは白色のビキニなのだが、胸元の布地が左右に交差していてとても露出の高い水着だ。ダークエルフ特有の褐色肌と真っ白な水着のコントラストが健康的かつとてもセクシーだ。ヴィオラはスタイルがとてもいいから、まるでモデルのようである。
リリスはフリルの付いた水色の可愛らしいワンピース型の水着だった。真っ白で透き通るような肌と紫色の髪に水色の水着がとてもよく似合っている。いつもはツインテールだけれど、海に入るためか今はふたつのお団子頭になっている。
「ふたりも本当によく似合っているよ。俺の世界の水着なんだけれど、2人には関係ないね。俺の世界で海に行ったら間違いなく大勢の男の人に声をかけられているよ」
「当然だぜ。ケンタの世界の水着は着心地が良くていいな」
「……ありがとう」
自分の語彙力のなさが悲しくなってくるな。ヴィオラはとても綺麗で、リリスはとても可愛らしい。いつも一緒にいるはずの2人なのに水着に着替えて髪型を変えるとまるで別人のようでドキッとしてしまう。エルフ特有の耳がなくとも、ビーチで男性の視線を集めるのは間違いないだろう。
2人の水着は俺の世界で購入してきたものだが本当によく似合っている。こちらの世界にも水着はあるらしいのだが、普通のシャツと短パンで形や色も種類がないようだ。俺の世界の服も気に入っていたみたいだし、水着も俺の世界のものを購入することにした。
……リリスは始め布地の面積が一番多いからと紺色のスクール水着にしようとしていたが、それは小さな子供用ということでとめた。今着ているのも少し子供っぽいかもしれないけれど、こちらの方がリリスにはよく似合っている。
無人島で最高の景色とみんなの水着姿。もしかすると俺は今、人生の絶頂期にいるのかもしれない!




