第107話 屋台巡り
「そこの強そうな兄さん、うちの店の串焼きは絶品だぜ!」
「あら、綺麗なお嬢さんね。この店のスープはおいしいわよ!」
「さあ、いらっしゃい。アースドラゴンの討伐祝いで明日まで半額だ!」
屋台街には多くの店が立ち並び、たくさんのお客さんが溢れている。店側も活気が良く、お客さんを呼び込んでいて、あちこちからいい香りが漂ってきた。
どれから食べようか目移りしてしまうな! 前回レジメルの街をまわった時もワクワクしたが、今日はそれ以上だ。なにせアースドラゴン討伐戦の偵察報酬として金貨200枚をもらっているから懐が温かい。リリスからご馳走になっていた時はどうしても少し遠慮していたからな。
やはり人間お金があると心に余裕ができるというものだ。今日は思う存分食べ歩きを楽しむとしよう。
「おっと、そこの綺麗なお嬢さんにいかしたお兄さん、うちの店の店の串焼きはどうだい! オークの串焼きにワイルドディアの串焼き、ヒカリダケのチーズがけなんてのもあるぜ!」
屋台を歩くとさっそくお店の人に呼び止められた。お世辞にもそう言ってくれると嬉しいものである。
どうやら串焼き屋さんのようで、様々な肉や野菜が炭火で焼かれて香ばしい匂いが食欲をそそる。値段は1本銅貨3枚からだから300円くらいか。よし、まずはここで買ってみよう。
「どれもおいしそうだ。それじゃあ何種類か4本ずつもらおうかな」
「へい、まいど! それにしてもずいぶんと綺麗なお嬢さんを2人も連れているね。羨ましいぜ、この色男!」
「あ、ありがとうございます」
2人とは付き合っているわけではないけれど、そんなふうに言われるとちょっと嬉しい。
前にリリスがヴィオラの子供に見られたこともあったけれど、今回はそんなこともないようだ。傍から見たら美女と美少女をはべらせている男に見えるのかもしれない。
「だってよ、この色男さん」
「……っ!?」
店の人の言葉を聞いて、ニヤニヤとしながらヴィオラが俺の左腕に自分の両腕を絡めてくる。ヴィオラの豊満な胸の感触が左腕に伝わってきた。
ヴィオラの性格上、俺をからかってきていることはわかりきっているのだが、それでも今までに彼女がいたことのない俺にとってはものすごい破壊力である。童貞の男などちょろいものなのだ。
「……むう」
「リ、リリス!?」
何を思ったのか、今度はリリスが反対の右腕側に自分の両手を絡めてきた。リリスは普段こういうことをしないこともあってその長い耳を赤くして恥ずかしがっているのだが、いつもの大人びているリリスとのギャップがあってとても可愛らしい。
師匠であるヴィオラに対抗しようと思ったのか、2人がかりで俺をからかおうとしているのかはわからないが、まさに両手に花状態で最高に幸せなんだが!?
「キュキュウ」
ヴィオラとリリスが俺にくっついてきているのを見て、右肩に乗っているハリーまで俺の頭に抱き着いてきた。ハリーのモフモフとした真っ白なお腹が俺のほっぺに当たっている。
なんだかもういろいろとすごい状況だ……。
「はは、みんな本当に仲がいいんだな。ほら、串焼きお待ち」
「おっ、思ったよりもうまそうじゃねえか。よっしゃあ、早速食おうぜ!」
「う、うん!」
「キュウ、キュウ!」
「………………」
串焼きが焼き上がり、お店の人がいい香りのする様々な串焼きを包みに入れて差し出してくると、ヴィオラが俺の腕から離れてそれを受け取った。リリスとハリーもそれを見て離れていく。
……すでにみんなの興味は串焼きの方に移ってしまったらしい。リリスだけはまだちょっと恥ずかしそうにしている。
もうしばらくあのままでもよかったんだけれどなあ……。
「おっ、思ったよりもいけるな。オーク肉がどんなものかと思ったけれど、少し歯ごたえのある豚肉ってところか。こっちのワイルドディアの肉も野性味があってなかなかだ」
屋台街には座って食べることができるテーブルとイスが並べられていたので、そこに座って別の店で購入してきたいろんな料理や果実のジュースを並べた。まずは最初の店で購入してきた串焼きを食べてみたのだが、なかなかの味だ。
「……肉の味を差し引いてもやっぱし味付けがなあ」
「昨日食べたステーキがおいしすぎた……」
「キュウ……」
俺以外のみんなは微妙な顔をしていた。
いや、確かに昨日のアースドラゴンの変異種のステーキとカツがおいしすぎたから、あれに比べたらどんな肉料理も霞んでしまうことは食べる前から分かっていた。それでもオーク肉やワイルドディアの串焼きは今まで食べたことのない味がして、俺にとってはとても楽しめた。
やはり肉の味はこちらの世界のもののほうがうまいのである。味付けはシンプルな塩だけなので、肉や部位によって味の違いがあってそれがよく伝わってきた。ただ香辛料が少し高価なので、屋台の味付けは塩ばかりになってしまうらしく、みんなはそれが少し不満らしい。
夜は少し濃い味付けの料理にしておくかな。




