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第109話 すき焼き


「かあああ! こいつもビールとよく合うじゃねえか! やっぱしケンタの料理の方が昼の屋台よりも何倍もうめえぜ!」


「うん、ビールもいいけれど、日本酒や焼酎なんかの強い酒も合うんだよ。こっちは結構酒精が強いから気を付けて飲んでね」


 ヴィオラがこれまたおいしそうに缶ビールを飲み干す。


 味の濃いすき焼きにはいろんなお酒もよく合う。飲み過ぎないように気を付けないとな。屋台の料理も十分においしかったけれど、やはりヴィオラたちには俺の世界の料理の味付けが新鮮で好ましいのだろう。


「バーベキューもそうだけれど、肉の厚さをいろいろ変えてそれに合う調理法で的確に料理をしている。やっぱりケンタの世界の料理はすごい!」


「それはこれまでの長い歴史とたくさんの国の交流があったからかな。先代の料理人たちのおかげだよ」


「キュキュウ!」


 以前に調べたのだが、すき焼きは江戸時代に農業で使う鋤で肉を焼いていたことからすき焼きと名付けられたようだ。関西では肉を焼いてから直接砂糖や醤油を入れて煮込むらしいから、関西のほうがすき焼きの発祥となるのだろう。


 それが今ではこうやって立派なご馳走となっているのだから、長い食の歴史に感謝だ。


「卵もまろやかでおいしい。この割り下という味の濃いスープによくあっている」


「俺の世界だと卵はひとつひとつ丁寧に管理されて産んでからすぐにお店に届くから比較的安全なんだよ。ハリーも卵はあった方がいいみたいだな」


「キュ!」


 すき焼きの鍋からハリーの前にある卵の入ったお椀に肉や野菜をとり分けていくと、器用に食べていくハリー。相変わらず可愛らしい。


 俺もすき焼きには卵とご飯は絶対になくてはならない派である。この割り下と卵の味が混ざったものだけでもご飯がいけるくらいだ。


「おい、ケンタ! リリスの方が肉は大きいぞ。もっとこっちにもくれよ!」


「師匠の方が数は多いから、むしろそっちの方が多い!」


「はいはい、肉はまだたくさん切ってあるから」


 本当に仲の良い師弟だな。


 まあ、すき焼きや鍋をやると大体こうなってしまう。兄弟が多いと肉は奪い合いになってしまうと雄二から聞いたな。とはいえ今回はお腹がいっぱになるまで食べても大丈夫なくらいに肉は切ってある。


 魔物は俺の世界の動物よりも遥かに大きいから一体からでもかなりの食用肉が確保できるのでありがたい。


 みんなお腹がいっぱいになるまですき焼きを堪能したようだ。肉と野菜を入れる鍋奉行と化した俺は結構大変だったぞ。


「いやあ~うまかったぜ! 昨日のステーキとカツもうまかったけれど、こっちのすき焼きってやつが最高にうまかったな!」


「私はカツかすき焼きのどっちか迷うところ」


「俺はステーキが一番だったかな。ハリーはどれが好きだった?」


「キュウ」


「そうか、カツが一番だったか」


「キュキュウ♪」


 俺がそう聞きながら昨日ステーキとカツにかけたステーキソースと中濃ソースを出したところ、俺の意図を察して中濃ソースを指差した。ハリーとのコミュニケーションも慣れたものだ。


 やはりというべきか、みんなは普通に焼いた肉よりも揚げたり、割り下で煮たりした珍しい料理の方が好きなようだ。俺としては純粋に肉の味を味わえたステーキが好きだったけれど、まあ好みの範囲内だろう。


 それにしてもこのアースドラゴンの特殊個体の肉は本当においしかった。2人がいてくれれば安全みたいだし、また異世界の街へ旅行に行くのもいいかもしれない。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「よし、そんじゃあ行くか」


「準備は大丈夫」


「キュ」


 そして翌日。昨日と同様に食べ過ぎてまだお腹がそれほど空いていなかったのと、ヴィオラがお酒を飲んだこともあってお昼前からの行動となった。


 アースドラゴンの解体作業がもう少しかかるので、今日はこれから別の街に観光へ出掛ける。これでもう数日間家を空けているけれど、働かなくていいって本当に幸せだな! 改めて仮想通貨には感謝しなければならない。


 そんなわけでいつものように飛行魔法で空を飛びながらムサカラの街を目指す。ムサカラの街は海に隣接した大きな街だ。これまでの街とは違うものもたくさんあるだろうから楽しみだ。


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